言葉の森新聞2019年3月3週号 通算第1555号
文責 中根克明(森川林)
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■■子育ての基本は平凡――幼児期からの体験と日本語力
子育てに手遅れということはありません。
いつからでも始めればいいのです。
何を始めるかというと、まず豊かな日本語力を育てることです。
しかし、子供時代に言葉だけを先行させると、頭でっかちの子になってしまいます。
自然の中で、人間とともに体験をすることも同時に必要です。
日本語力を育てるものは、幼児期なら読み聞かせ、年齢が上がってきたら読書です。
ときどき、「小学一年生になったから、もう自分で読みなさい」と自立させようとするお母さんがいます。
実は、これが、読書力が伸びなくなる最初のきっかけです。
読書は目で読むものと思うのは、先入観です。
耳で読むのも読書で、本当はこの耳で読む読書が読書の基本なのです。
読書や読み聞かせと同じ役割を果たすものが知的な対話です。
対話というと、ただお喋りをするだけだから毎日していると思う人もいると思いますが、日常的な会話だけでなく、その子の年齢に応じた知的な対話をしていくことが大事です。
ある程度の年齢になって、読書をあまりしないことに気づいたら、いい本を選ぶということよりも、読書の習慣をつけることを第一とすることです。
本を読まないのは、面白い本がないから読まないのではなく、読む力がないから読まないのです。
読む力をつけるためには、毎日欠かさず10ページ以上の読書をすることを、その子の勉強の最優先課題として取り組むことです。
本当は「学年の10倍」ページが目標で、5年生以上は毎日50ページ以上の読書なのですが、無理な設定をして毎日できなくなるのはかえってよくないので、その子の実力よりもかなり低く見積もって10ページ以上とするのです。
そして、10ページ読んだらそれをそのまま認めてあげることです。「そんなに早く読めるんだったらもう少し読みなさい」と追加すると毎日の習慣がつかなくなります。
ところで、ほとんどのお母さんは、宿題やテストがあったら、読書よりも宿題をこなすことやテスト対策をすることを優先すると思います。
しかし、小学生時代は、読書の方を優先させるべきです。
宿題やテストをきちんとこなしたからといって、いい子になる保証はありません。
しかし、毎日読書をすれば、必ずいい子になります。
いい子とは、個性と知性と感性の豊かな子になるということです。
子供が小さいころは、何でも吸収するので、英語をやったり、プログラミングをやったりすれば、そこですぐに成果が出ます。
読み聞かせや読書や対話は、目立った成果が見えません。
日本語力を育てる学習で、唯一成果が見えるのは暗唱だけです。
子育てを長い目で見れば、すぐに成果の出ることよりも、暗唱も含めて読み聞かせや読書や対話という日本語力を育てることを第一に考えていくことです。
そして、これは、手遅れということはなく、すべて今から始めればいいことです。
ただし、始めたからには毎日やることが基本で、毎日やる自信がないことは、最初からやらずに、毎日できそうなことだけに絞ってやっていくのです。
いつも同じようなことを書いていますが、学校の勉強が忙しくなると、読書が勉強生活の基本だということを忘れてしまう人が多いのです。
本を読まない子の理由は、「忙しい」「暇がない」というのがほとんどですが、読書は暇になったら読むものではなく、生活時間の最初に確保しておくものなのです。
子供をいい子に育てる新しい面白い方法というのはなく、昔からの読書を中心とした子育てが基本です。
平凡すぎてものたりない気がする人もいると思いますが、読書を毎日欠かさず続けるというのは、ある意味で非凡なことなのです。
■■寺オン作文クラスの参加者が、次第に増えてきました
寺子屋オンライン(寺オン)作文クラスは、Zoomを使ってオンラインの少人数クラスで作文を勉強するというコンセプトがわかりにくいと思うので、なかなか人が集まらないかと思ったのですが、それでも毎日数人のペースで参加者が増えてきました。
しかし、このクラスの難しいところは、人数が多くなりすぎても少なくなりすぎても「少人数クラス」ではなくなってしまうことです。
今後、学年別のクラスが軌道に乗れば、作文の勉強はこれまで以上に高度にできるようになると思います。
