言葉の森新聞2019年1月1週号 通算第1545号
文責 中根克明(森川林)

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■■「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」(中根克明著 かんき出版)2月5日から、全国の書店で発売!
 新年最初は、書籍出版のお知らせです。

 少し先の話になりますが、2月5日に、かんき出版から、「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」(中根克明著)が発売されます。

 内容は、読解問題の解き方、記述問題の書き方、作文問題の書き方で、解答例と解説を読むだけで、読解力、記述力、作文力が身につくようになっています。
 というのは、この本は、問題集の体裁になっていますが、問題を解くことが主ではなく、解答例と解説を読んでもらうことが主だからです。
 ですから、子供さんが読むだけでなく、お父さんやお母さんもぜひ一緒に読んでいただきたいと思います。

 本の書名は、「小学生のための」となっていますが、内容は、中学生にも、高校生にも通用する高度なものです。
 読解、記述、作文のいずれも、類書にはない内容になっています。

 読解については、感覚的な読解ではなく、理詰めの読解という方法ですから、理数系の人の方がかえって理解しやすいかもしれません。
 国語は満点を取りにくい科目と言われていますが、良問であれば本来満点が取れるものです。
 この解説を読むと、国語の問題の解き方の発想が変わると思います。

 この本に書かれている方法で、これまで受験間際の中学3年生、高校3年生も勉強してきました。
「センター試験満点講座」の読解の方法も、この本に書かれているとおりです。
 ですから、この本の読解の章をしっかり読むと、中学生、高校生も、国語読解の点数がアップします。

 記述については、「対比して書く」という方法論で解説しているので、この方法で記述の練習をすると、記述力だけでなく思考力もつきます。
 こういう基準を明確にした記述の指導というのは、これまでになかったと思います。

 作文については、どういうテーマが出ても、一定の構成にあてはめて書き上げるという形で解説しています。
 この方法の利点は、書き方に迷いがなくなることです。ですから、作文のテーマによる出来不出来というものがなく、いつでも自分の実力を発揮できるようになります。

 作文の書き方を解説した類書を見てみると、
(1)書き方だけを解説して解答例がないものや、
(2)解答例として生徒が書いた作文でよく書けたものを並べただけのものや、
(3)解答例が抽象的な説明と意見に終止し具体例に乏しいもの、などがほとんどです。

 言葉の森の解答例は、書き方の基準を決めているので、この書き方を身につければ、誰でも一定の水準以上の作文が書けます。

 この作文指導も、これまで中学入試だけでなく、高校入試、大学入試にも生かしてきたものですから、中学生、高校生が読んでも参考になります。
 ただし、中学、高校生は、構成の仕方が更に増えるので、それについてはまたいずれ書く機会があると思います。

 読解力について書かれた本で、これまで唯一感心したのは、田中雄二さんの「センター試験国語1・2」(三省堂)でした(絶版です)。
 記述力については、参考になる本はありませんでした。
 作文力については、独創性という点で感銘を受けたのが、山崎宗次さん(故人)の「カンカラ作文術」でした(1984年の本です)。

 先人たちのよいところを吸収するとともに、言葉の森のこれまでの指導の蓄積をもとにして書き上げたのが、今回の「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」です。
 ですから、内容的にはかなり密度が濃いと思います。
 ぜひ、ご覧になってください。


■■言葉の森の今後の方針
 これから、世の中は、ある時期から急速によい方向に変わると思います。
 それは、ひとことで言えば、正しい人が認められ、貧しい人がいなくなり、すべての人が幸福に生きられる社会になるということです。

 これまでの人間が持っていたいろいろな悩みのほとんどは、テクノロジーが解決するようになります。
 テクノロジーがまだしばらくは解決できない部分は、ものの考え方で解決するようになります。
 それは、もちろん宗教のようなものによる解決ではありません。
 世の中の本当の姿を理解するという理屈で納得するような解決です。

