国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)




■国語の苦手な子の原因と対策のエッセンス  20131203  20232

 国語の苦手な子が増えているようです。
 その原因は、
1、「国語なんて、誰でも自然にできるのだから」
2、「努力しないとできない算数や英語に力を入れて」
3、「ほかにも、バランスよく音楽やスポーツにも力を入れて」
4、「国語については、一応問題集をやっていればいい」
という勉強の仕方をしてきたからだと思います。
 本当は、
1、国語は自然にできるものではなく、毎日の生活の中で読書や対話を充実させることがカギで、
2、算数や英語は、国語力があればあとからでも間に合うので、無理に難しいことをしたり先取りしたりする必要はなく、
3、音楽やスポーツは枝葉で、子供の人生の幹は学問と考え、
4、問題集で力がつけようとするのではなく、読書と対話で力をつける。
という考え方をしていくことが大事なのです。
 もちろん、問題集にも活用の仕方はあります。それは問題を解くのではなく、問題文だけを読書と同じように読んでいくことです。
 このやり方なら、問題を解くときと比べて何倍も早く国語力がつきます。本当です(笑)。だまされたと思ってやってみてね。



■苦手だった国語なのに模試で満点に  20140103  20385

 国語の読解問題の成績を上げるコツは、読解の仕方を理屈で理解することです(理詰めにやるのが大事)。
 国語力を上げるコツは、難しい本を読むことです。しかし、そういう本は手に入れにくいので、入試問題集を読書がわりに読むといいのです。
 一方で面白い本を多読し、他方で難しい問題集を精読するという読み方です。精読とは、詳しく読むことではなく繰り返し読むことです。昔はこういうことを教えてくれる人がいなかったので、今の中高生は勉強の仕方の面で恵まれています。
 ちなみに、数学の成績を上げるコツは、わからなかったらすぐに解法を見てその解法を自分のものにすることです。しかし、これは成績を上げるコツであって、数学の本質とは関係ありません。
 英語の力をつけるいちばんの土台は、英語の教科書を音読することです。
 これらの国語、数学、英語の勉強中で何がいちばん大事かというと、難しい本を読むことです。
 その難しい本を読むのに最適な時期は、高校3年生ぐらいからの数年間です。だから、大学ではもっと学生に難しい本(というか古今の古典)を読ませるといいと思います。
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 今日、作文を書きにきた中3の生徒に、勉強が終わったあと、将来の仕事の話などをしていました。「どんな教科が好きなんだい」と聞くと、「まあ理科ですけど、国語もよくなってきて。いちばん苦手だった国語が、模試で満点取ったりして」ということでした。
 実は、その生徒は中2の終わりごろ、お母さんと一緒に、「国語のテストだけがこんなに悪くて」と見せにきてくれたのです。
 そのテストを見ると、感覚的に解いていることがすぐにわかったので、「これは大丈夫。これから理詰めにじっくり解く解き方を説明するから」と言って、しばらく解き方の説明をしました。それから、問題集読書をすすめておいたのです。
 だから、国語が苦手といっても、頭さえよければすぐに成績は上がります。それも満点レベルにまで上がるのが国語です。大事なことは、小学生のころから国語の問題集などをやるのではなく、楽しい読書と対話で頭をよくしておくことです。頭さえ鍛えておけば、高校入試の受験勉強は1年(もかからないぐらい)で大丈夫です。ただし、その受験勉強の1年間は燃えて取り組むことが大事です。
 ラストスパートで集中するためにも、勉強はあまり早い時期からガンガンやらない方がいいのです。



■国語力をどのようにしてつけるか  20140502  20907

 国語の勉強というと、漢字の書き取りをしたり、国語の問題集を解いたりするというやり方が一般的です。しかし、それでは本当の国語力はつきません。問題を解いて、その解説を聞いても、それで問題が解けるようにはならないのです。これが、国語の勉強が、算数、英語、理科、社会などほかの勉強と違うところです。
 では、どうしたら国語力はつくのでしょうか。それは第一に読む力をつけることです。第二には、書く力をつけることです。そして、第三には選択問題を選ぶコツを身につけることです。
 言葉の森の勉強では、読む力をつける練習として、難しい長文を読み取る練習をしています。また、書く力をつける練習として、一定の構成をもとに文章を書く練習をしています。また、読解問題の解き方のコツを身につけるために、読解問題集を用意しています。
 算数も、英語も、もとになるのは国語力です。小学校低中学年のときは、算数の計算力が大事ですが、学年が上がると、計算力よりも文章題を論理的に考える力が要求されるようになります。
 また、英語も、中学生の間は英語の勉強だけで何とかなりますが、大学入試レベルになると、英語力そのものよりも、英語の文章の中身を読み取る力、つまり国語力が重要になってきます。
 国語力がないと、算数・数学、英語も、途中から伸び悩むようになります。逆に、国語力があれば、算数・数学、英語の勉強で力をつけるのは、比較的短期間にできるのです。
 読む力、書く力、問題を解くコツのうち、最も誤解の多いのが、読む力をつけることです。読む力をつけるためには、多読と精読の両方が必要です。
 多読をするためには、まず毎日本を読む生活をしていなければなりません。小学生の1週間の平均的な読書冊数は2~3冊と言われています。国語力のない生徒は、この読書量がまず不足しています。なぜ読書量が不足するかというと、問題を解くような能率の悪い勉強に時間をかけているからです。
 読書はしているが、難しい文章を読んでいないという生徒も、国語力が伸びません。難しい文章は精読する必要があります。しかし、多くの人が、精読とは、知らない単語を辞書で調べるなどしてじっくり読むことだと考えています。そうではありません。精読とは、じっくり読むことではなく、繰り返し読むことです。繰り返し読むためには、音読をする必要があります。
 言葉の森の音読は、精読のための音読です。音読を繰り返しするから、難しい長文が頭に入り、それをもとに家族とその長文に関する対話ができるようになるのです。



