国語と作文の先達である大村はま先生の言葉につぎのようなものがあります。
「書く」ということは、ふしぎな力を持っています。書いていますと、「書く」ということが、ふしぎに、心を一点に集めます。また一つの考えが、文字になって目に見えるものになりますと、その考えのいのちがはたらきだして、また次の考えが引き出されてきます。
みなさんも、同じような体験をしたことはないでしょうか。自分の心のなかを目に見えるようにするために書くというのです。私も何か文章をつくるときには、とりあえず思いつくことを文に書き起こして、ながめまわしていく方法をとっています。
夏休みには課題で感想文や作文が出されている人がたくさんいました。みんな「どのように書けばいいのかヒントをください」と質問します。いきなり構想や組み立ての相談をされるのです。でも、同じテーマでも文章はひとそれぞれ違うものになるはずです。一般論ではお返事が出来ず、ちょっと困ってしまいました。
まずは自分の心のなかにあるものを言葉にしてながめてみましょう。わかっていることも、わからなくてこまっていることも書くのです。いいなあと思うことも、反対したいことも、まるで友達とにぎやかにおしゃべりしている時のような勢いで書いてみるのです。まとまりなんて考えなくていいのです。
そうしてその中で、わたしがいちばん言いたい事伝えたい事はどれなんだろうと選んでみればよいのです。大きな疑問があることがわかったら、本を読んでこたえをさがすのです。ここまで出来ていれば、あとは大きな組み立てが決るのを待つばかりです。消しゴムはつかわないで、それらの材料を削ったりくっつけたりしていくのがいいと思います。そのために、便利なのがパソコンです。手書きで作業する時、消して書き直すというのは最もめんどうで書く気力を失わせます。パソコンでのコピー、ペーストは正確で手軽に考えを組み立てていってくれます。
じつは今この文章もその方法で出来上がりつつあります。考えがまとまらない時や、うまい文章が出てこない時、組み立てが見えない時は、大胆につぎはぎのまま、つじつまのあわないままで置いておきます。次の日、それを見ると、まるで先生になったような気分ですらすらといい文章に直していくことができるはずです。自分で自分の文章を添削していくわけです。
考えてから書くのが基本ではありますが、書いて考えること、考えるために書くこともぜひ試してみてください。自分のすてきな発想に出会えて、新鮮な驚きが体験できますよ。
きら
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枝 6 / 節 11 / ID 8535 作者コード:kira
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