言葉の森新聞2010年12月3週号 通算第1155号
文責 中根克明(森川林)
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■■12月23日(木)は休み宿題
12月23日(木)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時〜午後7時50分。電話0120-22-3987)
電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/index.php
「ヒントの池」 http://www.mori7.com/mine/ike.php
■■新学期の教材を発送します
新学期の教材を12月17日(金)〜21日(火)に発送する予定です。
国内の生徒で26日になっても届かない場合はご連絡ください。
★項目・住所シールは
1月1週の山のたよりと
一緒に送ります。
12月末に発送予定です。★
■■小1の12月の暗唱長文にミス
小1の暗唱長文12月分【2】にふりがなのミスがありました。訂正してくださるようお願いします。
△入り口(はいりぐち)で → ○入り口(いりぐち)で
■■意見文の書き方
中学生の生徒から、長文を読んでの意見文の書き方についての質問がありました。一つは、要約の仕方がよくわからないというもので、もう一つは実例に何を書いていいのかわからないというものでした。
要約の仕方は簡単です。
1、長文を読みながら、よくわかったところ、面白いところに線を引く
2、その線を引いたところを中心に何度か繰り返し読む
3、そうすると、文章の全体像が頭に入るので、大事なところを三つ選ぶ
4、その三つの文をつなげてまとめれば150字程度の要約になる
という方法です
よく、「最後の方に大事なことが書いてあるから、最後の結論を中心にまとめる」という要約の仕方をする人がいますが、それは、要点をまとめたことにはなりますが、要約とは少し違います。
意見文の実例は、次のように考えます。
まず、長文を読んで直接に実例を考えようとは思わないことです。そうすると、実例の範囲が狭くなってしまうので、かえって書けなくなるからです。
多くの長文は、もともと説明文になっています。今回、質問があった長文の場合は、「ミミズが生態系の中で重要な役割を果たしている」という文章でした。その説明文から直接実例や似た例を探そうと思うと、実例はやはりミミズの話になってしまいます。そういう直接的な探し方ではなく、まずこの説明文を意見文化していことです。
説明文のままでは、感想は書けないので、この説明文を意見文に変換して考えます。つまり、「○○である」という文章を、筆者の背後の考えにまでさかのぼって、「だから、○○べきだ」というような形にて変換して考えるのです。この場合は、「ミミズの役割を見直すべきだ」などとなるでしょう。
「○○べきだ」というような意見が見つかれば、それに対する自分の意見も、賛成又は反対という形で自然に見つかります。
ところで、筆者の意見が見つかったら、それを、「ミミズの役割を見直すべきだ」という狭い意見のまま考えるのではなく、より大きく一般化して考えることが大事です。例えば、「一見、小さくて役に立たないように見えるものにも重要な役割がある」というような形に広げて考えていくのです。
次に、この一般化した意見を展開するための構成を考えます。
文章の展開の仕方には、「理由を書く」「方法を書く」「原因を書く」「対策を書く」「単に実例を書く」など、さまざまな書き方があります。
もし、理由を書くのであれば、「なぜならば、直接には役に立っているように見えないものでも、実は生態系の中で重要な役割を果たしていることがあるからだ」などというように書いていきます。
この理由を考えたあとに、その理由の裏づけとなる実例を考えます。
例えば、「山に生えている木も、二酸化炭素を吸収して酸素を出したり、山が崩れないようにつなぎとめたり、小動物の棲みかを提供したり、さまざまな役割を果たしている」というような例です。
長文の実例に対して、直接同じような実例を考えるのではなく、長文の意見を一般化したものに対して実例を考えるというようにすると、幅広く実例を考えることができます。
■■続 森リンによって評価される作文のうまさとは
12.2週の記事のつづきです。
よく、字の間違いや書き方のおかしいところも自動採点ソフトでチェックしてくれるのかという質問があります。実は、アメリカのソフトはその方向に進んでいるようです。それは、アメリカが多数の移民を前提にして、最低限の英語力の底上げを図ることを教育の主な目的としているからです。
森リンにも、そういう間違いチェックの機能を取り入れることはできますが、それは教育の本来のあり方ではありません。正しい表記は、優れた文章を、暗唱や暗写などの方法で徹底して読むことによって身につけるというのが本道です。