■国語力をアップさせるコツと付箋読書  20141001  21558


 国語が苦手という生徒には、(1)毎日の読書、(2)課題の長文の音読、(3)感想文の課題の予習、そして、(4)余裕があれば問題集読書をと言っています。
 更に、その上に、毎月の読解問題を全問正解になるようにじっくり解くように説明します。
 すると、必ず国語の成績は上がります。その上がり方も、かなりはっきりしています。
 小6のとき国語がいちばん苦手だったという生徒が、中3になるころには、国語の成績がいちばんよくなるということも実際にあります。そして、第一志望の難関高に受かった子も何人もいます。
 だから、国語の力をつけるというのは、実は平凡なことの積み重ねなのです。
 しかし、小学生のときまでに国語が苦手だったという生徒の中には、読書の習慣がついていないことも多く、受験に合格すると、ついそれまでの勉強法を忘れてしまい、読書から離れてしまう生徒も多いのです。
 すると、高校生になったばかりのころは国語が得意だった生徒が、高3になるころにはまた国語が苦手になるということもあります。
 だから、いつでも本を読む生活を忘れてはいけないのです。
 読書は習慣ですから、1日読まなければ、1日分読書から遠ざかります。そして、何日か読まない生活が続くと、読書をしない生活が普通の生活のようになってしまうのです。
 これは、大人でも同じです。毎日10ページでも読むと決めておけば、読書のある生活から離れることはありません。
 しかし、読まない日が何日か続くと、そのあと新しく本を取ることが億劫になるのです。
 この毎日の読書を続けるのに最もよい方法が、付箋読書です。
 毎日どんなに忙しくても最低10ページは読むと決めておけば、10ページを読むのにかかる時間はせいぜい10分ほどですから、読書から離れることはありません。
 読み終えたところに付箋を貼っておくと、わずか10ページでも、確実に読み終えたという実感が残ります。これがもし付箋を貼らずに読むとなると、10ページほどでは張り合いがない気がするので、「いつか時間のあるときにじっくり読もう」と思って、結局読まないことになってしまいます。
 人間は、中身よりも形を基準にして生きています。
 読書も、読んだ形を残すことで続けやすくなるのです。



■国語の勉強のコツ、算数の勉強のコツ  20141101  21682

●国語の勉強のコツ
 現在、既に入試問題集で問題集読書をしている人が多いと思います。
 しかし、入試問題集は、文章は時事的で優れた内容のものが多いのですが、受験という差をつけるテストであるため、問題自体は参考にならないものも多く含まれています(例えば、ほとんどの人が解けないような問題があるなど)。
 また、ページ数が多いため、1冊を年間を通して5回繰り返すという読み方はなかなかできません。
 だから、入試問題の問題集読書は、これからも読書がわりに楽しく読む教材として使い、それとは別に市販の国語読解問題集を、新しい問題集読書として取り組む予定です。
 やり方は、次のようになります。
(1)新しい問題集読書は、小1から中3まで取り組めます。(高学年の生徒が持っている入試問題集は、これからも時間を見て読書がわりに読んでいきます。)
(2)1日2ページぐらいを目安に取り組みますが、それより少なくても多くてもかまいません。
(3)最初に、自分の読むページの分だけ、問題集に答えを書き込みます。(問題を解くのではなく、先に答えを書き込み、その答えと問題をセットで読んでいくという勉強法です。)
(4)問題集読書は、国語の勉強の得意な人は黙読で読んでもかまいませんが、普通の人や苦手な人は、長文と問題と答えを全部音読で読んでいってください。特に、今回は長文だけでなく問題と答えを読むことも入るので音読の方が頭に入りやすくなります。
(5)読んでいる途中に、自分で線を引きたいと思ったところに線を引きます。線を引くのは、大事なところだけでなく、面白いと思ったところ、よくわかったところなど自由です。線は、カラーのペンではなく、できるだけ鉛筆やシャープペンで引いてください。何度も繰り返し使うものは、カラーペンよりも鉛筆やシャープペンの方が向いています。
(6)問題集読書をしたあとの感想は、長文を読んだ感想だけでなく、問題と答えに関する感想でもいいです。例えば、「この問題は答えを見て初めてわかったので勉強になった」「この読解問題の答えで、なぜほかの選択肢が正しくないかというと理由はこういうことだと思った」などでもいいです。大事なことは、読んだあと何らかの感想を書くということです。
(7)1冊の問題集が最後まで終わったら、また最初に戻り同じようにやっていきます。1冊を1年間で5回繰り返して読むことが目標です。
●算数の勉強のコツ
 算数の勉強法のコツは次のとおりです。
(1)ノートは幅広く使います。複雑な計算は、横に伸ばすよりも、=の位置を基準にして縦にきれいにそろえるように計算過程を書いていきます。
 特に、うっっかり計算ミスが多いという人は、そろえてきれいに幅広く書き、そしてできるだけ頭の中で暗算せずにいちいち紙に計算の途中の過程を書くというようにしていってください。
(3)少しでもわからないところがあった問題は、必ず問題集に×をつけておき、あとで繰り返して取り組むようにします。
 勉強で大事なのは○がつくことではなく、×がつき、それがあとでできるようになることだという考えをしっかり定着させていってください。
(4)問題集には、答えや計算過程を書き込みません。問題集には○と×をつけるだけです。問題番号と計算過程と答えは、ノートに書きます。
(5)勉強にかかった時間を測り、その時間を記録するようにします。これは、時間を意識して勉強するようにするためです。
(6)できなかった問題は、解法を理屈で理解しようとしてもなかなかすぐには理解できません。また、同じ傾向の別の問題をやってもすぐにはできるようにはなりません。
 全く同じ問題を次の日も同じようにやります。2日目でまだすぐにはできなかったら、3日目も、4日目も同じようにやります。つまり、問題と答えのセットを覚えてしまうぐらい繰り返してスムーズにできるようになると、自然にその理屈がわかってきます。そして、1冊の問題集が終わったら、またそのできなかった問題をします。
(7)このようにして、1冊の問題集を1年間で百パーセントできるようにします。
 これが算数の勉強のコツですが、この方法はどの教科にも通じます。



