言葉の森新聞2012年3月3週号 通算第1216号
文責 中根克明(森川林)
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■■3月20日(火)は休み宿題
3月20日(火)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。電話0120-22-3987(平日9:00-19:50)
電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/
■■新学期の教材を発送します
新学期の教材を3月21日(水)〜23日(金)に発送する予定です。
国内の生徒で29日になっても届かない場合はご連絡ください。
住所シールと項目シールも同封します。
■■暗唱と音読の練習は、早口・棒読みが作文力をつける
言葉の森で暗唱の練習をしている小学生の子が、学校で音読の宿題があったとき、先生の前で同じように早口で読んで低い点数をつけられたという話を聞きました。それで、お母さんは、言葉の森の暗唱をしばらくやらないことにしたのだそうです。
ここには、問題が三つあります。
第一は、先生でも親でも、子供の何かを評価するときは、先に指導の目標を決めてから行う必要があるということです。小学生で作文嫌いになる子のほとんどは、先生や親から予想外の悪い評価を受けたことが原因になっています。例えば、一生懸命長い字数を書いて褒めてもらおうと思って作文を提出したところ、先生から、「字が汚いね」という評価だけされたというようなことです。
これが、もし最初に、「今日の作文は字をていねいに書くことが目標」ということで指導していれば、低い評価でも子供にはプラスになります。子供が予期していないところで、期待とは逆の低い評価をするからマイナスになるのです。
早口で読んだ音読に低い点数をつけた先生も同じです。どうしたらよかったのかというと、その早口はいったんそれで認めておき、次回の指導の際に、「今度の音読の宿題は大きい声でゆっくり読むこと」と指導したあとに、改めて次の機会に新しい目標で評価し直せばよかったのです。
第二は、暗唱と音読を、何を目標にして行うのかということが、教えている人の中ではっきりしていない点です。音読のすすめのような本を書いている人でも、何のために音読をするのかということがよくわかっていません。音読をするのは、繰り返し読むためです。黙読では同じ文章を繰り返し読むことはなかなかできません。試しに100字の文章を30回読むとした場合、黙読でそういう繰り返しのできる人はまずいません。
では、なぜ繰り返し読むのかというと、繰り返し読むことで理解が深まるからです。文章を理解するという場合、多くの人は、知らない単語を調べて、ひとつひとつの文ごとの意味を把握して、それとをつなげていくことが文章全体を理解することだと思いがちです。文章の理解とは、そのような分析的なものではありません。一読して文章の全体が丸ごと理解できるというのが、文章の理解の仕方です。
そのように丸ごと理解するためには、読み方は早口で棒読みの方がいいのです。感情を込めたり、句読点で句切ってゆっくり読んだり、いろいろと変化した読み方をすればするほど、全体理解はしにくくなります。
これは、普通の勉強でも同じです。よく1冊の参考書や問題集を繰り返しやるのがいい勉強法だと言われていますが、それは同じものを同じ順番でやることによって、個々の内容の理解だけでなく、全体の位置も把握できるようになるからです。例えば、「あの話はどこに書いてあったかなあ」と思い出すとき、1冊の参考書だけ読んでいる子は、その話がその参考書のどのあたりのページにあったかということも思い出すことができます。これが丸ごとの理解です。
第三は、親の対応です。子供にとっていちばん頼りになるのは、父親と母親です。子供が、友達との遊びや学校の勉強の中で心を傷つけられるようなことがあったとき、そのマイナスを大きく上回るプラスに変えることができるのが親です。
