今回は、名言にちなんだ、最近の先生の体験談を書きます。
「人は、その制服のとおりの人間になる。」
これは、フランスの皇帝で、偉大な英雄「ナポレオン」が言った有名な言葉です。確かに彼の名言は、一面の真理をついていますね。警察官、学生、お医者さん、看護婦さん、ボーイスカウト、ガールスカウト、コックさん……等々、それぞれが身につけている服装で、職業や、立場を、一目見て判断することができます。ふだん、私服でいるときは、ただの平凡な人に見えるけれど、制服を着込むと、たちまち、医師、おまわりさん、ガリ勉の中学生や、女子高校生に見えてくるから、本当にふしぎですね!
各々の制服に誇りを持ち、上をめざして頑張る顔は、みんな、実に美しいものです。また、その制服に憧れ、目標を抱いて勉強し、努力を積み重ねている人たちも、数多いことでしょう。制服を着ることによって、気分が引き締まり、緊張感や責任感も生まれてきます。「人は、その制服のとおりの人間になる。」というのは、「蟹(かに)は甲羅(こうら)に似せて穴を掘る」ということわざと、一面では、相通じるものがあるのかもしれません。
ところが、先日、電車の中で、先生は、これと全く反対の現象を見てしまいました。JR線に乗り込んで,空いている席に座ると、向かい側のシートに、4〜5人の若者が楽しそうに、大声でおしゃべりしながら、座っていました。彼らの服装は、とてもファッショナブルで、茶髪、ピアスで、独特の雰囲気(ふんいき)でした。
次の駅に来て、開いたドアーから、杖をついたおばあさんが、乗り込んでこられました。その瞬間、若者の一人がさっと席を立ち,
「どうぞ」
と小さな声で言って、高齢のおばあさんを座らせてあげたのです。それは、とてもすばやく、自然の行動でした。おばあさんは、なんども
「ありがとう」
とお礼を言ってにこにこ笑いながら、お辞儀(おじぎ)しました。
その青年は
「いいえ、どういたしまして、こう見えても、ぼくは、紳士なんですから・・・」
と、照れくさそうに挨拶したので、周囲の人は、大笑いしました。その光景を見て、先生は、とてもさわやかで、心温まる思いがしました。一見、ツッパッテいるようですが、彼は、きっと、心根のやさしいおばあちゃんっ子なのでしょうね。
これまで、着用している制服や外見だけで、(ほとんど90パーセントくらいの割合で)、人を判断しがちだった私は、目からうろこが落ちたような気分でした。「服装や、外観だけでなく、その奥底にある人柄を見抜けるようにならなければなあ」と痛感させられたものです。先入観や、社会常識、通念だけで決め付けて物事を受け止めるようなコチコチ頭になることなく、これからは「柔らか頭」で生きようと、深く考えされた出来事でした。
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枝 6 / 節 17 / ID 8308 作者コード:miki
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