この春、私は少し体調を崩し、春休みには旅行もできず、家で静かに過ごさなくてはなりませんでした。これまで、20年くらいインフルエンザにもかかったことがなく、熱もほとんど出したことがなかったので、私にとってもこれはショックなことでした。何かしたいのに、それができないなんてことが、自分に起こるとは思ってもみなかったのです。
そしていざそうなってみると、月並みな言い方ですが、本当に日頃の健康のありがたさが身に染みました。そして、心配してくれ、あれこれと手伝ってくれる家族のありがたさも、とてもよくわかりました。
そんなある日、テレビ番組で、2004年のアテネオリンピックで41歳にして銀メダルに輝いた、アーチェリーの山本博さんが話しているのを聞きました。
山本さんは1984年に、大学生の時、初出場したロサンゼルスオリンピックで、いきなり銅メダルを獲得します。その後、高校の体育の先生をしながら、4大会連続でオリンピックに出場しますが、メダルには届きませんでした。そして、2000年のシドニーオリンピックはまさかの落選。出場さえできないという挫折を経験します。
その時、支えてくれたのが、やはり家族だったそうです。その時から、考え方ががらりと変わった、と話していました。「それまでは、試合と子どもの運動会が重なったら、まよわず試合に出掛けた。でも、それからは、運動会の方をとるようになった。」
そうしたら、不思議なことに、かえって練習も楽しくなり、やる気が出てきたそうです。そして、「家族のためにメダルが欲しい。」そう思って臨んだアテネオリンピックで、堂々の銀メダルを手にしたのでした。
山本さんのホームページのとびらには、こんな言葉が掲げてあります。
「20年かけて銅から銀へとなりました。これから20年かけて金を目指します。 世界一あきらめの悪い男ですから・・・」
20年。こう一言で言っても、その間にはとてもいろいろなことがあるでしょう。体の具合が悪いときも、物事がうまくいかなくて落ち込むことも、人から非難されることも。特に、まだ10年そこそこしか生きていないみなさんには、気が遠くなるくらい、長い時間に思えることでしょう。でも、こんなに時間をかけても、あきらめなければ、できることがあるんだな。そしてそれを支え続けてくれる人が、身近にいるんだな。
そう思って、何だか勇気をもらった気がしたのです。
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枝 6 / 節 10 / ID 11086 作者コード:hota
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