言葉の森新聞2023年10月3週号 通算第1775号
文責 中根克明(森川林)

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■■作文の上達度は、字数の推移を見ればわかる。小6以上の生徒は、毎回1200字以上の作文を書くことを目標に。字数という前提の上に、構成、題材、表現、主題の工夫がある。

●動画:https://youtu.be/QcbLOc8qoCc

 文章力と字数の間には、高い相関があります。
 もちろん短くても、良い文章というものはあります。例えば、詩の文章、俳句や短歌の文章などがそうです。そういう例外はありますが、文章力と字数の間には、高い相関があるのです。

 子供の作文の字数が、どういうふうに進歩しているかを見れば、その子の作文力が上達しているかどうかということが客観的によくわかります。

 例えば600字を書いている子は、いつも600字の文章を書いています。
 その子に800字まで書いてみようと言っても、なかなかできないことが多いのです。
 つまり、普通に書くと600字までしか書けないというのが、その子の実力ということになります。

 ある会社の入社試験で、字数を2000字だか3000字だかの作文を書くことが試験の内容というものがありました。
 これは、ある意味でとても妥当な試験です。文章の内容よりも、まず何かテーマを与えられて、2000字、又は3000字書けるというのは、それだけ考える力、または題材の力、それから表現の力、主題の力があるということだからです。

 最近の高校入試などで、作文の試験とは言っても、せいぜい200字程度の文章の試験が出されることがあります。
 これは、全くと言っていいほど意味がありません。
 表記のミスがわかるけれども、そこで、その生徒の文章を書く実力や考える力の実力がわかるということはまずありません。

 かつて、大学入試の共通テストで150字の文章を評価するというような試みがなされたこともありますが、それも同じです。
 150文章で、その生徒の文章力を評価するということは、まずあり得ないと思います。
 せいぜい表記のミスがわかる程度で、短い作文の課題は何の意味もありません。

 なぜ短い作文の課題が出されるかというと、採点が大変だからという、全く評価の本質に関係ない理由からです。
 文章は、1200字以上書かなければ評価の意味が出てきません。
 逆に1200字の文章を何本か書かせれば、その人の考える力は、かなりよくわかります。

 字数力が1200字をコンスタントに超えるようになったら、次は森リン点を評価の基準にしていくということが考えられます。
 森リン点の推移を見ると、その作文の長所や弱点がよくわかります。

 例えば、長く書いているけれども、ほとんどが自分の身近な体験という実例で、主題の部分が短いというのは、小学生のころの作文としては上手だったとしても、中学生高校生の考える作文の力がまだないということです。

 そういう人は、まず読書に力を入れることです。特に、説明文の読書です。
 そして、常に1200字以上の文章を書くということを心がけていくといいと思います。


■■生き物と一緒にいる楽しさは、子供が小さいころに育つ。それがその子の幸福感のひとつになる。犬や鳥や虫や自然と一緒にいることの楽しさを小さいころから経験させることが、教育の出発点
●動画:https://youtu.be/oZlzusQydpY

 30年ぐらい前のことです。私のうちの子供を連れて、海に行ったとき、波打ち際で裸ん坊になって遊ぶ子を見て、ふと思ったことがあります。

 大きな暗黒の宇宙の中で、地球という星が一つ回っていて、その地球の光る側の海の波打ち際に、小さい子供が遊んでいると。
 それが自分の世界観の一つの転換点だったように思います。

 それから、道を歩いていても、平坦な道ではなく、丸い地球の上を歩いている感覚を、時々持つようになりました。


 言葉の森の庭に、コスモスを植えたら、毎日のように、蝶が飛んできます。
 時々、蝶以外の虫も来ます。
 それらを見ていると、この地球の上で、日常的に奇跡が起きているのだと感じます。

 また、庭に、小さな水槽を置いて、中にメダカと水草を入れました。
 眺めていると、1センチほどの小さなメダカが、小さいなりに、懸命に泳いでいます。
 それを見ていると、なぜか幸福な気持ちになります。

 この幸福感は、多分、自分が小さい頃から、家に犬やチャボやアヒルがいたことと繋がっています。
 私自身も中学生の時に、ジュウシマツを買ったり、近所の野良犬に餌をやったり、近くの川でカニを捕まえたりバッタを捕まえたりという経験を数多くしてきました。
 それらが、自分の世界観や幸福感の土台になっているのです。
 こういう子供時代の経験ができたことが、自分にとって一番の宝物です。

 この経験から、私の子供がまだ小さい頃、なるべく早い時期に犬を飼おうと思いました。
 近くでブリーダーを見つけたので、子供が小学1年生になるかならないうちに、1匹の犬を飼いました。
 当時流行っていた「ゼルダの伝説」が、面白かったので、メスなのにゼルダという名前にしました。

 それからは、どこに行くにも、犬と一緒です。
 だから、犬が泊まれない宿泊施設には行けません。
 それから、約15年間、ゼルダの思い出は自分の子供の思い出以上に、懐かしく思い出されます。

 ゼルダは、キャンプに連れていくと、必ずテントの外の入口で寝ていました。
 海に行って、沖で自分が潜ると、浜辺にいたゼルダが急いで飛び込み、自分を助けようとしたのか、潜ろうとした自分をひっかきました。

 帰りの車の中では、日産のキャラバンの後ろにマットレスを敷いていたので、子供たちは、ケンタッキーフライドチキンを食べて、ゼルダと一緒に寝ながら帰るというパターンでした。

