森林プロジェクトでの作文の勉強の進め方 1 家庭での自習 森川林
2012/03/07 20:51:14 33
言葉の森では、お母さんやお父さんが、自分の子供や近所の子供に、自宅などで作文を教える「森林プロジェクト」という運動を始めています。
その全体の流れを何回かに分けて説明します。
まず、希望者は、講師資格試験を受験し、講師資格試験のテキストを頭に入れます。
教材は、森林プロジェクトのページからプリントできます。
教材のプリントは、ブラウザによって画面が崩れる場合があります。今の時点では、マックもgoogleクロムも、日本語の縦書き表示に対応していません。あと1、2年で対応できるようになると思いますが、それまではインターネットエクスプローラ8が標準ブラウザになります。このように、今はまだ印刷しにくい環境の人も多いので、言葉の森の事務局で必要な課題をまとめて印刷し、比較的低料金で郵送できるようにしたいと思っています。
ここまでが準備の第一段階です。
昔でしたら、そのあとすぐ子供たちに課題と項目を説明して作文を書かせるという流れになっていました。
今は、その前に自習と予習の取り組みが入ります。
作文の勉強を始める前に大事なことは、子供と相談して毎日の自習の内容を決めておくことです。
大体の学年に共通するのが、音読2、3分、暗唱10分、読書10ページ以上です。小6以上は、このほかに問題集読書を毎日5ページ以上を目標にやっていくこともできます。
ここで大事なことは、決めたからには必ずやり続けるということです。言い換えれば、やれそうもないことは決めないということです。決めたのにできなかったという状態を作ると、そのあとのどの勉強も継続が難しくなります。つまり、何を決めても守れないという習慣を作ってしまうのです。
ですから、小1や小2のころの家庭学習の習慣作りはとても重要です。低学年のころまでに、決めたことは守るというスタイルを確立しておくと、あとの勉強も子育てもずっと楽になります。
決めたことが守れるようになったら、今度は逆に、親が自分の意見をあまり押し付けないようにすることです。子供の意向を尊重しながら決めたことを守るという体制が作れると、無理のない継続の体制が作れます。
言葉の森の自習は、音読と暗唱で合わせて15分程度ですが、毎日欠かさずにやることが大切です。他の習い事がなどがあるので、毎日はできないという場合は、まず他の習い事を見直すことを考えてください。子供のころの習い事で最も大事なものは、確実な日本語力を身につけることです。日本語力を育てることを大方針として家庭学習に取り組んでいく方が、あとになってほかの勉強にも役立っていくのです。
小1、小2のころは、比較的無理なく自習の習慣がつく時期です。これが、小3、小4になると、毎日の自習の習慣をつけることがだんだん難しくなってきます。小5、小6になると、新しい自習の習慣をつけることはかなり困難になります。だから、ずっと続けるような習い事は、6歳の6か月ごろから始めるといいと言われているのです。
子供の状態を見て、音読、暗唱、読書の三つを全部やらせるのが難しい場合は、最低限読書だけは毎日やっていくようにしてください。読書だけでしたら、だれでも何とかできるはずです。読書のさせ方については、言葉の森のホームページにある読書の掲示板などで相談していくといいでしょう。毎日10ページ以上という単純な方法であっても、この読書を毎日やっていると、子供たちの日本語力は必ず向上してきます。
毎日の音読、暗唱、読書などの自習を決めても、その自習を守らせることを親が忘れてしまうことがあります。新しいことは、習慣をつけるまでが大変です。
そこで、本当に、子供に自習をさせて実力をつけたいと考えたら、親自身も毎日自習をしていくといいと思います。ただし、これは、かえって親の負担が大きくなって続かなくなる可能性もあるので、やる気と余裕のある方だけにしてください。
