言葉の森新聞2019年7月4週号 通算第1572号
文責 中根克明(森川林)
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■■個性の発見と創造が教育の第一目標となる時代(つづき)
前号からの続きです。
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個性の発見と創造に結びつく教育のひとつが発表学習です。
発表学習の中では、自分の個性を学問的に深め、創造的に発展させる発表が増えています。
ほかの子供たちの発表を見て、自分も新しい個性に気づき、その個性を生かしてみんなの前で発表することでさらに学問的に深めていくというような循環が生まれています。
この学習を、今後、幼児のころから行えるようにすることを考えています。
幼児の段階での発表学習は、そのまま親子作文の題材としても活かせるので、作文プラス発表学習という形が、これからの幼児教育の一つの新しいスタイルになっていくと思います。
そして、小学校に上がるようになると、ここに自主学習が加わっていくのです。
■■算数は考えない勉強――図形問題を解く力をどうつけるか
自主学習クラスで、算数数学の問題を解いている子に、「難しかったらすぐに答えを見るんだよ。算数数学は、考えない勉強だからね」と言うと、子供も保護者も、「そんなので、いいのですか」と聞きます。
そんなのでいいのです(笑)。
(以下、算数数学を略して算数)
受験までの算数は、答えのある勉強です。
学問としての算数は、答えがあるかどうか分からない勉強です。
だから、学問としての算数は、いくら考えてもいいのです。
長い時間考えることによって、答えが分かる瞬間が来るときがあるからです。
趣味として算数の勉強をする場合も同様です。
しかし、受験の算数は、答えを出すことが目的の勉強です。
そして、受験の算数では、すべて誰かの作った答えがあることが前提になって問題が出されています。
どんなに難しい問題でも、答えがあることがわかっているならば、すぐにその答えを見ればいいのです。
算数の問題で、誰でもできるのは代数系の問題です。
だから、難関校では受験生に差をつけるために、代数の問題よりも図形の問題を中心に試験問題が出されています。
図形問題は、できるとできないの差がはっきりしているので、点数の差をつけやすいからです。
この図形問題を解く力をどうつけるかというと、それをパズルの一種と考えるのです。
しかし、楽しみながらやるパズルではなく、答えを早く見つけることが目的のパズルです。
だから、問題は見たらすぐに答えを見るのが最も能率のよい勉強の仕方です。
このやり方で、図形を中心にした算数の問題集を1冊、解けない問題が1問もなくなるまでやるのです。
すると、新しい図形の問題を見ても、解き方のパターンがわかるようになります。
この図形問題の勉強の仕方は、公立中高一貫校の問題の勉強の仕方にも共通しています。
考える問題と言われるものであっても、特定の答えが想定されているのですから、問題を見たらすぐに答えを見て、「この問題はこういう答えだ」ということを理解する勉強を中心にしていくのです。
しかし、たぶんこういう勉強の仕方をしている子はほとんどいないと思います。
多くの子がやっている勉強法は、できる問題をいつまでも解いてみたり、できない問題をいつまでも考えていたりというやり方です。
そして、保護者の多くもそれが普通の勉強の仕方だと思っています。
勉強を趣味としてやるのであれば、それでもいいのです。
しかし、受験勉強に関して言えば、それは実は正しい勉強法とは正反対の勉強法です。
なぜなら、できる問題を解くことも、できない問題を考えることも、ただ時間がかかるだけだからです。
できる問題は、解く必要はありません。
できない問題は、すぐに答えを見て、問題と答えの組み合わせを理解するという勉強法が正しい勉強法です。
味気ない感じがすると思いますが、受験勉強自体が味気ないものですから、できるだけ短時間で効果の上がる勉強の仕方をしていくといいのです。
この勉強法で夏休みの一か月間、算数の勉強に取り組めば、その後の成績は驚くほど向上します。
ところが、たぶん学習塾では、こういう勉強の仕方をしません。
