言葉の森新聞2011年7月3週号 通算第1184号
文責 中根克明(森川林)
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■■【再掲】夏休み中の授業について
夏休みは帰省したり塾の夏期講習に行ったりするために、通常の時間に授業を受けられない場合も多いと思います。その場合は次のようにしてください。
(1)通常の電話指導を受けられない分を、他の曜日や時間に振り替えて受講できます。平日午前9時〜午後7時50分、土曜午前9時〜午前11時50分の間に、直接教室にお電話ください。希望の週の課題の説明をします。事前の予約などは必要ありません。8月に休む分を7月や9月に振り替えることもできます。
電話0120−22−3987(045−830−1177)
(2)山のたよりの送付先や電話の宛先を、自宅以外にすることができます。帰省先や滞在先などで授業を受けることを希望される場合はご連絡ください。ただし曜日や時間を変更する場合は、先生から生徒にはお電話しませんので、生徒から直接教室にお電話をして説明を聞くようにしてください。
(3)8月のみ休会されるという場合でも受講料の返金はしませんので、できるだけほかの曜日や時間に振り替えて授業を受けてくださるようお願いします。ただし、(A)海外にホームステイで出かける場合、(B)病気治療のため入院する場合など、電話連絡のとれない状況での1ヶ月以上の休会は受講料の返金をしますのでご相談ください。
なお、8月12日(金)より8月18日(木)までは、振替などの電話の受付もお休みとなりますのでご了承ください。
夏休みは、通常と違い多忙になることが多いので、つい「1ヶ月休んで」と考えてしまいがちです。しかし、振替授業を受けたり、字数を短くして提出したりとできるだけ休まない形で続けていく方が、その後の子供の勉強意欲にとってプラスになります。
■■七夕の日に寄せて
教室の廊下に置いた竹に、子供たちの書いた願い事が色とりどりに飾られています。
現代は、願い事がかないやすくなっている時代のようです。もともと人間には、思ったことを実現する力がありました。その力が、更に強くなり加速しているのが現代のようです。
では、自分の願ったことが必ずかなうとなったら、人間は何を願うでしょうか。
自分の願い事がかないそうもないと思っているとき、私たちは小さな願い事を短冊に書くと思います。しかし、願い事が必ずかなうということになったら、たぶん多くの人は、もっと大きなこと、例えば世界の平和とかみんなの幸福とかいうことを願うのではないでしょうか。
そして、これからの時代は、そういう大きな願いが、自然にみんなの口から出てくる時代になるような気がします。
先日、この欄(言葉の森のホームページ)で取り上げた、玄海原発の再開は、その後見直しがほぼ決まりつつあるようです。
この夏の電力確保とか、自治体の予算とか、電力会社の利益とかいうものも、確かに理解できる願いです。しかし、日本の安全という大きな願い事と両立して初めて誰もが納得する願いになるのだと思います。
この、大きな願いを先に考え、小さな願いをあとに考えるという順序は、あらゆることに通じるものです。
子供たちの作文でも、小学校低学年までは、事実の経過の順序どおりに書く作文ですが、高学年になるにつれて、先に感想や意見を考える書き方になります。最初に大きな目標を考え、その目標に合わせて個々の具体的な実例を考えていくのです。
子供たちに勉強の意欲を持たせるときも同じです。
今度のテストの間に合うようにがんばろうとか、誰々さんに負けないようにがんばろうとかいうのは小さな目標です。もっと大きな将来の目標を先に考える必要があります。
しかし、その将来の目標についても、高収入の安定した楽にできる仕事につきたいというようなことだけでは、やはり小さな目標です。そういう目標では、困難に打ち勝って初志を貫徹することはできません。
大人は、子供たちに、もっと大きな夢を伝えていく必要があります。それは、日本をよくするとか、社会に貢献するとか、みんなを幸福にするとかいうことです。子供たちは、そういうことを堂々と言ってくれる大人を求めています。
わかりやすい小さな夢ではなく、わかりにくい大きな夢を持つ子供たちが育ってほしいと思います。
と思いながら、近くの短冊を見てみたら、書いてある願い事は、「あしたとあさってがはれますように」でした。(小四の男の子)
うーん。まあ、これはこれでいいことにしよう(笑)。
大きな夢から、小さな夢まで、みんなの願いがこれからどんどん実現する世の中になっていくでしょう。
■■読書の効用について
読書が大切だということは多くの人が漠然と感じていますが、どのように大切かということをはっきり説明できる人はあまりいません。
なぜかというと、読書は、「群盲象をなでる」の象と似ていて、それぞれの人が自分の体験をもとに自分なりの読書観を持っていますが、それがほかの人にも共通するわけではないからです。
私も、昔は、自分なりの読書観で読書の大切さについていろいろなことを言ってきましたが、その後、子供たちの読書と勉強の様子を見ていて、いくつかの共通点があることに気がつきました。
その共通点とは、読書は、頭をよくするとともに心も豊かにするということです。
