この前、電車に乗っていたときのことです。先生の隣の席で女子高生が、おしゃべりしていました。聞くともなく聞いていると、こんな会話が耳にとびこんできました。
「なにーこれー、ギガかわゆす〜」
「ほんとー、チョーやばいよね〜」
思わずのぞきこむと、二人はかわいい犬の写真を見ています。どうやら、「ギガかわゆす」というのは「とってもかわいい」ということ。「チョーやばいよね〜」というのは、「危険なくらいに、すばらしい」という意味らしいのです。
先生は女子高生ではないので、ふだんはこういう言葉は使いません。でも、作文の先生などしているものですから、新しい言葉にはたいへん興味があります。そんなわけで、家に帰ると、さっそくパソコンで現代の若者言葉や、はやり言葉について調べてみました。 するとまあ、出るわ出るわ。
オケる……カラオケに行く。
おっさん……「おつかれさん」の略。
KY(ケーワイ)……空気よめない、の略
プリコ……プリクラ交換。
キレカワ……キレイ+カワイイ
がっつり……「がっちり」の変形で、「きっちり」「しっかり」と同じ。
どん引き……かなり引かれること。もり下がること。
などなど、ちょっと前にはなかった言葉でいっぱいです。先生は、こういう言葉達を見て、「なんだ、こんなのは日本語の乱れだ。けしからーん」とおじいさんのようなことを言うつもりは全くありません。言葉、というのは日々新しく生まれ、変化していくものだからです。
もし、言葉が変化してはいけないものなら、わたしたちは大昔の言葉を使わなければなりません。たとえば、平安時代には、「ギガかわゆす」つまり「とってもかわいい」のことを「いと、うつくし」と言いました。うつくし、は昔は「美しい」ではなくて、「かわいい」という意味だったのです。これを現代で使ったら、それこそ、「ドン引き」されることでしょう。
ただ、こういう新しい言葉を作文に使うこと、それだけは「ちょっと、まったー!」と言いたいのです。なぜならこれらの新しい言葉は、いつ無くなっていくかわからないからです。たとえば、少し前まで使われていた、「ナウい」と言う言葉、今ではおじさんしか使いません。フィーバー(もりあがること)や「チョベリグ」(超ベリーグッド)なんて言葉も、いつのまにか消えました。
作文というのは何年たっても残っているものですし、いろんな人に読んでもらうものです。ですから、いつ消えるかわからない言葉や、一部の人にしか通じない言葉は使わない方がいいのです。ニュースを読むアナウンサーは「今日、上野動物園でチョーかわいいパンダの赤ちゃんが産まれました」とは言いません。新聞の見出しに「ギガかわゆす! パンダの赤ちゃん誕生」などとも書かれません。それは、そういうわけなのです。
新しい言葉が、長い年月を生き残り、あらゆる人に通じるようになれば、それはもう、一人前の言葉です。「うつくし」という言葉が「かわいい」という言葉に変わったのが、その例です。でも、それをきちんと見届けるまでは、お友だち同士の会話には使っても、作文には使わない方がいいですね。
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枝 6 / 節 17 / ID 11440 作者コード:yasu
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