言葉の森新聞2023年10月2週号 通算第1774号
文責 中根克明(森川林)

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■■読書の傾向が説明文主体になることによって、読解力、作文力思考力が、向上してくる。国語読解の力をつけるには、正解の分析の前に、読書力をつけることが大事。

●動画:https://youtu.be/CnDsgUYOlCo

 国語読解の成績が上がる生徒は、読書傾向が違います。それがはっきりわかったのは、夏期講習の国語読解ディスカッションクラスの授業のときです。

 ある文章を読んで、その文章について、自分の感想や意見を順に言ってもらうのですが、そのときに、読み間違いのある生徒が多いのです。
 それは、もちろんやむを得ないことです。日常生活では見たり聞いたり話したりしたことのない語彙が、問題集の説明文では、次々と出てくるからです。

 物語文は、難しい文章と言っても、日常生活の延長の語彙で書かれています。読む力の差が出てくるのは、物語文ではなく、説明文なのです。

 ところが、説明文の読みで、読み間違いのほとんどない生徒もいました。
 その生徒は、日常の読書生活の中で、そういう説明文の語彙のある文章を読んだ経験があるからです。これが読書力の差です。

 国語の成績を上げるコツは二つあります。一つは、読解問題の理詰めの分析です。この理詰めに解くという方法がわかるだけで、国語の成績が急上昇する生徒が毎年何人もいます。

 しかし、もう一つのコツは、問題の分析以前の文章を読む力で、この文章を読む力という前提が不十分だと解き方のこつを理解していても、成績は途中までしか伸びないのです。
 だから、優しい文章では、高得点を取れるのに、難しい文章では得点が低くなる生徒というのは、解き方のコツ以前の、文章を読み取る力がまだないということなのです。

 文章を読み取る力をつける一番の方法は、問題集読書を続けることです。
 しかし、問題集読書を続けるというのは、実はあんまり張り合いのある勉強ではありません。もともと、読む力のある生徒は、問題集の1500字ぐらいの文章を楽しく読めるのですが、読む力のない生徒は、1500字程度の難しい文章を読むのに、飽きてしまうことが多いのです。

 そこで、言葉の森のオンラインクラスが毎週行っている読書紹介で、中学生の場合は、毎週説明文の本も必ず読むことということを提案しました。

 物語文の方はもちろん、いくら読んでもいいのです。物語文を通して、感動する気持ちを育て、感受性を豊かにすることがあるからです。
 読書は、楽しい知的な娯楽ですから、物語文を読むということ自体はもちろんよいことです。
 しかし、物語文しか読まず、説明文の本を読んでいないと、読書を通しての考える力がつかないのです。

 説明文の本の選び方は簡単です。
 一つは、図書館の児童書のノンフィクションコーナーに行って、自分の関心のある本を見つけてくることです。
 しかし、図書館が近くにないと利用しにくいものです。

 学校の図書室で、説明的な文章の本を選ぶ、ということもありますが、学校の図書室では、数が多いと言っても、読みたい本は限られています。

 そこで、もう一つは、今のネット環境を利用するのです。
 Amazonなどのネット書店で、説明文の中学生高校生向けの本を探すことです。

 今のところ、ちくまプリマー新書や、岩波ジュニア新書というシリーズが、中学生高校生向けの本として出版されています。
 これらの本を検索して、自分の関心のある分野の本を読むと、本の傾向に応じてさらにおすすめの本を探していくことができます。

 読書については、かかる費用はもったいないと思わないことが大事です。
 読書によって得た影響は、その読書が終わったあともずっと残ります。
 だから、勉強のために費やす費用と時間以上に、読書のために費やす時間と費用を惜しまないことが大事です。

 中学生、高校生の説明文読書は、今かなり効果を生み出しています。
 言葉の森の読書記録のページに行くと、同じ学年の生徒が読んでいる本のリストが出てきます。
 その中で、自分も読んでみたい本があったら、それを購入して手に入れて、ぜひ読んでみてください。
 読書を通して、みんなの思考力、読解力、作文力が向上していくことを期待しています。


■■nottaで書く作文。作文の本質は、書くことではなく、考えることだから、書くことに時間をかける必要はない。忙しい中学生や高校生は、新しい方法で作文を書くことができる。
●動画:https://youtu.be/kqnT-oKMx1s

 今日は、「nottaで書く作文」ということで、作文の新しい書き方を説明したいと思います。
 作文の本質というのは、考えることであって、文章を書くということは決して本質的なことではありません。

