言葉の森新聞2014年4月3週号 通算第1318号
文責 中根克明(森川林)
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■■公立中高一貫校講座をオンエアで
毎週土曜日午前10時30に、google+で公立中高一貫校講座オンエア(公中オンエア)を流すことにしました。これは、youtubeでも見られます。
▽4月5日(土)のオンエア(オープン教育「公中講座」より)
http://www.youtube.com/watch?v=Xe3WNgLKlv4
■■バランスのよい枝葉を作ることより、しっかりした幹を育てること
保護者の方から、次のような相談がありました。
「作文は、おかげさまですっかり上手になったので、今度は別の習い事をして、それが一段落したらまた作文に戻りたいと思います」
あれもこれも、バランスよくやるというのはよいことですが、そのバランスの前提として、幹となるものがなければなりません。
音楽も、スポーツも、国語も、算数も、英語も、全部人並み以上にできればそれに越したことはありませんが、平凡なことわざにもあるように、「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。では、どの一兎(いっと)を中心にするかというときに、基準になるのは保護者の哲学です。
人間は何のために生きているのかといえば、人に好かれていい子になって褒められて幸せな生活を送るためではありません。自分なりに世の中に新しいものを創造し、それによって社会に貢献し、そのために自分自身を向上させ、それらが結果的に自分の幸福に結びつくというのが目指すべき人生だと思います。
どの分野でも、何かを創造するときに、幹となるものは学問です。学問というのは、受験のための勉強という狭いものではありません。そして、学問のもとになるものは日本語です。
だから、子供の教育で最も大事にすることは、家庭における言葉の文化を豊かに育てていくことです。子供の教育では、日本語(国語)の力を育てることが幹です。そのために、家庭での音読や対話のきっかけを作る言葉の森の勉強は優先して続けていくのがいいのです。
■■算数・数学の勉強は、自分で答えを見て進めていく
算数・数学の勉強は、1冊の問題集を百パーセントできるようになるまでやることが基本です。
学習塾の教材や通信教育の教材がよくないのは、ファイルして繰り返すことがしにくいからです。教材がばらばらなので、既にできている問題もまたやるようになり、できなかった問題も、反復する回数が少ないので、いつまでもできないままになります。こういう能率の悪い教材で勉強するために、勉強に長い時間をかけるようになるのです。
毎日の勉強は、時間ではなくページ数で決めておく必要があります。低学年の場合は、勉強する習慣をつけることが第一ですから、分量はできるだけ少なくしておくことです。そして、予定していた時間よりかなり早めに終わった場合でも、勉強の追加はさせず、最初に決めた分量ができれば終了としておきます。
算数・数学の問題集を解くときは、自分で答え合わせをしながらやっていきます。できなかった問題は、答えを見て、子供が自分で理解するようにします。
勉強が終わったら、子供から親に、どこができてどこができなかったか、どこがわかりにくかったかなどを説明させます。親が教えるのではなく、子供が自分で理解して、子供が親に説明するというのが、よい勉強のスタイルです。
親が教えると、子供は自分で考えようとしなくなります。そのため、何度も教えるようになり、やがて親が子を叱りながら教えるようになります。これが最も望ましくない勉強スタイルです。
子供が親に教えるようにすると、子供は自分なりに考えて説明しようとします。その説明がどんなに下手でも、自分で説明することによって理解が深まっていきます。親は、ただそれを感心しながら聞いていればいいのです。これなら、親子喧嘩になることもなく、家庭で能率のよい勉強ができます。
■■幼児作文コースで幼児期に学力の土台を作る
学校の勉強は、小学1年生から始まりますが、入学する時点で既に大きな学力差があります。それは、勉強の差ではなく、家庭における日本語環境の差です。
ですから、小学1年生で既にある差は、学校での勉強をいくらがんばっても、ますます広がっていく傾向にあります。例えば、家で毎日本を読み親子で楽しく対話をしている環境の子と、家ではテレビとゲームばかりで親子の対話がほとんどない環境の子とでは当然大きな差がつきます。この差は、学校や塾の勉強をいくらしても埋められないものです。
そこで幼児期から、プリント学習ではない形で学力の土台を作るために、親子で作文を書くという幼児コースを始めました。