子どもたちにとって、一生懸命に書いた作文は自分の分身のようなものです。
だから、人からその作文に対する感想を言ってもらうとうれしいのです。
そして、不思議なことに、寺オンの参加者の中にこれまで誰一人も、ほかの人の作文の欠点を感想で言うような子はいませんでした。
みんな、(今の大人の世代が子供だったころより)人間ができているような気がします。
この寺子屋オンライン作文よりもコンセプトがわかりにくいと思うのが、「発表学習」クラスです。
発表学習は、創造的な学習を発表することが目的ですから、単なる発表だけではありません。
どこかに出かけて遊んだという発表も発表ですが、そこから学問的なところまで発展させることが大事です。
そういうことは、小学校中学年までの子供には少し難しいので、お母さんが「こういうことを調べてみたら」と言ってあげるといいと思います。
その親子の対話の中で、子供たちはものごとを学問的に見る見方を養っていきます。
それを日曜日などの親子の関わりの時間の中でやっていくのです。
一方、逆に学習が単なる学習になってしまっても、本来の発表学習の意義は薄くなります。
例えば、教科書や参考書に書かれている知識を書き写すような発表は、勉強としての意味はありますが、それだけではその子にとって面白いものになりません。
学問を教科書から引っ張ってくるのではなく、自分の経験から引っ張ってきて、そこにもうひとつ自分の創造を加えて発表するというのが、発表学習の目指す学習です。
子供たちにとって、こういう抽象的な目的はわかりにくいと思いましたが、子供たちの中には、こういう目的を把握しているかのように素晴らしい発表を毎回行う子がいました。
そういう子供たちは、互いの発表に感想を言う場合でも、深く考えられた感想を簡潔に言う力がありました。
これからの未来の学力として求められているものが、発表学習クラスの中にはあると思います。
■■中学生になったら作文の勉強
受験が無事に済んだ生徒が、一応志望校に合格したが、国語の読解や記述が苦手だということがわかったから、中学生になったら言葉の森で勉強したいと言ってくることがあります。
そういう生徒は上達が早いのです。
なぜなら、本人が勉強したいという自覚を持って入ってくるからです。
国語も作文も、理詰めの勉強であって(言葉の森の場合)、決して生まれつきのセンスを必要とするようなものではありません。
中学生や高校生になると、その傾向が更にはっきりしてきます。
だから、中学1年生で国語や作文が苦手だった生徒が、中学3年生になるころには、国語が得意になり、作文も普通よりずっと上手に書けるようになるのです。
それは、国語も作文も、努力によって実力がつく勉強だからです。(言葉の森の場合)
中学入試から大学入試まで、合否を左右する度合いの最も高い教科は算数数学です。
それは、できる生徒とできない生徒の差が大きいからです。
特に、入試によく出てくる図形の問題は、一種のパズルのようなもので、一度似た問題の解き方を習ったことのある人はすぐに解けるが、そうでない人はいくら考えても解けないという性質があります。
だから、算数数学は点数の差が大きく出ますが、その差は、生徒の本当の実力である思考力の差ではありません。
思考力は、難しい文章を読み、それを自分なりに考えることによってついてきます。
そして、この難しい文章を読み取る力がつくのが、小学校高学年から中学生、高校生にかけてなのです。
ところが、今の中学、高校では、難しい文章を読むような勉強をあまりしません。
特に、中学の勉強は、知識を詰め込むような勉強の度合いがかなり増えます。
だから、中学生は、詰め込み勉強の結果がテストに出たかどうかということに終始して、肝心の難しい本を読んだり考えたりという時間をなくしてしまう人が多くなるのです。
しかし、もちろん将来必要になるのは、その思考力の方です。
それは大学入試でも必要になりますが、それ以上に社会に出てからも必要になる本当の学力だからです。
その思考力の基礎を作るのが、中学生からの意見文の練習です。
これまで、言葉の森での作文の勉強は、講師との一対一の電話通信指導によって行われてきました。
しかし、今は新たに寺子屋オンラインという少人数のクラスでの勉強ができるようになりました。