 人間の幸福というものを考えるとき、何かを得る幸福というのも確かにありますが、それとともに、今いることの幸福というのもあると思います。
 そのいることの中に、生き物と一緒にいるということがあります。
 さらに言えば、自然の中にいるという幸福です。

 翻って、今の子供たちを見ると、自然との接触が少なくなっているのいではないかと思います。
 虫を見て、「わあ怖い」とか「気持ち悪い」とかいう子と、「わあかわいい」とか「面白い」とかいう子とでは、虫に対する幸福感が違います。

 この感覚ができるのは、人間がかなり小さい頃です。
 大人になると、虫嫌い、犬嫌いは固定化します。

 周囲に好きなものがたくさんあるのが幸福な人生です。
 そのためには、子供が小さい頃から、できるだけ自然の中で遊ばせることが大事ではないか思います。


■■7月の森リン大賞(小5の部)――新しいメダカの家族が増えた話です。読んでいて、こちらまでが思わず微笑んでしまう楽しい作文でした。これからも、メダカの研究をして大事に育ててください。
●動画:https://youtu.be/5fDk4J9MoRI

 7月の森リン大賞をアップロードしました。
https://www.mori7.com/oka/moririn_seisyo.php

 7月の集計をする予定の8月が、教室の移転のために時間が取れず、森リン大賞の選定が遅れてしまいました。

 7月の作品は、いずれも力作でした。

 小5のあかるほ君の作品は、嬉しさが伝わってくるような文章です。
 読んでいると、こちらまでが思わずにこにことしてしまいます。
 実例が生き生きとしているだけでなく、感想も小学5年生らしい大きい感想で書いています。
 こういう作文は、小学生時代の記念になると思います。

ぼくの新しい家族
あかるほ

 「かわいい!」
ぼくは叫んた。ぼくは少し前にペットとしてメダカを買ってもらった。ちょうど5年生の理科でメダカのことについて学んでいて、学校でも飼っている。学校で飼っているメダカを見たぼくは、ぼくもメダカを飼ってみたいなと思っていた。だから、買ってもらうことになったときには、まるで兄弟ができたかのようにうれしい気持ちになった。今ではメダカを7匹飼っている。学校でも飼っているメダカであるヒメダカを4匹、少し品種改良をした黒メダカを三匹飼っている。最初は水草しかなかったけれど、説明書などを見ると岩を入れた方がいいと書いてあったので、岩も追加した。岩は中にもぐれるようにした。そしたらさっそく岩にもぐってくれた。そのときは、岩を追加したかいがあってよかったなと思った。

 ぼくはお父さんとお母さんと一緒に、買った日の夜にエサをやった。最初はぼくがやってみたかったけど、お父さんがやりたそうだったのでやってもらった。しかし、お父さんは誤ってエサを「どばー」と勢いよく、まるでダムが川に水を放流しているかのように入れてしまった。ぼくとお母さんが実は最初に、
「たくさんエサをやりすぎたらダメだよ。」
と注意したばかりだったのに、やはりやってくれた。ぼくたちはカンカンに怒った。次の日起きたら水草にフンがたっぷりついていたので水槽ごと洗った。最近では、エサはぼくがやっている。エサを食べている姿はとてもかわいい。特に手前にあるエサをこっちを見ながら食べているときだ。週一回は水替えをしている。そのときには、お父さんが熱心に取り組んでくれたのでうれしかった。

 買ってから2週間ほど経つと、エサをやろうとしているときにエサをやる場所に来て、きちんとわかってくれていることが分かった。少しなついてくれていることに気づくことができた。意外とメダカは賢かったのでびっくりした。ぼくはお父さんとお母さんに、
「きちんと責任をもって育てるんだよ。」
と少し心配した感じで言われたので、頑張って育てようという気持ちが高まった。ただ、飼ってから1週間程度でフィルターの後ろに入ってしまって1匹が死んでしまった。その後も一週間に一回のペースで死んでいってしまった。水草に不注意にからまってしまったり、弱ってしまって力尽きてしまったメダカもあった。なので少し責任感が強くなったことと、もう死なせないという緊張感が高まった。もう死なせないために、フィルターを水槽にしっかりくっつけたり、水草を広げたり、弱ってしまっているメダカを見つけたら、他の水槽に移したりしていきたい。この間、新しくメダカを買いに、ホームセンターに行った。飼育員さんに、メダカを育てるコツなどを教えてもらった。新たに自然の水草や、水をきれいにしてくれる石巻貝も買ってもらった。これで水槽がもっときれいになってほしい。メダカは前よりも活発に動き、生き生きとしている様子だった。つい最近、家族で静岡に旅行へ行った。神社に行ったときに、住職さんが、ぼくたちにカブトムシを見せてくれた。そしたらそのまま、
「これよかったらもっていきますか?」
と、優しく言ってくれたので、ぼくとお父さんは、
「いいんですか?」
と、お礼を言いながらもらって、カブトムシも育てることになった。とてもうれしくて、今では昆虫ゼリーや登り木を置いてカブトムシが住みやすい環境を作っている。

 ぼくは、ペットを育てるためには、きちんと責任をもつことが大事だとわかった。命は一匹に1つしかないので、1匹1匹を大切に扱っていきたいと思う。これからもエサを計画的にやって、死なせないようにきちんと対策をしたり、水槽も定期的に洗いたい。これから一年も何年も生き延びてほしいし、卵を産んでもらって、次世代のメダカもにもつないでいきたいなと思った。新たなペットとして、カブトムシも増えたので、エサの交換や観察もしっかりしていきたい。

















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