言葉の森新聞2010年7月2週号 通算第1134号
文責 中根克明(森川林)

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■■夏休み中も休まずに続けることが大事 
 夏休み中の1ヶ月以上の休会については、次のように扱っています。

 休会・退会は、月単位ですので、ご連絡いただいた月の翌月からとなります。
 休会・退会いずれの場合も、再開するときの入会金は必要ありません。
 休会には二つの種類があります。
1、在籍したままの休会
・受講料の引き落としがあります。
・山のたよりや言葉の森新聞は毎週送られます。
・休んだ分を別の月に振替で授業を受けられます。
・6.1週、9.1週、12.1週、3.1週の進級試験に合格すれば進級できます(ただし各月の課題を最低1回は提出していることが条件になります)
2、在籍をしない休会
・受講料の引き落としはありません。
・山のたよりや言葉の森新聞は送られません。
・休会中の授業の振替はありません。
・1ヶ月に1回も提出しない月が生じるので、次の学期はいったん級が下がったところから開始します。
(ただし、次の学期に進級すれば、次の次の学期は通常の進度に戻ります)

 夏休みは帰省したり塾の夏期講習に行ったりするために、通常の時間に授業を受けられない場合も多いと思います。その場合は次のようにしてください。
(1)通常の電話指導を受けられない分を、他の曜日や時間に振り替えて受講できます。平日午前9時〜午後7時50分、土曜午前9時〜11時50分の間に、直接教室にお電話ください。希望の週の課題の説明をします。事前の予約などは必要ありません。授業の振替は、3ヶ月の学期中いつでもできます。電話0120−22−3987(045−830−1177)
(2)山のたよりの送付先や電話の宛先を、自宅以外にすることができます。帰省先や滞在先などで授業を受けることを希望される場合はご連絡ください。ただし曜日や時間を変更する場合は、先生から生徒にはお電話しませんので、生徒から直接教室にお電話をして説明を聞くようにしてください。
 夏休みは、電話先の変更や、休んだ授業の振替などが随時できますので、できるだけ細く長く継続していかれることをおすすめします。
 お子様にとっても、忙しい中でも何とか続けたということが、その後の勉強の意欲づけにつながります。


■■7月19日(月)は休み宿題
 7月19日(月)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時〜午後7時50分。電話0120-22-3987)
 電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
 「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/index.php
 「ヒントの池」 http://www.mori7.com/mine/ike.php


■■受験生は夏が勝負―公立中高一貫校受験生は対話を
 受験勉強は、夏休みで決まると言っても言い過ぎではありません。なぜかというと、夏休みは朝から晩まで勉強ができるからです。この長時間集中して何日間も継続して勉強できるという環境が、成績を急上昇させる力になります。
 と言っても、人間の集中できる時間は限られていますから、中学3年生でしたら、1日7時間(朝3時間、午後3時間、夜1時間)の勉強ができれば十分です。しかし、1日7時間を40日間続けるというのは、中学3年生ではかなり大変だと思います。
 夏休みは、塾の夏期講習に行く人も多いと思いますが、塾や予備校での勉強の弱点は、志望校の傾向にも関係なく、自分のわかっていることわからないことにも関係なく、みんなが同じように授業を聴かなければならないことです。つまり、勉強の無駄が多いということです。塾で授業を聴いている時間は、自分で勉強している時間の半分か3分の2ぐらいの密度だと考えておくとよいと思います。
 ですから、塾に通う時間とは別に、自分なりに勉強する時間も確保しておくことが大事です。ただし、小学6年生は、まだ自分で勉強の計画は立てられませんから、親がリードするのでない限り塾に通って塾中心の勉強になるのはやむをえないと思います。
 大学受験生は、志望する大学と学部によって勉強の仕方がかなり違ってきますから、自分流の勉強の仕方をすることが最も大事になります。日本の大学入試はガラパゴス化しているため、塾や予備校によって至れり尽くせりメニューが用意されています。そういうメニューに乗って勉強して首尾よく合格してしまうと、かえって自分で試行錯誤して勉強するという力が育ちません。できるだけ自分なりの工夫をして勉強をしていく必要があります。
 高校入試は受験勉強の傾向が似ているため、中学3年生の塾での勉強は比較的能率よくできますが、この場合でも、自分の得手不得手に対応した自分なりの勉強時間を確保しておくことが大事です。
 中学3年生の自分なりの勉強は、次のようになります。
 英語は、中1から中3までの教科書を1ページにつき30回ぐらい音読して暗唱と暗写ができるようにしておくことです。また、前年度の英語の全国入試問題集を1冊買って、英語の長文を読むスピードに慣れておくことです。
 数学は、自分にとってはやや難しいぐらいの1冊の問題集を、100%1問も残らずできるようにしておくことです。特に大きく差がつくのは、中3の終わりごろに学習する図形の問題です。図形の問題は、できるできないの差がはっきりしています。図形問題を解くセンスは、できなかった問題を100%できるようになるまで何度も繰り返し解くことで身につきます。決して才能の問題ではなく、単純な反復ができるかどうかの問題です。
 国語は、問題集読書で力をつけるとととに、志望校の過去問を答えを書き込みながら解いて難易度をつかんでおきます。この難易度を把握しているといないとでは、点数がかなり変わってきます。
 理科や社会は、志望校の過去問を答えを書き込みながら解いてみて傾向をつかみます。そのあと、同じように参考書や問題集も答えを書き込みながら何度もくりかえし読むことが勉強の中心になります。大事なことは、じっくり解いたりじっくり書いたりすることではなく、何度も繰り返し読むということです。
 以上のやり方は、基本的には小6の人にも高3の人にもあてはまります。

