ザ 森リンの点数アップ 「文のリズム」
同じことを表していても、リズムのよい文章と、リズムのよくない文章とがあります。 その違いをいくつか説明しましょう。長さの緩急、言葉の変化、読みやすい文の三つです。 第一に、長さの緩急です。上手な文章は、文の長さに変化があります。 全体の平均の長さが40〜45字というのが、上手な文章を書く高校生の平均値です。今の作文指導の多くは、「短い文の方がわかりやすい」ということを述べているので、短い文を多用して書く人がかなりいます。短い文は、確かに読みやすく、また書きやすいものですが、文章の上手さという点では疑問が残ります。つまり、短い文でつなげていくと、味わって読むような文章にはなりにくいのです。 また、長い文を書くようになっても、そのどれもが同じような長さで続いていると、やはり文章は単調になります。短い文と中間の文と長い文がうまく組み合わされて、初めてリズム感のある文章になります。 ただし、ここで注意することは、百字以上の長い文は読みにくくなることが多いということです。百字以上の文は、文法的に間違えていなくても、読んでいると違和感が残ります。この場合は、文を二つに分けるような工夫をしていきましょう。 第二は、言葉の変化です。これは、同じ単語をくりかえし使わないということです。ただし、主題となる少数の単語はくりかえし使ってもかまいません。主題からはずれた単語はできるだけ多様な表現を工夫して書いていきましょう。例えば「競争はよいか悪いか」という課題では、「競争」という言葉が繰り返し使われます。しかし、「競争によってやる気が出る」というような理由を書いて説明するときは、その「やる気」を「意欲」や「目標」や「ライバル」などといろいろに変化させて書いていくということです。 ところで、日本語の特徴として、述語が文の最後に来るということがあります。英語であれば、「This is a pen. That is a notebook.」と書いても、「ペン」「ノートブック」が文末に来るので自然に変化があります。しかし、日本語だと「これは、ペンです。あれは、ノートです。」と同じ「です」「です」が文末に来てしまいます。これが、日本語のリズムを取りにくくしている最も大きな原因です。特に、敬体で書く文章の場合は、「です」「ます」「でした」「ました」「でしょう」「ません」のように文末の形がわずか数種類に絞られます。例えば、「おばあさんが川で洗濯をしていたのです。すると、川上から桃が流れてきたのです。おばあさんはその桃を拾ったのです。」と「のです」を三つも続けて書くと、読み手にはやはり違和感が残ります。 ところが、変化を持たせることと反対のように見えますが、表現の仕方はできるだけ前後で対応している方が読みやすくなります。例えば「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました」という文を、次のように変えると読みにくくなります。「おじいさんは山へ柴刈りに、川で洗濯をするためにおばあさんは行きました」。右に曲がると思っていた車が急に左に曲がったような印象になるからです。 第三は、読みやすい文です。読みやすい文は、ひとことで言えば、主語と述語の対応、修飾語と被修飾語の対応がわかりやすい文のことです。 主語と述語について言うと、主語と述語の間にできるだけ別の主語や述語が来ないようにすることです。例えば、「おばあさんは川へ洗濯に行きました」「川上から桃が流れてきました」「おばあんさんは桃を拾いました」という三つの内容を一つの文で書くときに、次のように書けば読みやすい文です。「おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきたので、おばあさんはその桃を拾いました」。しかし、次のように書くと、主語と述語の対応がわかりにくくなるので、急に読みにくくなります。「おばあさんは、大きな桃が、川で洗濯をしているときに流れてきたので、その桃を拾いました」 修飾語と被修飾語の関係について言うと、長めの修飾語を先に持ってくるということです。例えば、「それは、おいしそうに実った大きな桃でした」と書けばすぐに桃の様子がわかりますが、「それは、大きなおいしそうに実った桃でした」と書くと桃の様子がすぐにはつかめなくなります。また、「小さな葉っぱのついた大きな桃でした」と書けばすぐにわかりますが、「大きな小さな葉っぱのついた桃でした」と書けばどういう桃なのかよくわからなくなります。 以上、緩急、変化、読みやすさの三つを意識しながら、リズム感のある作文を書いていきましょう。 |