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● 4月5日(水)のディスカッションのテーマ (5504字) 森川林 nane 2023年04月04日 21時14分
14651 (創造発表掲示板)
■私はいじめと
私はいじめと、生徒のいさぎよくない行為に出くわしたときは、絶対許せなくなります。例えば、あることで他の生徒が白状しているのに、白々しく嘘を言い続ける生徒がいました。私は、バーンとテーブルを飛び越え、その生徒の横っツラを張り倒した。その折、何かの金具に手の甲が触れたのでしょう。私の手から血が流れ出しました。でも、殴るのをやめなかった。すると、周りの仲間がその生徒に言うのです。
「お前、早く謝れ。みんなバレているんだから謝れ、早く」
生徒は「なんだ、もうバレてしまってたのか」。実にあっけらかんとした表情で、すべてを白状しました。そんなことがあった後は、人間関係が逆に深まります。そして、彼らはさまざまな情報を私に提供してくれるようになるのです。
いまの学校現場には、こういう場面があまりにも少ないようです。若い先生などはヒステリックなまでの暴力反対の教育を受けてきているし、自分自身も受験勉強一筋でケンカをした体験がない。だから、小学校などではちょっとしたケンカでも教師がすぐ止めて、満足にケンカもさせません。
私は違います。こんなふうに生徒とやりとりをする。
「ケンカかあ、それともいじめかあ」
「ケンカです」
「そうか。じゃあ、机を隅に寄せて思う存分やらせろッ」
小学生、中学生のときのケンカは思いきりやらせればいい。そのなかで痛みもわかるし、それ以上やればどうなるかという頃合いも、自然と身に着いてきます。疲れたからもうやめたという具合にもなる。
「先生、頭にきたぜ」
「なんでだ」
「止めてくれればいいじゃないか」
私が止めないから、ケンカを続けなければならない。ケンカをしている双方が、「文句」をつけてくる。荒れる黒中時代はこんなケースがいくつもありました。
その荒れる子供たちが一番腹立たしく思うのは何か、ご存じでしょうか。それは教師に「シカト」されること、つまり「無視」されることなのです。ある男子生徒が卒業間際に話してくれました。一学期のある日の英語の授業で、教師が前の席の生徒から順番に質問をしてくる。「次はおれの番だ」と思った彼は、「わかりません」という言葉を用意して待っていたというのです。ところが、教師は彼をポンと飛ばして、次の生徒を指名した。瞬間、彼は逆上して、「ばかにするな、この野郎」と机をひっくり返し、教室を飛び出しました。以後、その教師の授業に出席することはなかったといいます。
愛情の反対は、憎しみではない。愛情の反対は無関心なのだ、と私は思うのです。机をひっくり返した生徒は「無視」という氷の刃をグサリと突き刺されました。彼は腹を立てるというよりも、悲しかったのです。
(「致知」九七年八月号 木村将人氏の文章より)
■祝う言葉
【1】祝う言葉という依頼なのだが、いきなり「バンザイ」とくると下品だろうか。たしかに最近では、選挙に勝った場面とか、とにかく多勢で酔っぱらって両手をあげている姿しか浮かばない。
【2】しかしこれはもともと中国の正月の習慣で、
五岳(注・中国で古来から崇拝されている五つの名山)の一つである泰山に皇帝が登り、「
万歳」
すなわち悠久の平和を祈る儀式に由来している。今の平和に感謝しつつ、それが一万年も続きますようにという祈りの言葉なのである。 【3】ところで私が祝いの言葉として「バンザイ」を挙げたのは、これが心底思いを込めて使われた場面に接したからである。
気仙沼のお寺の和尚が住職になる儀式だったが、修行時代の師匠である老師が本山から招かれ、「祝辞」という段になった。【4】その際、老師はしばし沈黙し、ぴったりと唇を閉じて虚空をにらみ、それから大声で「バンザーイ」と大声をあげた。それだけである。
長々とした祝辞が多いなかで、それは鮮やかな場面として今も脳裏によみがえる。伝わるものは言葉にしなくても伝わる。【5】いや、へたに言葉にする以上のものが伝わることがある。何人かの涙ぐむ人々を見ながら、私はそう思ったものだった。
しかしこれは極めて稀な例である。おそらく何度か見てしまえば、感慨も薄れるのかもしれない。【6】通常は、祝う心を丁寧に表現しないとそれは伝わらないし、それどころか、表現することで無意識だった気持ちまで引きだされたりもする。
「愛でたい」という気持ちを、わざわざ言葉に出して表現することを、日本では古来「ことほぐ(言祝ぐ)」と言う。【7】「寿」は、その名詞形である「ことほぎ」がさらに訛ったものだ。
禅ではこの「言祝ぎ」が重視される。なによりもまず自分の生まれた場所や親は選べなかったわけだから、そこから言祝いでしまうのである。この町に生まれて佳かった。【8】この両親のもとに生まれて佳かった、そこから始まって「今日は佳い台風だ」「今の私は素敵な年齢だ」「歯が痛いのもしみじみして味わい深い」などと、自∵分の立っている足許の状況をすべて肯定していくのである。
【9】むろん文句をいえば状況が変わるというなら、言ったらいい。しかし大抵の状況は、文句を言うと更にその不満が強く意識されるだけで、あまり意味がない。だから言っても仕方がない文句は言わず、言祝ぐことで「今」を安定させる。それが禅的な意味での「足るを知る」ということだ。
【0】(中略)
バンザイと叫んだところで、その事態が「
万歳」続くとは誰も思っちゃいない。しかし志さえ揺らがなければ、人生はさまざまな「ゆらぎ」さえ風流と味わえる。その人間の知恵に、私はバンザイを言いたいのである。
(
玄侑 宗久『釈迦に説法』による)
■世界は意外に早く多極型になる 田中 宇
https://tanakanews.com/230402multipol.htm
米覇権の衰退や覇権多極化はこれまで、潜在的な動きが多かったし、急進しているように見えなかった。多極化は私の妄想だと思う人も多かった。昨春ウクライナが開戦して、世界が、金融バブルだけで保持されている米覇権の米国側と、世界の資源類の大半の握って非ドル化・金資源本位制を目指す多極型の非米側に決定的に分割され、いずれ米国側が金融バブル崩壊して覇権衰退して世界が多極型に転換する流れが見え出した後も、この流れを指摘する人は少なかった。しかし先月から、米欧銀行の連鎖破綻と、中国による多極型世界の構築が始まり、米覇権衰退と多極型世界の具現化が急に進展し始めた。 (I Love How Everyone Pretends The Bank Crisis Is Over) (China And Brazil Strike Deal To Ditch The US Dollar)
中国に覇権運営なんてできるはずないと米国側のマスコミ権威筋が言い続けているうちに、中国は、イランとサウジアラビアの和解を実現して米英が不安定化し続けてきた中東を安定させ、ロシアとの結束を強めて中露で多極型体制を推進していくことを決めた(ロシアは先日7年ぶりに外交の基本戦略を改定し、米覇権への対抗と、多極型世界体制の防衛を盛り込んだ)。 (Russia’s revised foreign policy concept: Key points)
多極型体制は、諸大国が合意できる範囲で協力し合うゆるやかな体制で、米国の傀儡になることを参加国が強要される米覇権体制と対照的だ。ブラジルやインドなど諸大国から、イランやインドネシアやナイジェリアなど中規模国まで、米国支配に服従せねばならない米覇権よりも、自国の希望に沿って動ける多極型体制の方が良いと考えている。米国側より非米側の方がはるかに国家主権を認められる。そのため中露が多極型体制を正式提案したら、多くの国がすぐに賛成して米覇権を見捨てて非米側に鞍替えした。これまでBRICSや上海協力機構などの非米側で限定的に機能するだけだった多極型体制が、急に世界の主流になった。「中国とインドが主導権争いするので多極型は機能しない」などと頓珍漢を書いている日本などのマスコミは、多極型の特質を理解しておらず不勉強だ。(勉強したら米傀儡プロパガンダであり続けられない) (China is winning the diplomatic struggle against the US) (China and India battle for leadership of Global South)
非米側は、多極型であると同時に、世界の資源類の大半を握っている。主要な産油諸国のうち、米カナダ英ノルウェー以外はすべて非米側だ。3大ガス産出国(露イランカタール)もすべて非米側だ。産油国の盟主であるサウジアラビアがこの半年で、米国を捨てて非米側に転向したことが象徴的だ。サウジは3月29日、中露が作る上海機構の対話パートナーになると閣議決定した。上海機構は911事件のころ、米国が「テロ戦争」でユーラシア内陸部を不安定化しようとする策に対抗し、中国とロシアが長年の対立を解消して結束し、中央アジア諸国も誘ってユーラシア内陸部を安定化するために作った安保経済の協力組織だ。上海機構は、2009年に初めて首脳会議を開いたBRICSより古く、多極型の国際体制の元祖だ。 (Saudi Arabia Joins Shanghai Cooperation Organization As It Embraces China)
非米側が世界の資源類を握った状態で結束し、米国側の言うことを聞かなくなった。新たな世界が突然出現している。米国側の諸国(先進諸国)は米国の傀儡であり、米国が非米側を敵視しているので追随せざるを得ない。だが今後時間が経つにつれ、米国側は資源類が不足してインフレになり、経済を回せなくなる。米国側の諸国は、表向き「中露はけしからん」と言いつつ、非米側の主導役である中国と親しくしていかねばならない。 (Pozsar's Warning Of Dollar's Waning Sway Comes True)