■国語は問題を解くのではなく何度も読むこと  20141202  21835

 国語の勉強の仕方と、算数数学の勉強の仕方はかなり違います。しかし、それを同じようにやっている人が多いようです。
 国語の勉強というと、漢字の勉強をするか、国語の問題集を解くかするという人が多いと思います。しかし、問題集を解いても、ほとんど力はつきません。問題文を読むというところだけは役に立ちますが、問題を解くという作業はほとんど役に立たないのです。
 しかも、問題を解くには、かなり時間がかかります。時間がかかるので、中には、問題を解くことだけ熱心にやって、やっと問題を解き終わると、答え合わせもせずに勉強をしたことにしてしまう人もいます。
 読解の選択式の問題で大事なことは、合っている選択肢を探すことではなく、合っていない選択肢のどこが合っていないかを探すことです。しかし、問題を解く勉強では、なかなかそこまで気が回りません。
 では、どうしたらよいかというと、問題集に先に答えを書き込んで、その問題と答えをまとめて読んでいくのです。小学生の場合は、黙読では斜め読みになり眺めるだけになってしまうことも多いので、音読で読むようにします。
 ところで、子供が音読で何かを読むと、親はついその読み方が気になって注意をしたくなるものですが、読み方についての注意は原則としてしません。
 注意をして直るという効果よりも、注意をして親の前で読むのを嫌がるようになるという逆効果の方がずっと大きいからです。
 そして、どんな下手に思える読み方であっても、「読むのがだんだん上手になってきたね」と褒めてあげます。そうすると、読み方は、注意をするよりももっと早く上手になってきます。
 さて、問題を解くのではなく、問題と答えを読むのが大事なのですが、この読むことも1回読んでおしまいというのではやはり力はつきません。
 何度読んだらよいかというと、1冊の問題集の最後まで行ったら、また最初から今度は音読で読んでいくという形で、5回繰り返して読むのがよいのです。
 この繰り返し5回というのは、あらゆる勉強に共通する方法です。というのは、難しい問題や文章であっても、3回繰り返すと大体わかるようになり、4回目でほとんどわかるようになるということがあるからです。
 人間の頭には、時間をかけて繰り返すと自然に理解できるという力が備わっています。一度か二度じっくり説明してわからせようとするよりも、もっと簡単に、ただ日をおいて5回繰り返すという勉強をしていけばよいのです。
 このやり方で、難しい問題集をどんどん読んでいくのです。
 国語力は、難しい文章を読まなければ力はつきません。
 しかし、難しい文章がいいからといっても、読書で難しい文章を読ませようとすると、読書量が少なくなります。読書は、自分の好きな本をたっぷり読んでいくことが大事ですから、読書で国語の勉強を兼ねるというようなことはしない方がよいのです。
 ただし、易しい読書であっても、本を読んで登場人物に共感する機会が多いと、物語文の読解力がつきます。
 説明文の読解力は、易しい読書ではつきません。しかし、難しい読書では読書がはかどりません。
 問題集の文章は難しいものが多いので、問題集読書を、通常の読書と並行する形で読んでくとよいのです。



