秋らしくなってきました。そろそろ秋のくだものや野菜の収穫もたけなわ。ブドウが大好きなわたしは、果物売り場の前でうっとり品定めができるのが、楽しみです。
さて今月は「食欲の秋」から思いついたことを。中学生の長文の中で取り上げている(12.2週)行列についてお話しましょう。
みなさんは、「ならびなさい」といわれてならんで順番を待ったり、自分からすすんで行列のしっぽにつながったことがあるでしょう。長文で取り上げられているのは、前のほうの行列。規則だからしかたなくならぶ、そんな感じです。
いっぽう町では、期待でワクワク、「まだかな♪」と首を左右にふりながら仲良くつながっている人の列をしばしば見かけます。
テーマパーク、スープがじまんのラーメン屋さん、焼きたてがおいしいパン屋さん、有名なお菓子職人のいるケーキ屋さん。わたしの家からしばらく歩いたところにあるアイスキャンデー屋さんも、TVで紹介されたのがきっかけに長い行列ができるようになりました。ならんでいる様子は、それだけでうれしそう。もちろん、わたしも仲間に入ったことがあります。「きっとよいことがあるに違いない」と思うのです。暑い中ならんだごほうびに、黄金のスティックが出てくるはずもなく、普通の木の棒つきアイスキャンデーでしたが。
「ならんでみたい」……この気持ちはどこから来るのでしょう。
「オヤ!」と思うようなことを誰かが始めると、周りの人も同じことがしたくなるそうです。これは、心理学で「同調」と言われる行動です。「同調」について、おもしろい実験の話があります。
おなかをすかせた1羽のニワトリにえさを与え、満腹になるまで食べさせます。そこに別のおなかをすかせたニワトリを連れてきて、満腹ドリ横でえさを食べさせると、どうなるか。満腹ドリはおなかがはちきれてそうになっていても、またエサを食べ始めるのです。いつもの1.5倍以上も食べたそうです。
たぶん、人間はニワトリよりも高い知性を持っていますが(笑)、行列に目がいくと心の奥の「自分も!」という声に押されます。それは、行列の原因にあるモノに対しての関心だけではありません。「まわりにならわないと損しちゃうぞ」という、「同調」行動によるものなのですね。
ある店の店長さんによると、「不思議なもので、3、4人がならぶとどんどん列が伸び、人気商品以外のものも売れ出し、売り上げが2.5倍に増えることもある」そうです。つまり品物はともかく、行列ができれば「売れる店」として成功できる。そこで、こんな考えかたも生まれます。
行列を作るためには、店員の人数を増やさない、客との対応に時間をかける、包装はゆっくりていねいに、時には不必要な包装もする……つまり、ならんでいる人にとっては困ることをすればうまくいく!
なんとまあ!!
長文では、行列を「先進国特有の先着優先の平等主義」と位置づけていますが、行列もできる場所によっては、お店が繁盛するための「しかけ」なのですね。
そうとわかっても、何だか楽しそうな行列には、「自分も行ってみよう!」と足が向いてしまうのですが。
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枝 6 / 節 11 / ID 8554 作者コード:huzi
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