その動きの象徴が、間もなく仏マクロン大統領とEU首脳のフォンデアライエンが中国を訪問する件だ(4月5-8日)。マクロンらは表向き「中国に対し、ロシアと親しくするなと加圧しに行く」と言っている。だが訪中の本当の主旨は多分そうでなく、非米側から資源類を買わせてくださいと頼みに行くことだ。最近、史上初の人民元建てのLNG輸出が、中国からフランスに向けて行われている。こういう感じで今後もお願いしますという話だ。 (China Settles First LNG Trade In Yuan) (France Willing To Work With China On 'Peaceful Solution' For Ukraine)
G7は団結して中国を制裁し、先進諸国の半導体製造機器を中国に売らないようにすると決める。半導体産業は、中国と米国側のどちらかを選ばねばならない。米国側に残るなら中国と縁を切らねばならないし、中国側に行くなら米国側との縁切りになる。今までなら、この二者択一に対する答えは米国側であり、疑問の余地はなかった。だが、今後は違う。米国側は、これから米欧の巨大な金融バブルが崩壊し、半導体の需要も急減する。対照的に中国など非米側は、多極型になるので経済が安定し、長期的な発展が具現化する。好戦的な米英がいないので、多極型世界は国際紛争が激減する。半導体の需要も増加する。衰退する米国側でなく、発展する中国側を選びたい企業が増える。G7の中国制裁は、中国でなくG7諸国を打撃する。ウクライナ開戦後の対露制裁と同じ構造を持っている。 (US-China Decoupling Will Force Europe To Choose Sides Sooner Rather Than Later)
米欧の銀行危機は間もなく再燃しそうだ。米国の経済学者ヌリエル・ルビーニが最近、米国のほとんどの銀行は、米連銀の連続的な利上げを受けて、すでに支払不能の状態にあると指摘した。金融システムが脆弱化し、わずかな衝撃で危機が再燃し、しだいに全崩壊に向かっていく。非米側は、米国がドル決済の禁止を経済制裁として使うので回避措置として貿易決済を非米諸国の通貨で行う非ドル化を進めたが、これが奏功し、米国側が金融崩壊しても非米側は意外に被害を受けなくなっている。米覇権の崩壊は不可避だ。その後の米国側(日本とか)がどうなるのか予測していく必要があるが、権威筋はこの事態を全く無視している。 (Nouriel Roubini claims that most U.S. banks are technically near insolvency)
米国側と非米側に決定的に分裂した今の世界は、資源類を非米側に握られ、欧日など米国側(米傀儡諸国)は、中国など非米側を敵視し続けることができなくなり、口だけ米傀儡であり続けつつ、裏でこっそり中国にすり寄って非米側に非公式参加せざるを得ない。日本は安倍晋三が数年前に米中両属体制を敷いたが、今や欧州も米中両属をやらざるを得なくなった。それがマクロンとフォンデアライエンの訪中の意図だ。米国は経済的に金融崩壊に直面し、国内政治的に共和党への弾圧など頓珍漢が悪化しており、国際政治的に孤立化していく。世界は意外に早く多極型になる。
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● 4月4日(火)のディスカッションのテーマ (3795字) 森川林 nane 2023年04月03日 14時05分
14645 (創造発表掲示板)
■
孤独について
【1】君は
孤独を感じたことがあるか。
もし、それを感じたことがあったら、それは君が成長したしるしだ。悲しむことはない。
【2】いつも、まわりのおおぜいの友人といっしょになって、先生の失敗をはやしたてたり、流行歌を合唱したりして、それで毎日がたのしいというのは、自分の個性を自分でみつけていないのだ。
【3】あるいは、個性をそだてることがおっくうなので、おおぜいのなかにとけこんでごまかしているのだ。
渡り鳥が群れをつくってとんでいるようなものだ。おおぜいのいくところについていけばいいという気持ちだ。
【4】ところが、自分はおおぜいにはついていけないという気持ちがおこってくる時がある。
自分にだけ能力があるという、えらそうな気持ちからでなく、そうなる時がある。
そして、おおぜいからすこしはずれたところにでていって、はじめて救われたようになる。
【5】これを、
孤独病という病気のように思うことはない。みんなにとけこめない自分を悲しく思うことはない。
人間はめいめい個性をもっている。それが中学生のころになると、急に成長するので、ほかの人とあわないところがでてくる。
【6】それぞれちがった個性が一度に開花してくるのだから、ほんとうは中学の時代は、まとまりのわるいものだ。ところが、いまは受験勉強というもので、みんなに同じような生活が強いられている。
【7】みんながおなじ
模擬テストをうけ、おなじ宿題をやらされ、おなじように時間がたりないところにおいこまれている。みんながおなじようなことをかんがえ、おなじようにさわぐのは、受験勉強にたいする共通した反応だとかんがえていい。【8】受験勉強のために、個性の開花はおさえられている。
そのなかで、自分の個性の成長を感じ、自分はすこしちがうと思いはじめるのが、
孤独なのだ。
自分のような
孤独な人間が生きていけるだろうかなどと思うのは、まちがっている。【9】個性的であるという点で、人間はみんな
孤独なのだ。∵
人間は
渡り鳥のような個性のないものでない。めいめい
孤独なのだと自覚し、
孤独だからこそ連帯が大事だということになって、はじめてほんとうの連帯が生まれるのだと思う。【0】
『人生ってなんだろ』(松田
道雄)より
■お正月
【1】元日はおかしな日だ。きのうまでいそがしく動きまわっていたおとなたちが、映写機の故障でフィルムがとまったように、おちついて笑顔をみせている。
【2】お正月なんか、ちっともおめでたくないや、おとなが勝手にきめて、酒をのむ口実をつくってるだけじゃないか、と思っている人もあると思う。
お正月に、そういう感じをもつ人は、昔からいた。一休
和尚という
坊さんがそうだった。【3】室町時代のおわりちかく、京都の大徳寺の住職をしていた。この人は正月に、
正月は
冥途の旅の
一里塚
めでたくもありめでたくもなし
という歌をつくって、おめでたい、おめでたいといっている人をからかった。
【4】人間は年をとって死ぬのが当然だから、正月は死に一歩ちかづく里程標だというわけだ。
人間の世界は何ごとにも、喜ぶべきことと、悲しむべきことが、両方ふくまれている。
【5】どうせ死ねばだれでも無になってしまうのだ。それだからこそ、めでたいほうに
賭けるべきではないか。正月は、そういう
賭けの季節だ。
自分は才能があるのかも知れぬ、ないのかも知れぬ。それだったら正月は、才能のあるほうに
賭けるときだ。
【6】去年、仲たがいした友人があるとしよう。人間は一〇〇パーセント意地悪ということはない。意地悪をしたとしても、その人間のなかにある善良なものが、ゼロになったということではなかろう。そうなら、仲たがいした相手のなかの善良なものに
賭けるべきだ。
【7】去年は、何かで親と争って、親をばかにしている人があるとしよう。いちど、ぐあいがわるくなると、親子のあいだは、非常にばつのわるいものだ。わるうございましたなどとあやまるのは、最高にてれくさい。【8】だが、正月は、親も子も、去年のことを忘れるほうに
賭けていいときなのだ。
正月は人間のつくりあげたフィクションであることは、まちがいない。∵
【9】だが、そのフィクションによって、いいこともするが、わるいこともする人間、つよいときもあるが、よわくもなる人間が、世界中一ぺんに
軌道修正をするというのだったら、正月というフィクションも、人間の
知恵といっていいではないか。【0】
『人生ってなんだろ』(松田
道雄)より
■ 【1】言葉というものは、具体から
抽象へと発達するものだと私はいったが、それはそのまま思考の成長の過程でもある。その成長過程は言葉や思考の「
乳離れ」といってもいい。
そもそも言葉とは命名から出発した。【2】子供が生まれると名前をつけるように、人間は自分とかかわりのあるものに
片っ端から名を
与え、こうして言葉はつぎつぎにふえていった。したがって、当初、言葉はかならず現実の具体的な事物に対応していた。【3】けれども、もし言葉がそれをあらわす現実の個々の事物と一対一の対応関係をつづけていったなら、言葉は無限にふえつづけねばならない。ひとたび、そうした
一般化に気付けば、言葉はすくすくと成長する。【4】
一般化したものをさらにまとめて
一般化し、それをもっと広い
類概念にくくってゆくというふうに。そして、この
一般化によって言葉も思考ももの
離れし、現実の個々の事物から独立して、言葉独自の世界をつくりだすことに成功したのである。
【5】具体的な動作、あるいは事物の
状況や性格についても同様であった。たとえば、考えるという動詞は「考え」という名詞に
抽象されることで実際の動作から
離れてひとつの
概念になり、美しいという性状は「美しさ」というふうに
一般化されることによって具体的な対象から
抜けだして独立の観念へと成長した。【6】「考える」から「考え」への変質は、言葉のうえではきわめてかんたんのように思えるであろう。「美しい」から「美しさ」への一歩前進はいとも容易にみえるかもしれない。けれども、その一歩こそ、
千鈞の重みを持っていたのである。【7】それは新しい
概念の
獲得であり、高度な観念の誕生であった。
どのような民族にあっても、言葉はこのような形で育ち、思考はそれとともに発展した。つかむという動作はドイツ語でベグライフェンbegreifenという。【8】何か物をつかむというその具体的な動作から、やがてベグリフBegriffという
抽象名詞が生まれた。ベグリフというのは「
概念」のことであり、つまり、手で物をつかむように、頭で事物をつかむ、それこそが「
概念」なのである。∵
【9】もしわが国が他国の言葉の
影響をこうむることなく、日本語を独自に育てあげることができたとしたならば、日本語にはもっとやさしい形で多くの
抽象名詞がつくりだされたことであろう。【0】つかむという動詞は手づかみなどというように、つかみという名詞を生みだし、それがドイツ語の場合とおなじように「
概念」という
