猫型ロボットは本当に必要なのか
   高3 かたおか(kataoka)  2025年4月1日

 近所のカフェには猫型ロボットがいる。青くて耳のないアイツではなく、配膳係として働く移動式ロボットだ。最近ではファミレスなどでよく見かけるようになった彼らは、効率化の代名詞といっても良いほど素晴らしいロボットだと思う。彼らのおかげで、店の人員削減になるし、回転率も上がるだろう。ものすごく便利で合理的な発明である。しかし、このように効率化のみを追求することは本当に人々のためになるのだろうか。今後、社会のシステムがより効率化されることによって、他者との触れ合いがなくなってしまうことが問題になると思う。

 そのための対策として、対面コミュニケーションの重要性を再認識することだ。四年前、新型コロナウイルスが流行し、外出が制限される自粛期間が続いた。三密や人との接触を避けるように対策がなされ、今でもマスクを着ける人が多くいる。そのようなコロナ禍で、私の通う合唱団ではオンラインレッスンが実施された。オンラインといっても画面上でみんなの声を合わせて歌うことはできない。そのため、マイクはオフにして一人で歌う、あるいは各々が動画を撮って先生に編集をしてもらい動画を作る、などの対策を講じていた。しかし、オンラインでのレッスンには限界があり、真面目に取り組まない生徒や本来の合唱団の在り方を見失ってしまう生徒が多くいた。このようにオンラインでのレッスンは大変な苦労があった。また、最近になっても対面のコミュニケーションが大切だと感じた出来事が起こった。合唱団の今後に関してであったり、メンバーの根本的な意識の問題であったり、すごく真面目なテーマについて議論する機会が多くあった。これらのテーマついてライン、電話、対面の全てを駆使して話し合いを行ったが、結局のところ実際に顔を突き合わせて話さないと何も始まらないと悟った。実際に会って話すと、メッセージのみでのやり取りにおいて多くの齟齬があったことが判明した。私は相手の言いたいことを理解できていなかったし、相手にも私の伝えたいことが伝わっていなかった。このような体験から、ラインやインスタグラムなどの文字上のやり取りがコミュニケーションツールとして優れているとは思えない。また文字上の会話はあくまで文字のみの会話でしかなく、互いの意思疎通を図るというより、一方的な連絡ツールとしてしか機能しないのではないかと思う。そのため、対面でのコミュニケーションを積極的に取り入れ、その重要性を再認識する必要があるのだ。

 対策の二つ目として、多角的に見て意味を持つ効率化を行っていくことだ。社会に存在する事象は、単に効率化をすれば良いというものではない。例えば、コンビニやスーパーに設置されているセルフレジ。レジ待ち時間の削減に繋がるが、高齢者や機械に不慣れな人たちが使いづらく、万引きなどの不正行為も増加している。また、プラスチック製の使い捨て容器も海洋生物に悪影響を及ぼすが、長期的な目で見れば私たち人間にもリスクが及ぶ可能性がある。つまり、マイクロプラスチックを体内に取り込んでしまった魚などを食べると、間接的に私たちもマイクロプラスチックを摂取してしまうことになるということだ。このように、一時的なメリットだけを見て効率化を行うと、多方面からのデメリットが生じる。そのため、ただ便利だからという理由だけで社会システムを合理化していくのではなく、多方面へ考えを及ばせることが大切なのである。

 確かに、日常生活を効率よく営むことで時代が前に進む。日本は鎖国していた時代、世界的に見ると工業化が遅れていた。しかし、鎖国とは日本史の停滞ではなく、日本文化の深化である。鎖国にも悪い面はあったが、日本の文化史における重要な役割を果たしたものともいえる。日本が鎖国を行ったことで、より一層文化に深みが生まれたのである。他者とのコミュニケーションも鎖国と同じである。世界は、実際に見て聞いてみないとわからないことだらけなのだ。そのため、直接的なコミュニケーションと触れ合いを大切にしていくべきだと思う。