言葉の森新聞2024年3月1週号 通算第1793号
文責 中根克明(森川林)

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■■【連絡】3月から、新学年の教材を使うことができます

 学校は、4月から新年度ですが、すでに現学年の教材を終えた人も多いと思います。

 3月からは、新学年の教材を使って結構です。

 注文は、下記のページからできます。
https://www.mori7.com/teraon/jgkyouzai.php

 新学年の教材でも、最初の方のページは、前学年の復習になっていることが多いです。

 学年は自由に選択できますから、前の学年からやり直したり、先の学年の教材をしたりすることもできます。


 中学生の数学と英語の基準教材は、発展新演習から標準新演習に切り替えました。
 発展新演習には、必要以上の難問が多かったためです。

 どちらを注文することもできますが、通常の高校入試又は中学生の勉強では、標準新演習を100%完璧に仕上げるようにすれば十分です。
 ただし、100%ということを目指して勉強を進めてください。

 数学と英語は、学年の先取りができますので、得意な人は先の学年まで進めて勉強をしていってください。


■■作文の勉強は、中学生から新しい段階の意見文になる。中学、高校の学校の勉強で作文がなくなるのは、単に学校の先生が教えられないから。作文力は、大学入試だけでなく社会人になってからも重要
 小学生までの作文の勉強は、事実文と説明文が中心でした。
 事実文とは、「○○したこと」のような題名の作文です。
 説明文とは、「私の○○」のような題名の作文です。

 小学5年生からの説明文には、「友達とは」とか、「読書とは」とか、又は入試問題では「多様性とは」というような抽象的な主題がはいります。
 この抽象的なテーマを、実例を通して書くことが小学校高学年までの課題です。

 中学生は、その先の意見文の勉強になります。
 意見文とは、「○○は良いか悪いか」のような題名の作文です。
 ここで、自分の意見の裏付けとなる、理由や方法や自分とは別の意見のことを考えて書いていくのです。

 この抽象的な考え方にすぐにはついていけない子は多いです。
 しかし、練習を重ねるにつれて、だんだんと抽象的に考える力がついてきます。

 作文の勉強とは、単に文章を書く勉強ではありません。
 作文の本質は、考える勉強です。

 だから、中学生からが本当の作文の勉強になると言ってもいいのです。

 ところが、中学でも、高校でも、作文の勉強というものはほとんどなくなります。
 それは、なぜかというと、作文の重要性はわかっていても、学校の先生に教える力がないからです。

 小学校高学年の生徒のみなさんは、中学生からが本当の作文の勉強だと考えていくといいと思います。


■■親が言わなければ始められない作文通信教育ではなく、子供が参加すればすぐに自主的に始められる対話式オンライン教育の作文教室。毎週の読書紹介で読書の習慣がつく。作文の勉強は、高校生まで続けられることが大事
 進研ゼミの会員数が低下しているようです。
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進研ゼミの“会員離れ”が止まらない…「難関校を目指す塾」と明暗が分かれた理由
https://nikkan-spa.jp/1979262/
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 この記事では、「難関校を目指す塾」と明暗が分かれたと書かれていますが、私は、紙ベースの通信教育が、家庭では対応しきれなくなったからだと思います。

 通信教育では、子供が自分で勉強を始めなければなりません。
 漢字の書き取りや算数の計算練習のような勉強であれば、親に言われればすぐに始めることができます。
 小学校低学年のころの国語や算数や英語は、作業的な勉強なので、開始するときにそれほどのエネルギーを必要としません。
 しかし、学年が上がるにつれて、考える要素が出てくるので、すぐに始めることがなかなかできなくなります。


 作文の勉強は、それ以上に始めることが難しい勉強です。
 始めるときの精神的エネルギーがかなり必要なのです。
 夏休みの読書感想文の宿題が、最後まで残ってしまうことが多いのはそのためです。

 小学1、2年生のころは、紙ベースの作文の通信教育でも、親の言うことを素直に聞いて作文を書き始めることができるかもしれません。
 しかし、小学3、4年生になると、親に言われてすぐに始めるということがなかなかできなくなります。


 だから、作文の勉強は、通信教育でやるのではなく、ほかの生徒と一緒にやるのがいいのです。
 それができるのが、オンライン少人数クラスの作文です。

 言葉の森のオンラインクラスでは、みんなで一斉に作文を書き始め、書いている途中で、先生が一人ひとりの個別指導を行います。
 だから、未提出ということがありません。

 そして、授業の前に一人ひとりの読書紹介があります。
 毎週の読書紹介によって、どの子も、本をよく読むようになります。

 読書記録のページを見るときに、学年のところをクリックすると、自分と同学年の生徒がどういう本を読んでいるかがわかります。
 小学校高学年以上の生徒は、この読書記録を参考に、読む本のレベルを上げていくことができます。


