言葉の森新聞2014年6月3週号 通算第1326号
文責 中根克明(森川林)
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■■【重要】7月の新学期からの教材の変更点
新学期の教材を6月16日から19日にかけて発送します。
今回は、教材の内容に大きな変更があります。お送りする教材は、課題フォルダだけで、オプション教材の暗唱長文集と読解マラソン長文集はありません。
そのかわり、暗唱長文は、課題フォルダの7.1週、8.1週、9.1週の長文として最初から組み込んであります。また、暗唱長文は、その学年で習う作文の構成や表現を生かしたものにしているので、中高生の生徒も、7.1週の暗唱長文には、必ず目を通しておいてください。
読解マラソン長文も、課題フォルダの中の長文として組み込んであります。しかし、組み込んだ長文は読解問題用の長文の一部ですので、読解問題の問題数自体が少なくなります。これは、少ない問題数で、必ず満点を取ることを目標に取り組むようにするためです。これまでのように多数の問題(月8問)に取り組みたいという人には、ウェブ上で他の長文や問題も見られるようにしておきます。
■■【重要】毎日の自習の仕方
毎日の自習は、次のようにしていってください。
まず、(1)毎日、次の週の長文を音読します。
暗唱をする人は、音読に続けて、暗唱用の長文を暗唱します。
そして、(2)毎週1回、授業のある日までに、読んだ長文や次の週の課題について家族で話をしてください。その際、お父さんやお母さんは、できるだけ自分自身の体験談をもとに、作文の課題や長文の内容をもとに似た話をしてあげてください。中学生以上は、親子での話まではできないとしても、読んだ長文の内容を生徒が親に説明するような時間を設けるようにしてください。その際、子供の説明がどんなに拙くても決して注意などはせずに温かく聞いてあげてください。
また、(3)読書は、毎日必ず10ページ以上は読むというようにしてください。
中学生以上は、定期テストの10日前からは音読や読書などの自習は休んでもよいとしてください。無理のない形で細く長く続けるようにしてください。
小学校高学年以上で、余力のある人は、問題集読書にも取り組んでいってください。
■■【重要】暗唱チェックは、今後自習検定を中心にする方向で検討中
毎日の自習で、暗唱をしている人が多いと思います。毎週先生が暗唱チェックをするのが張り合いになっている面がありますが、暗唱チェックには同時にマイナス面も出ています。
それは、長文を見ながら暗唱チェックの電話をしている生徒がいることと、先生が何度も助け舟を出してやっと暗唱ができるという生徒がいることです。
暗唱は、すっかり空で言えるようになるのでなければ、勉強としての意味はありません。先生が暗唱チェックをすることによって、かえって本来の暗唱の仕方でない勉強が定着しているような面があります。
そこで、今後、暗唱については、先生が暗唱の進捗状況について聞くだけにとどめ、実際の評価は自習検定で行うようにすることを検討しています。
■■【重要】読解問題の問題数を減らし満点を目標に
読解問題は、本来百点を取らなければならないテストです。
しかし、問題数が多いために、小学校中学年以上の生徒は、あまり考えずに選択肢を選び、70点台や80点台で満足しているという面が見られます。
読解問題は、百点を取るためにじっくり考えて解くことに意味があるのですから、もし間違っていたらその間違いを自分なりに理解して納得できるようにしておく必要があります。
そこで、7月からは問題数を少なくし、その少ない問題数で確実に満点を取るというやり方にしていきたいと思います。
ただし、これまでのようにたくさんの問題をできるという人については、ウェブ上で他の長文や他の問題も見られるようにしていきます。
■■幼児教育で大事なのは、親の後ろ姿
子供は、大人のしていることを真似したがります。○○ごっこという遊びがそうです。お母さんごっこ、先生ごっこなど、身近な大人の社会を模倣して成長していきます。
では、勉強はどうなのでしょうか。また、読書はどうなのでしょうか。これらも、勉強ごっこ、読書ごっこという形で取り組むようになればよいのです。
そのためには、お母さんが、楽しく勉強している姿を見せることです。また、自分の好きな読書をして、その本の中身がこんなに面白かったなどということを話してあげることです。
こういう姿を見ている子供は、誰に言われなくても、自然に勉強や読書に対して肯定的な感情を持ち、自分も同じようなことをしたがります。
幼児作文コースでは、お母さんが、子供の話を聞いて作文を書きます。お母さんが楽しく書いている姿を見せて、「こんなふうに書けた」という話をすれば、子供が自然に作文に対して興味を持ちます。
子供が、自分も同じように書き始めたときに大事なことは、大人が注意をしたり直したりしないことです。模倣をたっぷりした子は、初めから正しい書き方が自然にできるようになります。