 そういう未来を空想的だと言う人がいようがいまいが、私は、そのような未来がいずれ来ることを前提にして、言葉の森の方針を考えています。
 これからの教育で最も大事になるものは、人間の幸福と向上と創造と貢献の力を育てることです。
 中でも特に重要なのは、創造する力を育てることです。

 その創造力の最も重要な土台が、日本人の場合は日本語で、その日本語を育てる重要な教育が作文です。
 しかし、今の教育システムの中では、作文は十分には指導できません。
 作文の指導には、個別の先生のアドバイス、少人数の友達との交流、その作文に対する客観的な評価システムが必要になるからです。
 そのいずれもが、今の教育システムでは不十分にしか達成できないからです。

 言葉の森には、その三つがあります。
 36年間の個別電話指導の実績、寺子屋オンラインによる少人数クラスの運営経験、そして客観的な評価を出せる森リンと作文検定の仕組みです。

 言葉の森は、昨年の年末からかなり大きく変化を始めています。
 これまでは準備の期間でしたが、これからはそれを実行する時期になります。
 具体的には、寺子屋オンラインという少人数のオンラインクラスの教育を広げます。
 そのために、寺オン講師育成講座に力を入れます。
 そして、facebookグループやオープン教育掲示板を利用して、講師と父母と生徒のコミュニケーションを密度濃くとっていこうと思っています。


■■習い事が多くて時間が取れない子
 習い事が多くて時間がとれない、という子がいます。
 インターネットの情報過多と同じで、自然に任せれば、見なければならない、こなさなくてはならない、と思うものが次第に多くなってくるのです。

 そこで、断捨離が必要になります。
 そのときの基準は、今の役に立つだけでなく、生涯役に立つものかどうかということです。

 もちろん、それは、あとになってみないとわからないことです。
 しかし、どの子にも基本的に大事なものは、読書と作文と対話と自由な時間です。
 要するに、理解力と思考力と表現力と創造力を育てることが基盤となって、ほかのものも生きてくるのです。
 そして、そのほかに、自分がすごく好きなものがあれば、それを大事にしていくことです。

 始めてから3か月で成果が出て、次に移るというような忙しいやり方ではなく、小学1年生から始めて、高校3年生まで、更には大学生、社会人になってからも続けられるものを第一の基準としていくのです。

 また、今の社会では、人工的な環境で一日を過ごしてしまうことも多いので、生き物を飼ったり、自然に触れたり、友達と遊んだりする時間も意識的に大事にしていくことです。
 学校の今の勉強に役立つかどうかということよりも、その子の将来の生き方にプラスになるかどうかということを第一に考えていくのです。

 以前、小学校低学年で、学校の宿題が多くて勉強が忙しいからと、読書は家でしないで行き帰りの電車の中だけで済ますという子がいました。
 低学年のころは成績がよかったのですが、高学年になるとどんどん成績が低下していきました。
 読書のような根を育てることを後回しにして、そのときのテストや宿題という表面に出る花や葉を育てることを優先していたからです。

 また、昔、「塾で作文の宿題があるので見てほしい」というお父さんがいました。
 それが塾の成績にも響くかもしれないというのです。
 その子は、まだ低学年でした。
 親の気持ちはわからなくはありませんが、そういう短期的な視野で子供に勉強をさせていると、あとで大変だろうと思い、そのように伝えて、その宿題は見ませんでした。
 というよりも、塾の宿題ならその塾で見てもらうのがいちばんいいと思ったのですが(笑)。

 今の子供たちは、全体に忙しすぎのように思います。
 受験勉強の1年間は忙しくても当然ですが、それ以前の時期はのんびり暮らすのが普通です。
 のんびりした生活の中で、自分の好きなことをしたり読書をしたりする方が、あとになって必ず生きてくるのです。

 しかし、もちろん人間はいつでも変化できます。
 そうした子たちもたぶん、すぐには表面に出ないものの大切さに気づいて、いつか本格的に何かに取り組むだろうと思います。
 しかし、そういう遠回りをしなくて済むように長期的な目でものを見ることができるのが、人生経験のある親の役割だと思います。