そういう教育本来の仕事をしないまま、ただ間違い探しのテストをして点数をつけ、肝心の勉強の中身は個人の努力に任せるというスタイルが今の教育にはあると思います。
森リンは、下手な作文のどこが下手かという評価をするために作ったのではなくありません。そういうやり方であれば、中学生や高校生や大学生を何年間も継続して指導することはできません。間違いを直すというような指導ではレベルが低すぎるので、みんながすぐに退屈するようになるからです。
森リンは、下手な作文の下手なところを見つけるためではなく、うまい作文をよりうまくするためにどうしたらいいかというもっと前向きな評価のために作ったのです。
森リンは、既に文章力十分にある高校生や大学生にも、小中学生と同じように使えます。その方法は、こういう形です。
生活作文や身辺雑記的なことでは、高校生や大学生になると、作文の上手な子の文章力にはほとんど差がなくなります。ところが、知識の得意分野は人によってそれぞれ違います。政治経済のジャンルでいい文章を書ける人が、心理学や哲学の分野でいい文章が書けるとは必ずしも言えません。また、もちろんその逆もそうです。
森リンの点数によってその差がはっきり表れれば、自分が、ある分野では専門的なことが言えても他の分野ではありきたりのことしか言えないということがわかってきます。そこで、その自分の苦手な分野を、自分なりに学んで強化するという流れに勉強が進んでいきます。これが、高校生や大学生の文章練習の方法です。
以上のことからわかるように、森リンは、小学校低中学年向けのソフトではなく、小学校高学年以上、中高生や大学生向けのソフトです。
そして、文章の本当の価値は、そこに創造性があるかどうかということによって決まってきます。この世の中にまだない美や思想や知識を作り出すのが、文章の役割です。そのようなレベルに達すると、文章を書くことは、他人の評価を超えて、書くこと自体がひとつの喜びとなってきます。
しかし、そのために、小中高の教育において、もっと文章をたくさん書く機会を作る必要があり、そのために森リンのようなソフトを活用する必要があると思います。
■■表現力の基礎となる読解力を高めるための自習
国語力というと、普通、読解力と表現力と考えると思いますが、読解力で差がつくのは、レベルの低い間だけであって、ある程度のレベルまで達すると、もう読解力のテストでは差がつかなくなります。
そのため、今の入試では、分量を多くして解くスピードを競わせたり、不必要な難問を解かせたりするという、昔の中国の科挙のような方向に向かっています。
もちろん、実際に教室に来る生徒は、その読解力のレベルがまだ十分に高いとは言えない子も多いので、読解力を高める勉強をする必要はありますが、国語の勉強で本当に大事なのは、その子らしい創造的な思考や表現ができるかどうかということです。
そこで、言葉の森では、作文を国語の勉強の中心的な目標にして、その作文力をつける土台として読解力をつけるという形で国語の勉強を考えています。その読解力をつける部分が自習になります。
言葉の森は、どちらかというと、当初のスタートが、国語はできて当然、成績よりももっと別なものを目指す子供たち向けの勉強、と考えていたので、基礎的な自習内容の工夫が弱い面がありました。
今後、できる子も、苦手な子も、両方同じように指導できるように、基礎の自習にセルフラーニング的な要素をもっと取り入れていきたいと思っています。
でき太くんの算数クラブの教材の優れている点は、子供が自主的に勉強を進めていくためのセルフラーニングの理念が教材作りに反映されていることです。
セルフラーニングという観点で考えると、言葉の森の教材は、まだ先生が工夫して教える要素が多いので、今後改良する余地がかなりあります。
また、言葉の森の毎日の自習も、子供が自主的に進めるものではなく、毎日親が声をかけて続けるような内容ですので、これも今後改良する必要があると思っています。
■■どうしたら本を読むようになるか
子供に読書をさせる方法は簡単です。本を読めば力がついて、さらに読めるようになる、という循環を利用するだけです。だから、最初のきっかけは、まず読むことです。
その際に、その子にとって難しすぎない本で、興味がもてる本を選ぶという配慮は大事ですが、ちょっと難しいかなと思う程度のレベルの本でももちろん構いません。
もし、ある本を読み始めてから、つまらなかったり難しかったりして読者が進まなくなった場合は、その本と並行して別の本を読んでいくようにします。そのときに、読み終えたところまで付箋を貼っておくと、数冊の本でも並行して読んでいくことができます。
言葉の森の通学教室の子供たちに、今読んでいる本を、毎週の授業のときに持ってくるようにと言っています。