できる問題を解かせたり、できない問題を考えさせたりする勉強がほとんどだと思います。
それは、その方が教えやすいことと、生徒もそれで勉強した気になりやすいからです。
そして、多少は、時間をかけて勉強しただけの効果はあるからです。
しかし、本当は、家庭の自学自習で、できない問題の答えを見て理解する勉強を中心にしていくといいのです
算数の勉強の仕方について語る人の多くは、算数を教える専門家です。
だから、自然に時間のかかる勉強の仕方を説明します。
それは、他の教科、国語の場合も英語の場合も同様です。
そういう専門家の意見に従うと、勉強はどんどん時間のかかるものになっていきます。
勉強の本質を理解すれば、もっと能率のよい勉強の仕方ができます。
算数は、1冊の問題集をできない問題が1問もなくなるまで繰り返し解くことです。
この場合は、解くというのは解き方を読んで理解することです。
英語は、英語の教科書を音読暗唱することです。
そして暗唱ができたら暗書することです。(暗書は見ないで書くという意味の造語)
国語は、問題集読書をすることと、読解検定で百点を取ることです。
ただし、問題集読書と読解検定は、受験期の勉強法ですから、受験期に入る前の基本の勉強法は、読書と暗唱と親子の対話です。
受験勉強全般に関して言えば、まず志望校の過去問を答えを書き込みながらやってみることです。
そして、その過去問を基準にした勉強を進めていくことです。
勉強法の本質は、どれもシンプルなのです。
■コメント
勉強には、答えのあるものと答えのないものとがあります。
答えのある勉強は、すぐに答えを見ることです(笑)。
答えのない勉強は、ただ時間をかけて考えることです。
時間をかけると、なぜか答えが出てくることがあるからです。
しかし、受験勉強を答えのない勉強のようなやり方でやるべきではないのです。
■■暗唱の仕方のコツ――大事なのは繰り返しの音読だけ
暗唱の仕方で大事なコツは三つあります。
一つは、毎日練習をすることです。
練習にかかる時間は10分程度です。
毎日やるためには、朝ご飯の前などの毎日確実にできる時間帯を暗唱練習の時間と決めることです。
もう一つは、すらすら読めるようになるまで、文章を見て読むようにすることです。
文章を見ずに読んで、途中でつっかえたり、思い出して読んだり、読み間違えたりすると、そのつっかえたり思い出したり読み間違えたりしたところが癖になってしまうので、あとから直そうとしてもなかなか直りません。
暗唱の初めのうちは、文章を見てゆっくり正確に読んでいくことです。
正確に読めるようになったら、できるだけ早口読むように切り換えていきます。
第三に、暗唱は覚えることを目標にするのではなく、回数を決めて音読を繰り返すことを目標とすることです。
回数は30回が基準です。
大人でも、100字程度の同じ文章を30回繰り返して音読すると暗唱できるようになります。
低学年のうちはもっと回数が少なくても暗唱できるので、その子に合った回数を決めて読むようにしてもかまいません。
大事なことは、覚えられたからおしまいとするのではなく、決めた回数を音読したからおしまいというふうにすることです。
なぜ、覚えることを目標にしないかというと、覚えることを目標にすると、難しい文章や長い文章になったときに、できないと言う子が出てくるからです。
回数を繰り返すというだけなら、誰でも例外なくできます。
覚えることが目標ではなく、音読を繰り返すことが目標とすることによって、その結果として自然に覚えていたという結果になるのです。
ところで、低学年のうちは文章を読み取る力がないために、文章を繰り返して読むということがスムーズにできない場合があります。
その場合は、最初から本人に読ませるのではなく、お母さんが音読するのを聴かせるだけでもいいのです。
聴いているうちにだんだん真似をして言えるようになります。
すると、やがて文章を目で追いながら音読もできるようになってきます。
低学年のうちは、気長に、半分遊びのような感覚で続けていくことが大事です。
幼稚園年長から小学2年生までは、暗唱の力が最も伸びる時期だと言われています。
この時期に、子供が負担を感じないやり方で暗唱の力をつけておくと、学年が上がってからも暗唱のコツが分かるので、その暗唱力を語彙力や記憶力や表現力に活かしていくことができます。