親の自習でいちばんいいのはやはり暗唱です。大人の暗唱の場合は、暗唱したい文章の載っている本を1冊決め、その本の暗唱したいページをコピーします。1か月の暗唱の範囲は、見開き2ページ分(約1200字)程度です。その暗唱したい文章を100字ぐらいずつ区切って線を引いておきます。その100字を毎日30回早口で音読すればだれでも暗唱できます。あとは、「学習の手引」(
http://www.mori7.net/mori/gate.php )の「暗唱の仕方」のページを見て、その手順どおりにやっていけば1か月の暗唱ができます。
老若男女だれでもやればできる、やらなければできないというのが暗唱の自習のいいところです。
なぜ、親も暗唱をするのがいいかというと、第一に、子供の暗唱について的確なアドバイスができるようになるからです。第二に、大人でも暗唱することによって頭の働きがよくなることが実感できるからです。第三に、暗唱は毎日やらなければできるようにならないので、いったん決めたことを三日坊主にしないための最良の方法だからです。
親が毎日暗唱をすれば、子供にも自然に毎日声をかけるようになります。すると、子供も毎日、音読、暗唱、読書をするようになります。しかし、ほとんどの場合は、親が自分から自習に取り組まなくても、毎日の声かけさえ忘れなければ、子供の自習の習慣は定着していきます。
毎日、自習で音読や暗唱や読書をしていると、子供の日本語環境が豊かになってきます。
そして、この毎日の音読をもとにして、週の1回土曜日の夕方などの家族の団欒(だんらん)の時間に、子供に音読した長文の内容を説明してもらいます。この場合、長文を見ずに、頭の中にある範囲で説明します。
お父さんとお母さんも、できるだけ事前にその長文に目を通して似た話を考えておくとよいでしょう。考えるヒントは、言葉の森のホームページの授業の掲示板などを参考にしてください。
対話は、ディベートではありません。相手の言ったことに反論したり批判したりするのではなく、相手の言ったことに対して、自分の似た話を付け加える形で発展させていきます。両親が仲よく対話を発展させるやり方を見て、子供も将来必要になる対話の方法を学んでいきます。
家族の対話には、年の違う兄弟も入ります。まだ話もできないような子がいる一方で、すでに大学生になっているような子がいてもいいのです。年齢の違う家族が集まってそれぞれの得意分野を、相手の理解度に合わせて話すことが大事です。
家庭によっては、父親が不在がちで、母子2人だけというところも多いと思います。そういうときは、近所の同じ年齢の子供のいる家庭と合同で対話をするのもいいでしょう。毎週1回ホームパーティー形式で、子供たちが1週間の暗唱や音読の成果を発表し、それについて複数の親子が対話をするという形です。
以上の自習と予習が、作文の勉強を進める上で、7割ぐらいの重要性を占めています。
言葉の森以外の作文指導では、作文を書かせたあとの添削や講評がほとんどすべてです。言葉の森は、これに対して、作文を書く前の事前指導に力を入れてきましたが、事前指導よりももっと大事なのが、事前の自習と予習だということがわかってきました。
自習と予習ができていてこそ、週1回の作文の勉強で実力がつき意欲もわいてくるのです。
週1回の家族の対話の中では、次の週の課題でどんなことを書くかということも子供から説明させます。この説明が表現力の練習になります。日常生活の話題よりも少しレベルの高い話を、他人にわかるように言葉を選んで話すというのが語彙力をつける練習になります。
ここで、聞いている大人にとって大事なことは、子供の説明の仕方に不十分な点があっても、決して注意しないということです。音読でも、暗唱でも、読書でも、すべて同じです。
大人は、子育てになれていないうちは、つい欠点を注意して直そうとします。しかし、社会生活の経験を積んでくるとわかるように、大きな注意はたまには必要ですが、小さな注意を繰り返すと、子供が萎縮してしまうというマイナスが生まれてきます。子供のすることには欠点があっても、その欠点には目を向けず、ほかのよいところを褒めるだけで、子供は全体的によくなっていきます。
さて、自習が終わったら、次はいよいよ作文の勉強です。(つづく)