
「ルドルフとイッパイアッテナ」という本を知っていますか? 続編に「ルドルフともだちひとりだち」「ルドルフといくねこくるねこ」があります。NHKの番組で、毒蝮三太夫さんが朗読したのでも有名になりなした。ルドルフという黒猫と「教養あるノラ猫」イッパイアッテナの友情物語ですが、私はこの物語が大好きで、まだ読んでいないという人を見つけてはすすめています。(笑)
「小学校中級から」ということですが、低学年でも、読み聞かせなら充分理解できるお話ですし、もちろん大人でも楽しめる本です。
この本のキーワードは、ずばり「教養」だと私は思っています。小学校2年生の私の娘は、この本で「教養」という言葉を覚えました。意味を理解したかどうかは怪しいですが、とにかく言葉を覚えたのです。イッパイアッテナは言います。「黒ネコさんがえんぎがわるいなんて迷信だ。そんなことをいまどき信じているのは、教養がねしょうこさ。」「」「おめえ、このあいだの夜、字が読めないブッチーをからかっていただろう。ああいうことをしてはいけない。おれは、ああいうことをさせるために、おまえに字をおしえたんじゃないからな。ちょっとできるようになると、それをつかって、できないやつをばかにするなんて、最低のねこのすることだ。教養のあるねこのやるこっちゃねえ。」……
娘の中では今のところ、教養とは、イコール「イッパイアッテナ」ですから、それは「かっこいい」もので、「たくさん勉強することが必要」で、「頭だけではなく心も大事」ということで、まあそのくらいわかっていればいいでしょう、というところでしょうか。
ここで話は飛ぶのですが、私が「教養」と聞いて思い出すのは、小学校中学年のころに夢中で読んだたくさんの伝記です。モーツァルトを読んでは音楽家になりたいと思い、ナイチンゲールを読んでは看護婦さんになろうと思い、本を読むたび影響されていました。そのように伝記の人物に夢中になりつつも、私は決まって出てくるある1つのフレーズにずっととらわれ、憧れていました。それは「教養のある女性」という言葉です。主人公の母親が、出てくる人出てくる人、みな「高い教養のある女性」なのです。(笑) 事実そうだったのか、子供向けに書かれた伝記の、ある種の決まり文句に過ぎなかったのか、本当のところはよくわかりませんが、私はとにかく、この言葉に強烈に惹かれました。そして自分も「教養のある女性(母)」になりたいと思ったものです。
時は流れ、かろうじて母にはなれたのですが、「教養のある」かどうかは……、修行中の身です。(笑)
結局、教養とは、やさしさであり、思いやりであると思うのです。私は、勉強する意味も、同じところにあると思っています。人間は、自分の実体験から学ぶということももちろんありますが、自分では経験し得ないことを、本を読んだり勉強して学び、それを知識としていきます。自分の体験ではないことをわかるためには、想像力が必要です。人が転んで痛いと言って泣いているようすが本に書いてあるとします。それを読んでいる自分は、転んでいないから痛くない、でも、転んだ人はさぞ痛いだろうなあ、と想像することはできます。どれだけ人の痛みがわかるかは、この想像力にかかっています。かわいそうな主人公の気持ちを思って涙ができてきた、という経験のある人もいるでしょう。どんな人がどんなときにどんな痛みや喜びを感じるか、たくさんの本を読んでたくさんのことを知ると、想像する力にもますます磨きがかかります。想像力によって、文字に書かれている出来事や先人の知恵や世紀の大発見やめくるめく冒険物語を、リアルに受け止めることができるのです。
この想像力のある人を、教養のある人というのだと思います。だから、たくさん本を読んで、たくさん勉強して、自分とは違ういろいろな人の言葉や生活や考えを知ることが、教養を高めることになるのだと思っています。
教養……、カッコいい言葉でしょう?

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枝 6 / 節 15 / ID 5845 作者コード:kamo
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