よい作文とはどんな作文でしょう。私は、心に響く作文だと思います。
先生は、書き方のテクニックを教えたり、表現をもっとこうした方がいいよとアドバイスすることはできるけれど、心に響く作文は、書く人の心が生み出す、書く人にしか出せないものです。
読んで楽しくなる作文、「おっ」と目を止めてしまう作文、ドキドキしてくる作文、ニヤっと笑ってしまう作文。どれも全部心に響きます。ありきたりの表現、どこかから拾ってきた表現でもいいんです。その表現に、自分の思いがあれば、それは、オリジナルな表現に変わります。
「朝起きて顔を洗いました。」
誰でも朝起きたら顔は洗うでしょう。当たり前じゃん、と思います。でも、そこに、一言、
・寝ぼけながら洗ったら、指が鼻の穴にすぽっと入ってしまってあやうく流血さわぎに・・・どひゃー
・台所でお母さんが鼻歌を歌いながら朝ご飯を作っています。つられて私もうがいしながら歌ったらのどに水が・・・げほっ
・歯磨き粉があと少ししかない。空気を入れてふたをしめてぱたぱたぱたと三回振ってから出すと勢いよくポンと出て歯ブラシじゃなくて洗面台に・・・ぽてっ
ああ、顔を洗うだけでもドラマがいっぱい。光る表現が入れば、その作文は心に響きます。
能の先駆者、世阿弥はこんなことを言っています。
「面白き味わひを知りて、心にてする能は、さのみの達者になけれども、上手の名をとるなり。」・・・『花鏡』より
訳:面白い味わいを知って、心から演じると、未熟な演技でも、うまいと言われる。
〜そのあとに続けて、
「面白いと思う段階を超え、無意識に「あっ」と言ってしまう段階が感動である。初心の時からだんだんに上達しているだけではよい演技者と言われるまでである。そのうえに、面白さを感じさせる段階が名人、無意識の感動を起こさせるようになれば、人間国宝ものの段階だ」
〜というようなことが書いています。(アバウトな訳ですが)
これは能についてのお話ですが、作文も同じです。作文のテクニックは、だんだんに身につけていくものですが、面白い作文は、ちょっとがんばれば誰にでも書けます。文字さえ書ければ幼稚園の子にもね。
作文に、心を開いてみましょう。書くことを楽しんでみましょう。そうすると、その楽しさが読むほうにも伝染して楽しくなります。
楽しめる作文、それが面白い作文。日常のありふれたことが、なんだか楽しく感じられる、そんな作文がいいな。「だじゃれの名人」、「たとえの名人」、「書き出しの工夫の名人」、どこかにキラリと光る表現があれば、それはもう、「名人」の段階です。
「面白い!」と思いたいな。感動したいな。私の心を「あっ」と動かせる作文、お待ちしています。求む、ちびっこ人間国宝!「たとえ大賞」は引き続き募集中。
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枝 6 / 節 25 / ID 13302 作者コード:tamon
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