言葉の森新聞2013年12月3週号 通算第1301号
文責 中根克明(森川林)

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■■新学期の教材を発送します
 新学期の教材を12月16日(月)~19日(木)に発送する予定です。
 国内の生徒で25日になっても届かない場合はご連絡ください。
 住所シールも同封します。


■■12月23日(月)と1月1日(水)2日(木)3日(金)4日(土)は休み宿題
 12月23日(月)と1月1日(水)2日(木)3日(金)4日(土)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時-午後7時50分。電話0120-22-3987)
 電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
 課題の説明の動画「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/
 オープン教育の掲示板「森の予習室」に学年別の予習のヒントが載っています。


■■国語の苦手な子の原因と対策のエッセンス

 国語の苦手な子が増えているようです。
 その原因は、
1、「国語なんて、誰でも自然にできるのだから」
2、「努力しないとできない算数や英語に力を入れて」
3、「ほかにも、バランスよく音楽やスポーツにも力を入れて」
4、「国語については、一応問題集をやっていればいい」
という勉強の仕方をしてきたからだと思います。
 本当は、
1、国語は自然にできるものではなく、毎日の生活の中で読書や対話を充実させることがカギで、
2、算数や英語は、国語力があればあとからでも間に合うので、無理に難しいことをしたり先取りしたりする必要はなく、
3、音楽やスポーツは枝葉で、子供の人生の幹は学問と考え、
4、問題集で力がつけようとするのではなく、読書と対話で力をつける。
という考え方をしていくことが大事なのです。
 もちろん、問題集にも活用の仕方はあります。それは問題を解くのではなく、問題文だけを読書と同じように読んでいくことです。
 このやり方なら、問題を解くときと比べて何倍も早く国語力がつきます。本当です(笑)。だまされたと思ってやってみてね。


■■自習検定試験と寺子屋オンエア

 自習検定試験のページを作りました。
http://www.mori7.com/jks/
 これは、生徒が自主的に行っている、漢字、英語、数学、長文の自習を、検定試験という形で評価して励みにするものです。今後、この検定試験は、毎月やっていく予定です。
 勉強の基本は、家庭で自分で行う学習です。

 反転授業という勉強の仕方が、大学だけでなく、小中高校など下の学年でも行われるようになってきました。この反転授業というのは、勉強は自宅で(ネットを使って)行い、学校はその成果を発表し友達や先生と交流するために行くという形の授業です。「学校で先生が教え→家庭で復習や応用をする」から「家庭で自分で学び→学校で発表や交流をする」というふうに反転しているので反転授業と言います。
 ところが、この反転授業が成り立つ前提は、子供たちが家庭で自分で行う勉強ができるということです。この家庭での自学自習ができないと、学校での発展や応用ももちろんできません。
 言葉の森でも、家庭で行う自習に力を入れたいと思っていますが、子供たちの意識が、「勉強は学校や塾で教わるもの」という昔からの考え方のままだと、家庭での自習はなかなか進みません。
 そこで、家庭での自習の目標として検定試験を行うようにしたということです。
 そして、この検定試験のほかに、もうひとつ考えているのは、寺子屋オンエア(仮称)です。
 反転学習を行っている学校では、やはり家庭で学習を行えない子がいることがいちばんの問題になっています。その解決策として、考えられているのは、家庭だけではなく地域で子供たちの家庭学習をカバーするという方法です。
 しかし、いずれ地域が子供たちの教育を支えるという仕組みはできてくると思いますが、今そこまでの地域のつながりができているところは、ほとんどありません。
 そこで、言葉の森では、ネット環境を使い、複数の生徒がそれぞれの家庭にいながら一緒に家庭学習を行える寺子屋オンエアというものを企画することにしました。
 子供たちは、高校生以上になれば自分ひとりで勉強をすることができますが、小中学生のころは、友達も一緒に同じ勉強をしているという実感がないと勉強に対する意欲を持てません。
 家庭学習がうまく行っている家庭は、そういう実感や意欲がなくても毎日の習慣として、例えば朝起きたら長文音読をするというような習慣ができている家庭です。しかし、その習慣作りも、自動的にできるわけではありません。毎日のように親が声かけをして初めて習慣を持続させることができます。
 その親の声かけの代わりにもなり、集団で勉強するという実感も作るのが、オンエアによる家庭学習です。
 近いうちに、モニターを募集して、寺子屋方式のオンエア学習を行っていきたいと思っています。


教わっているときは身についていない

 人間は、教わっているときには、学習内容は身についていません。
 自分の中で反芻(はんすう)し納得したときに、初めて学習した中身が身につきます。
 テレビを見ていると頭が悪くなるように、ビジュアルで楽しくてわかりやすい勉強ばかりしていると考える力がなくなるのです。