■国語の勉強法(その1)(つづき)  20150101  21946

 問題という形式を見ると、すぐに問題を解こうとする人がいます。しかし、国語の問題はいくら解いても力はつきません。解けた問題は、やらなくても解けていたはずの問題ですし、解けなかった問題は、たとえ答えを見ても、次回からそれで解けるようにはならないからです。国語の問題は、解けても解けなくても、どちらも実力にはなりません。しかも、問題を解くというのは、もっと大きなマイナスがあります。それは、一つは時間がかかることです。もう一つは、結局1冊の問題集を1回しかやらない結果になることです。更に、問題を解く形の勉強は、構える勉強になるので、気軽に続けられないというマイナスもあります。
 問題を1ページ解いている時間があったら、同じ問題集の問題文だけを5ページから10ページは読めるはずです。したがって、1冊の問題集を全部解いている時間があったら、同じ問題集の問題文だけを5回から10回は繰り返し読めるはずです。それも、電車の中でもベッドの中でも、どこでもできる気軽な勉強として続けられるのです。
 子供が小学生のころは、読むだけの勉強というスタイルは、親が見ていて不安になるようで、つい問題を出したり、わからない言葉を調べさせたりする勉強を追加したくなるようです。しかし、こういう一見勉強的なやり方は、多くの場合、マイナスにしかなりません。その理由は、面倒で複雑なことをすると気軽に長続きする勉強にはならなくなるからです。同じ文章を何度も読んでいると、子供自身から、わからない言葉や意味について自然に質問をしてきます。そのときに、親が辞書がわりに簡単に答えてあげればいいのです。辞書で調べる勉強は、調べる勉強として独自にやるものです。読む勉強と調べる勉強を一緒に行おうとすれば、どちらも中途半端になるだけです。



■国語の勉強法(その2)  20150101  21948

 第二のアドバイスは、点数に一喜一憂するのではなく、実際に親が子供と一緒に、できなかった問題を解いてみるということです。これは、小学生のうちだけでなく、中学生や高校生になっても有効です。
 しかし、その場合、問題は、模擬試験や過去の入学試験のようにじっくり練られたものであることが必要です。模試や入試の問題は、受験生の実力を見るために時間をかけて作成されています。そのため、理詰めで考えて解いていくことができるのです。
 子供と一緒に問題を解いてみると、意外なことがわかると思います。よくあるいくつかの例を挙げてみましょう。
 小学生で多いケースは、問題文を読むスピードが遅いので、あてずっぽうで答えて×になるという例です。時間をかけて考えればできるのに、試験ではできないというのは、大抵このケースです。これは、実は思ったよりも重大な国語力不足で、短期間で成績を上げることはできません。読むための基礎的なが不足しているからです。速読力は、読書量に比例しています。小学校中学年のころまでに、好きな本をたっぷり読んだ子は、自然に速読力がついています。しかし、この場合の読書は、学習漫画や図鑑のように文の長さが短いものではありません。学習漫画は決して悪いものではなく、歴史の漫画などは、全体像を把握し、歴史に親しみを持つことには大いに役立ちます。しかし、漫画の吹き出しのような文章ばかりを読んでいると、長い文章を読む力が低下してしまうのです。小学校中学年までは、勉強する時間よりも読書をする時間を優先するぐらいの方が、高学年になってから本当の実力がついてきます。
 しかし、読む力が遅いということが問題になるのは、小学校の高学年のころまでです。その後、中学、高校と年齢が上がるにつれて、読むスピードは自然に上がってきます。それは、単純に、年齢に応じて読む量が増えていくからです。どんなに本を読まない子でも、学校の授業で教科書を読む時間は必ずあります。それが歴史の教科書や生物の教科書であっても、学校生活で活字を読まないということはまずありません。読む量が増えれば、読むスピードは自然に速くなっていきます。
 したがって、速読力のない子の場合は、受験が間近であっても、読む練習をすることから国語の勉強を始める必要があります。読む勉強をするときの最も手っ取り早い教材は国語の問題集です。しかし、問題集には読書に没頭するような面白さがありません。受験が終わってから、じっくりと読書をする習慣をつけていきましょう。この読む力がないままに、いくら国語の問題を解いたり解説を聞いたりしても力はつきません。
 第二のケースは、逆に、読む力のある子に見られる例です。問題に対する答えを、文章全体から考えて自分の体験に照らし合わせながら答えてしまうのです。例えば、「このとき、浦島太郎がカメを助けた気持ちはどんなだったでしょう」などという問題で、その問題文の前後の文章から答えを探すのではなく、自分の体験から類推して答えてしまうのです。「そういえば、この前、ミドリガメを買ったときは、こんな気持ちだったなあ」という答え方です。
 国語の問題の答えは、設問で指示されている部分の前後5行ぐらいの中にあるのがほとんどです。普通の易しい問題では前の5行の中に、やや難しい問題では後の5行の中に答えが隠されています。もし、それ以外のところに答えが隠されているようならば、それは悪問です。できなくても仕方がないと考えておくとよいでしょう。
 読む力があるのに×が多いという子には、「答えは文中にある」ということを教えてあげると、それだけで成績が大きく変わることがあります。
 第三のケースは、中学生などによく見られます。自分の知らない難しい言葉があると、それを正解に選んでしまうというケースです。このこと自体はそれほど大きく点数に響くものではありませんが、こういう答え方をするその発想に実は大きな問題があります。
 テストというものは、よい点数を取るためにあるのではありません。もちろん、入試のようによい点数を取って合格することが目的になるテストもあります。しかし、ほとんどのテストは、自分の実力を評価し、その後の勉強に生かすためにあるのです。それが学校の定期試験でも塾の席順を決める試験でも同じです。ですから、わからない問題があったときに、勘で答えて○になってしまうと、その問題ができなかったことがわからなくなってしまいます。つまり、点数はよくなっても実力はかえってつかなくなるのです。
 子供はどうしても目先の点数だけに目が行きます。人生経験の長い大人は、長期的な視野を持って、わからない問題は、適当に答えを入れるのではなく、わからないままに残しておくことが大切なのだと教えてあげてください。
 さて、最も重要な間違いのケースは、合っていそうな答えを選んで×になる例です。国語の問題の答え方は、合っていそうなものを選ぶのではなく、必ずしも合っていそうでないものを選ばないというやり方です。これを消去法と言います。
 もし、国語の答えが、合っていそうなものを選ぶだけで作られるとしたら、学年が上がるにつれて問題作成はどんどん困難になります。高校3年生の生徒に、普通の日本語の文章を読ませて、そこから正解を問うような選択式の読解問題を作るのは至難の技です。そのために、国語の問題は、問題文自体を難解な悪文にしたり、読む量を増やしたり、これから説明する消去法で解くような歪んだ方向に向かってしまうのです。この歪んだ国語問題をなくすには、選択問題を減らし、記述問題、特に小論文を増やすことが必要です。



