言葉の森新聞2012年11月3週号 通算第1248号
文責 中根克明(森川林)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇創造性を育てる作文・読解・国語◇◆◇◆◇
                              
    毎週担当の先生から電話の指導がある続けやすい通信講座
    自宅で無料体験学習を受けられます
    お申し込みはこちらからどうぞ
    https://www.mori7.com/

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■■【重要】12.1週作文進級テスト

 12.1週に、作文進級テストを行います。
 提出が遅れた場合は進級できません。(12月8日ポスト投函まで)
 課題フォルダの構成・題材・表現・主題の★印と字数が全部できていることが合格の条件になります。(表現の項目などで二つ以上の項目が指定されている場合はどちらかができていればその項目は◎です)。キーワードと字数が採点の基準ですので、指定された字数以上で必要な項目が全部入る作文を書いていってください。中学生以上の時間制限については、今回は採点の基準にしませんが、できるだけ時間内に書き上げる力をつけていきましょう。
 手書きで作文を書く人は、項目ができたところに項目マークを書いておいてください。
 パソコンで作文を書く人は、作文の中に項目のキーワードを入れておいてください。
 小学生の場合は、提出する前に、おうちの方が字数と項目マークをチェックしてあげてくださるとよいと思います。
 小学2年生までの生徒は、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。10月以降に受講を開始した生徒も、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。
 12月8日ポスト投函が締め切りですので、12月1週に作文が書けない人は、11月中に12.1週の作文試験を先取りして行ってください。
 なお、進級テストは、10月と11月のいずれの月も最低1回は作文を出していることが条件になります。11月又は12月の作文で、どちらかの月で1回も書いていない場合は、12月8日までの間に作文を提出してください。


■■低中学年から進学塾に行く弊害

 小学校2、3年生の生徒の保護者から、「塾に行くようになったので勉強が忙しくなった」という相談を受けることが増えてきました。
 それだけ、学習塾が受験勉強の前倒しをするようになったからです。しかし、それは少子化に対応するための塾の都合によるものです。
 小学校低中学年の塾通いは、多くの弊害を生み出します。まず、塾は点数の差のつきやすい算数に力を入れることで勉強の成果を上げようとします。また、国語についても点数の差のつきやすい漢字の学習を中心にしがちです。そして、算数にしても国語にしても点数で競争させることによって意欲を引き出そうとします。すると、点数に表れにくい読書や対話や創造性を育てる遊びの時間がどうしても削られてくるのです。
 その結果、早くから塾通いをした子ほど、表面的な点数はよくなったように見えても肝心の考える力が育っていないために、学年が上がるにつれて伸びなくなってくるのです。
 また、低中学年から点数の競争をすると、成績に対する優越感や劣等感を持ちやすくなります。勉強の本来の面白さは、新しいことを学ぶということにありますが、競争を意識すると、勉強の面白さが勝ち負けの面白さになってきます。ところが、勝ち負けが意欲につながるのはせいぜい中学生までですから、肝心の高校生以降はかえって勉強に対する意欲がなくなるのです。
 小中学生の勉強は、家庭での学習が基本です。受験直前の時期には、志望校の過去問に合わせた難問を集中して取り組む必要がありますが、そういう難問を先取りして勉強する必要はありません。学年に応じた基礎の学習ができていれば、受験対応の力はすぐにつけられるのです。


■■受験の目的、勉強の目的(過去の記事の再掲)