抽象名詞になったかもしれない。ところが、幸か不幸か、日本語はいわば初期の発展段階で、いってみれば幼児期に、すでに高度な文化を持っていた中国語に深く
影響された。それは日本語もまだ
充分に使いこなせない
幼稚園の段階で、いきなりむずかしい外国語を教えこまれたようなものである。中国から文物を受け入れた
奈良時代の日本人が、漢語をどのように
扱ってよいのか、それにどんな和語をあてはめたらいいのか、
途方にくれたであろうことは察するに難くない。
おなじとまどいは明治になって
西欧の文化を輸入したときの日本人の対応においても見られる。英語やドイツ語やフランス語を明治の知識人たちは漢字の造語力を利用して苦心
惨憺のすえ独特の和製漢語におきかえた。そして、第二次世界大戦後、日本人は三たびおびただしい外国語の海にただよう破目になった。この国を
浸したアメリカ語の
氾濫である。しかし、このときには日本人はもはや漢字の造語力によってそれを和製漢語に置きかえる努力を
払わなかった。アメリカ語をそのままカタカナに表記してすませたのだ。その結果、日本語はおびただしいカタカナ語をかかえこむことになった。このようにして、日本語は、三たびにわたる外国語の流入のなかで
悪戦苦闘してきたのである。
(森本
哲郎の文章による)
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● 4月3日(月)のディスカッションのテーマ (1866字) 森川林 nane 2023年03月31日 15時16分
14642 (創造発表掲示板)
■規格はずれ 長文 3.1週 yube2
1君は電機メーカーの工場の流れ作業をみたことがあるかい。
ベルトの上に部分品がのっかってはこばれてくる。ベルトのまえにすわっている人が、そこから部分品をとって、組み立てている電気器具にはめこんでいく。
2部分品は、寸法がきちっと統一されていて、組み立てている器具の、きめられた部分にぴったりあう。
こういうふうに、部分品の規格が統一されているので、大量生産ができるのだ。
3君の学校にも、いろいろ規則があるだろう。学校のどこそこの場所には勝手に立ち入ってはいけないとか、服装は、こういうのに違反いはんしてはならないとか、いろんなきまりがあるだろう。
4何百人もの生徒を、毎年、きまった日に卒業させようと思うと、そういう規格の統一が必要になるのだ。
しかし、それは、学校という限られた場所で、何百人もの卒業生を、きまった年限でつくりだす必要上できている約束だ。
5人間は鋼鉄製の部分品でないから、そうきちっと寸法がきまらない。あっちがとびだしたり、こっちがへこんだりする。
じっさい社会にでてから役に立つのは、その人間に特有なとびだしたところだの、へこんだところなのである。
6学校を卒業して社会にでてくる人間が、どれもこれも、寸法がおなじ規格品だったら、社会はぜんぜんおもしろくなくなる。
テレビのコマーシャルでもいろいろちがうからおもしろいんで、あれがすべて、君のんでますか、君つかってますか、と商品をつきだされるんだったら、やりきれない。
7それだから、君が学校できめられた規格にあわないところがあっても、気にしないことだ。
学校の図書室に大人物の伝記があるだろう。読んでみたまえ、みんな規格はずれだ。
8だが、伝記をかく人間は、中学の図書室にならべてもらいたいので、規格はずれではあるが、いまの学校の規格にあうようなところに力をいれてかいている。
9だから、どうも自分は規格はずれだと思っているんだったら、学校の図書室にない、かわった人物の伝記も読んでみるんだな。
規格からはずれるのは、人間としてのエネルギーのあふれている人におおい。0
■尊敬する人物 長文 2.3週 yube2
1君はいままでに、
「あなたはどんな人物を尊敬していますか」
などという質問をうけたことはないか。
私は小学校や中学校のとき、よくそういう質問をだされた。2そして、いつもこまったことをおぼえている。尊敬するということが、あまりはっきりしたことばでないからだ。
ところが、先生のほうは、この生徒はどういう人物になりたがっているかが、それでわかるように思っているらしかった。
3えらいなあと思うことと、そういう人に自分もなりたいと思うこととは別だ。
野口英世がよく勉強したことは、えらいにはちがいないが、自分も野口英世みたいにがんばって勉強できるかどうかわからない。4また、勉強したとしても、おなじように有名になるとは思えない。
野口英世の伝記を読んで感心したことは、野口英世を尊敬することではない。伝記をかいた人が、読者を感動させるように、うまく書いたこともあるからだ。
5それでも「わが尊敬する人物」を中学生にかかせた統計は、いまでもある。たいてい、きまっている。トップは、男の子は、むかしはリンカーンだったのが、いまはケネディだ。女の子は、ヘレン・ケラーかナイチンゲールだ。
6生徒のほうで先生の読心術をやって、こうかいておけば、先生は安心するだろうと思って、あんなふうに書くのだろう。
人間は、めいめいが天分をもち、それを生かして生きるしかないのだから、他人の天分にそんなに感心することはない。7だから、尊敬する人物はいなくてもいいが、理解する人物はいないといけない。
まず第一に、自分の両親を理解することだ。
人間を理解するのは、やさしいようで、むずかしい。8有名な哲学てつがく者のへーゲル(一七七〇?一八三一)は「従者にとって英雄えいゆうはない」といったが、どんなえらい人物もその日常に密着してみていたら、ふつうの人間とかわらないという意味だ。
9あまり近くにいると、その人物のいいところがわからない点で、親子は損だ。
人間は、欠点をもちながらも、けっこうたのしく、平和に生きていけるものだ。それがわからないと、人間を理解できぬことを忘れてはならぬ。0
『人生ってなんだろ』(松田道雄みちお)より
■追加ページ
https://www.mori7.com/mine/iwa.php?yama=yube2
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● 3月31日(金)のディスカッションのテーマ (2809字) 森川林 nane 2023年03月30日 05時22分
14632 (創造発表掲示板)
■第二次大戦はデモクラシー 黄アカシア10.3週
第二次大戦はデモクラシーとファシズムの戦争だった。これがいまの歴史教育の基本である。こんな大嘘はない。
あの戦争ではアメリカとソ連が手を結び、同じ側に立ったのである。アメリカがデモクラシーであることに異論はないが、スターリンのソ連をデモクラシーと言ったら、噴飯ものである。
第二次大戦をデモクラシー対ファシズムの構図にしたのは、アメリカの戦時プロパガンダである。プロパガンダは事実である必要はない。嘘でも何でも、目的を達成すればいいのである。アメリカはこのプロパガンダで戦争の正当性を主張し、デモクラシーの価値を守るための戦いだと言って国民の士気を鼓舞し、目的を達したのだ。
では、第二次大戦はどういう戦争だったのか。アルタルキーの国と非アルタルキーの国の戦争だったのである。
アルタルキーの国とは、近代産業を支えるための天然資源を自国内や植民地内に持っている国のことである。逆に非アルタルキーの国はそのための天然資源を持っていない国をいう。
あの戦争をアルタルキーの国対非アルタルキーの国のぶつかり合いと見ると、全体像がはっきりする。
アメリカ、イギリスはもちろん、ソ連もフランスもオランダも、いわゆる連合国側に入る国はすべてアルタルキーの国である。それに対峙した日本もドイツもイタリアも非アルタルキーの国である。アルタルキーの国はブロック経済で関税を高くし、非アルタルキーの国を締めあげた。しかし、関税を高くするぐらいは耐えられた。すると、今度はアルタルキーの国は非アルタルキーの国に天然資源を売らないとなった。航海条約が破棄され、貿易が遮断された。こうなってはたまらない。ついに爆発して戦争になった。これが事実である。ところが、デモクラシー対ファシズムの戦争というアメリカの戦時プロパガンダを鵜呑(うの)みにして、歴史教育は行われている。デモクラシーとファシズムとでは、明らかにデモクラシーが善であり、ファシズムが悪である。従って、ファシズムの側にくくり込まれた日本は悪者ということになる。
(中略)
いま約百六十か国の独立国が国連に加盟している。こんなに独立国が増えたのは戦後のことで、しかもそのほとんどは有色人種の国である。これは日本がアメリカとがっぷり組んで横綱相撲を取った結果なのだ。
連合国側に与(くみ)した白人国家は有色人種の国を独立させる意志はなかった。事実、戦後日本が東南アジアから引き揚げたあと、イギリス、フランス、オランダなどは軍隊を送り、もう一度東南アジアの国々を植民地にしようとした。
だが、それはできなかった。東南アジアの人びとが、日本の勇敢な戦いの前に敗北する白人たちを目(ま)の当たりにして、白人に有色人種が勝てることを知り、敢然と抵抗したからである。
ビルマやフィリピンは日本の統治下で日本の協力のもとに独立した。その波はインドからアフリ力に及び、そして独立した有色人種国家が国連などで活躍するのがアメリカの黒人を勇気づけ、市民権獲得となっていった。
つまり、すべての人類は平等とする波が起こったのは戦争の結果であり、その起点となったのは日本なのである。
(「致知」 渡部昇一氏の文章より)
■徳川譜代の暮臣鈴木重成 黄アカシア12.1週
徳川譜代の暮臣鈴木重成は三代将軍家光のころの人で、島原・天草の乱後、幕府の天領(直轄地)となった天草に代官として赴任しました。島原・天草の乱では三万七千人の民が皆殺しにされましたが、重成自身も乱のとき砲兵隊長として出陣したので、相当の人数を殺したはずです。天草に赴任したときには罪業感を抱いていたかもしれません。
重成に課せられた任務は、天草の民が二度と乱を起こさないよう民心を安定させること、規定通りの年貢を収められるだけの生産力を回復させること、キリシタンを仏教に改宗させることでした。どれひとつとっても大変なことですが、重成の実力を見込んでの人事でした。
天草の状況は悲惨でした。島原・天草の乱後、人口が激減し、多くの田畑が耕す人もなく荒れるに任されていました。しかもそこへ過酷な税金が課せられ、農民は木の根、草の根を食べて命をつないでいるありさまです。