最初は、「読んでいない」「本がない」などと言ってきた子もいましたが、次第に、みんな読みかけの本を持ってくるようになりました。
毎日10ページ以上は読んで、読んだところまで付箋を貼っておくようにと言っているので、読み進み具合もわかります。
これまで、本を読む習慣のあまりなかった子もいます。そういう子は、本当に毎日10ページをやっと読んでくる感じです。しかし、このように、わずかのページでも、やさしい本でも、毎日読んでいれば、必ず読む力がつき読書の面白さに目覚めていきます。
よく、保護者の方から、「子供に本を読むようにさせたいが」という相談を受けることがあります。方法は簡単です。ただ読ませるだけです。読む力がつくから読むようになるのではなく、読むから読む力がつき、読むことが面白くなってくるのです。
たまに、「本を読んでいる暇があったら勉強をさせる」という方針の家庭もあるようです。受験の直前の1年間は、確かに読書量は減らさざるを得ませんが、それ以外のすべての学年で、読書は勉強よりも優先して取り組むものです。
頭のよい悪いは生まれつきではありません。言語を駆使する力に応じて頭がよくなります。読書によって頭がよくなると、なぜか作文も上手になります。
しかし、頭がよくなることと成績がよくなることとは多少違います。成績は、勉強をすることによってよくなるからです。ところが、勉強を始めるとぐんぐん成績がよくなる子は、その土台に、読書によって育てた頭のよさがあるのです。
普段は、読書と作文によって本当の学力の土台をつけておき、受験に取り組むときには、その学力の土台の上に受験に合わせた勉強によって急速に成績を上げる、というのがメリハリのある勉強の仕方です。
そんなうまい話があるのかと思う人もいるでしょうが、実はそういう例はかなり多いのです。
■■独学のすすめ
昔は、学習塾などいうものは、ほとんどありませんでした。私が中学生のころ、学校の近くに一ヶ所だけあった塾は、私立受けるための特別な勉強するごく少数の生徒か、学校の授業についていけない生徒を教えるところというイメージでした。
また、当時のほとんどの親は、受験勉強のノウハウなどは持っていなかったので、子供たちはみんな自分なりの工夫で勉強したものです。
そのころの情報のほとんどは、「○○コース」や「○○時代」という学研か旺文社の学年別の月刊誌でしたから、今考えると、理念だけが先行してかなり能率の悪い勉強をしていたように思います。
能率の悪さの一つの例が、数学の難問にぶつかったときです。解き方を何時間も考えて、その1問で1日が終わるようなこともよくありました。
和田田秀樹さんの提唱する方法では、そういうときはすぐに解法を見て解き方を理解するということですから、そういうノウハウをあらかじめ知っていれば、かなり能率のよい勉強ができたのではないかと思います。
そのかわり、そういう無駄な回り道をしてきたせいか、自分が20代になると、勉強法も自分なりに工夫できるようになりました。
ところが、現代は、子供たちが逆に塾や予備校で要領のいい勉強の仕方を教えられすぎているために、自分で工夫する勉強の仕方を身につけていないように思えます。
独学の方法ということですぐに思いつくのは、シュリーマンの「古代への情熱」でしょう。これは、語学の勉強法としては、古典とも言えるものです。しかし、方法がシンプルでありすぎるためか、実行できる人はあまりいないようです。
日本では、本多静六さんの著書が、勉強法だけでなく処世法一般も説いているという点で出色です。
受験勉強法に関しては、高校生では和田秀樹さんの本、中学生では内藤勝之さんの本がおすすめです。
このほかにも、書店の参考書のコーナーに行けば、さまざまな著者の受験勉強法の本があります。
言葉の森で高校3年生になる生徒には、毎年春休み前に、
(1)勉強法の本を10冊ぐらい読むこと、
(2)過去問を(答えを書き込みながらでもいいから)ひととおりやること、
(3)志望校の合格体験記などがあれば読んで参考書や問題集選びの参考にすること、
(4)1年間取り組むための問題集や参考書を丸一日じっくり時間をかけて決めること、
と勧めていますが、実行している人はまだあまりいないようです。何度も言っているはずなのに、毎年秋になってから、「そろそろ過去門に取り組もうかと思っているんですが」という生徒がいます。
大抵の高校3年生は、先輩や友人や塾や予備校の先生のクチコミという狭いノウハウを聞きかじるだけで、本を通して幅広く勉強法を学ぶという姿勢に欠けています。
受験勉強というのは、ある意味で単純ですから、そのように戦略がなくただがんばるだけの方法でも、そこそこの点数で合格することもありますが、本当は、もっと大きな戦略を先に考えてから取り組むものなのです。
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