言葉の森新聞2019年12月3週号 通算第1591号
文責 中根克明(森川林)

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■■新学期の教材を発送します

 来年1月からの新学期の教材を、12月16日(月)~18日(水)の期間に発送します。
 国内の生徒さんで、25日くらいになっても届かない場合はご連絡ください。
 作文、封筒用紙、住所シールも同封しています。


■■小学生の「工作」の本をSTEM教育のうちのエンジニアリングの基礎として
 子供は、物を作るのが好きです。
 本当は、大人もそうです。

 その反対に嫌いなのは、物を作らされることです。
 それは、大人も同じです。

 物を作るのが好きなのは、そこに自分らしい工夫と発見と創造があるからです。
 作らされるのが嫌いなのは、その反対だからです。

 普段の勉強では、工夫と発見と創造は必要とされません。
 むしろ、解法を読んで理解することが勉強の基本です。
 答えのある勉強は、それでいいのです。
 教えたやり方で解くというパターンを覚えることももちろん必要だからです。

 しかし、自分らしいやり方で失敗することもそれ以上に必要なのです。

 湯川秀樹氏が、好きだった数学をやめて物理に移ったのは、数学の試験で答えは合っていたものの先生の教えたやり方で問題を解かないために×になったからでした。

 勉強の基本は、読み、書き、考える力をつけることです。
 そして、答えのある世界では、答えにできるだけ早く近づくように先人の解き方のパターンを理解することです。
 しかし、これから必要になる学力は、それらに加えて、自分らしい創造をする力です。
 以上の三つの勉強の分野は、それぞれ、作文読解クラス、自主学習クラス、創造発表クラスの勉強分野です。

 創造発表クラスでは、従来の勉強ではない、創造的な勉強を中心にしていきます。
 その勉強に向いているのは、小学校の教科で言えば、理科、図工、社会、数学、英語、国語の順です。
 数学や英語や国語でも、創造的な勉強をすることはできますが、教科の体系が確立しているので、なかなか創造的なところまでは行けません。

 理科と図工と社会は、教科の体系よりも、対象となる分野の方がずっと広いので、そこでさまざまな創造が可能になるのです。

 理科実験は、小学校高学年でなければ難しい面もあるので、創造発表クラスでは低学年向けにせいかつ文化の分野を追加しました。
 しかし、子供たちにとっては図工の分野の方がより面白く参加できるので、新たに図工の分野の参考図書を追加します。

 図工は、STEM教育で言えば、サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・マセマティクスのうちのエンジニアリングの教育です。
 物を作るときに必要な能力は、状況に合わせたさまざまな試行錯誤を工夫する力で、それはプログラミングに必要な能力と同じです。

 今はまだプログラミングは、プログラミング言語を学ぶことが大きな目標になっていますが、将来は言語的なことはAIがカバーするようになります。
 すると、プログラミング教育で人間が行うことは何かと言えば、それは工夫し創造することなのです。

 工夫と創造には、ものづくりだけでなく、料理もファッションもあります。
 スポーツも音楽もデザインも、本当の目標は創造です。
 しかし、体系が確立しているものでは、個人の創造する余地はかなり上達してからでなければ出てきません。
 だから、子供時代は身近な工作を通して、その創造の感覚を育てていくといいのです。


■■作文は究極のアクティブラーニング
 「教育激変」という本の中で、対談している池上彰さんと佐藤優さんが、それぞれ次のように述べています。

佐藤「誤解を恐れずに言えば、アクティブラーニングは基本的にエリート教育だと思うのです。自ら考えをまとめて説得力のある話しをするというのは、指導的な立場になる人たちにとって必要なスキルでしょう。」

池上「何度も言いますが、私は『自ら考えプレゼンする』といった力が、これからの世の中には必要で、それは必ずしも必要的な立場に就く場合ではなくても同じだと思うんですね。ただ、自分が教えている大学をみても、すぐにアクティブラーニングが可能な現場もあれば、かなり準備が必要なケースもあります。」

 佐藤優さんは同志社大学の神学科で数人の学生たちに授業をしているそうです。
 それが内容的にはアクティブラーニング的な授業になっているようで、5時間の授業を受けるために学生は30時間から35時間の準備をしなければならなくなっているそうです。

 二人が述べているように、アクティブラーニングは優秀な生徒でないとその効果を発揮しない面があります。
 子供たちが発表したり討論したりする形の授業も、内容が伴わければ形だけのただの雑談のような時間になってしまいます。

 ひるがえって、言葉の森の作文の勉強を考えてみると、オンラインの少人数クラスの作文はまさしくアクティブラーニングの勉強なのだと思います。

 作文は、書くことよりも、事前の予習で両親に取材をしたり自分の実例を考えたりしてくることが大事です。
 今世間で行われている作文の指導や、市販されている作文のドリルは、すべて書くことを中心とし、書いたあとの添削を中心としたものです。
 添削で作文が上達するのは、作文学習の初期のうちだけです。
 作文は、事前の長文音読と構造図という予習によって上達するのです。


■■日本語と英語の暗唱教育――日英暗唱クラスの計画
 言葉の森では、オンラインスクールとして、従来の作文指導に加えて、創造性を育てる創造発表クラス、自主学習力を育てる自主学習クラスを運営しています。
 また、これらのオンラインクラスの中に、読書紹介や暗唱発表のできる時間帯を設けています。

 しかし、作文や発表や自主学習の時間の間に、読書と暗唱の両方をやると、肝心のそのクラスの学習の時間が圧迫されてしまいます。
 そこで、今は読書紹介か暗唱発表のどちらかを選択してもらうようにしています。