かねてから、天草の島全体の生産力は二万石ほどしかないのに、石高は四万二千石と査定されていました。そもそも島原・天草の乱が起こったのも、重税による生活の苦しさから逃れようと、大勢の農民がキリスト教に入ったことが原因でしたが、乱後も状況は同じでした。
重成が民の生活を向上させるためにまずやったことは、神社仏閣、道路、港などの築造工事を行い、民に賃金を得させることでした。このために重成は幕府から巨額の資金を調達したようです。いまも天草には、二、三十億円ほどの価値があろうかという社寺が二十五か所ほど残っています。
やがて重成の努力が功を奏して、荒れた田畑にも実りが戻り、島の生産力は徐々に上がってきました。民の生活にも多少余裕が生じてきたかに見えました。しかしそれでもなお、石高四万二千石の査定は天草には重すぎました。だが重成は幕府の代官です。いかに民の窮状を見るに忍びなくとも、税を徴収しなければなりません。
ついに重成は石高半減の嘆願を決心しました。重成の心に菩薩心が起こりました。世のため人のためにわが身を投げ捨てようという覚悟です。
重成は、自分が生きている間に嘆願が受け入れられないことを承知していました。なぜなら、重成の嘆願が認められれば、他の代官がわれもわれもと嘆願書を出すからです。そうなれば幕府の台所にひびが入ります。しかし、嘆願を実現しなければ天草の民は救われません。
幕府を生かし民も生かす道は一つ。切腹です。
もちろん、重成には他の道をとることもできました。年齢もすでに還暦を過ぎていましたから、病気を装って隠居を願い出ることもできました。あるいは平々凡々の場当たり的な政治を行って無難に切り抜けることもできたでしょう。しかしそれは、己の命を捨てて他の命のために尽くそうとする重成の菩薩精神が許しませんでした。
ある年、肥後(熊本県)地方を大暴風雨が襲いました。天草は壊滅的な打撃を被り、農民は田畑も家も食べるものも失いました。
民を飢えから救うには、米蔵を開放する必要がありました。だが米蔵を開くには幕府の許可が要ります。無断で開けば切腹です。しかし、天草と江戸の距離は往復二千五百六十キロ。普通に歩けば八十日かかります。使いの者の帰りを待っていては民が死にます。
だが、重成の覚悟はもう固まっていました。「なに、わし一人腹を切れば済む」重成はすぐに米蔵の開放を命じました。承応二年(一八五三)旧暦十月十五日午前零時、重成は石高半減の上表書を妻重子に託して、切腹しました。
(「致知」 黒瀬昇次郎氏の文章より)
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● 3月30日(木)のディスカッションのテーマ (9161字) 森川林 nane 2023年03月30日 05時13分
14631 (創造発表掲示板)
■ドーナツ事業の研修
千葉 ドーナツ事業の研修にアメリカに渡った私たち一行五人が、ボストンの郊外にあるホテルの部屋に入ろうとしたときでした。年齢は私と同じくらいの日本人が、向かいの部屋のドアを開けようとするのが目につきました。
――それが、西武の方だった。
千葉 ええ。ミスタードーナツはもともとダンキンドーナツから枝分かれした会社で、同じ町に本社を置いています。西武からも研修に行ったという情報を入手していました。だから、ピンときたのです。
日本に帰れば西武という大きな会社と戦わねばならない。この機会にうまいこと話をつけておかなければいかんと思いましてね。私たちの部屋を使って日本食パーティーにご招待した。
魚を焼き、ラーメン、ご飯を食べ、ビールやお酒を飲みながら「将来はお手柔らかに」などと肩をたたき合ったり、笑い話で場が盛り上がりました。やがて自己紹介をしようということになり、私たちが口火を切りました。
今度は、向こうさんの番。その人は「高知ですわ」と言われました。私は隣の愛媛県の出身ですから、「高知でしたらよく知っています。学校は野球の強い高知商業ではないですか」と尋ねました。すると、その人はフッと上を向いて、ムッとしたような顔で、一瞬間を置いて、「東大ですわ」と言われたのです。
その「東大ですわ」という返事を聞いた私たちは、少なくとも三十秒間は声が出なかった。いまのいままで肩をたたぃたり、笑ったりしていたのに、もうだれも声が出ません。
――わかるような気がします。
千葉 「西武さんなら、そうやろうな」と思いました。あそこは日本一だから東大出ぐらいいくらでもいる。英語だってペラペラで、だから通訳なども付いてきていないんだろう。「こんな連中と戦わなければならないのか」と思ったら、頭の中が真っ白になりました。
千葉 ところが、その人の一言がわれわれを救ってくれたのです。「クサッていますんや」。その人がそう言われたのです。
西武に入った同期のなかで、自分だけがこんな所に回された。大勢の部下を送り込むと言いながら、まだだれも応援が来ない。毎日毎日パン屋のような格好をして、仕事をさせられている。そういうようなことを言われた。
その言葉を聞いた瞬間、「勝った」と思いました。間違いなく勝てる、この人には勝てる、この会社には勝てる、と思った。生意気なようですが、絶対的な確信がもてました。
――と言いますと。
千葉 われわれ五人は、本当に学歴もたいしたことはない、英語もしゃべれない、業界の経験もなければ知識もない。会社規模も西武とダスキンでは月とスッポンほどの違いがある。
けれども、私たち五人は、ダスキンの社運をかける大事業に参加しているのだという使命感と、何としてでも鈴木社長の期待に応えなければという気持ちでいっぱいです。私らは消し炭のような質の悪い炭だけど、赤々と真っ赤に燃えている。彼とは心構えが違う。だから、私は「勝てる」と思ったのです。翌日、鈴木社長あてに「西武に勝てる」という意味の電報を打ちました。
――すばらしいお話です。
千葉 われわれ五人といえば、それまで汚れたぞうきんを洗濯していたり、荷造りなどをやっていた者ばかり。しかし、そんな人間が社運をかける大事業でアメリカにやらしてもらった。その喜び、感謝の気持ちが溢れています。何としてでも会社に、鈴木社長に報いなければならないと力んでいました。
対して、向こうさんは「クサッている」。ドーナツはどちらもゼロからの事業です。われわれ五人の力を合わせれば、いくらエリートとはいえ、クサッている一人の人間より何十倍、何百倍もの力になるに違いないと思った。
(「致知」号 千葉弘二氏の文章より)
■近いうちに「膨大なドルと米国債の破棄」が起きる?
In Deep
https://indeep.jp/operation-sandman-may-start-soon/
近いうちに「膨大なドルと米国債の破棄」が起きる? ケニアの大統領が、自国民に「即刻ドルを処分するよう」演説で通達。その理由とされているオペレーション・サンドマンとは
演説で「今すぐドルを放棄しなさい」と自国民に述べるケニアの大統領
Ruto speaks on dollar shortage, promises to protect businesses amid opposition protests
事態が大きすぎて信じられない面も強いですが
ふわぁ、眠い… (いきなり緊張感ないじゃん)。
いやいや、数日ぶりに天候が晴れまして、太陽を見ていましたら、緊張感がなくなってしまいました。
で…デスね。
最近、読者様から、海外のいくつかで報じられているニュースを教えていただいたのです。
それは、ケニアの大統領の公開された演説でした。
ちなみに、ケニアの大統領については、あまりご存じない方が多いと思うのですけれど、この大統領は、中東などを除けば、「世界最大のものを持つ指導者」として知られています。
それは……。
名前が長いのです (そんなことかよ)。
その名は、ウィリアム・キプチルチル・サモエイ・アラップ・ルト大統領。
皆様、覚えられますか?
中東などの国王とかには長い方もいらっしゃるんですが、例えば、サウジアラビアの国王のお名前は、サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード国王ですし、ドバイの首長は、ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームさんですし… (もう長い名前はいいから)。
まあ……このように軽快に進めないと、もしこのケニアの大統領が述べたことが本当であるなら、今後数週間で「何か起きる」可能性も出てきているのかもしれませんので。
そして重い話なんです。
まず、その報道のうちのひとつを最初にご紹介しておきます。
アメリカの著名なラジオ番組の司会者であるハル・ターナーさんという方のウェブサイトの記事です。
このハル・ターナーさんというのは、いわゆるウハウハの右派なんですが、英語版の Wikipedia を見ましたら、以前以上にボロクソに書かれていまして、ちょっと笑いました。信用度アップですね。
ハル・ターナー - 英語版 Wikipedia より
ハル・ターナーは、アメリカの極右政治評論家であり、ニュージャージー州ノース・バーゲン出身の有罪判決を受けた重罪人だ。
ターナーの見解は通常、ホロコーストの否定、陰謀論、白人至上主義を含み、政府高官の暗殺の呼びかけも含まれている。2010年8月、彼は第 7巡回控訴裁判所で 3人の連邦判事を脅迫した罪で有罪判決を受け、2年間刑務所に服役した。
ターナーは、2002年以来、短波ラジオ局 WBCQ で散発的にザ・ハル・ターナー・ショーを主催しており、対応するブログも頻繁に URL を変更し、デマやフェイクニュースを広めてきた。
Hal Turner
> 有罪判決を受けた重罪人だ。
の下りには笑いましたが、有罪判決を受けて重罪人と称されるのなら、この世は重罪人ばかり…。
さて、そんな重罪人の書いた記事ですが、以下です。
▼
ケニアの大統領は自国民に「すぐに」米ドルを手放すように促した (オペレーション・サンドマンが始まる?)
President of Kenya Urges Citizens To Get Rid of U.S. Dollars - soon (Operation Sandman?)
