大海を泳ぐ蛙に
   高2 あうそな(ausona)  2025年3月3日

  途上国経済と先進国経済の最も重要な差は、途上国経済では物まねができたけれども、先進国経済では自分で新しい知識を創造しないと発展できないということである。これまで日本の社会経済体制は、欧米に追いつき、追い越すという明治以来の国策に沿って形成され、特にそれは教育制度に反映されてきた。しかし、日本が欧米にキャッチアップし、自ら価値を創造することが要求される時代になっても、日本の教育システムは本質的な意味で何も変わっていない。教育現場で独自の意見を前面に押し出すことは高得点にはつながらず、黒板に羅列された知識を試験で正確に表現する受動的な生徒が優秀とみなされる。平等主義的な教育思想にそれなりの価値があることは認められなければならないが、それが独創的な人材の芽を摘み取っている危険についても日本の教育制度は十分に配慮する必要があるだろう。日本人は、知識の再現に頼らず自ら考え新しい価値を生み出す創造力を養うべきだ。

 そのためには第一に、失敗を学びの機会と捉えることだ。日本人は世界的にみても内向的な人が多い。日本人は同調性が強くまとまりがあるが、これは言い換えると周りの目を気にしすぎているということになる。この傾向は時に人々の挑戦を妨げてしまう。失敗を極端に恐れるあまり、新しいことに挑戦することを避け、安全な道を選びがちになっている。私もつい最近までそのようなタイプの人間だった。留学をしたいと思いながらも、周囲の目や現状の心地よさに引き止められ、一度チャンスを逃してしまった。その後、あの時申し込めばよかったと強く後悔し、ようやく自分がやりたいことを全力でやりたいと思い直して、両親と話し合い、留学の準備を始めた。私の学校では三年生で留学する生徒は少ないが、私は受験勉強よりも人生における大切な経験を選んだ。この選択が間違っていなかったと実感できる日が来ることを願っている。要するに、たとえ一度失敗したとしても、それだけで全てが決まるわけでもないし、また挑戦する機会を掴むのは自分の行動次第なのだ。

 また、第二には、新しい価値観や異なる視点を受け入れる柔軟さを持つことだ。自分の中から湧き出る考えだけでは限界があり、他者の意見や外部のアイデアを取り入れることでより広い視野を持つことができる。例えばairbnbは、個人が自宅や空き部屋を旅行者に貸し出せる宿泊仲介サービスであり、従来のホテルや旅館といった宿泊施設とは異なる新しい形態を提供している。私も以前スペイン旅行をした時に1週間ほどアパートを借りて住んだが、現地の人々の生活を肌で感じられて充実した1週間を過ごせることができた。このビジネスモデルは既存の市場に革新をもたらすだけでなく、旅行者にも新たな価値を提供し、従来の旅行体験を大きく変えた。しかし、最近スペインを含むヨーロッパのいくつかの都市では、観光客向け短期賃貸を廃止・禁止する動きが広がっている。これは家賃の高騰や住民の生活環境への影響を考慮したものだが、私はこの規制に賛成できないない。旅行者にとっても現地の文化を深く体験できる貴重な機会であり、地元経済にも一定の恩恵をもたらしているからだ。つまり、新しい価値観は時に反対されることもあるが、それを受け入れる柔軟さは、より豊かな経験や革新を生む鍵となる。

 確かに、成功した事例を模倣することで安定性は保たれる。しかし、先例を真似るだけでは現状以上のものは得られず、良くても維持するだけで発展もない。井の中の蛙は安全だが、大海を知らない蛙は危険だ。私はこれから、平面ではなく立体的な視野を持って、多角的に物事も見つめて向き合えていきたい。そして、大切なことに気づいていきたい。