■国語力をつけるための国語問題集読書は、音読と対話で補強する  20150104  22053

 国語力の本質は、その学年相当よりも難しい語彙や内容の盛り込まれた文章を読み取ることができ、また、そのような語彙を使って表現ができることです。
 この難しい文章を読み取る力、つまり「難読力」というようなものは、読み慣れることによって身につきます。
 よく難しい文章に出てくる語彙を逐一辞書で調べて、確実に理解しようとする人がいますが、そういう勉強法は長続きしません。
 また、難しい語彙がいくつか出てくると、もうあきらめて読む気をなくしてしまう子も多いのですが、それではいつまでたっても難しい文章を読めるようにはなりません。
 そこで、大事になるのは、とりあえず声に出して読んでみるということです。
 声に出して読もうとすると、内容に理解できないところがあっても、一応最後まで読み通すことができます。
 文章が理解できないというのは、決して百パーセント理解できないということなのではなく、書かれていることの数十パーセントが理解できないということです。
 ですから、最後まで読み通すと、おぼろげながら文章の全体像がわかってきます。これが読み慣れるということです。
 そして、この音読を、近くでお父さんやお母さんが聞くともなしに聞いているといいのです。
 しっかり聞くと、つい注意したくなるので、お父さんやお母さんは新聞を読んだり家事をしたりしながら、聞くともなしに聞いているという感じで聞きます。
 漢字の読み間違いなどは直してもいいのですが、「もっと大きい声で」とか、「もっと姿勢よく」とか、「もっとしっかり」などという、つい言いたくなるそれ以上の注意はしません。
 子供が音読を終えたら、その読み方があまりうまくなくても、必ず褒めてあげます。その褒め方は、「難しいのをよく読めたね」というような簡単な言葉かけだけでいいのです。褒め続けていれば、音読は自然に上手になるからです。
 次に、その音読された長文の中身について、お父さんやお母さんが自分の体験談をもとに似た話をしてあげます。その似た話は、勉強のような感じではなく楽しい雑談のような感じで話します。
 子供は、音読をして一応全体像がぼんやりとわかったところに、身近な人の身近な似た話を聞くので、その難しい長文を自分なりに理解する手がかりをつかみます。
 理解を確実にするためには、慣れることが必要ですから、その音読は一度で終わらせずに、日をおいて5回ぐらい読めるようにします。問題集で言えば、1冊を最後まで読んだらまた最初に戻り、繰り返す形で5回読むという読み方です。
 繰り返して読むという練習をするときにも、音読は有効です。勉強に自覚を持てない学年のうちは、黙読で読むとすぐに眺めるだけの読み方になってしまうからです。
 国語の苦手な子は、まず第一に、毎日の読書をする習慣をつけます。読書は、易しい本でかまいません。目標は、10ページ以上という楽なものでかまいません。何しろ毎日読む習慣をつけるということが大事です。
 次に、問題集の問題文のような比較的難しい文章を音読し、その音読を身近なお父さんやお母さんとの対話で補強するようにします。
 国語力は、国語の勉強によって身につくのではなく、生活の中で難しい文章を読み慣れることによって身につくのです。



■理詰めで解く国語――センター試験を例にして  20150304  22320

 国語の問題というのは、感覚で解くのではありません。すべて理詰めで解くのです。
 理詰めで解けない問題は悪問です。そういう悪問もたまにはありますが、原則としてすべての問題は理屈で考えて答えを出せるようになっています。
 ある年のセンター試験の問題で、高校生の生徒が、「これはどうして5が正解なのかわからない」という選択問題がありました。
 設問は、「『そのような日常言語は、人によってニュアンスが異なり多義的である』とあるが、『そのような日常言語』の具体例として最も適当なものを選べ」というものです。
 選択肢は、五つです。うち二つは明らかに×とわかるものなので、微妙な三つを載せると、
1、山に登ると水は貴重だ。ペットボトルの水が半分残っているのを見て、ある人は「まだ半分ある。」と思うし、別のある人は「あと半分しかない。」と思う。水の分量は同じであっても、その受け止め方は人それぞれだ。
2、略
3、略
4、友人とデパートの入り口で待ち合わせた。約束の時間に現れないので携帯電話に連絡すると、別の入り口にいた。「デパートの入り口で……。」という同じ言葉であっても、それぞれが思い浮かべた場所は違っていたのである。
5、最近、家を新築したおじが、「駅から近いよ、歩いておいで。」といって、手書きの地図をくれた。「近い」というので地図をたよりに歩いたところ、かなり歩かされた。「近い」といっても人によってはだいぶ差がある。
 正解は、5です。
 1も4も5も、同じようなことを言っているので、なぜ1と4が正解でないかわからないという人も多いと思います。
 1は、「ペットボトルの半分の水」と実物が対象ですから、日常言語が対象になっているのではないということで、消去法的に×なのです。
 4は、「デパートの入り口」というのはニュアンスではなく、定義が曖昧だっただけで、北の入り口とか南の入り口とか言っていれば解決したことですから、これも消去法的に×なのです。
 5は、「駅から近い」という日常言語のニュアンスが対象になっているので、特に間違えているところはありません。
 この結果、最後に残った5が正解になるということです。
 こういう理詰めの解き方を身につけるだけで、国語の成績は短期間で上がります。
 しかし、これは国語問題の解き方のテクニックであって、本当の国語力ではありません。
 本当の国語力とは、思考力のことです。だから、国語力を見るためには、小論文と口頭試問のようなことが必要になるのです。
 今後の大学入試は、そういう方向に向かっていくと思います。