本をよく読む小中学生に共通している特徴として次のようなことがあります。
1、国語の成績がいい。(中には、国語の成績だけがいいという子もいる)
2、作文が上手である。(短い時間で長くリズミカルに文章を書ける子が多い)
3、話をさせると物事を的確に説明する。(構成のしっかりした文章のような説明ができる)
4、理解力と表現力があるので、込み入った微妙な話でも通じ合う。(本をあまり読まない子は、おおまかな話で終わることが多い)
この場合の読書は、必ずしも難しい本である必要はありません。ただし、本が好きで毎日のように読んでいるというのが共通点です。
これが、大学生になると、ただ本を読むのが好きである以上に、難しい本を読んでいるかどうかということが重要になります。
ところが、そういう本を学生が自分で読むことはなかなかできませんから、ここで教育機関としての大学の役割が重要になってきます。
しかし、日本の大学は、本を読ませてレポートを書かせるというような授業をあまりしません。これが、日本の大学の教育力が低い大きな原因になっています。
さて、今の子供たちの読書には、次のような共通の傾向があるようです。
1、幼稚園や小学校低学年の読書環境は充実しているので、本をよく読む子が多い。また、親も読書に力を入れることが多い。
2、しかし、小学校高学年のころから、受験勉強に追われるようになり、読書から一時的に遠ざかる子が多い。
3、中学生になったときに、読書を再開する子と、読書をしなくなる子の二極分化が起こる。
4、その状態が高校生になったときも続き、大学生になってからも続く。
家庭と学校と社会全体が、もっと子供に読書を促すような環境を作っていく必要があると思います。
読書の好きな大人ほど、子供の読書について勘違いをしていることがあるように思います。
1、本は、放っておいても自然に読むようになるものだ。(今はテレビやゲームやインターネットなど魅力のあるメディアが多いので、放っておいても読むようにはなりません)
2、親が読んであげると、自分で読めるようにならない。(読み聞かせをたくさんしてあげるほど、自分で読む力も育ちます。小学校中学年になっても、子供が望めば読み聞かせをしてあげることです)
3、本は、強制されて読むものではなく、自分が好きなものを好きなときに読むものだ。(毎日読むことが自然な習慣になるまでは、勉強と同じように家庭学習として読書に取り組ませる必要があります)
4、くだらない本はなるべく読ませないで、名作などを読ませたい。(読書の好きな子は両方読みます。子供が興味を持って読む本が子供にとっての良書です)
言葉の森のfacebookページに、「読書」のグループがあります。
ここでは、子供にどのような本をすすめるかというようなことが話されています。
関心のある方は、ご参加ください。
■■底辺を広げるだけの知識テストから、頂点も高くする論文テストへ(日本に、真のリーダーを育てるために)
3.11の東日本大震災は、日本人の意識を大きく変えました。
それは、3.11をきっかけにして出版された書物の多さにも表れています。
ひとことで言えば、日本と世界と地球をよくすることが、多くの人にとって、自分自身の問題として改めてとらえ直されたということでしょう。自分の身近な問題より先に、日本全体の問題があるという集合意識が生まれたと言ってもよいと思います。
ブログやtwitterやfacebookで、数多くの優れた意見やコメントが書かれ、考える力を持つ日本人の層の厚さがあらためて確認されました。
しかし同時に、日本の大衆のレベルの高さと全く隔絶したかのようなリーダーのレベルの低さに、多くの人があらためて驚いたのも事実です。ひとことで言えば、戦略的な決断のできない人が、政治家や官僚や大企業のトップを占めていたことが明らかになったということです。
これと全く同じ構図が、かつての太平洋戦争でもありました。日本が戦争に突入し敗北したのは、当時のリーダーが戦略的な決断をしないまま、ずるずると情勢に引きずられていったからです。
リーダーが三流で大衆が一流という日本社会の構造が、戦前と同じように戦後もそのまま続いていたのです。
この原因は、リーダーが選出される日本的な文化の仕組みの中にあります。
日本人の特質は、平等意識と相手に対する思いやりが豊かにあることです。これは、庶民の日常生活のレベルでは、社会生活の質を高めるのに役立っています。
しかし、同じ文化が、リーダー選出の際にも適用されると、異なる意見や立場を調整することにたけた人だけが、リーダーになるための階段を登る仕組みになるのです。つまり、AにもBにもCにも万遍なく目を配り、毒にも薬にもならない調整案を提示して全体をまとめられる人が、リーダーの候補として残っていくということです。
組織のパワーを三角形の面積で表すとすれば、底辺は幅広い知識をカバーする人材になります。そして、高さは、独創性の点で突出した人材となります。つまり、底辺を漏れなくまとめることのできる官僚層と、創造的に時代を切り開くリーダーシップを持つ政治家が組み合わさって、その国の政治のパワーが決定していくのです。
ところが、日本は、リーダーの選出過程が、調整型の人材が生き残るための減点法で行われることによって、底辺だけはやたらに広いが、頂点が著しく低いという組織が生まれやすかったのです。この傾向は、大きな組織になるほど顕著になり、その結果が、リーダー不在の日本を生み出す文化的背景となっていたのです。