halturnerradioshow.com 2023/03/25
ケニアの大統領は 3月25日、すべての自国民に対し、保有している可能性のある米ドルは、今後数週間以内に価値が劇的に下がるため、処分する必要があると発表した。
ウィリアム・キプチルチル・サモエイ・アラップ・ルト氏は、ケニアの政治家で、2022年9月13日からケニアの第 5代大統領を務めている。大統領になる前は、2013年から 2022年までケニアの初代副大統領を務めた。
3月25日、ケニアで全国的にテレビ放映されたスピーチで、ルト大統領は次のように述べた。
「この市場は今後数週間で変化するため、やるべきことをやったほうがいいでしょう」
以下が実際のビデオで、彼が自分でそれを言うのを聞くことができる。
(※) 以下は、実際に貼られていた動画より長いですが、YouTube だと、字幕をつけられますので、そちらを貼っています。冒頭部分にあります。
この衝撃的な発表は、世界の 142か国が「オペレーション・サンドマン」と呼ばれるものに密かに同意したという、1年以上にわたって広まっている噂に信憑性を与える。
噂によると、オペレーション・サンドマンは、142か国すべてが同じ日に、ドル通貨を拒否し、貿易でのドルの支払いの受け入れを継続することを拒否することで、「米ドルを眠らせる」というもので、その噂が長く流れ続けていた。
世界中の国々がこれを計画し始めたのは、当時民主党が支配していた米国議会が、オムニバス法案で数兆ドル (数百兆円)もの支出を続けているのを目撃したときだった。
これらの 142か国は、米ドルの価値を裏付けるものが何もないことに気づき、米国議会には支出を抑える計画がまったくないことにも気づいた。
ある国の財務省は最近、米国に対して、「銀行のコンピュータで 1と 0を実際の商品の実際の支払いとして受け入れることはもはや望んでいない」と語った。
米国政府による横行する過度の支出のために、表面上、ドルは無価値になりつつあるため、各国はドルを保持することが馬鹿げていることに同意した。
現在、これらの国は実際に「数週間以内に」行動を起こす可能性があるようだ。
世界中の国々が貿易商品の支払いとしてドルを拒否した場合、ドル以外の通貨で支払われない限り、アメリカへの製品や原材料の提供が停止されることになる。
米国はもはや製造業をほとんど行っていないため、米国経済を「サービス経済」に転換するのは良い考えだと考えた愚かなビジネスマンたちのおかげで、 店舗で購入する製品は単純に底をつき、製造を行うことができなくなる。誰も、ドルを欲しがらないので、在庫を補充できない。
そのようなビジネスマンたちの中には、アメリカがすべての輸入品に対する関税を停止することに同意すれば、アメリカ製の商品の海外での販売が改善されると主張して、「自由貿易」を推進する者たちもいた。
アメリカ政府は、これらのビジネスマンがアメリカ製品を海外で販売することにまったく関心がないことに気づかず、または気にかけずに、この考えを受け入れた。
彼らビジネスマンたちが興味を持っていたのは、安い労働力を利用してアメリカの仕事を海外に出荷し、まったく同じ製品をアメリカに送り返して、高価格で販売することだった。 関税を支払うことなく、新しい外国の安価な労働力から利益を自らで得ながらだ。
ビジネスマンたち、彼らの企業の理事会、そして「自由貿易」を宣伝した商業組織は、アメリカ人の仕事を海外に移した者たちであり、現在、アメリカはもはやほとんど何も製造していない。
その数年後、私たちはそのようなアメリカに生きている。
そしてそれらのビジネスマンたちと、「自由貿易」に関する彼らの嘘を愚かにも信じた連邦政治家たちのおかげで、現在のアメリカでは何も製造されていないのだ。
世界中の国々が実際に米ドルでの支払いを停止することを計画しているかもしれない中で、そうなった場合、今ではアメリカで流通しているものは、すべて海外で作られているため、私たちは何も購入できなくなる。
アメリカ人たちは、今すぐ準備してほしい。
読者は、私たちアメリカ人が「あって当たり前」だと思っているすべての「基本」のリストを自分で作成し、大量の在庫があることを確認する必要がある。次のようなものだ。
・下着
・肌着
・靴下
・シューズ、スニーカー、ブーツ
・ベルト
・セーター
・コートとジャケット
・帽子
・水着
・ジーンズ/ズボン
・カジュアルシャツとドレスシャツ
・ネクタイ
・スーツとスポーツコート
キッチンに行って、以下の新しいものが必要かどうかを確認してほしい。
・鍋
・フライパン
・ボウル
・食器
・各種の調理器具
・グラス、カップ、マグカップ
・肉やパンを切るためのまな板
工具も忘れないでほしい。
・ハンマー
・ドライバー
・プライヤー
・レンチ
・ラチェットとソケット
・ドリル
・鋸および/または鋸刃
・ノミ
・グリースガンとグリースのカートリッジ
・ドリル、のこぎり、釘打ち機
・延長コード
・ガス缶
これらのもののほとんどはもうアメリカでは作られていない。不足している場合、または物が古くなっている場合は、まだ入手できるうちにこれらのものを手に入れる必要がある。
142カ国が、ケニアの大統領がほのめかしたように見えることを実際に実施したなら、これらすべてのものは一晩で不足する。何年も。
▲
ここまでです。
まあ、「ノミ」はなくてもいいように思いますが(つっこむのはそこかよ)、ここに出てくる「オペレーション・サンドマン (サンドマン作戦)」という言葉のサンドマンって、意味を知らなかったのですが、辞書を引きますと、
「眠りの精?砂を子供の目に振りまいて眠らす?」
とありました。
ちなみに、ハル・ターナーさんは、「ドルでの取引が停止される」という方について書かれていますが、SNS などを見ますと、もっと物騒なことが書かれているものもあります。
ツイッターより
ご存じない方のために説明すると、オペレーション・サンドマンは、100以上の国が協力して、保有する米国債を同時に売却し、米国に送り返して米ドルを崩壊させることに合意しています。この物語は 2週間前に公開されたばかりです。準備をして下さい....。
Deplorable4trump2024
> 保有する米国債を同時に売却し…
というのは、なかなか恐ろしい響きですが、まあ……そんなことはないとは思いますけれど……あるいは、ケニアという国とアメリカの間の何か固有の問題なのかもしれないですし。
ただ、「142カ国」というあたりは、妙にリアルな感じはします。
外務省によると、現在、承認されている国家は、196カ国だそうです。
以前、「アメリカの異常な孤立を見て思う…」という記事で、昨年 3月に「対ロシア制裁を明確に拒否した国」は、比較的大きな国では、以下のようになっていました。
対ロシア制裁を正式に「拒否」した国の一部
・ブラジル (報道)
・インド (報道)
・中国 (報道)
・メキシコ (報道)
・サウジアラビア (報道)
・アラブ首長国連邦 (報道)
・ベネズエラ (報道)
・トルコ (報道)
・エジプト (報道)
・イラン(報道)
・ドイツ(報道)
・ハンガリー(報道)
・セルビア(報道)
・アルゼンチン(報道)
・ボリビア(報道)
・エルサルバドル(報道)
・ウルグアイ(報道)
それに対して、対ロシア制裁に積極的に加わった国は、アメリカ、EU、スイス、イギリス、カナダ、チェコ共和国、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、台湾に過ぎませんでした。
少なくとも、この対ロシア制裁に積極的に加わった国々は、オペレーション・サンドマンというものがあったとしても、それには加わらないと思われます。
それにしても……仮にそんなことがあったとしたら……。
世界最大のアメリカ国債保有国の日本は……ということも思います。
・米国債の保有額のトップはダントツで日本 (2023/03/27)
米国債保有の上位 10カ国は以下となっています。
米国債のトップ外国保有者
ランク / 国 / 米国債保有額 / 全体のシェア
1 日本 1兆760億ドル (約140兆円) 14.7%
2 中国 8,670億ドル 11.9%
3 イギリス 6,550億ドル 8.9%
4 ベルギー 3,540 億ドル 4.8%
5 ルクセンブルク 3,290 億ドル 4.5%
6 ケイマン諸島 2,840 億ドル 3.9%
7 スイス 2,700億ドル 3.7%
8 アイルランド 2,550 億ドル 3.5%
9 台湾 2,260億ドル 3.1%
10 インド 2,240億ドル 3.1%
zerohedge.com
ルクセンブルクなんて国も入っていますが、ルクセンブルクは、GDP が 855億ドル (約 1兆1000億円)であるのに対して、米国債を 3,590億ドル (約 47兆円)とか持っている…。
米国債に何かあったら国が吹っ飛ぶという構造でしょうか。
うーん……。米国債が死んだら、日本の被害も……。
オペレーション・サンドマンなんて起きないですよね… (誰に問うてる)。
うん、国債はともかく、現実として、「ドルを介在しない取引」は、ロシアや中国を中心に世界に広がっています。
急速に進んでいるドルからの離脱
ロシア政府は、昨年、ドルとルーブルの両替業務を放棄する可能性を示したり、石油や穀物の取引にもルーブルでの対応を始めています。
・モスクワ証券取引所が、ドル/ルーブルの両替業務を今後放棄する可能性を発表 (2022/09/22)
・ロシアの議員が「肥料と穀物を含むすべての輸出をルーブル支払いにするべきだ」と提案 (2022/04/01)
実際には現在どうなっているのかはよくわからないですが、ロシアの議員は、「肥料、穀物、石油、石炭、金属、木材など、ルーブル向けに輸出される商品のリストを拡大することは、私たちの国に利益をもたらす」と述べていて、すべてルーブルにする可能性が示唆されていました。
そして、すでに、ロシアと中国の貿易は、ほとんど自国通貨となってきているようです。
・[ロシアと中国の間の貿易のほぼ半分は自国の通貨で行われている]という報道 (2022/12/05)
昨日は、「インドと中国は自国通貨での取引を計画している」と報じられていました。これもケニアの報道です。
インドと中国は自国通貨での取引を計画し、米ドルの優勢を下げる
India, China plan to trade in own currency, cut US dollar dominance
The East African 2023/03/28
アジアの経済大国である中国とインドは、国際取引における米ドルの支配を減らし、自国通貨での決済を可能にするためのプログラムを開始した。
ドルの上昇と不足は世界の外国為替市場に衝撃を与え、インフレと金利の急上昇につながった。