●受験の目的は志望校に合格すること、勉強の目的は社会に貢献すること

 受験の目的は志望校に合格することというのはあたりまえのことですが、長期間の勉強をしていると、その目的を忘れてしまうことがあります。
 例えば、塾や予備校で勉強していると、その塾や予備校でいい成績を取ることが目的のようになってしまいます。また、模擬試験は自分の実力を見るためのテストですから、点数が悪くても問題ないのですが、模擬試験のために詰め込みで勉強してしまうような子もいます。
 これまでいろいろな生徒を教えてきて、いつも驚くのは受験の直前になるまで志望校の過去問を解いたことのない子がかなりいることです。
 過去問は、受験間際の力試しにためにやるものではなく、受験の1年前から勉強の方向を決めるためにやるものです。まだ解けない問題は、答えを書き込みながら解いていき、問題の傾向と自分の弱点を分析しておきます。
 過去問は、勉強の軌道修正のためにときどき取り組むことが大切です。そのためには、古い年の過去問もできるだけ用意しておきます。
 受験勉強は、自分のペースで取り組むことが大事です。高校入試、大学入試では、塾の勉強で他人任せに進めるのではなく、できるだけ自分で課題と予定を決めてやっていくことが大事です。中高生で、夏休みに塾や予備校の夏期講習に参加せず、自分で勉強する場合は1日7時間ぐらいの勉強が目安になると思います。
 受験勉強の目的は志望校に合格することですが、勉強そのものの目的は、自分自身を向上させ、将来社会に役立つ人間になることです。志望校の合格はそのためのひとつの手段です。合格したから偉いのでも、合格しなかったから駄目なのでもないということを折に触れて親子で確認しておくと、受験後もしっかりと勉強を続けることができます。
●これからの仕事に必要とされる、得意分野と幅広い教養
 これから世の中は大きく変わっていきます。一つは、新しい発明や発見によって今よりももっと便利で豊かで自然と共存できる生活になることです。もう一つは、多くの人の人間性が向上し、利己心や策略などが通用しなくなることです。
 このような社会では、いい仕事の基準も変わってきます。これからの社会では、自分の個性を生かし社会から喜ばれる仕事ほど、高収入で安定していて自由度の高い仕事になります。
 そのような社会に対応する勉強は、自分の興味や関心や得意技を生かすと同時に、幅広い教科を身につける勉強です。
 いい学校に入るとか、いい会社に入るとか、いい仕事に就くとかいう目的のために、そこに絞った勉強をするという考えだと、目的を達成した時点で勉強も終わってしまいます。
 これからは、自分の個性を生かすために、できるだけ幅広い勉強をし、また勉強に対する向上心も一生持ち続けていくことが必要になります。
●社会に出て必要になるのは、成績のよさよりも人間性
 勉強を受験競争における勝ち負けのようなものだと考えると、知的な能力だけを大事なものだと考えてしまいがちです。しかし、現実の社会の中で仕事に活躍できるのは、みんなから信頼される豊かな人間性を持った人たちです。
 つまり、人間性という大きな枠の中に、勇気、知性、愛、創造性などという分野があり、知性という分野の中に、国語、数学、英語などという教科があるのです。
 だから、家庭での教育では、知性の教育に多くの時間を割くとしても、重要度としては、勇気も、知性も、愛も、創造性もバランスよく育てていく必要があります。
 一生懸命に勉強をしていると、つい点数のところにだけ目が向いてしまいます。子供は特にそうです。小学生の子によくあるのは、自分よりもできない子を馬鹿にするような態度をとってしまうことです。
 子供の言動の中にそういうものが見えたら、それは人間性の教育を行ういいチャンスです。世の中には、いろいろな人がいて、みんなが自分の力の範囲で努力して助け合っているから社会が成り立っているのだということをじっくり話すと、子供はすぐに理解します。


■■塾の作文模試でひどい点数(facebook記事より)
 「塾の模試でひどい点数を取ってきて」という相談の電話がありました。中学受験をする小6の子が、塾で作文の模試を受けてきたのです。
 こういう話は、実はよくあります。大学入試の小論文模試でも、生徒が「予備校の模試ですごく点数が低かった」と言ってくることがあります。中身を見れば、全然問題ないことがほとんどです。みんな、点数にとらわれすぎなのです。
 確かに、もう少しこうすればよかったのにというようなことはありますが、そんなにオーバーに減点するようなことではありません。塾や予備校の作文小論文の模試など、まずあてになりません。採点する人の主観が大きすぎるからです。点のつけ方が極端なのです。
 それに、そういう点数をつけて、ではどうしたらいいかというような指導ももちろんありません。点数をつけるマシーンのようなものです。(しかも性能のあまりよくない(笑))
 受験勉強は勝つための勉強ですから、親子で真剣に勝つことに徹しなければなりません。しかし、いくつもの勝負をくぐりぬけてきた大人は、そんな受験ぐらいで人生が決まるわけではないという大きな視野を持っていることが大事です。
 特に、子供が低い点数を取ってきたときが大事です。にっこり笑って、「大丈夫」というのが親のプロです。お父さんも、お母さんも、ゆっくりあったまっていきましょう。(そりゃ、親のフロ)
 昔の子供は、学校から帰ったらすぐに遊びに行っていましたが、みんな立派な大人になりました。そんなに焦ることはないのです。