子供が、褒められると思ってしたことが低く評価されて落ち込んでいるとき、親が同じように落ち込んでいては、それは単なる敗北です。よく、子供が学校や塾のテストで悪い点数を取ってきてがっかりしているとき、親までがそれを見て同じようにがっかりしているという人がいます。それでは、長年生きている親としては、やや力不足です。
親はまずにっこり笑って、「大丈夫」と言ったあと、そのマイナスと思われていた評価をプラスに変えるひとことを言ってあげればいいのです。例えば、最初の例ではこんなふうに。
「音読には、もともと早口で読む音読と、ゆっくり読む音読の二種類があるけど、学校の先生は、ゆっくり読む音読の方で音読を考えていたんだね。でも、早口で上手に読める子は、ゆっくりでも上手に読めるから、言葉の森では早口で、学校ではゆっくりでと区別してやっていけばいいんだよ」と、こんな感じです。
しかし、それにしても、子供に低い評価を与えるときは、先生という役割をしている人はくれぐれも慎重にやってほしいと思います。先生のひとことで、子供は勉強が得意になったり苦手になったりするからです。
■■精読とは、じっくり読むことではなく繰り返し読むこと
海外で勉強をしている小5の生徒のお母さんから質問がありました。毎月第4週に取り組んでいる読解問題は、長文の内容が難しいので、どこまでがんばらせたらいいか迷うということでした。
確かに、小5から、読解問題も作文課題も急に難しくなります。小4までの楽しい作文が、小5からは苦しい作文になるのです。しかし、小5になると、子供たちの中に勉強に対する向上心のようなものが出てくるので、易しいやりやすい課題に取り組むよりも、少し難しい課題に挑戦する方が勉強に対する意欲も高まります。
とは言っても、海外で日本語の環境が周囲にない中で、難しい文章を読むというのはやはり大変です。そういう場合は、どうしたらいいのでしょうか。
ここで大事なのは、どんなに難しい文章であっても、その文章の内容を理解すれば取り組めるようになるということです。
文章を理解する方法というと、普通は、文章をじっくり読み、わからない言葉を辞書で調べて読むようなことだと思う人が多いと思います。しかし、文章を読んで理解する方法というのは、そのようないかにも勉強的なやり方でない方がいいのです。
その方法は、ひとことで言えば、繰り返し読むということです。「読書百遍意自ずから通ず」という言葉がありますが、文章を理解するいちばんの方法は、この言葉のとおりです。ちょっと拍子抜けすると思いますが(笑)。
自分がすっかり理解できていると思っている易しい文章であっても、繰り返し読んでいると、その奥にあるもっと深い理解が突然浮かび上がってきます。途中の言葉の意味に多少わからないものがあっても、繰り返し読んでいれば、全体の理解は必ず深まります。
しかし、同じ文章を繰り返し読むということは、なかなかできません。現在の、知識重視の文化の中では、1回読んだものを2回も3回も読むのは時間の無駄のように思ってしまうからです。しかし、本をよく読む人はわかると思いますが、3冊の本を1回ずつ読むよりも、1冊の本を3回読む方が、得るものはずっと多いのです。
繰り返し読む方法で最も役に立つのが音読という方法です。音読をすすめる本はいろいろありますが、どの本もなぜ音読がいいのかという点を誤解していません。音読がいいのは、繰り返し読むことができるからです。
毎月第4週の読解問題は文章の量も多いので、全部読むのは大変です。そこで最初の1題だけの文章(1番と2番のもとになる文章)だけを1週間毎日音読で読み続けます。その上で、その1番と2番の読解問題に取り組めば、たとえ答えが×になっても、解説を読むことで得るものは大きくなるはずです。
この繰り返し音読するという方法は、毎日2、3分あればできます。子供が音読している間、お母さんは朝ご飯の支度でもしながらときどきその音読を聞くともなしに聞いて、音読が終わったら褒めてあげればいいだけです。ぜひ試してみてください。
■■これから中学生になるみなさんに―春休み中に勉強法の本を読もう(過去の記事の再掲)