 公立中高一貫校の志望校別の受験コースは、受験の5ヶ月前から始まります。2月の試験の場合は、9月ごろからスタートできます。
 公立中高一貫校を志望する場合、夏休み中は、志望校の過去問や、言葉の森の毎週の長文や、日々のニュースなどをもとに、家族の対話に力を入れていくとよいと思います。ただし、子供の話を聞くというよりも、親が自分の体験や意見をどんどん話してあげて、子供の考える材料を増やしていくというのが勉強の中心になります。


■■暗唱で頭がよくなる―解く勉強から読む勉強へ
 「脳と音読」(川島隆太+安達達夫著)という本があります。
 川島氏の調査によると、音読は脳を活性化する効果があるということです。小学生を対象に、音読を2分間させたあとに、記憶力や空間認知力のテストをしたところ、音読をしないときに比べて20−30%も学力の向上があったそうです。
 本を読む場合、能率よく内容を吸収するという点では黙読ですが、頭脳を鍛えるという点では音読の方が効果があるようです。
 ところが、何度か音読を繰り返しているうちに、その文章を覚えてしまい、歌を歌うような感じで音読を続けるようになると、今度は逆に脳はリラックス状態になります。
 これは、私も簡単な脳波計で実験したことがありますが、単純な言葉を音読で繰り返していると、脳波に急にΘ波が増えてきます。それだけ、脳が休んだ状態になるということなのでしょう。
 このように、音読は、最初のうち脳を活性化させますが、同じ文を覚えるぐらいまで読み続けると今度は脳をリラックスさせるようになります。
 この活性化とリラックスの度合いが、音読よりも顕著なのが暗唱です。
 暗唱をしていると、途中から急に眠くなってきます。50字程度の文章の暗唱では短期記憶がそのまま使えるので眠くなるようなことはありませんが、300字や900字の暗唱になると、脳がフルに活性化されるので、くたびれて眠くなるのだと思います。
 ところが、この300字と900字の暗唱がだんだんスムーズにできるようになり、無意識のうちに暗唱を繰り返せるようになると、脳は今度はリラックス状態になります。
 こういうことを考えると、暗唱は、音読よりも更に頭をよくする効果があるのではないかと思います。
 言葉の森の暗唱法は、手順さえ踏めば、だれでも例外なくできるようになるものですが、その手順を説明せずに暗唱をしてもらうと、暗唱ができるようになるまでのスピードの差に、子供たちの現時点での頭のよさの差が表れているようです。
 しかし、暗唱という勉強の長所は、やり方さえわかれば、だれでもできるということです。ということは、頭のよさというものも、生まれつきではなく、やり方によって後天的に育つものだということです。
 江戸時代、日本人の識字率は世界最高でした。それも、当時の先進国であるヨーロッパに比べても、比較にもならないほど高水準のものでした。その秘訣は、江戸時代の日本の教育の中心が、文章の音読を中心としたものだったからだと思います。
 現代の教育の問題は、問題を解くようなスタイルの、いかにも勉強をしているような形の勉強が多いために、かえって実力がつかないことにあります。
 解く勉強と読む勉強を比較すると、解く勉強は点数の差が出やすい面があります。そこで、多くの子が勉強を嫌いになります。できなかったところが×になるという形の勉強は、ほとんどの子にとって面白くないからです。
 勉強が面白くなくなる結果、無理に意欲をつけさせるために、今度はテストで競争を煽ることになります。解く勉強、勉強嫌い、テストによる競争は、ひとまとまりのものなのです。
 江戸時代の寺子屋が、競争もテストもない中で、なぜあれほどのびのびと子供たちが集まり、しかも日本人の学力を世界最高のものにしたかというと、そこで行われていた勉強が、解く勉強ではなく読む勉強だったからです。