子供は、親のしていることを真似したがります。親が楽しく作文を書いたり読書をしたりしていれば、子供もそれを見て、必ず自分もそういうことができるようになりたいと思います。
そして、親の書いた作文を見れば、そこに使われている漢字の読み方を自然に覚え(そのためには、ルビをふって漢字を書いておく必要がありますが)、原稿用紙の使い方も自然に覚えます。
学力というのは、算数の問題が解けたり、漢字が書けたり、英語が読めたりすることではありません。そういう能力は、勉強力で、その勉強をすれば誰でもできるようになります。
学力とは、日本語で考える力です。それは、勉強として身に付けるものではなく、生活の中で文化として身につけていくものです。その文化を身につけるのに最適な時期が幼児期です。
これが幼児作文コースの取り組みの意義です。将来は、親子による暗唱などの企画も取り入れていきたいと思っています。
■■寺子屋オンエア、試運転中
子供が家庭で勉強する場合、小学校低学年までは親の言うとおりに子供が勉強をするのでうまくいきます。しかし、子供が自己主張できる年齡になると、親子だけの勉強には単調さという限界が出てきます。
そこで、ネットを利用して、友達の勉強している様子、先生の見ている様子が共有できる仕組みを考えました。これが、寺子屋オンエアです。
受験勉強に対応するための一時期だけは、志望校の問題の傾向に対するテクニックが必要ですが、その時期以外の小中学生の勉強のほとんどは家庭の中で十分にできるものです。(受験対策も、もちろん家庭でもできますが)
しかし、小中学生の時期は、まだ勉強に対する自覚がありませんから、単調な勉強にはすぐ飽きてきます。そこで、その単調な勉強を、友達や先生と共有することで意欲的に続けられるようにしました。
まだ試運転中なのは、ソフトとハードの使い方でわかりにくい点があるからです。しかし、いずれ誰でもできる簡単な仕組みが作れるようになると思います。
■■親子の対話の中心は、親の体験談
子供が毎日長文を音読して、週に1回その長文の内容をお父さんお母さんに説明します。そして、次の週の課題とともに、その長文の内容について親子で対話をします。これが、言葉の森の音読と対話の予習です。
このときに対話の中心となるのが、お父さんお母さんの体験談です。
親子の対話が進まない原因のひとつは、親が体験ではなく知識や意見を披露してしまうことです。子供は、両親の実際の体験にはとても興味を持って聞こうとします。しかし、両親の知識や意見には、あまり関心を示しません。
面白い体験談を話すためには、その場の思いつきで話すだけでなく、ある程度の準備も必要です。子供の次回の課題や、次回の長文をもとに、どんな体験談が話せるか考えてみるのは、やってみると意外と面白いものです。作文の勉強を支える親子の対話として、お父さんやお母さんの面白い体験談をできるだけ用意するようにしてください。
言葉の森のオープン教育の掲示板に「森の予習室」があります。その学年別の掲示板には、体験談のヒントになる例がよく載っています。参考にしていただけるとよいと思います。
■■2月の森リン大賞(小5の部)より
予想外のランニング
らめき
「どこまで行くの?」
「河口まで。」
「えーっ。」
ぼくの学校では毎年二月、近くの川沿いを走るマラソン大会がある。走ることは好きだったが、マラソンのような長距離を走ることは、あまり好きではなかった。そんなぼくをきたえようと思ったのか、お父さんが一緒にランニングをしようと誘ってきた。とても寒い日だったのであまり気分は乗らなかったが、学校のマラソン大会が近いということもあり、練習のつもりでランニングをしようと思った。お父さんはマラソン大会で走るコースを下見しようと言っていた。お父さんは走ることが大好きでいつも休みの日には必ずジムに行って走っている。耳がちぎれそうなくらい寒い日だったが、しばらく走ると体がポカポカして、だんだん暑く感じるようになった。マラソン大会で走る予定のコースを過ぎてもまだ、お父さんは走り続けていた。ぼくはいやな予感がした。
予感は的中した。途中、休けいを取りながら走り続けるお父さんについて行った。ここではぐれたら、一人で家に帰れないと思い必死だった。ついに、マラソン大会の予定コースをはるかに過ぎ、河口に到着した。ぼくはヘトヘトだったが、さらにお父さんは埋め立て地の方へ続く道を進んでいった。ぼくはその時、足が棒のようなっていた。足の感覚がなくなり、もうだめだと思った時「足湯」という文字が目に入った。さすがにお父さんも疲れたのか足湯で休けいすることになった。少し熱めのお湯に足を入れるとジワーっと温かさが伝わってきて、いやされてきた。ぼくにとってその時の足湯は、まるで砂漠の中のオアシスのようだった。結局、三十分のつもりで出かけたランニングが三時間の長距離マラソンになってしまった。