■■今の教育が未来の日本を作る(facebook記事より

 経済の基盤にあるものは教育です。今の子供たちが、未来の日本の社会を作ります。だから、日本が最も力を入れるのは、子供たちの教育です。
 しかし、それは校舎や教材や人員にお金をかけることではありません。新しい教育の開発に力を入れることです。
 2009年のPISA(OECD65か国の教育到達度調査)の日本の得点は、数学9位、読解8位、科学5位でした。学習に対する親和性の高い日本語を有していながら、それが十分に生かされていないのが現在の状況です。
 志のある人が自由に教育を始める機会が増えれば、日本の教育は変わっていくと思います。


■■勉強は繰り返しの仕組み作りが大事

 小学校低中学年の勉強は基本となるものなので、単純にやっていればできるようになります。「単純に」というのは、できる問題もできない問題も、同じようにやっていくということです。低中学年のころは問題の量も少ないし、内容も難しくありませんから、繰り返し解いていれば誰でもできるようになります。こういう勉強の仕方に向いているのがプリント学習です。同じような問題でも、新しいプリントが渡されれば新しく取り組む気持ちがわいてくるので、繰り返しの勉強がしやすくなります。
 しかし、このプリント学習の難点は、できる問題もできない問題も同じように繰り返してしまうことにあります。
 小学校低中学年のころは、こういう勉強法でも問題はありませんが、学年が上がるにつれて能率の悪さが表れてきます。それは、できなかった問題を繰り返しやるためには、できる問題も繰り返しやらなければならなくなるからです。
 当の子供にとってみると、できる問題をやるときは楽しいものですから、それなりに熱心に取り組みます。子供が熱心に勉強しているのを見れば、親もそれでいいと思いがちです。しかし、このようにできる問題を繰り返しているときは、実は何も新しい力は身についていないのです。この結果、できない問題をできるようにするには、全体の学習量を多くしなければならなくなるのです。(つづく)


■■受験作文での複数文章課題(過去の記事の再掲)

 受験に作文を課す学校が増えています。受験作文は、最初の年は単純な題名課題で始まることが多いようです。例えば、「これまでの学校生活での思い出」とか「私がこれまでにがんばったこと」などの題名です。
 こういう題名でも、受験生の作文力には差が出ますが、すぐに受験生が課題に対して準備をしてくるようになります。すると、ほとんどの受験生の実力が向上するので、採点する側は点数をつけるのが大変になります。
 そこで、次第に難しい課題になります。題名課題よりも難しいのは感想文課題です。文章を読ませてそれに対して感想を書かせる形は読解力も要求されるので、題名課題のときよりも書くのが難しくなります。しかし、それでも要領のいい生徒は、課題文のキーワードを引用しつつ自分なりに準備してきた材料で書いていくことができます。
 本当は、作文の課題を一つだけではなく複数出すようにすれば、実力の差はもっとはっきり出てきます。しかし、そのやり方では採点の負担が大きくなりすぎます。昔、東大の後期試験で小論文課題を出していたことがありました。最初は単純な課題でしたが、だんだん文章を読ませる複雑な形になり、複数の小論文を書かせる形になりました。しかり、やはり採点者の負担が大きすぎたのでしょう。この小論文試験は廃止になりました。
 感想文の課題をもっと難しい形にしたものが、複数の文章を読ませて感想を書かせる感想文です。Aの文章とBの文章を読ませて、その両者に共通する点と相違する点を自分なりに整理してかくのですから、内容を理解していないと書けません。また、ただ一つの文章を読ませる感想文課題では、キーワードを入れれば何とか書けますが、複数の文章課題ではキーワードだけではなく複数の文章の内容を組み合わせないと書けません。この複数の文章による感想文課題が、受験作文の主流になっています。
 では、複数の感想文課題に対する書き方はどのようにしたらいいのでしょうか。以下の説明は、ちょっとレベルの高い書き方です。
┏━C━┓
┃A・B┃
┗━━━┛ AとBの二つの文章があったとします。二つの文章が共通している話題をCと考えます。
 Cという分野に関して自分の考えcを決めます。
 Aの文章のキーワード(又はキー概念)をaとします。
 Bの文章のキーワードををbとします。
 作文は、自分の考えであるcを通常の題名課題を書くのと同じ要領で、「説明→展開1→展開2→まとめ」と書いていきます。その展開1と展開2の部分にaとbを盛り込みます。
 つまり、作文の中心になるのは自分の考えcであり、そのcを補強するものとしてaとbを使うという考え方です。
 こういう書き方はレベルが高いので、採点する側にそのように書いたということがわかるようにする必要があります。そのために、AとBの文章のキーワードを意識的に使っていくのです。