ネットのスイッチを切ったときに勉強は始まる

 目と耳は情報を受け入れる器官で、手と口は情報を出力する器官です。
 手で書いたり、声に出して読んだりすることによって、情報をいったん咀嚼して初めて自分のものになります。
 テレビを消したときに考え事が始まるように、ネットのスイッチを切ったときに本当の勉強は始まります。


■■寺子屋を世界に

 学力格差の広がった集団を、一斉指導に教えることには限界があります。では、少人数や学力別や個別で教えればいいかというと、それではコストがかかりすぎます。
 また、子供は、先生に教わっているときには実力はつきません。教わったことをひとりで反復する時間があって、初めて実力がつきます。
 といって、家庭学習を中心に勉強を進めようとすると、小中学生は孤独な勉強にすぐ飽きてきます。だから、家庭で長時間の勉強をすることには無理があります。
 そういう中で生まれたのが、江戸時代の寺子屋でした。子供が集まって、長時間自学自習をする場を作ったのです。
 寺子屋の勉強は、自学自習が中心だから、先生の負担はあまりありません。江戸時代の寺子屋の光景を描いた絵を見ると、子供たちはさまざまに自学自習をし、中には遊ぶ子も、いたずらする子もいるのに、先生はのんびり本などを読んでいます。そのやり方で、世界一の識字率を達成していたのです。
 これを現代に復活させればいいのです。ある家庭で、近所の子供を数人集めて自学自習をさせます。その家庭で、朝から昼過ぎまで長時間勉強するとしたら、それは学校の代わりになるものですから、教育バウチャー制度で学校の代わりにその家庭の寺子屋に通うことができます。
 この現代の寺子屋こそ、世界の教育に求められているものです。世界には、学校のない地域がたくさんあります。そこに校舎を建て、先生を配置し、教科書をそろえていくのでは、時間も費用もかかりすぎます。そういう場所こそ、近所の子が数人集まり自学自習を行う家庭の寺子屋を作っていけばいくのです。
 その寺子屋のノウハウを輸出することが、これからの日本の役割になります。そのノウハウと一緒に、世界の子供たちに日本文化を伝えていくのです。
 言葉の森の今後の目標は、プレゼン作文などの新しい作文教育を軸にした寺子屋の学習を日本と世界に広げていくことです。


■■作文の項目指導は、相撲や柔道などの技の型と同じ

 相撲でも、柔道でも、いろいろな技があります。上手投げ、一本背負い、大内刈りなど。それらの技が型として作られているので、型の練習をすることが技を身につける練習になります。
 ただの力や体の大きさで相手に勝つのではありません。技で勝つので、小さい者が大きい者を倒すこともできるのです。力よりも技が物を言うのが、人間の動物と違うところです。
 この技の型に相当するものが、作文で言うと構成や表現の項目です。言葉の森では、作文のテーマに合わせていくつかの型を組み合わせて書く練習します。
 例えば、複数の実例と一般化の主題、複数の理由と是非の主題、複数の意見と総合化の主題、複数の方法と当為の主題、複数の原因と社会問題の主題など。こういう型の練習をしていると、作文試験の本番でも自然に構成のしっかりした文章を書くようになります。
 力で書くのではなく技で書くのが、言葉の森の勉強法です。しかし、技が効果を発揮するためには、それなりの力も必要です。
 作文において力に相当するものは、豊富な語彙力です。本をよく読んでいる子は作文もうまいというのは、読書によって語彙力がついているからです。
 小学生の作文でよくあるのが、せっかくいい話を書いているのに、そのまとめの感想で、「楽しかった」「嬉しかった」「面白かった」などの平凡な言葉を使ってしまうことです。読書の好きな子は、こういう平凡なまとめ方をすると、自分の中に何か納得できなものを感じるらしく、自然にもう一工夫をした書き方をします。
 作文の勉強は、半分は作文の型の勉強で、もう半分は読書によって語彙力をつける勉強なのです。