■■無理のきく勉強法(1)―構成図を使った作文の書き方
 作文というのは、無理のきかない勉強でした。
 昔、ある生徒が教室に来たとき、送ってもらう車の中で、お母さんに何か叱られたらしく、半分泣き顔で入ってきたことがありました。そのときに書く課題の題名が、「楽しかったこと」のようなものだったということがありました。悲しい気持ちでいるときに、「楽しかったこと」という題名の作文は書けません。これが、作文の勉強が、英語や数学などほかの勉強と違うところです。
 作文の勉強は、感情を伴うものなので、書けないときに叱って書かせるようなことはできません。
 ところが、子供によっては、準備不足で書くことを決めてきてこなかったり、そのときの課題が書きにくいテーマだったり、たまたま気分的にやる気の出ないときだったりするという状態で教室に来ることがあります。
 そういうときに、その子供が甘えて、「今日は書けない」などと言うと、いくら先生や親が、「こういうこともあるでしょう」「ああいうこともあるでしょう」と水を向けても、なかなか書き出すことができません。
 このように、小学校低中学年の子が作文を書けないとき、家庭でうまく対応する方法があります。
 その方法のひとつは、親が続きの文を言ってあげることです。親の言ったとおりに何行か書いていくと、子供はそのあと自然に自分で続きを書けるようになります。
 もうひとつは、構成図を使うという方法です。子供を横にすわらせて、お父さんやお母さんが子供と話をしながら、構成図の枠を埋めていきます。子供がやる気のないときでも、半分尋問のように(笑)、叱りながらでもいいので話を聞いてどんどん枠を埋めていきます。
 質問しても話があまり出ないときは、似た話に広げていきます。例えば、「おふろ」という作文の課題で、お風呂の話題が尽きたときは、お風呂でもぐったこととか、石鹸(せっけん)が目に入って痛かったこととか、小さいとき親と一緒にお風呂に入ったときのこととか、お風呂の掃除をしたこととか、旅行に行って温泉に入ったこととか、話の幅を広げて聞いていきます。
 構成用紙の枠が全部埋まったところで、「これで作文を書いてごらん」というと、ほとんどの子は喜んで書き出します。
 構成図は、よく書ける子の場合は作文のシミュレーションとして、あまり書けない子の場合は作文の呼び水として使っていくことができます。
 構成図を使うと、作文はかなりの程度まで無理のきく勉強になります。
●構成図の書き方( http://www.mori7.com/mori/mori/kouseizu.html )
 ところで、小学校高学年、中学生、高校生の生徒が、作文の続きをなかなか書けないときの対応は、少し異なります。これは、心理的に書けないというよりも、内容が理解できなくて書けないということだからです。
 言葉の森の生徒が家庭で作文の勉強をしているとき、作文を書けない状態が10分以上続いたら、迷わずに教室に電話で相談してください。追加の説明をすれば、ほとんどの子が書けるようになります。
 担当の先生は、一般に、子供が普通に理解できていることを前提にして説明します。しかし、その説明で書けなかった場合、教室に電話をしてくれれば、教室では、その子がよく理解できなかったことを前提にして易しく説明し直します。それで、ほとんどの子は書けるようになるのです。


■■頭をよくする勉強、成績をよくする勉強(その1)
「中学生の自宅学習法」を書いた内藤勝之氏は、少し変わった勉強経歴の持ち主です。普段は自分の好きなことをして遊んでいて成績も平凡なのに、受験の直前になって猛勉強をすると急に成績が上昇し、難関校に合格するという経験を繰り返してきました。
 このような例は、実は、ときどき目にします。受験向けの勉強をする前は、成績も普通なのに、いったん受験に向けた勉強を始めると、どんどん成績が上がるという人がいます。
 このコツのひとつは、勉強の仕方です。成績の上がる勉強法に共通しているのは、1冊の(薄いものであることが多い)参考書や問題集を何度も繰り返して、百パーセント自分のものにするという方法です。
 しかし、それとともに、もうひとつ見落とされがちなのは、実はその子が、成績は普通だったが頭がよかったのではないかということです。
 成績というのは、人工的なものですから、その人工的な枠組みに合わせないと成績は上がりません。逆に、人工的な枠組みに合わせて取り組めば、表面上はすぐに成績が上がるようになっています。
 例えば、国語の問題で、作者名と作品名を結びつけるような問題があります。その作品を実際に読んでいて自然に作者名を知っているという子よりも、作品の内容など知らずに機械的に覚えている子の方が成績はよいのです。
 ところが、そういう成績をよくする勉強は、決して頭をよくしているわけではありません。むしろ、成績をよくするための勉強を早くからしすぎると、かえって頭を悪くすることがあります。
 受験生で、夏休み以降に急に成績の上がる子がいるのは、以上のような事情があるからです。
 江戸時代の日本人の勉強法は、模範となる文章を素読やなぞり書きで反復して身につけるというやり方でした。そして、子供たちは、勉強以外の多くの時間をのびのびと明るく自由に遊んで過ごしていました。
 これと正反対なのが、賞や罰や競争で刺激をしながら、理解の度合いや記憶の定着の結果を評価するヨーロッパ的な勉強の仕方でした。
 西洋の学問を仮に成績と考えると、江戸時代の終わりごろ、成績的には0点だった日本人が、いったん成績向けの勉強を始めると、またたく間に欧米の成績に追いつき、やがて追い越すまでになったのは、当時の日本人が、成績は悪かったが頭がよかったからです。
 この頭のよさを育ててきたものが、少数の精選された教材を反復する勉強法と、明るく楽しく自由な日常生活でした。
 更に、日本には、日本語という特色のある言語をあったことも見落とせません。(つづく)


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