小学校から中学に上がると、勉強の仕方がかなり違ってきます。小学校までも、テストはありましたがそれほど大きな意味は持っていませんでした。中学生になると、テストと成績が大きな意味を持ってきます。そして、その成績をよくするのは本人の責任だと見なされます。
だから、中学生になって、これまでと同じようにただ漠然と授業を受けているだけだったり、与えられた通信教材をこなしているだけだったりすると、やがて、勉強をしているはずなのに成績が上がらないという結果が出てきます。
多くの生徒や保護者は、成績が上がらないと、塾に通えば何とかなるのではないかと考えますが、塾の授業も、学校の授業と本質的には変わりません。勉強というのは、自分の責任で、自分なりに工夫した方法でなければ力がつかないのです。
そこで、これから中学生になるみなさんにおすすめするのは、3月の春休みまでに、中学生の勉強法に関する本をまとめて読み、勉強の方針を立てておくことです。生徒本人が読む前に、お父さんやお母さんも読んでおくといいと思います。中学生の勉強法に関する予備知識が両親にないと、学校や塾のペースに流されてしまうからです。子供の勉強にいちばん責任を負っているのは家庭だということを自覚しておく必要があります。
中学生の勉強法に関する本は、書店には2、3冊しかないと思うので、インターネットの書店を利用するといいと思います。どんな分野でも、新しく何かを始めるときには、10冊をひとつの基準にして読みます。10冊読むと、その分野の全体像が確実につかめるようになります。
勉強法の作戦を立てなかったために成績が伸び悩み、塾や家庭教師に頼るようになることを考えれば、最初の10冊の本代などは安い投資です。きれいに読めば、古本として引き取ってもらうこともできます。
私が昔読んで参考になった「中学生の自宅学習法」という本は、今ではもう絶版ですが、もともと1,500円ぐらいだったものが、中古として2,500円で売られています。高校生向けの国語の参考書として定評のあった「国語1・2」という本は、当時1,000円ぐらいだったと思いますが、今では中古で15,000円です。; ̄ロ ̄)!!
そして、この勉強法の本を読んだあと、家庭でどういう勉強をしていくかを決めます。学校の授業を聞いて、学校で出された宿題だけやっていくというのでは力はつきません。学校の宿題とは別に、自分なりに家庭での勉強の計画を立てておくことです。
おおまかに言うと、国語については、読書と問題集読書で難しい文章を読む時間を毎日必ず確保することです。英語については、教科書を何度も音読し丸ごと暗唱できるようにしておくことです。数学については、少し難しい市販の問題集を1冊用意し(学校でそういう問題集が出ればそれでもかまいませんが、学校の問題集は易しすぎることが多いので)その問題集を百パーセントできるようになるまで繰り返し解くことです。
いずれも、冊子となっているものの方がよいのは、その1冊を繰り返し使うことができるからです。学校や塾や通信の教材で、1枚のプリントで渡されたり薄い冊子で渡されたりするものは、保管しにくいので、結局一度解いておしまいという形になりやすく有効な活用ができません。
中学の国語の試験では、文法の問題がかなり出ます。文法の勉強は、練習量が伴わないことが多いので、国語のよくできる子でも成績が悪くなることがあります。試験の前に、文法の問題集を繰り返し解いておく必要があります。しかし、国語の文法の問題は、高校入試にも大学入試にも出ないので、成績が悪くても気にすることはありません。
中学生になってから勉強のよくできる子は、例外なく家庭での学習をきちんと行っています。くれぐれも、漠然と学校の授業を聞いて宿題をこなすだけという勉強スタイルにならないように、春休み中に勉強の基本方針を立てておきましょう。
■■東京医科歯科大医学部に合格したEさんの話
3月9日の朝、Eさん(高3女子)から、「前期で受かっていました」と電話がありました。
小学生のころ、言葉の森で勉強していたEさんは、その後、私立の中高一貫校に。
言葉の森は、もうやめていましたが、先日、突然教室に来て、「小論文の勉強を見てもらえますか」。
聞くと、前期は数学が失敗したので、後期の小論文でがんばるということでした。
