言葉の森新聞2024年5月3週号 通算第1803号
文責 中根克明(森川林)
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■■小3や小4で、塾が忙しくなったからという理由で作文をやめるのはもったいない――あとに残る本当に大事な勉強は、読書と作文と遊び
●動画 https://youtu.be/jkQZ9r7LH_k
子供の勉強は、長期的な見通しを持つことが大切です。
受験という目標があると、そこにすべてを集中してしまいがちです。
特に、今は、塾でも競争を煽るようなかたちで大量の宿題を出したり、頻繁なテストを課したりするので、子供も親も、その塾のペースに流されがちです。
しかし、よく考えてみればわかるように、受験勉強で、あとに残るものはあまりありません。
受験の算数は、差をつけるための算数なので、難しい問題が出てきますが、その難しさはあとに残りません。
数学は、中学や高校でしっかり勉強すればいいのです。
苦労して中学受験の勉強をした子と、小学生時代のんびり遊んでいた子が、結局同じ大学に合格するということは、よくあります。
本当の勉強は、子供が自覚してから始まるので、中学3年生から高校3年生にかけての勉強が、最も大事なのです。
受験勉強で、あとに残るものはあまりありません。
そのかわり、小学生時代、本当にあとに残るものがあるとすれば、それは読書と作文と遊びです。
これらは、子供の感受性、思考力、表現力を育てます。
それが、最もあとに残る学力なのです。
塾に通うと、勉強時間が増えるので、初めのうちは作文の勉強との両立は難しいと感じる人もいると思いますが、その忙しい時間もやがて慣れてきます。
受験勉強中も、できるだけ、読書と作文の勉強は続けて、どうしても時間的に無理になったときだけ、いったん休会して、また、中学受験の合格後に再開すればいいのです。
言葉の森の作文は、高校3年生まで続けられます。
言葉の森には、小学1年生から作文の勉強を始めて、高校3年生まで続けている生徒が何人もいます。
うちの子2人もそうでした(笑)。
長い展望を持って、作文の勉強に取り組んでいきましょう。
■■国語、算数数学、英語、基礎学力、総合学力などのクラスで、勉強が進んでいない子については、自習室への参加を義務付けることを検討中
勉強の中心は、家庭学習です。
しかし、子供たちの中には、家庭での学習は、学校の宿題をやるだけという子もいます。
言葉の森の学習記録を見ると、国語、算数数学、英語とも、問題集は毎週5~10ページ進んでいなければならないはずです。
https://www.mori7.com/gs/
しかし、1週間で、ほんの数ページだったり、記録をつけ忘れたりしている子がいます。
週に1回、授業に参加するだけでは絶対に力はつきません。
明らかに学力のない子が、1週間で1、2ページしか勉強していないということがあります。
そういう子は、勉強したページに関して質問しても、うまく答えられなません。
子供の本文は、勉強です。
しかし、それは、学校に通うことではなく、家庭で毎日の自主学習をすることです。
そこで、今後、問題集のページが進んでいない子については、自習室の参加を義務づけるようにします。
学習グラフを見れば、学習状況がわかりますから、それをもとにして、保護者に連絡し、毎日必ず一定時間は、自習記録をつけ、自習室に参加して勉強するということを義務づけたいと思います。
https://www.mori7.com/teraon/js.php
人間は、中学2年生ぐらいまでは勉強の自覚がないので、家庭がしっかりしていなければ、子供は勉強をさぼりたくなるのが普通です。
この自習室参加の義務付けを、当面、一部のクラスから始めて、やがて全クラスに広げたいと思います。
対象の生徒は、次のクラスの生徒です。
・国語読解クラス
・算数数学クラス
・英語クラス
・基礎学力クラス
・総合学力クラス
・全科学力クラス
■■英語教育のし過ぎにならないように。日本人は、母語である日本語が学力の土台。日本語力の土台の上に、外国語を学ぶという姿勢が大事。
日本人の学力の土台は、日本語です。
こういう単純なことがわからない人があまりに多いので、この記事にはいろいろなクレームがあるだろうことを承知の上で書いておきます。