日本では、学問の世界でも、似たような文化が見られます。日本の学術研究では、関連資料を幅広く集め、それらの資料を数多く引用した人が優れた研究者と見なされます。学者の世界は、大きな組織と同じように外部から閉ざされているので、その組織の中で底辺を広げることだけに時間をとられ、肝心の創造的な研究にまで手が回らないという状況が生まれやすいのです。その結果、引用文献だけが多く、オリジナルな中身のない書物が量産されているという面があります。
平等意識と思いやりの日本文化は、大衆のレベルを向上させることには有効でしたが、リーダーを育てる点ではマイナスの機能しか果たしていませんでした。
では、どうしたらいいのでしょうか。
優れた人材がリーダーになる方法は、それぞれの組織の当事者が、実態に合わせて考えていくものですが、教育の分野については、次のようなことが考えられると思います。
これまでの教育、特に受験を目的とした教育では、覚えた知識を○×で答えさせる形が主流でした。だから、日本の社会の仕組みと同じように、欠点が少なく、言われたことを素直に聞く、独創性のない子の方が、成績の上位を占めやすいという傾向がありました。
基礎学力はもちろん必要ですが、基礎学力というのは底辺を広げることですから、今までの受験は底辺の広さだけで生徒を評価していたということなのです。
今後は、底辺×高さという形の評価が求められるようになるはずです。すると、底辺の知識だけでなく、その知識を使って、読み、書き、考える力、つまり創造性を評価する仕組みが必要になってきます。
今後の試験は、入学試験も、入社試験も、昇進試験も、第一段階では学力テストのようなもので選抜されるとしても、本当のトップを絞るための第二段落では、論文テストや面接テストが主流になってくるでしょう。
このように、底辺だけでなく高さも加味した評価がなされることによって、はじめて日本が、大衆のレベルにふさわしい真のリーダーを持つことができるようになるのだと思います。
■■「中学生の勉強相談室」(facebookページより
「中学生の勉強相談室」というグループで、作文や国語以外の勉強についてもアドバイスをしています。
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中学生の勉強で、いちばん大きな差がつくのが数学です。
学校で渡される教科書や問題集に出てくる数学の問題は、易しいものが多く力がつきません。
市販の問題集で少し難しいものを1冊用意しましょう。その1冊を、解けない問題が1つもないところまで繰り返し勉強するというのが基本です。
学習塾での数学の勉強業は、本人にとって既にわかっていることも時間をかけて聞かなければならないので、時間の能率がよくありません。
学習塾の教材も、通信教育の教材も、薄手のものが次々と渡されるので、保管して何度も繰り返すという勉強ができない面があります。その結果、できる問題を何度も解いたり、できなかった問題を1回しか解かなかったりという勉強法になります。
数学の勉強は、できなかった問題を繰り返し解くことによってできるようにすることですから、自宅で自分のペースでやるのがいちばんいいのです。
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問題集を使った勉強が役に立つのは社会。
穴埋め式の問題が多いのですが、教科書や参考書を読んでいるだけでは、何が重要かよくわかりません。
社会の問題集で空欄になっているところにあらかじめ答えを書き入れて、それを読んでいきます。すると、どういうところが問題に出やすいかポイントがわかるので、それから、教科書や参考書を読むと能率がよくなります。
歴史の入試問題は、ヨーロッパでこの事件があったころ、日本では何があったかという問題がかなりあります。これは、普通に勉強していたのではわかりません。
日本なら日本の通史を学習漫画などで概略を把握するととともに、重要な出来事の年代を覚えておきます。
すると、その年代によって、他の地域の歴史との関連がわかります。
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学校の定期テストの国語で、いちばん差がつくのが文法問題。
学校で軽く教わっただけでは、ほとんどの子ができるようになりません。市販の国語の参考書または問題集で、文法の問題が比較的多いものを選んでひととおりやっていく必要があります。
学校は、成績に差をつけるためだけにこういう文法の問題を出しているのだと思います。
国語で漢字の問題ができないのは、単なる勉強不足です。
最後の方の問題で×が多くなる子は、速読力の不足です。
記述式の問題は、中身が合っていても解答の欄に比べて答えの分量の少ないものは減点になるので、枠いっぱいまで埋めるようにするといいです。
選択式の問題は、消去法で解きます。
志望校の問題の難易度を知っておくことは重要です。国語が易しい学校で、難しく考えて解くと×になることがあります。
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