中学生になって新しく作文の勉強を始めたいという人は、時間が合えばこのオンラインクラスに参加するといいと思います。
■■読書作文キャンプの1日目のバーベキュー広場
春の読書作文キャンプの1日目の昼食は、戸外でバーベキューの予定です。
朝の読書のあと、車で出かけます。
当初、上郷森の家、金沢自然動物園、野島青少年センターなどを考えていましたが、教室からもっと近いところにバーベキュー広場ができていました(笑)。
車で8分のところです。
そのバーベキュー広場の近くの歩いていけるところに、舞岡公園という里山が残っている公園があります。
3月末ならそこでザリガニ釣りをしたりオタマジャクシを捕まえたり(あとで逃しますが)できます。
そして、泥んこになる子もいそうなので、そのまま、お風呂屋さんに行きます。教室から車で7分のところです。
前回、このお風呂屋さんを利用したときは、冷たい水の風呂に何分間入っていられるかと挑戦していた男の子がいました。男の子は、こういう変なことをよくやります。
女の子は、たぶんこういうことはやりません。それなのに、なぜか時間がかかります。
そして、お風呂から帰ってきたら、作文です。
その作文のあと、夕食のカレーライス作りです。
そして、作文発表会をして就寝です。 教室の2階の4部屋で、部屋の中にテントを2つずつ張り、その中でシュラフで寝ます。
翌朝は、場所を変えて、港南台地区センターで読書。
本を読み終えたら、近くの公園で遊んで、お弁当を食べます。それぞれ車で数分です。
以上のように、すべて教室の近くでできるので、移動時間の少ない楽なキャンプになりそうです。
それぞれの会場を見に行きながら、ふと思ったことは、やはり勉強より遊びの方が楽しいということでした(笑)。
昔の子供たちは、学校から帰ったらすぐに遊びに行き、夕ご飯になるまで帰りませんでした。
今はそういうことは難しいと思いますが、それでも、どこかで「よく遊びよく学べ」を実行するような機会があるといいと思います。
■■発表学習クラスの発表から「なめこについて」
発表学習クラスの水曜クラスで、小学3年生の生徒が、なめこについて調べたことを発表しました。
なぜ、なめこについて調べたかというと、以前に、キノコを育てたことを発表した生徒がいて、その生徒がなめこが嫌いだと言ったのを聞いて、自分がなめこが好きだったから、その生徒のために調べてみたということでした。
学校の勉強との関連で考えると、なめこのぬめりはムチンという物質によるもので、それが人間にとって必要なものだというようなことは、絶対にテストには出ません。
勉強の能率だけを考えたら、そんなテストにも出ないようなことを調べるよりも、もっと学校の勉強に役立ちそうなことを調べなさいということになるかもしれません。
しかし、勉強というのは、役立つかどうかよりも、調べたいとか知りたいとかいう動機の方が大切なのです。
役立つ勉強ばかりしていた子は、受験が終わったら、勉強はもうおしまいにしていいと考えるでしょう。
受験が終わったらたっぷり遊べるということを目標にして勉強している子はそうです。
しかし、知りたいからという動機をもとにして勉強していた子は、成長に応じて自分の向上心を発展させながら勉強を続けていくでしょう。
これからの世界は、学校時代の勉強だけで間に合うような停滞した社会ではありません。
今でも、日々新しい技術革新が生まれ、それに対応していかなければ、時代から取り残されていきます。
学び続けるという動機を持った子が、こういう時代を生きていける子です。
そのためには、子供時代から、勉強は楽しいものだと思えるような経験を積み重ねていくといいのです。
一人の子が面白い発表をすると、ほかの子も負けずにそういう発表をしようとします。
みんなで勉強をしていると、面白い発表かどうかということが一つの目標になり、次第にそれぞれの生徒の個性が出てくるのです。
▼参考動画「なめこについて」(発表学習クラスから)
https://www.youtube.com/watch?v=4gtb2fPUtnM
(一人分の発表を、顔などが出ないよう編集した動画です。今後、こうした面白い発表の動画を、「自由研究」などのタグをつけて、どんどんYouTubeに投稿していきたいと思います。)
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