昔、レストランで、後ろの席にいた親子連れで、子供がまだ幼児だったと思いますが、母親が熱心にカタコトの英語で話しかけていました。
教育熱心なのは、いいことですが、その熱心さの方向が違うと思いました。
英語教育の第一人者とに言われるような鵜沢戸久子さんが、幼児期から英語をシャワーを浴びるように聞かせるといいという最初の方針を改め、「幼児期は、英語のCDは15分程度で留めることが必要」と書くようになりました。
「日本人の小学生に100%英語をマスターさせる法」
幼児期から英語をさせすぎる弊害を感じたからです。
幼児期からの英語学習によって、英語の日本語も、どちらも不十分になるということなのです。
英語教育者の渡部昇一さんは、「英語の早期教育・社内公用語は百害あって一利なし」という本を出しています。
英語教育に携わる人は、こういう本を一度は読んでおくといいと思います。
以前、教育系の雑誌で見た記事ですが、日本で暮らしている小学校高学年の子供の保護者が、「うちの子は、日本語の本より、英語の本をよく読むのです」と言っていました。
どちらの言語で読むかということよりも、その本の内容がどういうものかということが大事です。
英語で、「ジャックと豆の木」や「赤ずきんちゃん」の本が読めると言っても、それが何かの実力につながるわけではありません。
言語ではなく、内容のある難しい本をしっかり読めることが大事なのです。
AIの発達で、最も影響を受ける教科は、英語です。
AIは、どんなベテランの英語の教師よりも英語が得意です。
英語と同じような教科は、国語、理科、社会です。
こういう教科の先生は、もう人間がやる必要がなくなるのです。
今のAIで、まだついていけない教科は、数学です。
AIは、膨大な情報から確率的に答えを出しているだけで、論理的に答えを出しているわけではないからです。
AIの今後の進化を考えると、外国語については、ポケトークのような機器が発達して、言語の壁はなくなります。
だから、今の英語の勉強法と同じかたちで、中国語やドイツ語やフランス語を学ぶのは、時間の無駄でしかありません。
やがて、このことが理解されるようになると、英語の入試自体がなくなり、英語の代わりに、「多様な文化の理解」のような教科になります。
これは、語学の勉強というよりも、社会科の勉強です。
教育に携わる人は、こういう長期的な見通しを持っておくことが必要です。
では、英語の先生を今やっている人は、何をしたらいいかというと、これまでの語学教育の経験を生かして、日本語教育をやっていくのです。
英語は、伝達の言語です。
だから、世界中に広がりました。
しかし、AIの発達によって伝達のツールは、言語の壁を超えるようになりました。
一方、日本語は、単なる伝達の言語ではありません。
日本語は、教育の言語です。
だから、言語の教育を行うとしたら、外国の子供たちに日本語の教育をしていくといいのです。
インターネットの時代には、世界中の子供たちに日本語の教育を行えるようになります。
幼児期からの日本語教育が、これからの世界の教育のトレンドになると思います。
その教育ができるのは、日本語を母語としてきた日本人です。
明治時代になって、それまでの江戸時代に必要だった馬術や剣術の練習が必要なくなったように、AI時代は、今後、学習の大きな転換点になります。
漢字の書き取りや、ややこしい計算練習や、理科や社会のどうでもいい知識は、もはや、人間がすることではなくなります。
単子葉植物と双子葉植物の維管束の形状の違いなどは、ネットで調べればすぐにわかることです。
テストで、記憶力を評価するような知識ではありません。
むしろ、そういう単子葉と双子葉の違いがなぜ生じたのか、もし自分が植物だったらどうしたいと思ったかという創造的な学習の方が大事です。
しかし、創造の問題は、定期テストには出てきません。
では、何がこれからの勉強の中心になるかというと、それは哲学と数学と芸術です。
哲学とは、言語を使った学問の総称ですから、政治学、経済学、心理学、倫理学など、言葉を使ったあらゆる分野を含みます。
数学は、物理学や化学や工学も含みます。
芸術は、文学や音楽や舞踊や絵画や彫刻のほかに、新しいジャンルの芸術がこれから生まれると思います。