インド準備銀行は先週、タンザニア、ケニア、ウガンダを含む 18か国の中央銀行が特別なボストロ・ルピー口座 (SVRA) を開設することを承認した。
…インドのボストロ・ルピー口座プロセスは、インド準備銀行がインドルピーでの輸出入の請求、支払い、および決済のための追加の取り決めを導入することを決定したと発表した後、2022 年に始まった。
ロシアはまた、インドルピーを、貿易と「脱ドル化」に使用することに積極的だ。ロシア政府は、西側諸国がウクライナへの侵略に対して課した制裁に対応して、西側諸国にルーブルでの支払いを要求し始めた。
インド準備銀行がボストロ・ルピー口座の開設を承認したその他の国には、ボツワナ、フィジー、ドイツ、ガイアナ、イスラエル、マレーシア、モーリシャス、ミャンマー、ニュージーランド、オマーン、ロシア、セーシェル、シンガポール、スリランカ、英国が含まれる。
インド連邦財務大臣のバグワット・キシャンラオ・カラド氏は、インド準備銀行から 60件の承認が得られたと述べた。
…先週、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、中国の習近平国家主席がモスクワを公式訪問した 2日目に、人民元を選択通貨として支持した。
この「ボストロ・ルピー口座」については以下の記事にあります。
ドル支配の終わりへ: 世界18カ国の銀行が「インドルピーでの決済」専用のアカウントシステムに参加
地球の記録 2023年3月20日
上の報道は、つい最近の記事ですが、ものすごいペースで「脱ドル化」が世界中で進行していることが明白となっています。
最近、以下のようなタイトルの記事を書きました。ドルの死ということではなく、お金全体の話ですが。
過去数百年続いたマネーの「死」までの秒読み
In Deep 2023年3月21日
この記事では、スイスで、金 (ゴールド)での顧客の資産管理をおこなっているゴールド・スイッツァランド社の創設者の文章をご紹介しましたが、以下のように書いていました。
> 銀行の破綻、通貨の下落、または株式、不動産、債券などのバブル資産の 75~ 100%の崩壊によって、資産の大部分をすぐに失うことになる。
なんかこの言葉に、やや現実味が出てきたということなんでしょうか。
しかしこの、オペレーション・サンドマンみたいなことが、今後数週間ではなくとも、いつか起きた場合、これはまさに、
「ディーガルの世界」
となってしまう可能性があります。
先ほどのハル・ターナーさんが書かれていたように、今のアメリカでは、
「基本的に何にも作られていない」
からです。
アメリカは、農業が盛んですので、食べ物には困らないだろうと思われるかもしれないですが、農業に使う機器、資材、製品化された肥料など、農作を巡るものも、ほとんどアメリカ国内では製造されていないのではないでしょうか。
アメリカは、流通が止まった場合、最も深刻な影響を受ける国のひとつだとは思います。
ディーガルについては、比較的最近の記事としては以下にあります。
ヨーロッパが、エネルギー救済という名のポンジ・スキームによるリーマン的破綻に突き進んでいる中で思い出す「存在するとは何か」「恐怖とは何か」
In Deep 2022年9月7日
日本もいろいろと大変になるだろうとはいえ、日本には製造業自体は存在しています。
オペレーション・サンドマンというものが(数週間以内ではなくとも)いつか実施されることがあれば、ディーガルの数値に達するかもしれません。
どうなりますかね。
まずは、ウィリアム・キプチルチル・サモエイ・アラップ・ルト大統領のお名前を暗記するところから始めますかね。
ウィリアム・キムチ……ああ間違った。
いずれにしても、そんなに急速な話ではなくとも、ドルがそのうち各国で破棄されるという流れは現実に近いようには思います。世界の主導権はすでに変化していますので。
ドルにまったく価値がないことも、今ではほとんどの国がわかってしまっています。
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● 3月29日(水)のディスカッションのテーマ (5303字) 森川林 nane 2023年03月29日 02時39分
14630 (創造発表掲示板)
■私は最近、九十歳を越えて 渡部昇一(黄アカシアの課題より)
私は最近、九十
歳を
越えていまなお
活躍しているある人が書いたものを読んで、大変
感銘を受けた。
ご老人は功成り名
遂げた人だから、多分日常は快適な
環境の中で暮らしておられるのだろう。だが、ご老人は毎朝冷水を浴びることを一日も欠かしたことがないという。朝起きて、大気と十度以上も差のある冷水を浴びる。毛穴がすぼまり、血管が
引き締まる。その
刺激がその人の生物体としての適応能力をよみがえらせる。快適な毎日にあって、一時でも厳しい
環境の中に身を置くことで、生物体としての適応能力を
刺激する地道な営みが、ご老人が九十
歳を
越えてもなお元気に
活躍している一つの要因になっているのだろう。
いま、私は家で
鯉を飼っている。
鯉や金魚を飼っている人は多いが、聞いてみると、よく死なせている。私は
自慢ではないが、
鯉も金魚も信じられないほど長生きさせることができる。いや、
自慢するほどのことはない。カレルの理論を応用しているだけなのだ。
そのコツは
餌を十分にやらないことである。ときには一週間わざと
餌を
与えなかったりする。いま飼っている
鯉は、これで
攻撃的なエネルギーを発揮し、元気いっぱいに長生きしている。
餌を十分にもらえないことは、
鯉にとって快適な
環境ではない。いささかの
飢餓状態に置かれている。これが
鯉に
攻撃的なエネルギーを
与え、元気に長生きさせる要因なのだ。反対に十分な
餌を
与えると、適応能力が
刺激されず、生物体の価値を低めてしまって、早く死んでしまうことになる。
最近は犬でも
猫でも栄養満点のペットフードを
与えられ、満ち足りているようである。かつて
猫と言えば高い木や
塀に登り、
鼠を
獲るものと相場が決まっていた。ところが、いまの
猫は木にも
塀にも登らなくなったし、
鼠も
獲らなくなった。栄養満点で
飢餓を知らず、空調
冷暖房完備の部屋でヌクヌクと
寝そべっているうち、∵適応能力が失われ、木にも
塀にも登れなくなったし、
鼠を
獲ることもできなくなったのである。満ち足りた
環境の中に長くいると、適応能力が
衰えたまま、固有の能力も退化してしまうのである。
そう言えば、
盆栽の名人からいい
盆栽を育てるコツは、「切りすぎずに切る」ことだと教えられたことがある。植物を限られた
状況に置くのが
盆栽である。だから、そのままにしておくと
盆栽はすぐだめになってしまう。枝を切ることで適応能力が奮い起こされ、いい
盆栽になるのである。
人間もまた、同じである。アレキシス・カレルは
要旨、次のように言っている。「食うだけ食って、
寝たいだけ
寝て、人間の向上などはあり得ない」
まさにその通りだと思う。
眠たいのを
振り切って起き上がったことのない青年が、将来物の役に立つ人間になるとは思えない。
眠りというのは生物の個体にとって極めて重要で、これが極度に
妨げられると、生命の危険にさえ立ちいたる。逆に
眠りたいだけ
眠って満ち足りると、生物の個体はそれ以上は
眠れない。生物体は生物学的に必要があるから、必要な分だけ
眠るのだから、「
惰眠」などということはないはずである。それなのに「
惰眠をむさぼる」などと言う。なぜか。
眠りたいだけ
眠ることは、生物体の適応能力を
刺激しないだけでなく、精神の適応能力にも、
響いてくるのである。
眠りに満ち足りると、生物の個体は何かに向かって努力するという気持ちを失ってしまうのだ。従って、
眠りたいだけ
眠ることは「
惰眠」なのである。
眠いのを
振り切って起きた経験がなくて、向上した人間はいない。これは
肝に
銘ずべきことである。向上して将来大いに世の中の役に立つ学生は、いま
眠いのを
振り切って机に向かい、勉強しているはずである。 (「
致知」
渡部昇一氏の文章より)
■[3528]ついに、世界大恐慌への道筋が見えた。金融セミナーのお知らせも。 副島隆彦
http://www.snsi.jp/bbs/page/1/
副島隆彦です。今日は、2023年3月13日(月) で 今、午後 9時 です。
私は、自分の肚(はら)を決めて、今こそ、はっきりと書かなければいけない。遂(つい)に始まった米国の金融崩れ のことである。
私は、アメリカで現地 3月10日(金)の午前に起きた、シリコン・ヴァレー・バンクSVBの破綻( demise デマイズ)を知ってから、情勢をずっと凝視し分析していた。
今回の事態が、世界大恐慌 に突入するのは、もう少し先だ。4か月余 ぐらい先だ。だから、7月、あるいは8月になるだろう。
今の危機は、なんとかアメリカ政府が押さえ込むだろう。だが、そのあとに、本当のNYの金融大暴落が来る。そして世界大恐慌への突入となる。そのために、私たち日本人は、今から真剣に準備しなければいけない。
アメリカ合衆国は、これで国家財政(ファイナンス)も破綻し、NY(ニューヨーク)の金融市場での恐慌 が起きて、国民経済全体が景気後退(リセッション)となる。このことは確実だ。もう避けられない。そしてそれが、世界中に波及する。これは、人類史の歴史的な動きである。
アメリカの「 ドル覇権の崩壊 」 the Collapse of US Dollar Hegemony 「ザ・コラプス・オブ・ダラー・ヘジェモニー」である。それが、来年、2024年に迫っている。
私、副島隆彦が、これまで 執拗に、自分の近年の本たちに書いてきた通りだ。
以下の画像のとおり、明らかに、銀行取り付け騒ぎ bank running バンク・ラニング、すなわち、自分の預金を引き下ろそうとする人たちの列(run ラン)が銀行の前に起きている。
(画像)
First Republic Bank customers in Los Angeles spending their Saturday lined up to withdraw money following the collapse of Silicon Valley Bank
(画像)
There had been fears following SVB's demise for First Republic's future when analysts pointed out the similarities between the estimated value of their assets versus the actual value
副島隆彦です。今回の 3月10日からのSVB破綻 で、これが他のカリフォルニア州の地方銀行たちへの波及で、連鎖破綻するのは10行ぐらいだろう。それで、一旦は、止まる。SVBと同時に破綻したシグネチャー・バンク(NY州) の他に、ファースト・リパブリック・バンクと、パックウエスト・バンコープなどだ。