■コメント
今の子は、繰り返しの勉強に慣れていません。
教材が豊富にあるので、1回やったらおしまいにして、次の教材に移るというような勉強の仕方をしている子が多いと思います。
しかし、そのやり方では実力はつきません。
暗唱は、繰り返しの勉強が役に立つということを実感する機会になります。
■■勉強はたくさんやるよりも毎日やることを優先して
小中学生の勉強で最も大切なのは、毎日決まったことをする習慣をつけることです。
よく、成績が上がらないとか、成績が下がったとかいう相談を受けることがあります。
その最も大きな原因は、能力でもなく、勉強の仕方でも、塾の選び方でもなく、教える先生の問題でもなく、ほとんどの場合その子が毎日勉強する体制になっていないことだけです。
小中学生の勉強は、入試問題を解く勉強以外は、難しいことは何もありません。
しかし、勉強を、毎日ではなく宿題があるときだけやったり、塾のあるときだけやったりするような勉強の仕方だと、必ず学校で習った範囲でわからなくなるところが出てきます。
それが積み重なって成績が上がらなくなるのですが、分からないところがある程度増えてくると、自分でもどこから手をつけていいか見当がつかなくなります。
それが、成績が上がらなくなる原因なのです。
そのときにやりがちなのが、ある日突然思いついて急にたくさんの勉強を始めることです。
学力は毎日の積み重ねによってできるものなので、1週間分の勉強を1日でやって、あとの6日間は何もしないというやり方では学力はつきません。
短い時間でいいので、毎日同じ時刻に、同じ勉強をする体制を作っておくことが大事なのです。
勉強は、たくさんさせるよりも毎日欠かさずさせることを重点とします。
ところで、子供によっては毎日たくさんの勉強をさせられている子もいます。
受験期に本人が納得して行う「毎日」「たくさん」の勉強は全く問題がありません。
むしろ、毎日たくさんの勉強することによって、短期間で急速に力をつけることができます。
しかし、小学校低中学年のころに毎日たくさんの勉強をさせると、学年が上がるにつれてその反動がやってくることがあるのです。
その反動の最もよくある兆候は、集中力の乏しい勉強を長時間やるような勉強習慣がついてしまうことです。
お母さんは、子供が長い時間勉強していると安心し、短い時間で勉強を終わらせると不安になるものです。
しかし、短い時間で勉強を仕上げる姿勢の方が、集中力のある勉強の仕方につながります。
小学校低学年で親の話をよく聞く子供は、長時間の勉強を特に苦もなくやっているように見えることがあります。
親は、それを見て満足するのではなく、早めに、「もう勉強やめて、あとは自分の好きなことをして遊びなさい」と言ってあげる必要があります。
子供の本当の心は、親にそう言われるのを待っているのです。
このような毎日の勉強の習慣をつけるのに役立つものが自主学習クラスです。
先生が、家庭における子供たちの勉強の仕方を見ているとこ、おのずからその勉強の仕方のよい点とよくない点が分かってきます。
親が単独で子供の勉強を見るよりも、また先生が単独で子供の勉強を見るよりも、親と先生が協力し補い合って勉強の仕方を見ていくことが毎日の勉強の習慣づくりにとって大切なことになるのです。
■コメント
子供の勉強は、毎日同じようにやることが大切です。
大人のように、日曜日は休みなどとしない方がいいのです。
だから、旅行に出かけたときも、毎日の勉強道具(課題フォルダ、暗唱長文、読書用の本など)は持って、たとえ短い時間であっても旅行先で同じようにやっていくといいのです。
しかし、どうしても例外が生じる場合があります。
そのときは、うやむやのうちに例外を認めるのではなく、子供に、今日はこういう理由だから勉強はお休みにしようと、ちゃんと言葉として言っておくことです。
勉強の仕方でよくある間違いは、難しい問題集をやらせることです。
難しい問題集をやって、できなかった問題が何問か残るというやり方では実力はつきません。
できない問題が1問もなくなるまでやって初めて力がつきます。
だから、問題集は普通の難しさで、たまに難しい問題があるぐらいがちょうどいいのです。
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