■国語の成績が悪い原因三つとその対策  20150401  22334

 「国語の成績だけが悪かったんです」と、テストを持ってきてくれる中学生がいます。
 子供も親も、たぶん先生も、点数にしか目が向きません。国語のテストの点数がよい子が、国語力のある子と考えてしまうのです。
 テストの中身を見れば、その点数がどういう原因でそうなっているかがわかります。
 成績が悪い原因は、大きく三つに分かれます。
 第一は、勉強していないことです。
 第二は、解き方のコツを理解していないことです。
 第三は、読む力がないことです。
 点数が悪いだけで偏差値上は何も問題がないということもあります。だから、本当は点数ではなく、平均点との差や順位の方が大事なのです。
 第一の「勉強をしていないこと」は、問題を見ればわかります。
 中学生のころの国語は、問題の分野が、漢字、文法、古典、読解、記述などに分かれています。
 定期テストは出題範囲が決まっているのですから、漢字は読みも書きも全部できていて当然です。ここで数問間違えていたら、それは勉強をしていなかったということです。
 次の文法も、古典も、同じです。これは、国語力ではありません。単なる国語的な知識の問題ですから、文法と古典ができていなかったら、そのための問題演習をしていなかったということです。
 こういう言い方はよくないかもしれませんが、先生は点数に差をつけやすくするために問題を出しています。文法と古典は、勉強しているかいないかではっきり差がつき、問題も作りやすいからテストの問題となっているのです。
 一度テストを受ければ、その先生がどういう傾向の問題を出すのかわかるのですから、それを毎回同じように文法と古典で点を落とすのは、勉強の対策ができていないということです。
 漢字、文法、古典で×がいくつかあると、そのあとの記述の問題も自然に辛くなります。逆に、漢字、文法、古典で○が続いている生徒には、先生の心理として、記述も甘めに採点したくなるのです。
 対策は、簡単です。定期テストの前に、時間を取って国語の出題範囲の勉強をすることだけです。
 第二の「解き方のコツを理解していない」場合です。これも、問題と答え方を見ればわかります。
 共通点は、問題文をきれいに、何の傍線も引かずに読んでいることです。そして、選択問題も、ただ合っていそうなものに○をつけて選んでいるだけです。
 読解の点数を上げるには、問題文には必ず傍線を引いて読み、選択肢はどの選択肢についてもなぜその選択肢が○でないかというメモをしておかなければなりません。
 何度も書きますが、テストの多くは差をつけることが目的です。感覚的に合っていそうなものを選べば×になるように作ってあるのがテストです。だから、その裏を読んで、合っていないものを理詰めで消去していって残ったものを○にするのです。
 作文を読んでいると、その生徒の本当の国語力が大体わかります。作文はよく考えて書いているのに、国語の成績が悪いという生徒は、この解き方のコツを理解していないか、理解したつもりになっていても実践していないかのどちらかです。
 こういう生徒は、実際の問題と照らし合わせて1、2時間も説明すれば、すぐに成績が上がります。中1や中2で、数学も英語もよくできるのに国語の成績だけが悪いという人がときどきいます。こういう生徒に解き方のコツを説明すると、次のテストからすぐに成績が上がります。そして、中3になるころには、「苦手だった国語がいちばん成績がよくなった」という嘘のような話になるのです。
 これは、高校生でも同じです。高3の8月ごろというのは、もう実力もほぼ固まってきているころですが、この時期に、国語の苦手だという生徒に、センター試験の解き方などを説明すると、次の回から一気に成績が上がります。しかし、それはもちろん本人の読む力の範囲でのことです。
 第三は、その「読む力がない」という原因です。
 小学生では、文章を音読させてみると、たどたどしくしか読めないというのが、読む力のない状態です。それは、本人のせいではありません。だから、子供を叱るのではなく、親がまず反省して、気長に簡単なところから読書の生活を始める必要があります。
 よく、「うちの子はどんなに言っても本を読まないんです」と、まるで本人が悪いかのように言う人がいますが、小学生の場合、本を読まないのは、子供の問題ではなく親の工夫の仕方の問題です。
 話は変わりますが、今、寺子屋オンエアでは、勉強の前に読んでいる本を見せてもらい、勉強が早めに終わったときはその本を読んでおくようにしています。それだけで、どの子も毎日本を読むようになります。読書は、その生徒にとって難しすぎる本を与えていないかぎり、誰でもすぐにできるものなのです。
 中高生では、さすがにたどたどしく読むという生徒はいません。しかし、中高生の読む力は、難しい言葉を知っているかどうかということに現れます。大学入試でよく出てくる「恣意的(しいてき)」などという言葉がその例です。こういう言葉が読めないということは、意味も理解できていないということです。
 国語の問題文の中に、自分の知らない語句がいくつかあると、その文章を表面では読んでいても、中身が理解できなくなります。特に、高校入試や大学入試の問題文は、やはり点数の差をつけるためにだ作られていますから、文章の最初の方に特にそういう読みにくい言葉が並んでいることが多いのです。問題文を最後まで一息で読めば、全体は理解しやすくなるのですが、語句を知らない生徒は最初の方で時間がかかり、一息に読むということができません。
 読書でもそうですが、最もよい読み方は、できるだけ早く全体を読み終えるということです。時間をかけて何日もかけてじっくり読んでいると、かえって全体像が頭に入りません。国語の問題文も、すばやく読み切ることが大事です。
 では、中高生が読む力をつけるためには、どうしたらよいかというと、それもやはり読書なのです。先ほどの「恣意的」などという言葉が入っている文章を読むことが、読む力をつける最良の道です。しかし、そういう本を実際に読める子はなかなかいないので、そのために、言葉の森がすすめているのが問題集読書です。しかし、この問題集読書も、家庭ではなかなかできません。その理由は、形の残る勉強でないことと、読む力が伴わないうちはやはり面白くないということがあるからです。そこで、これも、寺子屋オンエアで行う勉強の中に組み込むようにしています。
 国語の成績が悪いという場合は、以上のようにいくつかの原因があります。お父さん、お母さんは、点数だけ見て判断せずに、まずその問題の中身を見て、自分も一緒に問題を解いてみてください。そうすると、成績の悪い原因がどこにあるかがわかり、対策も立てられるようになります。
 このように考えると、国語の成績とは、国語力とは少し違うのです。入試が過酷になると、成績と学力は更にずれてきます。それは、どの教科でも同じです。
 次回は、「成績の逆転現象がなぜ起きるか」を書く予定です。