今回の金融危機は、3月12日(日)の政府の緊急会合で、SVBの預金のすべてを、連邦政府(米財務省とFRBとFDIC 連邦預金保険機構 の3者で)が、緊急の融資( 米国債を担保にして資金を市場から調達する)を行うことで、救済する、と、発表した。
それまでは、イエレン財務長官は、「SVBの 株主と 債権者は救済しない。公的資金の投入はしない」と明言した。 小口の預金者たちは、ペイオフ( 預金者ひとり 25万ドル。3000万円。日本は、これが1千万円だ ) だけが救済される。イエレン財務長官は、自分の甘い判断を、血相を変えて、撤回した。
それ以外の、SVB銀行の、残りの 総額1500億ドル(18兆円)のテック企業や、スタートアップ企業が、SVBからの融資の見返りに積んでいた、拘束性の預金は、救済されない。
これらの企業預金は、 いわゆる 「分(ぶ)積み、両建て」であって、企業の経営者たちは、SVBのステイク・ホルダー(利害関係人)だから、アメリカ政府は救済しない、と決めた。ところが、それではとても事態は収まらないと分かった。現状はますます深刻さを増している。
中小の テック企業たちは、通常の銀行融資(ローン)のほかに、ハイリスク・ハイリターンの、年率12%とかの、高い危険な ボロくず債券、即ち、ジャンク・ボンド(債)を発行して、それを、このSVBや、VC(ベンチャー・キャピタル)に、引き受け(買い取り)してもらっている。
この 高危険債の、極めて低(てい)信用の ボログズ債である、ジャンク債(ボンド)全体が、今、NYの債券市場で、恐ろしく危険な事態になっている。
もう年率20%のハイイールド(高利回りの約束)債券を発行しても、もう、誰も引き受ける者はいない。これが、金融核(かく)爆弾の破裂 となる。
そして、中国と日本とサウジアラビアが持っている、巨額の米国債である。これに飛び火したら、もう、アメリカの金融は、ひとたまりもない。まさしくアメリカ帝国の終わりだ。
それでも、アメリカ国民は、1ドル=10円とかに大暴落したドルと共に、生きて行く。
もう、インチキの 「グレート・リセット」を囃(はや)した、コロナ・パンデミック、ワクチンでの人殺しも、ウクライナ戦争の仕掛けによる、大きな人類騙(だま)しも、通用しなくなった。
(中略)
金(きん)の価格が、急激に上がりだした。今日(3月13日)の、田中貴金属(たなかききんぞく)の、金の小売りの値段は、丁度、 1グラム=9,000円 である。やれやれ、ようやくここまで上がって来た。
金の卸し( JPXの大阪取引所。旧TOCOM)の値段では、1オ(ウ)ンス (31.1グラム)= 1,894ドル 。 日本市場 で、金、1グラム=8,159円 である。 これに 消費税と手数料の850円を足すと、上記の、9,000円になる。
さあ、このあと、1グラム1万円までは、すぐになるだろう。
私たちの勝利である。 私、副島隆彦の言うこと、本に書いてあることを、信じ続けた人たち、全員の勝利である。
私、副島隆彦は、世界大恐慌 と、世界戦争(第3次世界大戦、含む 核戦争)が、迫って来ても、少しも怖くはない。私は、この30年間、自分の知能と、胆力をずっと厳しく鍛錬して来た。 私は、日本の民間人国家戦略家を、自称して、ここまで、ずっと、耐えに耐えて、自分を鍛えて、やって来た。
私が、自分の金融本 を書き始めたのは、1997年の 『日本の危機の本質』(講談社)と、『悪(あく)の経済学』(祥伝社)からである(44歳)。それまでは政治思想と政治評論、歴史研究ばかりやっていた。今から25年前だ。
そのあと、2003年に『預金封鎖』(祥伝社)を書いて騒がれた。
そして、アメリカの大きな金融崩れを、察知して、2007年に「ドル覇権(はけん)の崩壊』(徳間書店)を書き、その直後に、サブプライムローン崩れが起きて予言を当てた。そして、翌年、2008年に『恐慌前夜(きょうこうぜんや)』(祥伝社)を書いて、その発売の2週間後に起きた リーマン・ショックも、的確に予言して正確に当てた。あの時から、15年だ。
私は、その後も、100冊以上の自分の金融・経済の本を書いたが、おそらく、その内容は、現在に至るまで、ほぼ正確に書いて来ている。 私の考えに、全くの動揺はなく、一貫して、同じ主張を続けている。私の書くことを信用してくれて、長年、私の本を熱心に読んでくれた皆さんに、感謝申し上げる。
さあ、あと、一歩だ。私たちは、嵐の中を突き進む。だが、私、副島隆彦という羅針盤が、この日本国にいる限り、私たちは、大丈夫だ。 この先のことを考えると、毎日、毎日、不安と心配で 一杯だ、という人の為(ため)に、私がいる。
人間に、一番、大事なのは、信用だ。 長年、時間をかけて、築いた信用(クレディビリティ credibility )こそは、その人間を強くする。そして、まさしく、お金(金融)とは、信用の別名なのである。
(後略)
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● 3月28日(火)のディカッションのテーマ (2982字) 森川林 nane 2023年03月28日 03時56分
14628 (創造発表掲示板)
■道草 中1の第二課題より
【1】子どものころ、「道草をしてはいけません。」とよく言われたものである。学校から家に帰るまで道草をせずに、まっすぐに帰るようにと言われる。しかし、子どもにとって道草ほどおもしろいものはなかった。【2】落葉のきれいなのを見つけると拾って友人と比べっこをしたり、
蟻の巣を見つけて、そのあたりで働く
蟻の様子を見てみたり。それに何よりも興味があったのは「近道」である。【3】大人の目から見ると、それは
迂路であり道草にすぎないのだが、何とか「近道」を見つけて、どこかの家の裏庭に
入り込んだり、時には
畠を
踏みつけたと
怒られて
逃げまわったり、まったくスリル満点のおもしろさであった。
【4】今から考えてみると、このような道草によってこそ、子どもは通学路の味を
満喫していた、と思えるのである。道草をせず、まっすぐに家へ帰った子は、勉強をしたり仕事をしたり、マジメに時間を過ごしたろうし、それはそれで立派なことであろうが、道の味を知ることはなかったと言うべきであろう。
【5】ある立派な経営者で、
趣味も広いし、人情味もあり、多くの人に尊敬されている人にお会いして、どうしてそのような豊かな生き方をされるようになりましたかとお
訊きしたら、「
結核のおかげですよ」と答えられた。
【6】学生時代に
結核になった。当時は的確な
治療法がなく、ただ安静にするだけが
治療の手段であった。
結核という病気は意識活動の方は全然
衰えないので、若い時に他の若者たちがスポーツや学問などにいそしんでいることを知りつつ、ただただ安静にしているだけ、というのは大変な苦痛である。【7】青年期のいちばん大切な時期を
無駄にしてしまっている、という考えに苦しめられるのである。
ところが、自分が経営者となって成功してから考えると、
結核による「道草」は、
無駄ではなかったのである。
無駄どころか、それはむしろ有用なものとさえ思われる。【8】そのときに経験したことが、今になって生きてくるのである。人に
遅れをとることの
悔しさや、
誰もができることをできないつらさなどを味わったことによって、弱い人の気持ちがよくわかるし、死について生についていろいろ考え
悩んだことが意味をもってくるのである。【9】このような生き方の道として、目的地にいち早く着くことのみを考えている人は、∵その道の味を知ることがないのである。大学合格という「目的」に向かって道草などせずにまっしぐらに進むことが
要請されているようであるが、実際に入学してきた学生で、入学してから頭角をあらわしてくるのを見ていると、受験勉強の間に、それなりに結構「道草」をくっていることがわかるのである。【0】そんなことあるものか、と思われそうだが、このあたりが人間のおもしろいところで、道草をくっていると、しまったと思って
頑張ったりするから、全体として案外つじつまの合うものなのである。
こんなことを考えたのも、実は
漱石の『道草』を読み直す機会があったからである。主人公の男性は、何かと
奥さんと
すれ違いをし腹をたてたり
悔んだりしている。昔世話になった養父というのが現われて金をせびりに来る。
今更かかわり合う筋合いではないとわかっているのだが、何となくかかわり合ってしまう。
奥さんから見れば、けじめをつければいいのに、ということになるし、それが正しいこととわかっていながら、何のかのと
厄介なことが続く。
これは、日常、どこの家でも見られるゴタゴタがただ
淡々と
描かれているだけのようにさえ思われる。主人公の男性は学者であり、学問的にしなくてはならないことをたくさん
抱え込んでいながら、このような日常のゴタゴタで「道草」をくわされてしまっているのだ。
ところが、この『道草』を読んでいると、そのような現実をじっと
眺めている、高い高い視点からの「目」の存在が感じられてくるのである。それは、まったくたじろがずに、すべてのことを見ようとしている。自分が正しいのか妻が正しいのか、などという判断を
超えて、現実をそのままに見ている。そのような目の存在を感じると、『道草』に
描かれている日常のいわゆるゴタゴタなるものが、まさに「道」そのものの味をもっていることがわかってくるのである。
道草によってこそ道の味がわかると言っても、それを味わう力をもたねばならない。そのためには
漱石の『道草』ほどまでにはいかないとしても、それを
眺める視点をもつことが必要だと思われる。
(河合
隼雄『こころの
処方箋』より)
■眠れる獅子 <時事直言> 増田俊男
「眠れる獅子、日本が浮上する」と言う主題である。
日本は30年間の長きにわたり「死に体」と言われてきたように、GDP(国内総生産)、株価、賃金、物価、等々経済ファンダメンタルズは平行線のままである。
日本の世界の可処分所得は先進国中最低で、GDPは世界3位なのに可処分所得は17位。
アメリカの世帯当たりの金融所得が5.83万ドル、一方日本の世帯は3.32万ドル。
20年間の所得の伸びは、アメリカは3倍、日本は1.4倍である。
何故日米所得はこんなに差があるのだろうか。
それは金融資産の使い方が日米正反対だからである。
アメリカは金融資産の54%を投資に向け、現金預金は13,31%。
一方、日本は金融資産の54%が現金預金で、投資に回すのは14%である。
従ってアメリカの世帯は本業外所得の方が大きく、日本の不労所得はほとんどない。
これが日米所得格差最大の理由である。
では何故「眠れる獅子、日本が浮上する」のか。
「総ては2026年から始まる」!
