今回は生徒のみなさん、保護者のみなさまともども読んでいただきたいと思って、あえて「頭がよくなる本」にありがちな?題名をつけてみました。
私は東京子ども図書館というところの賛助会員で、機関紙『こどもとしょかん』を定期的に送ってもらっています。東京子ども図書館というところはご存知でしょうが、児童文学者で児童図書館員として海外にまで知られている松岡享子先生が代表となって、しっかりした考え方のもとで運営している私設の子ども図書館です。松岡先生のストーリーテリング講座やわらべうた講座、図書館研修は常に倍率が高く、日本全国の子ども文庫に大きい影響を与えています。ですから、『こどもとしょかん』はうすい冊子ですが毎号内容がつまっていて、いつも楽しみに熟読しています。
その最新号、2007年秋号の巻頭特集が、今回は意表をつかれました。松岡先生ご自身が、歯科医の石田房枝さん方と対談している記事だったのです。題名は『よく噛む子・よく読む子』です。本と歯医者さん、いったいどんな関係があるのでしょう?
石田先生は歯科医のかたわら待合室で子ども文庫も開かれていたのですが、最近になって「子どもの歯の問題は、ただ歯を見ていたのではだめで、子どもの育ち方から見ていかねばならない」と親子へのわらべうた指導もされているそうなのです。というのも、最近の小児歯科では虫歯治療より歯並びの悪さが問題になっているからなのだそうです。この点はみなさんもよく耳にされていると思います。
歯というのは、歯並びが悪くなると、よい呼吸ができなくなる、そこから、健康的な生活ができなくなるのだそうです。歯ならびをよくするためにはあごの発達を考えるだけでなく、歯のあるあごをささえる背骨もしっかりして姿勢がよくなければならず、そのためにはからだをしっかり動かさねばならない、そこまではみなさんも常識としてご存知と思います。しかし、そこから先が注目したいところなのです。
今の子どもの姿勢の悪さは「ストレス」も関係しているとか!
ストレスを受けると、子どもはうつむいてしまう。そうすると、あごの関節が圧迫されてしまうのだそうです。そこからかみあわせも悪くなり、呼吸状態も悪くなるのだそう!
ストレスは子どもの心だけでなく、歯にも影響を与えていたとは! 目からうろこでした。そして、ここからは私が感じたことです。
作文指導していて、もう退会された生徒さんですが「夕焼けを見たことがない」と言われたことがあります。実際は見ているのでしょうが意識したことがなかったのです。今の子どもさんは本当に忙しい。時間に追われ、急ぎ足で歩かなければならない。急ぐためにはころばないように、地面を見てうつむいていなければならない。忙しさの中でストレスを感じることもある。だからそんな今だからこそ、大人たちは子どもにいっしょに空を見るようにさそって、雲の季節ごとのうつりかわりや、夕焼けの荘厳さ、そして夜空の星座などのおもしろさを教えてあげるひとときをすごしてあげることが必要なのではないでしょうか。空を見ると、うつむいた頭も上を向きます。広々とした空に、かかえていた問題の小ささを感じるかもしれません。秋はうろこ雲、夏は入道雲、その姿を生徒のみなさんは知っているでしょうか。
松岡先生は歯医者さんのことばに続けて、読書も、五感を通して身についたことばの実感があるからこそ、本の文章から生き生きしたイメージを描くことができると言われています。私が思うに、五感を通した感動が作文も生き生きしたものにするのですが、実はその感動体験も、大人が楽しく言語化してあげることによって、子どもの脳に経験として定着するのです。忙しくて海や山に行けなくても、すぐそこにあり、かんたんに感動できる偉大な自然。それが空ではないでしょうか。
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枝 6 / 節 8 / ID 11747 作者コード:takeko
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