「どっしりと尻を据(す)えたる南瓜(かぼちゃ)かな」
これは夏目漱石の句で、東京の都立白鴎(はくおう)高等学校付属中学校の入試に使われました。この学校は、今、注目を集めている、公立中高一貫校です。問題は
・この句が表現している南瓜の特徴を説明する。
・他の野菜の特徴を俳句で表現する。
というものでした。さて、皆さんだったら、どんな答えを作るでしょうか。この問題では、よくある「俳句の解釈問題」というわけではなさそうです。
まず、かぼちゃそのものについて。最近は、半分や四分の一にカットされた状態で売られていることが多いですし、もっと小さく一口大に切られて冷凍されたものもよく見かけます。丸ごと一個のかぼちゃを手に取って重さを実感したことがある人が、どのくらいいるでしょうか。そういう経験がないと、「どっしりと」「尻を据えたる」という表現がピンとこないのではないでしょうか。ものの売り方買い方の変化や食生活の変化が、文芸作品の鑑賞にも影響を与えていますね。そうだ! 皆さんは、この句はどの季節に作られたものだと思いますか? 旬という感覚も漱石の時代と今とでは、少し異なってきているかもしれません。
そして、想像力と表現力が次のポイントです。この南瓜の表面は、どんな色をしているだろう。手触りはどうだろう。大きさや重さは? それは数字を使って説明できるかな。それとも、たとえがいいだろうか。この南瓜は、目の前にあるわけではありません。なので、想像力が必要です。頭に浮かんだことをより相手にわかりやすく伝えるためには、表現力が必要です。これらのバランスが整ったときに、この問題に対する「いい答え」が書けそうです。
他の野菜を俳句で表現する……俳句は「五七五」という限られた字数で作るのが原則ですから、まずはその野菜の一番目立つところ・はっきりしているところを絞り込まなくてはなりませんね。これは、作文で言えば、中心を明らかにするということでしょうか。対象(相手)の一番特徴的なところを絞り込むためには、対象をよく観察しなければなりませんね。テストという場面でなければ、作文の形で答えてみてもおもしろそうです。
これは、実は、普段の作文のときに、やっていることです。どんなことを書こうかな。どう説明しようかな。……ね。同じでしょ。なので、野菜以外を対象にしても同様に取り組むことができるということです。
もし、この記事を読んで、「こんなふうに書いてみたよ!」というものができあがったら、ぜひ、先生(なら)に教えてくださいね。楽しみにしています。
|
|
枝 6 / 節 1.012 / ID 9973 作者コード:narado
|