お母さんが通っていた小学校でも、毎年冬になるとマラソン大会が開かれていたそうだ。走ることが苦手なお母さんは毎年この季節になると、ゆううつな気分になっていたそうだ。数回転校を経験したお母さんだが、どの学校でもマラソン大会はあったらしい。学校の運動場をただひたすら何周も走り続ける大会。大きなグラウンドを貸し切ってする大会。学校の周囲を走る大会。どれも辛い思い出だそうだが、特に学校の周囲を走る大会ではその学校が山の上にあったため、かなりの坂を上ったり下ったりしたらしい。ゴール直前には「心ぞう破りの坂」と呼ばれる場所もあったそうだ。マラソン大会は嫌だったが、ゴールした後は清々しい気持ちになり達成感でいっぱいになったと言っていた。
今年もマラソン大会の季節がやってきた。お父さんと走ったおかげで学校のマラソン大会のコースが短く感じられる。「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」というが、今回に限っては良い結果につながった。今年は、十位以内を目指すため、
「河口まで走ろう。」
今度はぼくからお父さんを誘ってみようと思う。
■■2月の森リン大賞(中2の部)より
理想と現実
れたす
私の通う学校では、「LIFE」という総合的な学習の時間がある。その授業では主に自分の夢について考え、三年間かけて自分の「夢プラン」というものを完成させる。なお、それぞれの夢の膨らませ方は学年によって異なる。たとえば、一年生だったら保護者に話を聞く。また二年生は、職場体験をして、三年生は修学旅行中に自主研究をする。こうして生徒たちは、そのとき出会った人の生き方について学んでいくのである。
理想を持つことは大切だ。なぜなら、理想を持つことでより生き生きとできるからだ。私が小学校中学年のころ、シール交換と同じようにプロフィールシートを友達に配って書いてもらうというのが流行った。私も、かわいいプロフィール帳を親にねだって買ってもらい、とにかく色んな人にそれを配ったのを今でも覚えている。私は先日、その小学生の頃の思い出が詰まったプロフィール帳を久しぶりに開いてみた。小学生らしい文字で書かれたそれは、とてもロマンチックな内容だった。たとえば、「あなたの夢は何ですか?」という質問には、全員が何かしら回答していて、読んでみるとケーキ屋さんやキャビンアテンダントなどの夢あふれる職業が沢山あった。私はふと、今、これを周りの子に渡したら一体この質問の答えを持っている人は何人いるのだろうかと考えてみた。もしかしたら、ほとんどの人は小学生の頃に書いたような夢の職業から、夢と言えるものなんてないと言って、無回答へ変わってしまうのかもしれない。このように、夢を大きく持ち、またそれを素直に語ることが出来る小学生の方が、毎日を塾や部活などの拘束された時間の中で忙しく生きる私たち中学生よりも、より人間らしく生きることができるだろう。
しかし、現実を見ることも大切だ。なぜなら、理想ばかり追っていると最後に痛い目に合うのは自分だからだ。私は、中学一年生の時から志望校判定の出来る模試を塾で受けている。一年生のときは、まだ中学校に入ったばかりだったので、名の知れていて漠然と行きたいと思う高校を志望校に設定すれば良かった。しかし、二年生になってからは模試の回数も増え、きちんと考えて志望校を設定しなければならなくなった。なぜなら、どれだけその高校に行きたいと思っていても、そこを合格するだけの学力がなければ落ちてしまうからだ。また公立高校は、私立高校と違って一校しか受けられないのでなおさらである。つまり、これまでは見なくてもよかった「現実」だが、合格を勝ち取るためには自ら凝視しなければならないのである。こうして二年生も終わろうとしている今、まだまだと思っていた高校受験ももう目前に迫っている。そしてこれから、この高く大きな壁を越えようとする過程でますます様々な現実に向き合わなければならなくなるだろう。
確かに、理想を持つことも現実を見ることも大切だ。しかし、一番大切なのは
「夢があるから行動するのではなく、行動するから夢が生まれる。」
という名言もあるように自分と向き合う時間を持つことである。私は、これから始まる忙しい日々にうもれてしまうことなくうまく自分を保っていきたいと思う。
■■自習表の記録の仕方を更新
家庭での自習に役立つように、自習表の記録の仕方を紹介しています。
http://www.mori7.com/as/1733.html
この自習表の枠組みは、10mm方眼罫のノートを利用すれば簡単に作れます。
記録の仕方は、ルールを覚えるまで少し難しいかもしれませんが、いったんやり方を覚えれば、毎日の自習の記録が楽しくなると思います。
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