 ところが、そうすると自然に読書紹介方が多くなってしまうので、暗唱発表の機会をどう確保するか考えていました。
 そこでひらめいたのが、暗唱クラスを独自に立ち上げることでした。
 そして、どうせ暗唱をするのであれば、日本語の暗唱だけでな英語の暗唱も並行して行えるようにしたいと思いました。

 言葉の森では、既に英語の暗唱している子も何人かいます。
 野口悠紀雄さんの「超英語法」によると、英語の勉強で最も効果の上がる簡単な方法が教科書の繰り返しの音読です。

 小学校低学年から音読暗唱を始めれば、単語も自然に覚えられ、学年が上がり英語の勉強を始めるときにも、語彙力や英語感覚が身についているので英語の勉強が楽になるはずです。

 言葉の森では、これまで、小学校3年生までの英語のやりすぎは、日本語の習得にマイナスの影響を及ぼすと述べてきました。(「幼児から小3までは日本語脳を育てる時期――英語脳は日本語の土台が確立してから」)

 しかし、こういう考えがなかなか理解されず、幼児期から英語の勉強を始める人もまだいます。
 この英語の早期教育の流れがしばらくは止まらないのであれば、言葉の森が日本語教育を基盤として英語の基礎も身に付けられるようなコースを提供した方が良いと考えたのです。

 日本人の学習する言語の基本は、母語である日本語です。
 しかし、現在の世界では、英語の学習も必要になっています。
 だとすれば、日本語の学習を基本とする言葉の森が、日本語の学習と両立する形で英語の学習を行えるようにすることが最も望ましい英語教育のあり方になると考えたのです。

 日本語、英語に関わらず、暗唱には、多くの効果があります。
 まず、暗唱を行うことによって、言語で思考するという学力の基本が身につきます。
 難しい言葉を読み取ることによる語彙力も身につきます。
 言葉の森の暗唱長文は、ほとんどを日本の古典から取り上げているので、日本文化の中に流れるものの見方や感じ方などが自然に身につきます。
 また、暗唱力がつくと、何かを覚えるということが苦にならなくなるので、中学生以降に増えてくる覚える勉強というものに楽に取り組めるようになります。

 日英暗唱は、日本語の暗唱を3か月やって、日本語の暗唱検定5級に合格した人は、次に英語の暗唱1か月やって英語の級を合格し、次にまた日本語の暗唱の級を目指すという形で日本語と英語を交互に暗唱していくことを考えています。

 将来は中国語の学習も必要になるでしょうから、日本語・英語・中国語を組み合わせた形の暗唱にすることも考えられます。
 暗唱の方法の基本は同じなので、そういうことができるのです。
 言葉の森のオンラインクラスには海外からの生徒も参加しているので、中学生ぐらいになれば、英語の会話の機会も作れると思います。

 日英暗唱クラスは、現在計画段階ですので、具体的な話は今後発表しますが見通しはかなり具体的です。
 というのも、サマーキャンプで「平家物語」の暗唱をカウンターを使って行ったところ、1日目はほとんど暗唱できなかった生徒がほぼ全員、3日目、4日目になると、見違えるほど楽に暗唱できるようになったからです。

 この暗唱のコツがつかめるように、体験学習は4日から5日間の連続で行うようにする予定です。
 この日英暗唱のクラスを、言葉の森オンラインスクールの一つのクラスとして立ち上げていきたいと思います。


■■読解力は、読む力と解く力の足し算
 読解検定を、10月11月と連続して行いました。
 11月末に全員の答案の返却を行いました。
 受検者は、小1の課題から高3の課題まで、のべ189名でした。

 10月の読解検定で20点台や30点台だった生徒が、11月には60点台70点台となりました。
 これは解き方のコツがわかってきたからです。

 70点台80点台の生徒が100点になるには、さらに高度な解き方のコツとさらに深い読み方が必要になってきます。
 この読解検定でコンスタントに80点台や100点が取れれば国語の実力についてはもう心配はいりません。
 しかし、平均して70点台以下であれば、読む力と解く力をさらに向上させていく必要があります。

 国語の読解問題には、易しいレベルの問題から難しいレベルの問題まで難易度にかなり差があります。
 言葉の森の読解検定は、難しいレベルの問題です。特に小3以上の読解問題はそうです。

 読解力をつけるには、解き方のコツを身につけるとともに、問題集読書で難しい文章を読むことに慣れていく必要があります。
 読解力は、読む力と解く力の足し算なのです。

 読解力は、勉強の仕方を決めて努力をすれば誰でも力がつきます。
 読解検定を国語力をつける目標としてこれからも活用していってください。


■■読解力低下の原因と対策
 読解力の低下の原因に、読書の不足が挙げられています。
 先日、書店に子供の方を探しに行ったところ、子供のコーナーで平積みになっている、つまりよく売れている本のほとんどが学習漫画的な本でした。

 タイトルはためになるような内容で、中身は文章が少なく漫画が中心に書かれているのです。
 こういう本を読むと、確かに知識は増えますが、文章を味わうという力が育ちません。

 読解力がある子の特徴は、文章を実感を持って読めることです。
 単なる知識的な理解として読むのではなく、文章から感動を受けるという読み方ができることが大事なのです。

 読解力の向上の第一は、読書紹介によって本を読む機会を増やすことです。
 中でも、文字情報の多い本を読む機会を増やすことです。
 第二は、読解検定で厳密に読み取る力を身につけていくことです。



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