模倣が不十分であるうちに作文を書かされ、間違った書き方をして、注意されたり直されたりするので、書くことが嫌いになっていくのです。
大事なことは、子供に勉強させることではなく、まず親が楽しく勉強的なことをしている姿を見せることなのです。
■■塾の時代のあとの独学の時代のあとに来るもの(2)家庭学習の基礎力と、何かに熱中できる社会の余裕
昔は、学力と合格との相関がはっきりしていました。しかし、その後、受験というものが社会に広がるにつれて、学力よりも勉強法と合格との相関の方が高くなり、それが塾と予備校の広がる要因になりました。
ところが、今度は、塾や予備校どうしの競争が激しくなると、方法論では差がつかなくなり、かけた時間によって差をつけるという動きが塾や予備校の中に生まれてきました。
その結果、長時間の塾通いや、受験前のかなり早い時期からの塾・予備校通いが始まったのです。現在は、ちょうどこの段階にあたります。
しかし、長時間の勉強によって、かえって学力のもとになる思考力が育たなくなっていることに、多くの人が気づきはじめています。
思考力は、自分の好きな遊びや読書や対話などに熱中する中で育っていくものです。現在の受験勉強のように、思考のパターンを知識として身につけるような勉強では思考力はつきません。
また、社会に出てから必要になる人間関係力や創造性や向上心の多くも、勉強以外の何かに熱中した時間の中で育っていくものです。
そのために、今、塾や予備校に頼るのではなく、家庭学習を中心に勉強させようとする人が増えています。
しかし、ここで問題になるのは、親自身が自分で工夫して独学で受験勉強をした経験がないために、子供に見当違いの勉強の仕方をさせてしまうことがあることです。
その結果、家庭学習は、親が熱心にやればやるほど、子供との関係がうまく行かなくなることも多いのです。
現在、費用の問題を考えなければ、いちばんよい方法は、受験期に入る前は家庭学習で実力をつけておき、受験勉強の最後の半年又は1年間は、受験のプロの家庭教師に勉強を見てもらうことです。しかし、そういうプロは、滅多なことでは見つかりません。
そこで、家庭学習をオンエアでアドバイスしてくれるようなプロの教育コンサルタントのような仕組みが考えられます。
しかし、このような経過と予測でもわかるように、受験勉強はもう末期的な状態に陥っています。
これからは、希望者は誰でもMOOCのようなオンラインで学習できるという社会になるでしょう。その結果、受験勉強そのものが無意味化してきます。
すると、大事なのは、どこの学校に入ったということよりも、その学校で又は社会でどのような創造性を発揮できるかということになってきます。
受験に合格する勉強から、創造性を育てる勉強へというのが、これからの大きな流れなのです。
創造性を育てる教育を支えるものは、ひとつには、家庭での自習による基礎力の育成です。もうひとつには、自分の関心のある分野に、寝食を忘れて取り組めるような社会の余裕です。
それは、今の学校・塾・予備校の行っている教育と対極kにあるものなのかもしれません。
■■塾の時代のあとの独学の時代のあとに来るもの(3)勝つための勉強、向上するための勉強、創造するた
めの勉強
これからの勉強は、大きく3つに分けて考える必要があります。
第一は、勝負に勝つための勉強です。これは、受験に合格するための勉強で、その中心になるのは正しい勉強法と、受験という短期間に集中して取り組むための密度の濃い時間の使い方です。
第二は、実力を向上させるための勉強です。この勉強の中心になるのは、毎日の家庭での自習の習慣です。
そして、第三は、創造性と思考力を育てるための勉強です。この勉強の中心になるのは、難しい問題を自分が納得できるまで考えるという子供の生活時間の余裕です。
受験に合格するための勉強には、大人の目からのアドバイスも必要です。
高校生になれば、自分自身で客観的に勉強の方法を決めることもできますが、小中学生はそうではありません。
例えば、テストで間違えたときも、ほとんどの子供が、「合ってた」「間違えた」という結果を確かめるだけで終わってしまいます。間違いについても、その原因は、「うっかりしていた」「計算ミスだった」「勘違いしていた」というようなことで済ませてしまいがちです。
この間違いの中に、本質的な勉強の弱点があることを見抜くには、やはり大人の目による分析が必要です。
しかし、親が子供の勉強をひとりで見るのは大変です。親の勉強の見方をアドバイスするような仕組みがあれば、受験勉強も、基本的に独学と家庭学習でやっていけます。
言葉の森では、今後、寺子屋オンエアと同じような方法で、こういうアドバイスもやっていきたいと思っています。
実力をつけるための自習は、本来的に家庭で行うものです。
ところが、親が日常的に子供の勉強を見るような時間的余裕は、どこの家庭でもあまりないのが普通です。そこで、今後は、地域で、寺子屋のような形で子供たちの自習を見るという仕組みが生まれてくると思います。