スポーツは、競争という面をなくし、芸術と同じような共感と交流のスポーツになると思います。
■■未来を生きる子供たちの本「空想教室」――小さな町工場でロケットを飛ばした植松電機社長植松努さんの話
これは、面白い本なので、小学校高学年から中学生や高校生の子供たちにおすすめです。
もちろん、保護者の方にもおすすめです。
「空想教室」
私の感想は、「もうこんな本が出てきたんだなあ」ということです。
私は、昔から、ずっと人間の勉強の目的は、独立して自分らしく生きることにあると思ってきました。
ただ、そういうことを言っても理解してくれる人はいないだろうとも思っていました。
しかし、時代は、少しずつ変化しています。
言葉の森は、受験対策もしています。
特に、作文小論文試験では、毎年多くの子が参加し、志望校に合格しています。
しかし、大学入試に合格することは、その先の長い人生を考えたらどうでもいいことです。
確かに、今の会社の就職試験は、大学の名前で学生を評価しています。
だから、いい大学に入っていれば、とりあえず安心です。
しかし、これからは、就職は、人生の到達点ではなくなります。
人間は、一生、自分らしい人生を創造して生きていくのです。
このことは、なるべく若いうちに気づいておくことが大事だと思います。
■■読書量を増やすなら、付箋読書。小学校高学年、中学生、高校生の生徒は、物語文の読書だけでなく、説明文意見文の読書を
●動画 https://youtu.be/dsRM3YgKxY4
子供が本を読んでいれば、お母さんお父さんは安心するかもしれませんが、その本の中身が大事です。
小学校低学年の子で、いつまでも絵本のような本を読んでいる子がいます。
ほのぼのとした内容で、いい本なのですが、それだけで終わっていては、読書力はつきません。
小学校低学年の子は、字の多い本を読む必要があるのです。
小学校高学年や中学生、高校生で、いつまでも物語文の本を読んでいる子がいます。
物語文は、楽しく面白く読めますが、それだけで終わっていては、思考力はつきません。
小学校高学年以上の子は、説明文、意見文の本を読む必要があるのです。
ところが、説明文、意見文の本を読むと、途端に読書量が低下する子がいます。
その理由のひとつは、読む力がついていないからです。
もうひとつは、読み方のコツを知らないからです。
物語文は、ストーリーに引っ張られて最初から最後まで読むことができます。
しかし、説明文、意見文は、ストーリーがないので、途中で読むことに飽きると、そこで止まってしまうことが多いのです。
説明文意見文の読書で大事なことは、面白くないところは飛ばし読みをして、面白いところだけを読むことです。
そして、できるだけ、いいと思ったところに傍線を引いて読むことです。
しかし、漠然と飛ばし読みをすると、どこまで読んだかわからなくなるので、結局最後まで読み切ることができなくなります。
付箋読書という方法は、説明文意見文の本を読むのに役立ちます。
この方法で読めば、複数の本を並行して読むことができます。
また、読みかけでしばらく読まなかった本でも、すぐに再開することができます。
▽「付箋読書の仕方」
https://www.mori7.com/as/1367.html
しかし、私は、いくらこういうことを説明しても、やる子はほとんどいないだろうという気がします。
人間は、習慣をなかなか変えられないからです。
例えば、話は変わりますが、玄関では靴をそろえて脱ぐということや、席を立つときは椅子をしまって立つというようなことは、簡単なように見えますが、定着させるのに子供でも1年近くかかります。
大人は、たぶん、ほぼできません(笑)。
そこで、将来的に考えているのは、読書クラスです。
難読クラスと言ってもいいと思います。
難読検定とセットにする予定です。
そのクラスでは、学年相応の難しい本をばりばり読んで、読んだあと、みんなでディスカッションをするのです。
ただ、そのための読書のリストを作るのに時間がかかるので、スタートは少し先になります。
いい本でも絶版になることがあるので、kindle化された本が中心になります。
そのうち、本のリストを作るための研究会を立ち上げたいと思っています。
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