久しぶりの小論文でしたが、書いてみると、字は下手ですが(笑)、字数も、時間も、内容も、語彙の豊富さも、しっかり合格圏内です。(なぜか字のうまくない子に、いい文章を書く子が多いのです)
「これなら大丈夫だから」と言って、「後期の試験までに毎日1本、合計10本書くこと」と目標を指示しました。
数日して持ってきた小論文の過去問3年間分は、しっかり書けていたので、「これなら合格」と励ましておきました。
しかし、心の中で、前期で合格しているのではないかと思ったのです。というのは、試験の結果を報告するときに、「ここがだめだった」とはっきり間違った箇所を思い出せる子は、よくできていることが多かったからです。
そして、9日の朝、電話が鳴って、「○○ですけど」という声を聞いたときに、結果を聞く前から合格とわかりました。
ということで、せっかく書いた文章は使いませんでしたが、「記念にとっておいたらいいんじゃない」と言っておきました。
ちなみに、東京医科歯科大学の毎年の小論文は、医学に関するもののほかに日本文化に関するものが必ず出ていました。幅広い教養を見るということなのでしょう。
■■作文の勉強は事前の準備で決まる。音読の自習と対話の予習で実力をつける
毎日、自習で音読や暗唱や読書をしていると、子供の日本語環境が豊かになってきます。
そして、この毎日の音読をもとにして、週の1回土曜日の夕方などの家族の団欒(だんらん)の時間に、子供に音読した長文の内容を説明してもらいます。この場合、長文を見ずに、頭の中にある範囲で説明します。
お父さんとお母さんも、できるだけ事前にその長文に目を通して似た話を考えておくとよいでしょう。考えるヒントは、言葉の森のホームページの授業の掲示板などを参考にしてください。
対話は、ディベートではありません。相手の言ったことに反論したり批判したりするのではなく、相手の言ったことに対して、自分の似た話を付け加える形で発展させていきます。両親が仲よく対話を発展させるやり方を見て、子供も将来必要になる対話の方法を学んでいきます。
家族の対話には、年の違う兄弟も入ります。まだ話もできないような子がいる一方で、すでに大学生になっているような子がいてもいいのです。年齢の違う家族が集まってそれぞれの得意分野を、相手の理解度に合わせて話すことが大事です。
家庭によっては、父親が不在がちで、母子2人だけというところも多いと思います。そういうときは、近所の同じ年齢の子供のいる家庭と合同で対話をするのもいいでしょう。毎週1回ホームパーティー形式で、子供たちが1週間の暗唱や音読の成果を発表し、それについて複数の親子が対話をするという形です。
以上の自習と予習が、作文の勉強を進める上で、かなりの重要性を占めています。
言葉の森以外の作文指導では、作文を書かせたあとの添削や講評がほとんどすべてです。言葉の森は、これに対して、作文を書く前の事前指導に力を入れてきましたが、事前指導よりももっと大事なのが、事前の自習と予習だということがわかってきました。
自習と予習ができていてこそ、週1回の作文の勉強で実力がつき意欲もわいてくるのです。
週1回の家族の対話の中では、次の週の課題でどんなことを書くかということも子供から説明させます。この説明が表現力の練習になります。日常生活の話題よりも少しレベルの高い話を、他人にわかるように言葉を選んで話すというのが語彙力をつける練習になります。
ここで、聞いている大人にとって大事なことは、子供の説明の仕方に不十分な点があっても、決して注意しないということです。音読でも、暗唱でも、読書でも、すべて同じです。
大人は、子育てになれていないうちは、つい欠点を注意して直そうとします。しかし、社会生活の経験を積んでくるとわかるように、大きな注意はたまには必要ですが、小さな注意を繰り返すと、子供が萎縮してしまうというマイナスが生まれてきます。子供のすることには欠点があっても、その欠点には目を向けず、ほかのよいところを褒めるだけで、子供は全体的によくなっていきます。
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