言葉の森新聞2019年1月4週号 通算第1548号
文責 中根克明(森川林)

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■■1月29日(火)、30日(水)、31日(木)は休み
 1月29日(火)、30日(水)、31日(木)は、第5週でお休みです。先生からの電話はありません。振替授業もお休みです。

■■第4週は清書。幼稚園生は作文
 幼稚園年中と年長の生徒は、第4週も普通の作文を書く練習です。自由な題名で作文を書いてください。
 小学1年生以上の生徒は、清書を行います。
 清書をしたあと、時間に余裕のある場合は読解問題をしてください。


清書の意義と方法
 清書とは、これまでに書いた作文の中で内容がよかったものを書き直すことです。
 内容がよいとは、個性、感動、共感などがあるということです。

 書き直すときは、次の点に留意してください。
(1)漢字で書けるところは漢字で書く。
(2)たとえや自作名言を工夫できるところがあれば工夫する。
(3)似た話や続きの話を書くことによって字数を増やす。
(4)作文用紙の空いているところに絵などをかいてもよい。


清書の投稿
 清書した作文は、小学生新聞や一般紙などに投稿してみましょう。
 手書きの清書の原本を、新聞社に投稿したり、コンクールに応募したりする場合は、清書のコピーの方を先生に送ってください。
 新聞社に投稿する際は、作文用紙の欄外又は別紙に次の事項を記載してください。
(1)本名とふりがな(2)学年(3)自宅の住所(4)自宅の電話番号(5)学校名とふりがな(6)学校所在地(町村名までで可)など。

 投稿する際は、ペンネームを本名に訂正しておいてください。作文の中に友達の名前が固有名詞で入ている場合は、イニシアルなどに直しておいてください。投稿する作文の内容は、保護者がチェックしてあげてください。
 同じものを複数の新聞社やコンクールに送らないようにしてください。これは二重投稿といって、もし両方に掲載されてしまった場合、掲載先に迷惑をかけることになります。


小学生新聞の投稿先
■104-8433東京都中央区築地3-5-4 朝日小学生新聞「ぼくとわたしの作品」係
■100-8051(住所はいりません 毎日小学生新聞「さくひん」係(600字以内)
※清書した作文を投稿しない場合でも、額などに入れて家の中に飾っておきましょう。


■■4週目の読解問題(小1以上)
 小1以上の生徒には、課題フォルダに、4週目の長文をもとにした読解問題を2問載せています。時間のある人は取り組んでください。
 読解マラソンのページには、全8問の問題とそれに対応した長文がありますが、問題数をしぼり問7と問8の2問だけにしているのは、じっくり解いて満点にすることが目標だからです。
 問1~6も含めた全問を解きたい方は、「問題のページ」で長文と問題をごらんください。
 ただし、その場合も、当てずっぽうで全部解くのではなく、必ず全問正解になることを目標に解くようにしてください。
http://www.mori7.com/marason/ki.php


■■作文検定と読解検定
 2月5日(火)、かんき出版から読解力と作文力の本が出ますが、そこに書いてある読解と作文の方法は、かなり理系的なものです。
 理詰めで解く読解と、論理的な構成をもとに書く作文ですから、評価の基準も客観的です。

 従来の国語の勉強は、教える人の主観による面が多かったので、共通の感性を持っている人にはわかるが、そうでない人にはわからないというものでした。
 言葉の森は、設立当初から、客観的に誰でも共通してわかる作文を目指してきました。
 そのために、項目指導という事前指導の方法を作り、また森リンという自動採点ソフトも作りました。

 読解についても、多くの人のやっている読解問題の解き方は、「合っていそうなものを選ぶ」ということでした。
 それを、言葉の森では、「合っていそうでないもの」を「なぜ合っていないか」という理屈を明確にして「選ばない」、という方法に切り替えました。ややこしいですが。
 その解き方を理解した子供たちは、すぐに読解の成績が上がりました(詳しくは、本をごらんください)。

