【自分のこと、好きですか?……「あいのり」特番から】
今年一番の話題は、こんなタイトルで始まりました。「あいのり」って、知っていますか? 毎週月曜日の夜11時という遅い時間に、フジテレビでやっている番組です。遅い時間ですし、一般人の若い男女が外国を旅しながら恋愛する、という内容なので、きっと小学生以下のみなさんは見たことがないでしょうね。
私は割合この番組が好きで、近頃けっこう見ています。まず、「彼氏、彼女がほしい」男の子や女の子(十代の終わりから二十代はじめ)が、いっしょに外国を旅します。行くところはさまざまで、アフリカもあればヨーロッパ、中東など、地球を何周かする勢いです。移動は飛行機ではなく原則として陸路です。ワゴン車に乗って、お世辞にも快適そうな旅とは言えません。行く先々で、彼らはいろいろなものを見ます。アフリカでは貧しい人々を、ロシアではチェルノブイリ原発事故の跡地にも立ち寄り、いまだその後遺症に苦しむ人々にも会いました。アクシデントも起こります。途中で病気になり、現地の病院に入院するメンバーもいます。
その中で、ルールはただ1つ、「誰かを好きになって告白すること。」OKをもらえたら、いっしょに帰国できます。「ゴメンナサイ」だったら、1人で帰国しなければなりません。そして、その帰国したメンバーの代わりに、また新しく、日本から恋愛志願の若者がやってくるのです。
さて、きっと若い人達は(笑)その恋愛のドキドキをいっしょになって楽しんでいるのでしょうが、私みたいなオバサンは、今さらそこには参加できません。それなのにその番組を面白いと思うのは、旅をしていく中で成長していく若者の姿や、非日常的な旅の中で思わずさらけ出される1人1人の性格が、とてもよくわかるからです。
そこでタイトルに戻りますが、年末のゴールデンタイムに、「あいのり」の特番が放送されました。この時メインになっていたある男の子「ヒデ」は、19才からなんと足かけ3年、14カ国も、この番組と共に旅を続けていたのです。彼がこんなに長く旅を続けていたのは、もちろん「告白」ができなかったからです。しかしこの特番で、彼は3年越しにようやくある女性に告白し、日本に帰っていきました。残念ながら、彼の想いは通じませんでしたけれど。彼が恋した相手は、同時に告白したもう1人の男の子とカップルになってしまったのです。
「あいのり」に出てくる男の子、女の子たちは、こんなことをしてまで相手を探そうというくらいですから、どこか人とは違った子が多いです。何か心に傷を持っていたり、何かに挫折していたりして人とうまくつきあえなかったり、そこで「人生を変えたい!」と思ってやってくるのです。「ヒデ」もそうでした。最初はどこかオドオドして、周りからも浮いていて、自分でもそれをもてあましていた感じだったのが、最後には堂々と、まっすぐな心のこもった告白をして、見事に敗れて去っていきました。かっこよかった。
その「ヒデ」の言葉が印象的でした。
「初めは自分に自信がなくて、自分のことも好きではなかった。でも、旅の中で自分のことも好きになれて、好きになった人に自分のことをおすすめすることができて、よかった。」
人を好きになるって、まずは自分のことを好きにならなくちゃ、できないことなんだな。さらに告白するのって、「私はこんなにいいところがあるよ、こんなことをしてあげられるよ、だからいっしょにいてください」って、相手に自分を「おすすめ」することなんだな。
それを強く感じた特番でした。がんばれ、若者。ふられはしたけれど、「ヒデ」も、もう以前の彼じゃない。きっと新しい人生を、また歩き続けていくことができるでしょう。
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枝 6 / 節 15 / ID 8972 作者コード:hota
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