 ただ、これまでの歴史の中で、ペンや鉛筆を持って文章を書くという期間が非常に長かったので、まるで作文というのは、「書くこと」と同じだというふうに思われてきたのです。
 しかし、作文の本質は考えることです。さらに言うと、書くことによって新しいものを創造することです。

 文章の要素として、構成、題材、表現、主題、表記というものがあります。
 創造は、主に、題材、表現、主題の分野で生まれます。

 第一に、題材を創造するとは、他の人がまだ経験していないような話を実例として述べることです。これが、一つ創造です。

 第二に、表現の創造です。
 新しいたとえの表現を使ったり、新しい自作名言を使ったりというようなことも含めて、まだ他の人が使っていないような表現で物事を表すことが創造です。

 第三に、主題の創造です。
 新しい考えを述べるということが主題の創造です。

 題材の創造、表現の創造、主題の創造というのが、文章を書くことの本質的な価値です。

 ここまでが、前提となる話で、次に、実際に作文を書くときに、この考え方をどう活かすかということを説明します。

 中学生や高校生になると、文章書くことに、なかなか時間が取れないということがあります。
 時間的に忙しいから書けないということが時々出てきます。

 1200字の文章を書くときの時間は、大体60分から90分です。
 しかし、単なる作業としての60分から90分ではなく、新しいものを創造しながらの60分から90分ですから、かなり大変です。

 そこで、考えたのが、考える作業だけを作文の中心にして、書く作業は機械に任せるという方法です。

 しかし、これは、ChatGPTに、「こんなことを書いて」という指示を出して書いてもらうというやり方ではありません。
 考える作業は、人間の喜びですから、それを機械に任せてしまうというのは、方法を目的と取り違えていることになります。

 では、どうしたらいいかというと、まず、構想図を書くのです。
 構想図を書いてる時間というのは、自分が考えている時間ですから、時間はかかっても楽しい時間です。
 1200字の文章を書くための構想図の時間は、大体15分ぐらいです。

 そのあと、その構想図を見ながら、ICレコーダに向けて内容を喋ります。
 その音声を、テキスト化のソフトで文章にしてもらいます。
 喋ることは、書くことよりもずっと負担が少なく、時間もかかりません。

 テキスト化するためのソフトやウェブサービスは、いろいろあります。
 今回使ったのは、nottaという新しいウェブサービスです。

 以前は、Googleドキュメントを使っていましたが、Googleドキュメントが、ICレコーダからの読み込みができなくなってしまったので、新しいサービスを使うことにしました。

 notta(無料版もあるが、自分が使ったのは有料版)は、かなり高性能で、録音したMP3ファイルも読めるし、句読点も適度に打ってくれます。(Googleドキュメントは、句読点がつきません。)

 ワードのディクテーションという機能でも、音声のテキスト化ができるようなのですが、やってみたところ、句点や「?」マークがあちこちについて、全く使えませんでした。(使い方が悪かったのかもしれませんが。)

 今後、たぶんもっといいウェブサービスも出てくると思います。
 しかし、今のところ、nottaというサービスがいちばん使えます。

 nottaで音声入力をテキスト化したあと、ChatGPTで250字ぐらいに要約したもらえば、読み手の助けになります。

 近い将来の作文の授業は、次のような流れになると思います。

課題のテーマ

生徒どうしのディスカッション

構想図を書く

音声入力

テキスト化

要約

発表して質問や感想を言い合う

 このやり方なら、書く負担は少なくなり、考える楽しさと話し合う楽しさだけが残ります。

 現在、中学生や高校生の人で、作文の勉強は続けたいが、時間がかかるのが負担だという人は、時代を先取りして、この方法で作文を書いてみてください。

▼参考までに、上の文章のChatGPTによる要約は下記のようになります。
(読みやすくするために、改行はこちらで入れました。)
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 作文の本質は考えることであり、新しいものを創造することにあります。
 考え方を中心にし、書く作業はテクノロジーを利用して効率化する新しいアプローチを提案します。
 まず、15分程度で構想図を作成し、それを基に文章を喋って録音します。
 その録音を「notta」などのテキスト化ソフトで文章化し、ChatGPTを使用して要約を作成します。
 この方法により、中学生や高校生でも時間を効率的に使いながら、作文の本質である「考える楽しさ」を追求することが可能となります。
 近未来の作文はテーマ選定からテキスト化、要約までのプロセスが一連となり、よりアクセスしやすくなるでしょう。
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