地域でリアルな寺子屋が生まれるまでは、オンエアによるバーチャルな寺子屋が、子供たちの集団的な自習を見ていける場になると思います。
家庭学習を行う際に必要なものは、毎日決まった時間に決まったことをするという継続力と、もうひとつは、メディアを自主的にコントロールする力です。
テレビ、ゲーム、インターネット、ソーシャルメディア(facebook、ブログ、Lineなど)は、子供だけでなく、大人のになってもうまくコントロールできないものです。これらのメディアは、これからますます魅力あるものになっていきます。だから、これらを自由な放任に任せることはできません。しかし、全面的に禁止というのもまた問題です。
これからの社会では、子供自身が、豊富なメディアをコントロールする力をつけていく必要があります。そのために、テレビを見る時間、ゲームをする時間、SNSをする時間、それらをしない時間と、しないための工夫などを、意識的に作っていく必要があります。
創造性を育てる教育とは、考えることが好きな子、オリジナルであることが好きな子を育てることです。これは、速く正確な答えを出すことが目的となる受験勉強とは、ある意味で正反対のものです。(難関校では、考えるのが好きな子を見るような試験問題も出されていますが、そういう問題はごく一部です。)
考える勉強をするための教材としてふさわしいものは、算数オリンピックに出てくるような、楽しめる難問です。
しかし、算数は、答えがあるから取り組みがいがありますが、国語的な勉強の難問には、答えがありません。(つづく)
■■夏の自然寺子屋合宿満員に。秋からは土日合宿も
7月と8月の3回に分けて募集していた夏の自然寺子屋合宿が満員になりました。
http://www.mori7.com/stg/
今回の合宿は、午前中に寺子屋式の自習の勉強、午後に自然の中での遊び、夕方は教室の生徒と一緒に作文又は読書という予定です。
勉強と遊びを組み合わせた合宿ですので、今後は、夏合宿だけでなく通常の期間でも土日合宿として実施できると思います。その際は、学年ももっと下の年齢から参加できるようにしたいと思っています。
参加者には、後日詳細のパンフレットをお送りします。
■■小学校高学年以上で余力のある生徒は問題集読書を。寺子屋オンエアでも問題集読書のチェックができるように
国語力をつける要は、文章を読む力をつけることです。特に、受験に対応するためには、物語文についても説明文についてもそれなりに難しい文章を読んでおく必要があります。
その教材として最も手頃なのは、実際の入試問題集です。
そこで、言葉の森では、小学校高学年以上の生徒には、問題集読書をすすめていました。ところが、小学5年生の段階では教育漢字がまだ読めない生徒がいることや、中学1、2年生では常用漢字がまだ読めない生徒がいることから、問題集読書を敬遠する生徒もかなりいました。
そこで、現在、漢字集を作って、漢字の読みだけは学年を先取りして勉強できるような形みにしました。
問題集読書には、もうひとつ問題があり、それは傍線を引かずにただ読むだけの生徒や、読むよりも文章を書き出すことだけに熱心になってしまう生徒がいることです。小中学生は、勉強に対する自覚がまだ弱いので、形に残るものだけに熱心になってしまう傾向があるのです。
そこで、今考えているのは、寺子屋オンエアで、問題集読書の実際の勉強状態をチェックするという仕組みです。
問題集のやり方については、昔の記事が下記のページにありますが、また機会を見てもっとやりやすい方法を提案していきたいと思います。
http://www.mori7.com/kg/koku/mdds.php
■■幼児作文コースで幼児期に楽しく読み書き考える習慣を
今、幼児期の勉強の仕方が見直されています。
知識や技能は目立ちやすいものなので、計算ができるとか、漢字が書けるとかということが、幼児期には大きな差であるように考えられがちです。
しかし、実際には、知識や技能は学年が上がれば誰でも同じようにできるようになるものなので、先取りしておく意味はありません。
そのかわり大事なのは、勉強というものを楽しむ姿勢を育てていくことです。特に、これから重要になるのは、読むこと、書くこと、考えることを楽しいと感じる子供たちを育てていくことです。
算数の勉強でも、現在は、速く正しく答えを出す能力以上に、自分なりに考えて解く楽しさを味わえる子を評価するようになっています。
国語の勉強についても同じです。
幼児期に、親子で楽しく対話をし、作文を書き、それを読むという練習ができるように、幼児作文コースを始めました。大事なことは、「楽しく対話をする」ということです。
勉強は、時期が来て教われば、誰でもできるようになります。勉強ができること以上に大事なことは、勉強を楽しむという気持ちを幼児期の間に育てていくことだと思います。
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