■■世界がいい方向へ(facebook記事より)

 世界がいい方向へ舵を切ったと思えるような日。
 あとは、ひとりひとりが自分の夢を持って生きることだ。
 社会が高度経済成長に向かっていたときは、誰にもそれぞれの夢があった。
 しかし、社会の経済成長がゆるやかに止まる今こそ、個々人が真に自分の夢を持つ時代だ。

 それは、お金や物で測られる夢ではなく、
 自分自身が変化し成長するという夢になるだろう。
 しかし、それは向上そのものを目的としたものではなく、
 新しい何かを創造することを通して自らも変化するという夢になる。

 自分らしい何かを作り出すこと、それを互いに発表しあうこと、
 そういうことが社会全体の大きな関心になり、
 ちょうど学校の文化祭のようなさまざまな試みが行われる日常。
 そういう未来が待っている。

 新しい社会のイメージは、文化祭のような日常です。
 今はまだ毎日の仕事に追われてそれどころではありませんが。(^^ゞ
 消費する喜びを中心とした生活から、創造する喜びを中心とした生活へ、日本の社会をこれから大きく変わっていくでしょう。


■■助長(facebook記事より)

 助長:苗がなかなか伸びないので、引っ張って助けてやったら、根が浮いて枯れてしまったというお話(中国の故事)
 子供の勉強を見るときに、親が最も失敗しやすのは、最初にがんばってやりすぎることです。大事なことは、がんばることではなく長く続けることですから、腹八分目というよりも腹六分目ぐらいがちょうどいいのです。
 例えば、子供が書いた作文には、多くの場合字の間違いがあります。しかし、そのほとんどは、何か月かたてば自然に直るか、又はひとことの注意で直るものです。ところが、今すぐ直そうとするから何度も注意して、親も子もくたびれてしまうのです。
 手をかけるのは、苗を伸ばすところではなく、その苗の植わっている土に水をやるところです。作文で言えば、書いたものを直すところではなく、その土台になっている読む力をつけるところです。
 世間一般の作文通信講座には、赤ペン添削に力を入れているところがかなりありますが、それは苗を伸ばそうとしていることです。書いたあとの結果に手を入れるのではなく、書く前の準備に力を入れるのが、苗に水をやることです。


----------------------------------------------------

■MagMagからのメールマガジンの登録と削除は下記のページで
(▼ダイジェスト版 マガジンID:0000000226)
https://tinyurl.com/ybkrlw5b
(▼完全版 マガジンID:0000132951)
https://tinyurl.com/yakxr3w3
■これまでの言葉の森新聞は下記のページで
https://www.mori7.com/mori/
■ホームページ
https://www.mori7.com/
■メール
mori@mori7.com