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AI森リン「森リー」
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AI森リン「森リー」
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身内から「裏切り者」を出すことによって共通の敵を作るという心理は、集団内の緊張感と結束力を高める為に、古今東西使用されてきた手法だ。複数の人間が集まり一つの社会が形成されると、必ずと言って良いほどその内部に「派閥」が作られる。例えば特定の思想の中でも「革新派」「保守派」「穏健派」「過激派」のように複数の思考が度々見受けられるだろう。そして各派閥の中でまた別々の考えの人間がそれぞれ集まり「派閥の中の派閥」がまた生まれる。しかし、あまりにも細分化した組織は結束力が弱まり、弱体化する。そこで、皆が名指しで批判し忌諱する対象を作りだすことで集団内に緊張状態をもたらし、「派閥」の垣根を超えて一致団結することができるのだ。この集団心理の性質は組織の運用上有効な手段である。一方で、再現が容易く強力な為、しばしば悪用されるのも事実だろう。その術の影響を受けない為に、私たちは自身が置かれている環境を客観的に分析する能力を身につけなければならないだろう。その為には二つの方法が考えられる。 第一に、外部から切り離され、誰にも影響されずに一人で思考を巡らす時間を作るという方法が挙げられる。昨今日本では、マルチ商法にのめり込んでしまう若者が問題になりつつある。この商法は鼠講に近い無限連鎖取引のネットワークビジネスだ。まず、このネットワークには勧誘され入ることが多い。そこで特定の企業の商品を(自費で)買い、そこから自身の在庫を作る。そして自分から新たな人をを勧誘しネットワークに入れることで、自身の在庫を売ると共に手数料を手に入れる。このビジネスは勧誘される際に「簡単に儲かる」という言葉に踊らされ、若者が多額の借金をして商品を大量に購入。結果膨大な在庫を抱えながら悲惨な結末を迎えることが多い。では何故この悪徳なビジネスに乗せられ、洗脳状態に陥る若者が後を絶たないのか。それはネットワークを管理する者達の狡猾な心理術だ。まず一度入会してしまうと、毎月の「ノルマ」を課せられる。そして周囲の人間を手当たり次第に勧誘するようになる。故に、友人を失い孤立していくことになるのだ。同じネットワーク入会者からは「このビジネスを否定する人は全員白痴だ」と言われ続け一緒に「敵」として批判し、しまいには学校・会社を辞める所まで進展しまう。しかし当然ながら儲かることはほとんど無い。だが、いまや後戻りは出来ない。周囲の人間は全員入会者で固められ、視界は偏り狭まった上、否定の言葉は全て攻撃する。この様な状態に陥ってしまわない為には、外部の情報をシャットアウトし、一人で冷静に思考する事を心がけるべきだ。そうすることで、偏向的な二次情報をなるべく遠ざける事ができる。したがって、自身の周囲が危険な環境である場合、後の祭りになってしまう前に引き返す事が可能になるのではないだろうか。 第二に、歴史から学ぶという方法も有効だ。紀元前三千年頃に成立したメソポタミア文明から現在まで、人類史は社会の成功や失敗を十分に記録してきた。いつの世も指導者はあの手この手を使いながら「組織」として集団をまとめ上げようと試みている。しかし、それが時には危険な状態を招くこともあるのも事実だ。例えば意図的に民衆の思考を統制し、目に見えない牢獄での終身刑を生まれながらに課される。ソ連や北朝鮮、他にはエリトリアなどが思いつく。または指導者自身が特定の思想に取り憑かれてしまった結果として、集団が惨憺たる結末を迎えることもある。カンボジアのポル・ポト、ルーマニアのチャウシェスク、ジンバブエのムガベが挙げられるだろう。あるいは集団が暴走状態に陥り、外部をも巻き込み社会に深刻な事態を引き起こした事例もあろう。ナチスドイツ、オウム真理教、イスラーム過激派。これらの例は全て直近一世紀の話だ。しかしたったの百年の間に、有り余るほどの「サンプル」が存在する。現在自身に近しい集団に似た性質を持った組織も歴史の中には数多存在するだろう。そして歴史・社会的な知識を十分に持っている場合、もしも集団から危険な予兆があれば、それをすぐに察知出来る。重ねて、完全に主観的な個人の経験則に基づくものではなく、数千年単位の人類史の経験則である為説得力も増すだろう。歴史は幾度も繰り返す。しかし、なるべく繰り返しを避けるべき歴史もあるのではないだろうか。 確かに、「内部に共通の敵を作り出す」という複数の人間を統率する手段は一見不健全に見えるかもしれない。だが、人間は社会的な動物だ。だからこそ簡単に他者に影響されるし、集団心理が働く。一方で一度何かを信じ込むと、それに矛盾しうる全てのことを否定する。それは私たちの精神に遺伝子レベルで刻まれている性質で、今後も人間社会が形成され成立する限り消えないだろう。結果、個人個人が不均一であり、放っておくと軋轢が生じる。だからこそ集団、組織や社会が成立しうるには複数人を纏め上げる指導者が必要だ。そして「指導者」がいがみ合う人々を結束させるために、人間の性質を逆に利用することは致し方ないことではなかろうか。そのおかげで集団が本来の目的を果たせるのであれば、妥当な手段だと言えるだろう。しかし、気をつけなければならない。だからこそ、自分の理性的な判断が不可能な状態になってしまう前に、その心理的手段を認識し、ある程度距離を取っておくことが重要だと私は主張する。理性的判断力を欠いた人間の集団ほど為政者に便利なものは無いが、同時に一番厄介な存在にもなりうる。ハーメルンの笛吹き男の音色は魅力的だが、遠耳でその音楽を楽しむくらいが丁度いい。ふらふらとついていってしまうと、もう二度と帰れなくなってしまう。
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