他者理解
   高1 あああさ(aaasa)  2025年2月1日

 ある書物がよい書物かどうかは、そこに書き手の作った世界が感じられるかどうかで判断される。それは知識や体験や理念とはかかわりがなく、書き手が幾度も反復して思い患った場所である。私は少年期、しゃべることで自己表現をすることの難しさに悩まされた。ある時私は、自分も周囲からは意思が疎通しない他者と見なされているのではないかと気が付いた。私が本当に恐れている人たちは他の書き手ではなく、こういった周囲の人間である。私たちは、自分を特別視せず、他者もまた同様の存在であることを認識するべきである。

 そのための方法としては、第一に、他者に対する共感力を高めることだ。他者を完全に理解することは不可能であるため、そこには独自の解釈がはたらき、私たちは想像の他者と会話をする。その結果、個人の事情や心情は他者によって湾曲して捉えられ、理解不足を助長する原因となる。この悪循環を阻止するためには、他者の話に積極的かつ客観的な視点から耳を傾け、共感を促進することが大切である。私は人の話を聞く際に、相槌や表情で自分がきちんと話を聞いているという姿勢を見せることを大切にしている。自分の体に他者の組織を移行した際に細胞が拒絶反応を起こすように、人間は未知のものに対しては否定的な姿勢を取り自己防衛に走る傾向がある。それを仕方のないことと割り切った上で、態度では肯定を示すことで、自然と他者を受け入れようという思考が先行するようになる。それだけでなく、自分を完全に理解できる者が存在しない世の中で、孤独や葛藤を抱えた経験を少なからず持つ人間にとっては、自分に少しでも共感し理解しようという姿勢を持つ他者の存在は安心感をもたらすだろう。このように、自己の基準で他者や世界を捉えないためには、他者に対する共感力を高めることが大切であると考える。

 第二に、多様性を尊重することだ。人間の様々なあり方を認識し、互いに尊重し合うことは、他者に対する認識を深めることに繋がる。アメリカでは1960年代、人種差別に対抗するためにアフリカ系アメリカ人が起こした権利を求める運動である、公民権運動が起こった。1963年にはワシントン大行進が行われ、25万人以上が集まって平等な権利を求めた。この結果、公民権法が成立し、アフリカ系アメリカ人の人権が法的に保障されるようになったという。この出来事によって社会的な意識が変化し、女性の権利運動やLGBTQ+の権利運動にも影響を与え、世界中の人権運動にとっても重要なモデルとなった。このように、自己の基準で他人を排除することを防ぐためには、人間の多様性を尊重することが大切であると考える。

 確かに、自分の能力を認識し、過大評価することで自己肯定感を向上させることが可能となる。しかし能力値の高さが、自己満足に陥り他者を過小評価する理由になってはならない。自分もまた、他人の目に映った他人なのである。よって私は、自分を特別視せず、他者もまた同様の存在であることを認識するべきであると考える。