みなさん、こんにちは。寒くなりましたね。かぜを、ひかないようにね。
「言葉の森」の課題に、ユーモアを書く、というのがありますね。これ、なかなか、むつかしいですよね。このあいだ、大学生のお兄さん、お姉さんたちと、ユーモアについて、どう書いたらいいか、一緒に考えてみようと、話したことがあります。
と言っても、そう安々とはいかないのが、ユーモアです。で、仕方がないから、うまあーくユーモアを書けている文章を、一緒に読むことにしました。そのなかで、宮脇俊三さんの「時刻表二万キロ」という文庫本を参考にしました。
この人、出版社に勤めていたのですが、休みの日が来ると、その前日、仕事が終わるやいなや、すぐ東京駅に走って行って列車に乗り、いい齢をして国鉄(いまのJRです)の全線完乗をめざし、それをやってのけた人です。
そのことを書いたのが、この本です。
そのなかに、北海道の白糠(しらぬか)線に乗ったときの、「汽車好きな牛」という題の文章があります。
<…行くほどに、線路に沿って小さな牧場がいくつも現れてくる。上茶路(かみちゃろ)の駅のすぐ脇にも一〇頭ばかりの牛の放たれた牧場があって、そのなかのまだらの一頭が草を食(は)むのをやめてこっちを眺めている。牛や馬が汽車を眺めるのは珍しい。一日三往復しかないし、汽車好きな牛かもしれない>
と、こう書いておいて、最後の一行、その結びのしかたは、こうなのです。
<しかし彼が汽車に乗るとすれば最期(さいご)の時しかないだろう>
これ、面白さ、わかります? わかりますよね。
ユーモアのスパイスは、微量にして適量、たった一語でいい、と教えてくれた人がいます。ほんとに、そうだなあ、と思うのです。
ユーモアを課題にされたときに、それは、ほんとに、ほんのちょっぴりでいいんだよ、というふうに考えてみてください。
|
|
枝 6 / 節 10 / ID 8804 作者コード:kamono
|