言葉の森新聞2009年9月3週号 通算第1095号
文責 中根克明(森川林)
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■■今週は9月3週号と4週号を一緒にお送りします
9月3週と9月4週は、言葉の森新聞をまとめてお送りします。
■■9月21日(月)・22日(火)・23日(水)は休み宿題(再掲)
9月21日(月)・22日(火)・23日(水)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時〜午後7時50分。電話0120-22-3987)
電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/index.php
「ヒントの池」 http://www.mori7.com/mine/ike.php
■■新学期の教材を発送します
新学期の教材を9月15日(火)〜18日(金)に発送する予定です。
国内の生徒で25日になっても届かない場合はご連絡ください。
★項目・住所シールは
10月1週の山のたよりと
一緒に送ります。
9月末に発送予定です。★
■■作文の文章に話し言葉を使うケース―ご意見に答えて
小5の保護者の方から、「文章中に話し言葉があるので指導してほしい」というご意見がありました。
以下は、そのご意見に対してのお返事で、父母の広場に掲載したものです。
話し言葉を使うという場合、二つのケースが考えられます。
一つは、文章を書くのが好きな子が、ところどころに軽いノリで自由な筆致で書く結果、話し言葉になるという例です。これは実力のある子の場合ですから、問題はありません。すぐに直ります。
もう一つは、まともな書き言葉の文章の語彙が少ないために、話し言葉になってしまう場合です。
例えば、「ぼくは、おばあちゃんちでねちゃいました」などは、書き言葉の語彙が少ないために話し言葉で書いてしまう例です。「おばあちゃんのうちで」「ねてしまいました」という文章語を読む機会が少ないために、そういう言い回しがなかなか使えないので話し言葉になってしまいます。
この場合、厳しく注意して直るかというと、そういうことはなく、直るよりも注意の繰り返しで書くことが嫌になってしまう方が多いのです。
注意する場合でも、「話し言葉で書かない」という一般的な注意ではなく、「この言葉は使わないこと」という一つか二つに限定した注意であれば効果はありますが、そのように限定すると、今度は指導する機会が少なくなります。
したがって、話し言葉が多い子の場合は、まず文章的な言葉を読む量を増やしていくことが勉強の中心になります。
大人は子供の表記のおかしい点をよく心配しますが、幼稚な話し言葉のまま大人になる子はいません。どの子も、中学高校と学年が上がるにつれて文章的な言葉で書けるようになってきます。それは、学年が上がるにつれて、書き言葉の文章を読む量が増えてくるからです。
目につきやすい表記の面は、直接指導するよりも、読む量を増やすことによって気長に直すのが基本です。
目につきにくい表現や構成の面が勉強の中心になると考えていってください。
ただし、具体的に、「この言葉をこう使うのは気になる」ということがありましたら、担当の先生、又は事務局にご相談ください。
■■形だけ整えた書き方―ご意見に答えて
小5の保護者の方から、(表現項目の)「『まるで』とか『分かったこと』などを簡単に考えている」ようだというご意見がありました。
以下は、そのご意見に対してのお返事で、父母の広場に掲載したものです。
確かに、項目は形だけ書いておしまいにするという書き方もできます。
こういう書き方をする原因は、二つあります。
第一は、語彙力がまだ不足しているために、形だけの書き方になってしまうという場合です。
第二は、勉強に対する自覚が不足しているために、形だけ書いて早く終わらせてしまうという場合です。
語彙力の不足に関しては、自習によって読む力をつけることで少しずつ改善していくことができます。
自覚の不足に関しては、親や先生が話をして自覚することもありますが、長い間続けているうちに、子供自身が形だけで終わらせてしまう勉強に空しさを感じ、よりよい文章を書くように心がけるようになってきます。
当面は、自習の強化をしやすいように工夫していきたいと思っています。
以下は、父母の広場には書きませんでしたが、関連する話です。