■■お父さんお母さんに聞いた話(寺オン作文の授業から)
 小学3年生以上は、作文の題名が決まっています。
 題名が決まっている課題では、お父さんお母さんに取材することが大事になってきます。

 例えば、「私の好きなスポーツ」という題名で書く場合、自分の体験だけで書くこともできますが、それを両親に取材することによって実例が立体的になっていきます。

 その複数の実例を一つにまとめる感想が、作文の主題になります。
 実例が複数あると、主題はその複数の実例に共通する、より抽象的な主題になってきます。
 それが、小学校5年生以降の主題中心に考える作文の元になっていくのです。

 もし、自分の体験実例をひとつ書くだけでそのまま感想を書くとすると、その体験が面白かったとかつまらなかったとかいう、体験に密着した感想になってしまいます。
 それでは、深い感想というのは出てきません。
 感想を深めるために、複数の実例で立体化していくことが大事なのです。

 そして両親に取材した話は、そこに両親の生き方や考え方が自然に盛り込まれています。
 そういう話を聞くことが、子供にとって作文を書くこととは別の考える勉強になっているのです。

 ただし、小学4年生までの作文の課題では、親がそれほど準備しなくても、子供にいい話を聞かせてあげることができますが、小学5年生以上の課題になると、親が事前に似た話を考えておく方がいいのです。
 例えば、「食事の習慣における日本と欧米の文化との違い」などという話を、お母さんが台所で大根かなにかを切っているときに突然聞かれても、すぐにはいい話は出てこないからです。

 しかし、親が多少手間をかけてでも、週に一度、作文の準備のために親子で知的な対話をするという習慣をつけておくと、のちのちの家庭学習にとっても大いにプラスになります。
 子供に自立心や反発心が出てくる高学年から中学生以降にかけても、親子で勉強の話がしやすくなるからです。

▼参考動画 お父さんお母さんに聞いた話(寺オン作文の授業から)
 https://www.youtube.com/watch?v=iQcxmvWYX_g


■■寺子屋オンラインの作文発表会
 毎月第4週は、作文の発表会です。
 参加者がそれぞれに自分の作文を発表して、そのあと、ほかの参加者が質問や感想を述べます。

 言葉の森の生徒なら誰でも参加できますが、これまでは準備の関係で、寺子屋オンラインのクラスの生徒中心に連絡をしてきました。
 しかし、運営の仕方も軌道に乗ってきたので、今年からは年に何回か全体で作文発表会を行っていく予定です。

 下記のリンクで、小3、小4の題名課題「どきどきしたこと」の作文発表の動画を紹介しています。
 本当は、文章を表示するだけでなく、その文章の内容に関連した画像などを見せて発表するといいのですが、それは今後の全体の発表会のときによく準備して取り組んでもらうようにしたいと思います。

 作文発表会は、発表ももちろん大事ですが、ほかの生徒からの質問や感想のやりとりもそれ以上に大事です。
 作文は、書いたあと、先生や両親に見てもらうだけでなく、友達の前で発表することによって、よりよいものを書こうという意欲がわいてくるからです。
 面白いのは、真面目な話だけでなく、ふざけた内容や表現で発表する子がいることです。
 また、質問や感想も、普通に真面目なことだけでなく、面白いことを聞いたり言ったりする子がいることです。
 言葉の森の作文発表会は、点数をつけたり、賞を決めたりするわけではないので、楽しくやるのがいいのです。

 そして作文発表会は、ただ面白いだけでなく、受験にも役立ちます。
 それは、面接などの受け答えが上手になることです。
 入試に面接がある人は、寺子屋オンラインで友達や先生とのやりとりを練習しておくといいと思います。

▼参考動画小3の作文課題「どきどきしたこと」の発表例(寺オン作文の授業から)
 https://www.youtube.com/watch?v=P_p7kLcfPHQ


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