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AI森リン「森リー」
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AI森リン「森リー」
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二月に私はパリ国立高等音楽院のバイオリン科の入学試験を受けた。結果は補欠第二位。取られる確率は八割程度。実質、ほぼ合格とは言われていた。しかし、万が一のことがある。勿論、補欠だと合格はしても志望の教授のクラスに取られる望みは薄い。第二志望の学校も受験することにした。その受験が終わったら、コンサートと中学校の試験の嵐が降ってくる。目が回るほど忙しない日々を過ごしていると、あっという間に夏が長期休暇を連れてやってきた。 パリ国立音楽院の入試の後、五月の上旬にブローニュ=ビヤンクール地方音楽院の高等教育準備課程の入試も受けた。この地方音楽院はパリ郊外に位置し、有名音楽院の合格者を毎年多数輩出している。事実、パリ音楽院の入学試験の際も、この音楽院からの受験者は多数見られた。今まで私はグルノーブル地方音楽院の高等教育準備課程に所属していたが、やはり規模が違う。例えてみると、田舎の進学校と東京の有名な進学校くらいの差だ。この音楽院からの合格通知は試験の二週間程後に来た。とりあえず第二志望は抑えたからか、張り詰めた緊張が一気に緩和された気がした。しかし、肝心の第一志望校からの連絡はまだない。その間も年度末が刻々と近づくのを感じながらも、オーケストラや室内楽のコンサートへ立て続けに参加していた。六月上旬に音楽関係の行事が終わると、今度は中学校の最終試験が待ち受けている。フランスでは、中学校最終学年の四年生は、ブルヴェと呼ばれる義務教育の修了を認可する資格試験を例外無く受けなければならない。目前に迫る試験への緊張感が同級生の間で漂い始めたのは六月の二週目に突入したあたりからだろうか。今年の試験は例年より遅く設定されており、七月一日と二日に行われる予定であった。しかし、私には違う種類の不安が大きくなりつつあった。パリ音楽院からの連絡が一向に来ない。事務局に連絡してみると、バイオリン科の新入生のクラス分けの会議が六月の後半にあるという情報が得られた。かその時に補欠の繰り上げが発表されるかもしれない。そう願いながらも、不安感は日に日に増大していった。試験の準備を始めないと、と友人同士の会話に焦りが聞こえ始める頃には、既に六月の後半は始まっていたのだ。 結論から言うと、今年は全てがうまく行った年だった。六月二十四日の夜にパリ音楽院からやっと合格通知が来たのだ。しかも、第一希望の教授のクラスに入ることが出来た。補欠二位で希望するクラスに入ることは滅多にないことだ。その教授の合宿に参加したり何度かコンサートを聞きにいった、この四年間のアプローチが実ったのだろう。パリ音楽院に併設されている未成年者の生徒用の寄宿舎にも無事受け入れられた。七月十一日には義務教育修了資格の試験結果も公開されて、こちらは八百点中七百九十二点半と、かなり満足のゆく結果である。四ヶ月半もの間悶々と待たされ続けたと言うのに、一度返事がやってくると全てが急に加速する。九月からの新学期の予定やら、申し込みに必要な書類やらが大量にやってくるのだ。そうだ。九月からパリの寄宿舎へ行って、通信制の高校へ通いながら音大学生として生活するのだ。私が。去年の今頃は、ぼんやりと入試のことしか考えていなかった。しかも、合格することは勿論願ってはいたが、一次試験を通過することさえ不安だった。恐らくその頃の私が今の状況を知るとしたら、嬉しさより驚愕の方が勝つだろう。正直に言うと、現在でもまだ実感は沸いていない。 しかしながら、今の状態で時を止めることも出来ないし、刻一刻と時間は過ぎて行く。新たな環境とはいつも不安と好奇心が混ざり合うものだ。今や私は中学生でも無くなった。早すぎる時間の流れに戸惑いを覚えるものの、それが人生だろう。全く想像のつかない新学期が、あと一ヶ月半ほどでやってくる。つい最近までは自分の将来を想像出来たのに、今は靄がかかったように朧げだ。だが、今時代は人生百年時代とも言われる上に、私はまだ十五歳だ。時間はあるだろう。未来とはカオスそのものだし、予測を常に裏切る。だからこそ、ここでは一旦目先の目標に集中するだけにしようと私は思うのだ。
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