 記述についても、言葉の森の指導法は、対比を意識して書くという方法です。
 これで、記述問題も、焦点のはっきりした文章として書くことができるようになりました。

 作文も、読解も、記述も、実力がつくだけでなく、うまく書けなかったり、選択を間違えたりした場合も、どこが原因でそうなったのかがわかります。
 だから、確実に実力がつき、迷わずに勉強を進めていけるのです。

 ところで、これまで言葉の森では、作文の方は「作文検定試験」ということで検定の枠組みを作っていましたが、読解の方は、質問があるときに答えるだけで特に何もしていませんでした。
 それは、作文を書くだけでも時間の負担があるのに、その上読解まで勉強するとなると、生徒も保護者も大変だと思ったからです。

 しかし、国語の成績を上げたいという人は多いと思います。
 そして、国語の成績のかなりの部分は、読解問題として作られています。
 漢字の読み書きの問題は、やれば誰でもできるようになるのでいいのですが、読解の方は勉強の仕方がよくわからないという人が依然として多いようでした。

 そこで、今ある作文検定に続いて、今後は読解についても客観的な読解力を測定する「読解検定試験」というものを始めていきたいと思っています。
 これは、ただ読解の試験をするだけでなく、どうしたら点数を上げることができるかということを理解しながら解く試験になりますから、確実に読む力がつきます。

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」に、東大・京大の学生の読解力と、早稲田大・慶應大の学生の読解力の差が出ていました。東大・京大の学生の方が、有意に早稲田大・慶應大の学生よりも読解の点数が高いのです。
 しかし、私はこれは実力の差だとは思っていません。

 東大・京大の学生は、理詰めに解く読解の解き方を身につけています。

 これに対して、早稲田大・慶應大の学生は、理詰めに解くのではなく普通に読んで解いているだけなのです。

 理詰めに解けば満点近い成績が取れます。普通に読んで解くだけでは満点は取れません。
 これが読解の点数の差になって表れています。
 だから、早稲田大・慶應大の学生も、理詰めに解く読解の方法を身につければ、東大・京大の学生と同じ点数は取れるようになると思います。

 さて、作文検定は、昔は会場がないとできませんでした。
 だから、ある程度の人数が集まることが条件でした。
 しかし、今は、ウェブ会議システムを使えば、自宅で受検することもできます。
 ちょうど今の暗唱検定と同じ仕組みです。
 ただし、読解検定は、解くのに時間がかかりますから、特定の日時を指定して行う形になります。

 この読解検定は、語句の知識を問うような問題は出さず、また国語の穴埋め問題のようなものも出さず、ただ読解力を見ることに純粋に絞った試験にする予定です。

 暗唱検定を行うようになってから、暗唱の自習を多くの人が続けられるようになりました。
 今後は、作文検定と読解検定も同じように取り組めるようにしたいと思っています。


■■読解検定委員会のお知らせ
 前の記事と関連する話です。
 中学入試の問題レベルの文章で、主に小学5年生、6年生を対象にした読解検定を行う予定です。
 検定試験の問題を多数作る必要があるので、読解検定委員会という形で解答の解説を書く人を募集します。
 また、ひとりで書くと不十分なところが出てくる可能性があるので、同時に解説の検収を行う人も募集します。

 当面は、小学5、6年生が対象の読解検定ですが、将来は、小学1年生から高校3年生まで受検できるものにしていきます。
 この読解検定を受けていると、合格するために解説を読むようになるので、読解の点数は必ず上がります。
 高校3年生の場合は、今のセンター試験で満点が取れるあたりが目標になります。

 読解検定の短期的な目標はもちろん国語の成績を上げることですが、長期的な目標は読む力をつけることです。
 ですから、センター試験で満点が取れるようになることは短期的な目標で、長期的には難しい本をばりばり読む力をつけることが目標です。
 そして将来は、読解検定の延長で、高校生大学生を主な対象にした読書検定を行っていきたいと思っています。