 言葉の森の作文の勉強は、幼稚園年長から始めることができます。
 まだ字を書けない子であっても、親子作文というかたちで親子合作の作文を書いていくのです。
 この親子作文を始めた子は、なぜかみんな作文が好きになります。


 作文の勉強で大事なことは、小1や小2から始めた作文を高3まで続ける展望で勉強をしていくことです。

 作文教室を選ぶときの基準のひとつは、学年が上がり、中学生や高校生になったときも、その教室で作文の勉強を続けていけるかどうかです。

 小学校低中学年で終わる作文の勉強ではなく、その先の展望のある勉強を行っていく必要があるのです。


■■夏期講習でのディカッションの思い出――どんな文章を読んでも、自分なりの考えを言える子。学校の勉強とはちょっと違う考える力。勉強はやれば誰でもできるが、自分の考えは自分らしく生きていないと出てこない
 昨年2023年の夏休みに、中学生の生徒対象に、国語読解+ディスカッションの夏期講習を行いました。

 テーマとしたものは、国語問題集に載っている説明文の文章です。
 高校入試レベルの文章なので、抽象的な話題がかなりあります。

 その文章について、ひとりずつ自分の考えを言ってもらうのですが、もとの文章をそのまま要約したような意見を言う生徒と、自分なりの体験を通した意見を言う生徒に、ある程度はっきり分かれました。

 どちらも文章を読む力はあるのですが、自分なりの実例と結びつけた意見を言えるかどうかは、考える力の差だと思いました。

 要約は、考えなくてもできます。
 自分の似た実例は、与えられたテーマを自分なりに咀嚼しなければ出てきません。

 これから重要になるのは、勉強ができるかどうかではなく、その勉強を自分なりに消化できるかどうかです。

 では、こういう自分なりの考えは、どういうところで育つのでしょうか。
 それは、ひとつには、読んでいる本の幅の広さによってです。
 もうひとつは、親や友達とそういうテーマについて話をする機会を持つことによってです。
 つまり、自分らし読書や対話の経験を通して、自分らしい意見が出てくるのです。


 言葉の森の作文の課題は、小学5年生の感想文から、かなり抽象的なものになります。
 その課題について、保護者と話ができれば、子供たちの考えは深まります。

 考えの深さというものは、学校の勉強の成績にはあまり出てきません。
 しかし、社会に出てから本当に必要になるのは、この自分なりに考える力の方です。
 自分なりに考える力とは、自分なりに生きる力です。


 学校教育の中でも、夏期講習のディスカッションのような授業ができれば、子供たちの考える力はもっと成長します。

 しかし、数十人が一斉に授業を受ける今の学校のシステムでは、そのような授業は難しいと思います。


■■これからの新しい勉強の目的は、自分らしい仕事をするために幅広い教養を身につけこと、新しいことに挑戦する気持ちを持ち続けること――大学に合格することがゴールであった時代は終わり、社会に出て自分らしい仕事をすることが新しいゴールになる
 今、小中高生のみなさんの勉強を見守っているお父さんも、お母さんも、学校の先生も、塾の先生も、君たちが学校の成績を上げて、いい大学に入ることを目標にしています。

 それは、それらの人たちが、そこまでの目標しかない時代を生きてきたからです。
 つまり、昔は、いい大学に入ったあとの目標がはっきりしていなかったのです。


 しかし、時代は、大きく変わっています。

 今は、資金も、人材も、道具や設備も、宣伝手段も、ほぼ何でも手に入ります。
 だから、誰でも、自分で仕事を始めることができるのです。
 ただし、それは、自分に、ほかの人にアピールできる個性と意欲があったときです。


 やがてベーシックインカムの時代が来て、誰もが自由に自分の好きなことをするようになります。

 なぜ、ベーシックインカムの時代が来るかというと、人類全体の生産力は、人類全体の消費力を上回っていて、しかも、労働はますます機械化、AI化されるので、労働→給与→消費→生産→労働という経済のサイクルが回らなくなるからです。

 ベーシックインカムの時代には、出発点は給与ではなく、国がくれるお小遣いになります。
 お小遣い→消費→生産→富→お小遣いになり、仕事は、自分の好きなことをして社会に貢献することが主な目的になっていきます。

 だから、いい学校に入り、いい会社に入ることを主なゴールにする時代は終わったのです。
 社会に出て自分らしい仕事をして、世の中に貢献することが新しいゴールになります。

 勉強の好きな人は、学問の世界を目指してもいいでしょう。
 しかし、社会に貢献することに結びつかない学問は、盆栽作りのような学問です。
 仕事の目的のうちの重要なひとつが、社会への貢献なのです。