小学5年生から中学2年生にかけては、身体よりも意識が先行する時期のようです。
それまでの小学4年生までは、素直に大人の言うことを聞く時期で、意識と自分の実際の姿が結びついていました。
しかし、小学5年生あたりから、今はそうではないが本来はこうあるべきだというような意識が成長してきます。このため、親の言うことにも反発することが出てきますし、自分で納得できないことはやらないという気持ちもでてきます。
よく作文にウソを書く(脚色する)という問題が出てくるのもこの時期です。これは、大人になってからのウソと違い、自分でもそういうことができるのだということを試してみたいという心の表れですから、強く注意する必要はありません。ただ、「オーバーに書いて褒められるより、目立たなくても本当のことを書く方がいいんだよ」と話しておくことは大事です。そういう話をするだけで、子どもはすぐに理解します。
表現項目を形だけ入れるというのも、この時期の意識の成長状態というところから考えていくことができます。子どもは、「形だけやって、◎をつけてもらって、うまくやった」ということを自慢してみたいという気持ちがあります。自分がそういう要領のいいやり方もできるのだということを試してみたいということなのです。
ですから、このときの注意の仕方は、簡単に「もっとよく考えて書きなさい」と言うのではなく、もっとじっくりと話していく必要があります。どういう話かというと、人間が何のために勉強するのかということから始めて、◎をつけてもらうことよりも、自分自身が向上することが大事なのだということを、親の人生観としてしみじみと話していきます。どのような話であっても、親が真剣に言ったことは、必ず子どもの心の中に残ります。内容がすべては理解できなくても、漠然と、表面の評価よりももっと大事なのは内面の真実なのだということが伝わっていきます
。
勉強に対してこのような自覚を持った子は、中学生になっても、高校生になっても、勉強に対する姿勢が違ってきます。点数のためではなく、自身の向上のために勉強するという自覚を持った子は、年齢が上がるにつれて実力をつけていきます。
そう考えると、形だけ書いておしまいにするというのは、親が勉強の意義について話をするいいチャンスだと考えることもできます。
■■日本文化の抽象化
20世紀は、アメリカ発のグローバル化の時代でした。その象徴は、マクドナルド、コカコーラ、自動車、IT、金融テクノロジーなどでした。
工業国としては衰退したアメリカは、金融による日本支配で覇権の延命を図りました。一時期は、実質的に日本が国力ナンバーワンの時代がありました。しかしやがて日本は老人国家になっていきます。その結果、現在、世界の覇権は、米国から日本を通り越して中国に移りつつあります。
しかし、中国にアメリカのようなグローバル化する文化はあるのでしょうか。中国は人口と領土で自国の影響力を強めています。しかし、その影響力によってどういう世界文化を広げるつもりかといえば、その中身はわかりません。
けれども、今後、中国によるグローバル化が進展することは止められないでしょう。そのときに、日本が中国のグローバル化に飲み込まれないようにするためには、どういう道を選択することができるのでしょうか。
アメリカは、マネーの力によるグローバル化を押し進めました。中国は人口の力によるグローバル化を押し進めようとしています。
日本には、日本文化を守るために鎖国をするという選択肢もあります。しかし、それは日本が年老いた風流人の箱庭国家になって衰退していくことです。未来の日本は、移民の流入も含めてグローバル化の流れは止められないという前提のもとで考えていく必要があります。
そのときに問題なのは、守るべき日本文化の輪郭が不鮮明だということです。
明治時代、欧米文化に遭遇した日本には、和魂洋才という返し技がありました。それは、江戸時代に蓄積した膨大な日本文化があったから可能だったのです。
しかし、今の日本は敗戦によって文化の根を切られている状態です。大事なことは、曖昧でムード的な否定形の日本文化ではなく、明確で理論的な肯定形の日本文化を打ち立てることです。
日本文化がそのような普遍性を持つためには、つまり日本以外の人にも通じる文化となるためには、日本という特殊で具体的な条件を離れた抽象化が必要になります。
この抽象化は、主に言語によってなされるものですが、言語以外の抽象化もちろんあります。例えば、行為による抽象化というものがあります。只管打座、江戸しぐさ、トイレ掃除の文化などは、行為を通して伝える日本文化です。