 進度は、現在行っている暗唱検定と同じような流れにします。
 作文検定、暗唱検定、読解検定がそろったあとは、記述検定も作成していきたいと思います。
 詳細は、森林プロジェクトの掲示板などでお知らせする予定です。

 読解検定委員会はどなたでも参加できる形にします。
 生徒保護者の方も大歓迎です。


■■言い方のニュアンスに日本文化がある
 よくある例ですが、海外、例えばフランスなどで交通事故を起こしたとき、日本人が(自分が特に悪いわけでもないのに)、「すみません」と言ってしまうと、その言質をとられ裁判で不利になるそうです。

 しかし、普通の日本人であれば、というよりも、日本文化を身につけている人であれば、事故の責任がどちらにあるかということよりも、相手の気持ちを考えて、とっさに、「すみません」という言葉が出てくるものです。


 ところが、日本でも、そうでない人はいるのです。
「こちらはお客様だぞ」という態度で話してくる人です。
 知人に話す場合には、それなりのニュアンスというものがあります。それと同じように話せばいいのですが、いかにも相手よりも自分の方が偉いという態度で話す人が、ときどきいるのです。

 こうしたことは、子供たちの作文についても言えます。
 一方的に相手を批判するような文章は、考えの浅さとともに、相手に対する配慮のなさを表しています。
 中学生以上の作文の、「反対意見に対する理解」というのも、この、考えを深めるためと、相手のよいところを理解するための練習です。
 書き方は、「確かに、(自分の考えとは違う)こういう考え方にも理解できる点はあるが」という形です。
 このように書くことによって、相手の立場に対しても理解を広げていくのです。
 欧米の作文指導では、こういう指導はあまりないと思います。

 欧米の作文指導を一度研究したことがあるのですが、偶然、言葉の森が中学生以上に行っている作文指導とかなり似ていました。
 中1でやっている、意見を書き、その理由を述べるというような構成の仕方です。
 しかし中2でやっている、AとB、二つの意見を書いてより高次元のCという結論に導くという、総合化の主題というのはなかったようです。

 また、多様な文末表現の指導なども、日本的な作文指導のひとつです。
 英語では、「○○は△△である」という単純な言い方がほとんどです。
 日本語では、主に相手に対する配慮から、「である」だけでなく、「だろう」「と思われる」「かもしれない」「のはずだ」「と言いたい」などさまざまな語尾の変化があります。
 これが、日本語が論理的でないひとつの理由とされることがありますが、論理は文章の中身にあるのであって、語尾は単なる配慮です。
 もちろん、断定する書き方をしないというのも場合によりけりですが、そうした配慮があることが日本文化における作文の特徴なのです。


■■読む方も聞く方も勉強になる作文発表(小4・小5の作文発表)
 寺子屋オンラインの作文クラスでは、生徒が互いに作文の予習の構想図などを発表します。
 今回、アップロードした動画は、小5と小4の生徒の作文の発表ですが、自分の体験談のほかに、調べた話や聞いた話を組み合わせて密度の濃い作文になっています。
 こういう文章を書くには、文章力だけでなく、思考力や感受性も必要です。
 また、こういう作文の発表を聞く人も、自然にその作文から多くのことを学びます。

 少人数のよさというのは、全員が発表できることと、聞く人もそれを他人事ではなく、自分の身近な人の経験として読み取ることができるという点にあります。
 子供たちの作文の発表を見ていると、学年が上がるにつれて語彙が増えるとともに、内容がだんだん個性的になっていることがわかります。
 作文を書くことで個性や創造性が育つというのは、こういうところでも感じられると思います。

 今後、こういう発表や交流ができる作文のクラスをたくさん作っていきたいと思います。
 1,000人近い会員が、毎週こういう作文を書くのですから、その合計の文字数に比例して、子供たちの個性的なものの見方が生まれていくのだと思います。

 ――敷島の大和の国は言霊の幸はふ国ぞ真幸くありこそ――柿本人麿(万葉集)

▼参考動画「オンラインの作文発表の様子(小4・小5)」
 https://www.youtube.com/watch?v=vXQY2kkHTtM


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