■■物語文の心情を読み取るには、その物語文に没頭すること

 ある教育サイトに、「物語文の心情を読み取るのが苦手」という相談がありました。その相談に対する回答は、「易しい問題は近くに答えがあり、難しい問題は遠くに答えがある」というような内容でした。
 これは、確かにそのとおりです。こういう問題作成の仕組みを知っていると、対応の仕方も工夫できます。例えば、難しい問題を出す学校であれば、答えはそんなに近くにはないはずだという見通しが立てられるのです。
 しかし、このテクニックで差がつくのはわずかです。根本的な差は、物語文の心情を読み取れるかどうかです。
 そのコツは、その物語を没頭して読むことです。自分がその物語のひとりの登場人物として、物語の世界を経験しているかのように読むと、周囲の景色やほかの人の心情が手に取るにようにわかってきます。
 こういう読み方をしていると、問題を見たときに、元の問題文と照らし合わせなくても、自分の経験をふりかえることで答えの見当をつけられます。問題文に戻るのは、その見当を確認するためです。その確認をしやすくするために、問題文にはあらかじめ傍線を引いて読んでおくのです。(傍線を引くのは、大事なところではなく、自分がピンと来たところです。)
 では、物語文に没頭する読み方は、どのようにして身につくのでしょうか。それは、比較的易しい楽しい本を熱中して読む経験を重ねることによってです。
 だから、読書は、難しい本を精読するとともに(精読とは繰り返し読むことです)、易しい本を多読するという両方の読み方が必要になってきます。
 小学校時代は、国語の問題集を解くような勉強をするよりも、好きな本をたくさん読んでいた方が国語の実力がつくのです。


■■親は子供の前で迷わないこと

 子供がテストで悪い点数をとってきたとき、お母さんはどっしり構えて、
「大丈夫。実力があるんだから(笑)」
と、まず子供を安心させて、それからゆっくり内容を分析します。
 子供が、「なんでこんなの勉強するの」「こんなのやりたくない」「つまらない」「面白くない」などと言ったときも、親はどっしり構えて、
「これは、大事な勉強だから続けるの」
と、当然のように言って、それからゆっくりやりやすい方法を工夫します。
 大事なのは、親はいつもどっしり構えていることです。
 子供は、自分のやりたくないことがあると、すぐに、「なんで」「どうして」などと言ってきます。
 そのときに、同じレベルで答えようとすると、話がごちゃごちゃしてきます。
 大事なことほど、理屈で説明しきれるものではありません。
 子供が「なんで」と言ったら、親は迷わずに、「お母さんがよく考えて決めたことだから、『なんで』などと言わないの」と言っておしまいです。
 親がいったんそういうどっしりした態度を見せれば、子供はすぐに納得して自分なりにがんばるようになります。
 親の迷いがあると、子供はいつまでもぐずぐず言うようになるのです。
 子供の意見や自主性を尊重するというのは、もっと別の場面でやることです。
 肝心なことは親が決めていっていいのです。
 例えば、掛け算の九九を、子供が、「なんでこんなことやるの」「やりたくない」と言った場合、ほとんどの親は迷いません。
 自分自身がやってきた経験があるからです。
 だから、「九九を子供がやりたくないと言っているんですけど」というような相談をするお母さんはまずいません。
 ほかの勉強もすべて同じです。
 ときどき、「子供が本を読まないんですけど」という相談があります。
 それは簡単です。ただ読ませればいいのです。
 読書には子供を引きつける力があるので、読んでいるうちに必ず読書好きになります。
 子供にどう読ませるかを考えるよりも、何を読ませるかを考える方が大事なのです。


■■作文の勉強は、何を書くかと考えただけでも意味がある

 作文の勉強をしていると、途中でどうしても書けなくなることがあります。いったん書けなくなると、時間がたてばたつほど書けなくなります。そういうときは、何とかがんばろうとは思わずにあっさり終了した方がいいのです。
 そのときの親や先生のひとことは、「考えたことが勉強だから、作文を書いたという結果が残らなくたっていいんだよ」です。
 作文の勉強の中身が、書くことにあると考えると、書いたあとの添削が指導の中心になります。しかし、本当は、書く前の勉強が6割、書いている間の勉強が4割なのです。
 書く前に身につくものは、題材力、表現力、主題力です。書いている間に身につくものは、構成力と、字数を含めた表記力です。
 題材力、表現力、主題力を身につけるためには、作文を書く前に、毎日課題の長文を音読し、家族でその似た例を話し合っておくことです。そして、普段から読書に力を入れておくことです。こういう準備をしていると、途中で書けなくなるということはまずなくなります。作文がなかなか書けないというのは、作文が苦手だからなのではなく、書く前の準備がまだ不足しているからということが多いのです。


■■男は日本男児、女は大和撫子

 子育ての目指す目標のイメージは、男は度胸、女は愛嬌ではないかと思うようになりました。別の言葉で言えば、男は日本男児、女は大和撫子です。
 わかりやすく言えば、男は格好いいこと、女は美しいこと(外見ではなくね)。
 そのそれぞれの勇気と美に、共通の知性と愛が加わるのが、理想の人間像ではないかと思うようになりました。
 今は、知性の教育だけが突出している感がありますが、本当はバランスのとれた人間になることが大事なのだと思います。


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