21世紀のグローバル化には、四書五経のレベルの日本文化では不十分です。また、キリスト教や仏教という宗教のレベルの文化でも対応しきれません。現代の科学技術の成果をふまえた新しい世界観、社会観、自然観、そして、人生観、人間観を提唱する必要があります。
この新しい文化が、これまでの西欧のデカルト・ニュートン・ダーウィン・アダムスミス・マルサス的なパラダイムをのりこえた、新しい日本文化的なパラダイムになると思います。
そういうパラダイムの創造が可能なのは、日本文化が、これまでの歴史の中で穏やかな人間性と科学技術の先進性を両立させてきたという面を持っているからです。
中国を中心とした世界のグローバル化は止められません。日本は、土地や人口のグローバル化ではなく、文化のグローバル化を担う役割を持っています。この世界に広げる日本文化という道が、日本の文化を守りつつ世界の平和と発展に貢献する道です。
言葉の森の作文教室も、この大きな流れの中に位置づけて行っていきたいと思っています。
■■日本の文化力
経済力、軍事力、人口力の大きい国が、世界に対する影響力を持ちます。しかし、その国が文化的大国であるとは限りません。むしろ、歴史的に見ると、領土を広げた国は、その国の文化を広げたのではなくその国以外の文化の交流を促したということも多いのです。
では、文化とは何かといえばそれは言語です。ある言語のもとで営まれている、生活、思想、芸術の総体が文化にほかなりません。
日本語が使われている地域の文化、つまり、日本の文化の特徴は、穏やかさ、清潔さ、正直さ、思いやり、知性、技術など、いくつかのすぐれた面を持っています。しかし、日本文化は、それらの特徴を事事しく自己主張するのではなく、静かに育んでいるといった風情です。それが、静かに世界に影響を与えているのです。
しかし、日本は今後、少子化、高齢化、低成長下で、国力自体は長期的に低下する傾向にあります。この物理的な国力低下を補うものは、文化的な国力上昇です。
それは、日本語の流通量が世界に広まることによって行われます。具体的には、出版物など流通する情報の量と質、ホームページやブログなど発信される情報の量と質、読書や作文など日本語的な教育の量と質、です。
もし人口が2分の1になっても、日本語の本を読む量が2倍に増えるか、日本語のブログが2倍に増えるか、日本語の教育レベルが2倍になるかすれば、文化力は発展します。
逆に人口が2億や3億になっても、本やブログや教育が今と同じ水準に留まるならば、日本の文化力は水増しされ衰退していくといえるのです。
日本は、これまで技術力と経済力で世界に貢献してきました。これからはそれに加えて、文化力でも世界の平和と発展に寄与していく時代になっているのです。
■■暗唱用紙で自習をやりやすく
昔、貝原益軒が百字暗唱を提唱したころは、テレビもゲームもない落ち着いた世界でした。シュリーマンや本多静六らが暗唱したときは、本人に燃えるような情熱がありました。また、戦前や戦中は、日本の社会に暗唱文化が残っていました。
現代の子供たちには、それらの条件がいずれも欠けています。(情熱はある場合もありますが)
このような事情があるために、音読や暗唱を家庭で続けるのは難しいのだと思います。
そこで、暗唱用紙を作りました。これは、100字30回の暗唱と300字10回の暗唱が1週間の流れでできるようにするための用紙です。これによって、驚くほど暗唱が続けやすくなります。
暗唱が苦手な低学年の子に、ただ「覚えるまで読みなさい」という言い方をしては、初めからあきらめてしまいます。また、タイマーで10分間計る方法は、気が散りがちです。正の字を書く方法は意外と面倒で、もしそれを大人がやってあげるとなるとかなり負担がかかります。 ところが、暗唱用紙なら子供がひとりで自然に進めることができます。これは、自分でやっていることを目と手で確認できるからです。
現在、通学教室で暗唱用紙の使い方を説明しています。
小1の子が最初はたどたどしく読んでいましたが、途中から自分でやるようになり、いつの間にか30回読み終えて、長文を空ですらすらと言えるようになりました。
通学教室でスムーズにできるようになったら、通信教室でも導入していきたいと思います。
▽暗唱用紙の使い方のビデオ
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