■国語の勉強法としての音読、問読、難読  20150702  22806

 国語の勉強というと、ほとんどの人は、国語の問題集を解くようなことを考えると思います。しかし、問題集をいくら解いても、その解説をいくら聞いても、国語力はつきません。
 国語力とは、国語の問題を解く力ではなく、日本語の文章を読み取る力だからです。更に言えば、その読み取る力の土台の上に、日本語の文章を表現する力だからです。
 国語力があれば、国語の問題を解く力は、短期間で身につきます。
 例えば、高3の生徒が、夏休みの8月ごろ、試しに国語のセンター試験をやってみると、平均点と言われる6割ぐらいしか取れないことがあります。
 しかし、その生徒に、1、2時間解き方を説明するだけで、次の週からは、満点近い成績を取れるようになることが多いのです。それぐらい、国語力と国語の成績との間にはギャップがあります。
 だから、基準にするのは、国語の成績ではなく、国語力です。
 その国語力は、どうやってつくのかというと、それは、繰り返し難しい文章を読むことによってです。
 ところが、その単純なことがなかなかできません。なぜできないかというと、難しい本を読むということは、真っ暗なでこぼこ道をろうそくの火を頼りに進むようなものだからです。
 これに対して問題集を解く勉強は、明るい舗装された道を、わかりやすいクイズを解きながら進むようなものです。
 だから、ほとんどの人は、やりやすい問題集を解く勉強をしてしまうのです。
 難しい文章を読むためには、読むという行為を外化させる必要があります。それが音読です。
 黙読では、途中で挫折してしまう文章も、音読であれば読み続けることができます。そして、読み続けているうちに読む力がついてくるので、やがて黙読でも読めるようになってくるのです。
 この音読は、小学校低学年から始められます。大事なことは、どんなに下手な読み方をしても、間違った読み方をしていても、すべて褒めてあげることです。
 音読が続けられなくなるいちばんの原因は、読み方の注意だからです。注意を一切しなくても、読み続けていれば読み方は自然に上手になっていきます。
 しかし、注意をすれば、すぐに親の前で読むことを嫌がるようになり、結局肝心の音読を続けることができなくなってしまうのです。
 小学校高学年になるころから、問読(問題集読書)に取り組むことができるようになります。
 国語力をつけるための最適の文章は、新聞のコラムよりも、むしろ実際の入試問題の文章です。
 力のある生徒は、この入試問題集の文章を喜んで読みます。力のない生徒は、読むとすぐに眠くなります。だから、ここでも音読が必要になるのです。(つづく)



■上田渉さんの「勉強革命」を読んで――音読を基本にした国語力  20150804  23010

 上田さんは、落ちこぼれの小中高時代→東大合格→オーディオブック会社の経営、という経歴の持ち主です。
 その著書「勉強革命」の国語の勉強法のところを読んで、言葉の森の普段の指導と同じような内容だったので、似たことを考えていた人もいるのだと少し驚きました。その引用です。