 好きなことをするためには、努力が必要になります。
 その努力とは、読書を通して幅広い教養を身につけること、自分なりの何かに挑戦することです。
 ただし、教養と挑戦は、高校生、大学生の課題で、小中学生は、普通の多読と普通の勉強で十分です。


 総合選抜の大学入試の時代には、高校までの成績はオール4が取れていればよいということになります。
 オール5を目指すような努力は必要なくなります。
 その分、自分の個性を磨いていけばいいのです。

 ところで、オール4が取れる生徒にとって、今の学校教育での授業は退屈です。

 空いた時間をゲームやYouTubeで過ごすよりも、創造発表クラスやプログラミングクラスで、自分らしい学習をすることが、これからの新しい空き時間の過ごし方になると思います。


■■上手な作文とそうでない作文の差は語彙力の差。語彙の多様性が上手な作文の条件。そのためには、読書と対話で、作文の土台となる語彙力を育てていくことが大事。語彙力は知識としてではなく生きた経験として身につく
 昔、中学生、高校生の書いた作文をいくつも見比べてみたことがあります。
 よく見ると、どうしても、ある作文の方が上手に見えます。

 しかし、どこが違うのか、書いてある内容や表現や主題を見ても、そこに大きな差があるようには見えません。
 しかし、何度見ても、ある作文の方が上手に見えるのです。

 そこで、それらの作文の語彙を全部抽出して調べてみました。
 すると、語彙の多様性に微妙な違いがあることがわかったのです。

 語彙の多様性以外に、語彙の種類も関係がありましたが、最も大きな違いは多様性でした。
 上手な作文は、ある内容を表すのに、同じ語彙を使わずに多様な語彙を使って表現しているのです。

 しかし、人間が目で見てもその違いはわかりません。
 漠然と、ある作文の方が上手に見えると感じるだけなのです。
 その差は、機械で集計して初めてわかるような差だったのです。

 その差が集計の差として出るためには、作文の字数は1200字以上必要だということもわかりました。
 600字や800字の作文では、誤差の方が大きくなるので、必ずしも上手な作文の方が点数が高くなるとは言えません。
 しかし、1200字になると、語彙の多様性と人間が見て上手だと感じる感覚は一致してくるのでした。


 では、作文の勉強法として、どうしたら語彙が多様な作文を書けるのでしょうか。
 その方法のひとつは読書で、もうひとつは対話なのです。

 作文力は、言わば氷山の水面上に出ている部分で、その水面下には読書力というより大きな土台があります。

 だから、作文力は、書いたあとの添削によって上達するのではなく、その土台となる読む力をつけることによって根本的に上達するものなのです。

 ところで、小学4年生までの作文は、主に事実中心の生活作文です。
 だから、物語文の本を読んでいる子は、生活作文を上手に書けます。

 しかし、小学5年生からは説明文、中学1年生からは意見文になります。
 この時期に、説明文、意見文の本を読んでいないと、作文に必要な語彙が出てきません。

 今の学校では、中学生や高校生で作文の指導がされることはほとんどないので、高校生でも生活作文のような文章を書いている人は意外と多いのです。


 作文力のもうひとつの土台は、対話です。
 小学生でも、親子の対話が多い子は、自然に長い感想を書きます。

 対話の少ない子は、「とてもたのしかったです。」というような条件反射的な感想でまとめてしまうことが多いのです。

 この親子の対話は、子供の話を引き出すことではありません。
 親がいろいろな話をしてあげることです。

 その親の話も、単なる知識の伝達のような話ではなく、子供が面白がり、しかも考えることのできるような深みのある話であることが理想です。
 だから、親も読書によって日々新しい話題を仕入れておく必要があるのです。

 語彙力は、語彙の勉強でつくものではありません。
 語彙力のドリルや辞典や図鑑などは、気休めです。
 知識として語彙を覚えても、使える語彙にはなりません。
 読書や対話という生きた経験を通して身につけた語彙が、使える語彙になるのです。


 作文は、上達に時間のかかる勉強です。
 数学や英語は、本気になって取り組めば、数か月で著しく上達させることができます。
 苦手な子が普通になり、普通の子が得意になることまでできるのです。

 しかし、作文で、苦手な子が普通になり、普通な子が得意になるのは、数年間という遥かに長い時間がかかります。

 だから、作文指導で大切なことは、子供が書いたものを褒め続けて、何しろ勉強を持続させることです。

 作文の欠点を直して上達させようとすると、2、3回は効果があるように見えますが、それだけです。
 そして、直して上達させようとした子は、結局、作文の勉強を早々とやめてしまうのです。
 子供の作文を親が指導するのが難しいのは、そういう事情があるからです。


■■【合格速報】
●早稲田大学先進理工学部物理学科・聖マリアンナ医科大学  K.S.さん

<担当講師より>
 小論文の試験で言葉の森の勉強が役に立ったと嬉しそうに話してくれました。













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