「おめぇには、俺の気持ちがわからんのじゃ!」
と高校生の息子から暴言を吐かれ、殴る、蹴るの暴行を何時間も受けた母親は、引き抜かれた髪の毛の跡を隠すように深くニット帽をかぶり、杉山嘉弘先生の教育相談の門を叩く日々を二年間も続けたそうです。
私は、先日、不登校や非行行動になったお子さんについての教育相談を受けておられる杉山嘉弘先生の講演会を拝聴しました。冒頭の男子高校生とそのご両親が不登校・家庭内暴力から立ち直るまでの二年間の経過を交えて、どうすれば閉ざされた子どもの心を開くことができるのかを教えていただきました。
もし、親子の人間関係がうまくかみ合わなくなったとしても、ありのままのその子を愛していきたいという気持ちを抱いて、以下の10個のステップを踏めば必ず親子の人間関係作りはやり直せるそうです。
「親子の人間関係を良くするための10個のステップ」
肌に触れる (スキンシップ・こちょこちょ・土踏まずのふみ合い)
声かけ・あいさつ (おはよう、○ちゃん!)
アイコンタクト (目を見て笑顔で話す)
遊びの時間 (親子でトランプ・オセロ・人生ゲームなど週にニ〜三日できるといい)
子どもの話を聞く (目を見て、否定せずに受け止めてあげる)
褒める・認める・感謝する(ありのままのその子を受け止めてあげる)
教える・提案する・励ます(命令・強制はしない)
任せて見守る
いけないことは全力で叱る
一緒にのんびりとリラックスできる時間を持つ
この男子高校生は、学校の成績やクラブ活動で中学のときとのギャップに戸惑い、どこに居ても輝けない自分に劣等感を抱き、学校に行けなくなってしまいました。不登校になった登初は「1、肌に触れる」もできなかったそうです。
キレて暴力をふるうその子に根気強くご両親は「1、肌に触れる」「2、声かけ・あいさつ」「3.アイコンタクト」を半年間繰り返しました。ようやく一緒にドライブができるようになったころ「4.遊びの時間」「5.子どもの話を聞く」までステップを広げ、親子の人間関係を取り戻すために1〜6を毎日繰り返して行うことで人間関係をさらに強固なものへと構築していったそうです。
再び高校へ通えたのはそこから一年後、ようやく長い戦いの日々が終わったそうです。傷ついた心が癒えたように、その頃には10個のステップを全て行えるようになったとのこと。今、この男子高校生は留年の後、大阪の大学に通い、教職に就く夢を抱いているそうです。
言葉の森で私が読ませていただいている作文からは、生徒さんと親御さんのしっかりとした信頼関係や人間関係がにじみ出ています。皆さんのご家庭にはこのようなことは遠い国のお話のように映るかもしれません。でも現代の子どもを取り巻く環境を考えると決して他人事ではないな、と私は、強く感じました。もし子どもの心が迷ったときには、人間関係に悩む子ども達の傷ついた心を温かく受け止めてあげる大人の存在が大切なのだな、と涙しながら感じたひとときでした。
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枝 6 / 節 18 / ID 13229 作者コード:komiko
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