 上田さんが、大学受験を前にして、偏差値30というどん底の中から編み出した勉強法は、徹底して音読するという方法でした。
 まず、すべての学力の基礎は国語力だと認識して、国語力のアップに取り組みました。

 国語力が最も大事だというのは、小中学生だけでなく、高校生にもあてはまる真理です。
 小学生の場合は、計算ができても文章題が理解できないという子がときどきいます。高校生の場合は、英語の単語や文法は理解できても、その英語で書かれた内容で論説文の難しいものになると、国語力がないために読み取れないということが起こります。難関大学の英語力の半分ぐらいは国語力だと思います。

 さて、著書の上田さんは、難しい文章を百回音読するということから始めました。
 百回というのは、江戸時代の教育家である貝原益軒も述べている方法です。それは、論語を百字ずつ百回ずつ読み、空で読み空で書けるようにするという方法でした。

 言葉の森の音読指導で、よく保護者から質問があるのは、「意味のわからない言葉があったらどうするのですか」というものです。言葉の森の回答は、「意味はわからなくていいです。わからなくてもすらすら読めるようになればいいのです」というものです。
 意味がわからず、つっかえつっかえ読んでいる子に、辞書を引いて意味を調べさせるようなことをすれば、すぐに音読が嫌になります。そして、結局調べた意味も頭の中に残りません。
 ところが、音読を続けて、すらすら読めるようになればいいと思ってやっていると、調べなくても自然にわからない言葉の意味が大枠としてわかってきます。その大枠がわかってくると、自然に身近な人に聞いたり自分で調べたくなったりするのです。
 わからないから調べるのではなく、わかりかけてきたからはっきりさせたいと思って調べるのです。

 だから、親は、「わからない言葉は調べなさい」などと言わずに、ただ「すらすら読めるようになればいい」とだけ言っていればいいのです。そして、繰り返して音読をしていれば、誰でも例外なくすらすら読めるようになります。例外なくできるようになるというのが、この音読のよい点です。
 ところが、学校などの宿題として出される音読は、いくつか問題があります。第一に、もとになる文章が易しすぎるものであることが多い点です。第二に、繰り返しの回数があまりにも少ないのです。百回読むなどということはまずありません。第三に、宿題として出されたからという理由でやっていると、宿題がないとやらないようになるのです。音読は、基本となる勉強ですから、宿題としてではなく家庭学習として独自にやっていく必要があります。



■国語力は、受験だけでなく社会に出てから役に立つ  20151001  23153

 受験の主要科目は、国、数、英です。
 この中で、最も差がつきにくいのが国語です。というのは、国語は全くできない人でもそこそこの点数を取ることができる代わりに、よくできるからと言って満点を取ることは難しい科目だからです。
 これに対して、数学と英語は、勉強力の差がはっきり出ます。特に、数学は大きい問題ができるかできないかで全体の点数が大きく変わってきます。だから、受験を左右するのは、数学と英語なのです。
 では、なぜ数学と英語は、勉強力の差が出るのでしょう。それは、問題作成に人工的な要素が盛り込めるので、さまざまなレベルの難しい問題を作れるからです。
 だから、学習塾も予備校も、数学と英語に力を入れています。そして、国語には力を入れていません。
 国語は差がつきにくいから力を入れないということもありますが、それ以上に、勉強をさせてても力がつかないから、塾でも予備校でも力を入れられないのです。
 もちろん、受験指導をするという建前上、塾や予備校は一応国語も教えるようにはなっています。しかし、国語は教えても力がほとんどつかないとわかっているので、問題集をやらせて解説を詳しくするような勉強しかしていません。
 国語力をつけるとうたっているところも、せいぜい解き方のコツを教える程度の指導です。解き方のコツがわかると、確かにある程度の点数は上がります。しかし、それは国語力がついたのではありません。
 国語力は、実は国語のテストではあまり測ることができません。
 本当の国語力は○×式のテストではなく、文章を読み、それをもとに文章を書かせることでわかるからです。
 だから、今後、このような国語の試験が増えてくると思います。
 本当の国語力は、受験のときにも役立ちますが、それ以上に社会に出てからも役に立ちます。
 数学や英語の場合は、社会に出てからはあまり使わない人もいます。逆に、仕事などで使う場合は、学生時代さぼっていた人でもがんばれば比較的短期間で身につけることができます。
 これに対して国語力は、社会に出るといやがうえにも使わざるをえなくなります。
 文章を読むことでも、書くことでも、話し合いをすることでも、考えることでも、すべて広義の国語力が必要です。
 しかも、こういう国語力は、必要になったからといって短期間では身につけることができないのです。
 だから、子供時代の国語の勉強は、国語の成績を上げるということももちろん大事ですが、それよりももっと大事なのは、読む力、書く力、考える力をつけるといことを考えていくといいのです。
 そういう国語力は、問題集を解くような勉強法では、決して身につきません。
 実際に文章を読み、考え、文章書くことによって身につくのです。
 国語力と国語の成績は少し違います。
 国語の成績は、解き方のコツによって上げることができますが、国語力は毎日の読み書きによってしか上げることはできません。
 そして、国語の成績は、国語力によって上限が決まってくるのです。
 受験に役立つのは、国語の成績と国語力の両方ですが、社会に出てからも役に立つのは国語力の方です。
 だから、国語の勉強は、成績を上げるだけでなく国語力をつけるつもりで取り組んでいくといいのです。


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