米軍が日本から撤退するのが2026年。
三法改訂で自衛隊が敵地先制攻撃能力を持って事実上軍隊になるのが2026年。
アメリカに日本が閉じ込められていたビンの蓋が開くのが2026年。
アメリカのアジア軍事覇権消滅後、アメリカの影響なしに日中が対等に相互利益の為の会話が出来るようになるのが2026年。
戦後のドル覇権下の国際金融システムが終焉し、Conflict of interestsの原則(利害相反する間での共通利益を禁止する)と正反対なMMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣論)の思想、哲学を基盤とした全く新しい制度に移行するのが2026年。
そしてもとよりConflict of interestsの感覚も認識もない日本が新時代のモデルに推されて行く。
こうした世界の大きな変革の流れの中で、我々日本人は何をしなくてはならないのか。
ドル衰退、円高騰、西欧陣営がリセットで混乱している時、我々の資産のポートフォリオはどうあるべきか、など詳しく解説した。
この一冊(Vol.132)で「備えあれば憂いなし」となる。
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● 春講創造発表クラスの3/27の長文 (10290字) 森川林 nane 2023年03月26日 17時06分
14627 (創造発表掲示板)
■わずか一粒の種から(me2-1.4週の長文から)
【1】わずか一
粒の種から一万個以上もの実をつけたトマトの
巨木がある。遺伝子
組み換えなどの新しい技術により、このようなトマトができたのかと想像されるかもしれないが、そうではない。
このトマトは、一本の根幹から何千もの枝が分かれて、トマトの実を結ぶ。【2】最も多いときで、一万個以上が実るというから確かにすごい。その秘密は、太陽の光と、水と空気の
恵みを
充分に受けて土なしで育てるところにある。水中の養分を補えば、根の部分は水中に
浸しておくだけで
栽培できるのである。
【3】つまり、植物がその成長能力を最大限に発揮する上で、土は不要ということなのだ。
むしろ、土に根を生やしているがために、
潜在的な成長能力は一定に
押さえつけられている。一万個も実をつけるトマトは、実際、土とは
無縁である。【4】これが、植物の成長にとって理想的な
環境だというのである。
将来、人類が地球を出て、宇宙で生活するためには、このような
栽培法が、どうしても必要となる。この
巨大なトマトの木は、生き物にはまだまだ私たちの知らない、無限とも言える可能性が秘められていることを、見事に示した。
【5】一方、科学用語のひとつに、「最適規模・最適値」という言葉がある。ある
環境の中の最適な数や量のことで、自然界は、非常にうまくこの最適規模を守っている。(中略)
この観点からすると、一
粒の種から一万個も実をつけるのは本当に良いことなのか。
【6】個別にその植物だけを取り出して考えると、問題は解きほぐせない。大地、植物、光、水、大気という自然界全体の成り立ちを視野におさめて、初めてひとつの答えが導き出される。
【7】植物は、大地に根を生やし、成長して実をつける。その樹液や花のみつ、木の実などを食べて生きる虫や小動物がいる。それを食べる動物もいる。死んだ動物は土にもどり、
微生物によって分解され、植物の養分となる。【8】こうして
巧みな
循環がなされているからこそ、自然界は過不足なく成り立つのであって、何処かの
連鎖が断たれると、問題が生じる。
木を切りすぎると動物もいなくなり、大地は
枯渇して
砂漠化す∵る。一
粒の種だけが無際限に
繁殖すると、全体が危機に
瀕する。
【9】このように見てくると、
普通のトマトが、一
粒の種から一万個も実をつけないのは、土によって本来の成長をじゃまされているのではなく、生態系全体の中での適正な成長規模を守っているからだとも考えられよう。【0】
遺伝子情報としては、一万個を実らせる能力を
書き込まれているのだろうが、ぎりぎりまで発現させることは通常ないのである。
複雑な生命体は、私たちの想像を
超える潜在能力を持っているとみてよい。しかし、生物
相互のかかわり合い、生物と自然とのかかわり合いの中で、能力の発現は一定に保たれる。つまり、生態系という高いレベルの有機的な
秩序が保たれていくために、最適値がある。
この生物の中に人類も
含まれる。科学・技術を発達させ、際限なく生産の拡大を図るだけでは、人類はいつか
行き詰る。そして、次の世代に大きな負の遺産を残すことになる。
人間は、限度を
超えて物が増えた分だけ、心が貧しくなり、
寂しくなっていくのではないか。それを解決するには、人間の
慎みが必要である。
先ごろ、ノーベル平和賞を受賞したケニアの女性
環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが、日本語の「もったいない」をエコロジーの言葉「モッタイナイ」として世界に
紹介したように、「
慎み」も新時代の人間の生き方を表す世界の共通語「ツツシミ」となるよう広く伝えていきたいものである。
「モッタイナイ」は単に物を節約することではないし、「ツツシミ」は欲望を消極的に
抑えることではないだろう。
この言葉の背後には、人類を
含めた生物が、大自然の
偉大な力「サムシング・グレート」により生かされているということに対する感謝の気持ちが
込められている。
(
村上和雄の文章による)
■メタバースは脳化社会の到達点 養老孟司(文藝春秋オピニオン 2023年の論点100から)
メタバースと聞くと革命的な未来世界を想い描く人が多いらしい。でもテレビからパソコンやスマホへと移り変わったのと似たようなことで、とくに革命的な変化が生じるわけではなく、その意味では過去の延長になる。
テレビが徹底的に普及して日常生活がテレビ漬けになった時代に育った子どもたちが大学生となり、その連中を教えていた私は、「しらけ世代」という言葉を知って、なるほどと思ったものである。子どもたちが夢中になって見ているテレビの中の世界は、脚本の都合によってのみ進行してしまう。主人公が危険な目に遭っていても、そこにはどうにも手が出せない。自分のすることは、どんなに頑張っても、その世界になんの影響も与えない。つまり自分には関係のないこととして、「しらける」しかない。次の世代でゲームが大流行したときに、そりゃ当然だと感じた。テレビでただ見ていた世界にやっと「自分の手が出せる」状況が来たからである。
メタバースはいわばその完成形で「手を出す」どころか、丸ごとテレビの世界に入ってしまうんだから、完成形というしかあるまい。これこそ脳化社会の到達点であろう。
私が研究者になりたてのころ、大学に動物実験棟ができた。私の研究室にはまだエアコンがないのに、動物実験棟は冷暖房完備、餌と水は常時供給される。私はへそ曲がりだから、そんなところに飼われているものは動物じゃないと真剣に思って、自分の研究対象を野生の動物に変えた。現代の実験研究者として挫折のはじまりである。
テレビがテレビゲームになり、次にメタバースになるのは必然であろう。なにをいまさら、という感がないではない。いわゆる現実の世界とメタバース世界の違いはなにか。落合陽一流に言えば、質量のある世界とない世界であろう。質量による制限を取っ払った世界、それは意識が理想とする世界である。
そこに入ったヒトは動物実験棟の実験動物と同じである。意識的にコントロールされた環境で、「自由に」さまざまな行動をする。メタバースの世界は行動心理学者の理想の世界でもある。頭の中でなにを考えていようが、特定の条件下で特定の行動が起きるとわかればいいからである。メタバースは、ヒトの世界をコントロールしようとする人たちにとって、最高のデータを供給することになろう。いまのビッグ・データも使えないではないないが、厳密性が不十分なのである。ただしこれはメタバースの悪用の典型だと私は思う。メタバースは実用に使ってはいけないのである。文学や芸術と同じジャンルに属するものだと私は信じるからである。
質量のある世界にはたとえば重力定数のような制限が存在する。メタバースであれば、定数の値をどうにでも定められる。簡単に月世界に行けるのである。
現在メタバースを制約しているのは、質量のある世界、つまりハードである。現在の機械はまだ無細工で重いし、扱いにくい。これが軽量化して、現在のスマホ程度のものになるなら、メタバースは世界を席巻するはずである。好むと好まざるとにかかわらず、世界がメタバースに向かっていくのは、さまざまな意味で必然であろう。人類の歴史観を変える
私自身がメタバースに関わろうと思ったのは、未来と同時に過去を考えたからである。老人なら当然のことである。十月にはラオスの森を取材したが、現在の自然破壊はとどまる所を知らない。ラオスの森もいつ消えてなくなるか、知れたものではない。その保全を叫んだところで、だれも聞いてくれるはずがない。自然破壊の根源はもっと深い所にあるからである。それならその記録を一部なりとも後世に残したい。百年後にラオスの森を散策出来たら、後世に対するよい贈り物にならないか。
メタバースでお爺ちゃんが孫と一緒に近所を散歩する。二人が見る風景は、お爺ちゃんがかつて見たものである。いまはすっかり変わってしまったとしても。こうした試みが進めば、人類の歴史観がやがて変わるであろう。歴史を作っていくのは、常人の日常であり、政治家や大先生の作為ではない。日常の積み重なりが歴史の必然を作る。
このようにメタバースは単に未来を拓く存在というだけではない。現に我々がやっていることを、違う視点から見直させてくれる。私は世界をより深く理解させてくれるものとして、哲学や科学ではなくメタバースに期待している。したがって、これがなんらかの「実用」に使われることを警戒している。当初は金になるからやる、という傾向が出ることは当然予期できる。やがて問題点が頻出するであろうという予測もできる。その意味で現在の文学や芸術と似たような地位に置かれることが望ましい。どちらも人と世界を変える力をもってきたが、それが本来ではなかった。むしろただひたすら人生を豊かにしてきたのである。どの分野もそこに集中して生きる人がいるが、やがてメタバースもそうなるに違いない。
スマホのように使える簡易なハードの実用化はここ二、三年のうちだと言われている。とはいえそれは私にはわからない分野である。どうせそうなるだろうと勝手に考えている。これは期待というより必然であって、いうなれば、そうなるに決まっているからである。
文学も芸術も、金にならないわけではない。しかしそれはあくまでも結果としてであって、本来はお金が目的ではないのは当然のことである。メタバースに関して、いまなにか言うとしたら、言いたいことはそれだけである。
■中露モスクワ会談の意味 2023年3月23日 田中 宇
中国の習近平主席のロシア訪問が終わった(3月20-22日)。マスコミは中露敵視・中露結束軽視の歪曲報道ばかりだ。対照的にオルトメディアは、この訪露による中露の結束強化が、中国とロシア、それから非米側諸国にとって重要であると指摘している。ウクライナ戦争だけでなく、米覇権の崩壊と多極化という大きな流れの全体にとって大事な転換点になりそうだ。しかし、何がどう重要なのだろうか。オルトメディアを読んでも、今のところまだ明確な分析に出会っていない。自分で考えてみる。 (China Gives US Advice On Ukraine After Xi, Putin Pledge To Shape New World Order) (Joint Russo-Chinese Statement: US Biowarfare Activities, AUKUS Submarines & Prospects of Nuclear War)
私が最も注目したのは、習近平が訪露に際して発表した12項目の姿勢表明書(ポジションペーパー)だ。これは、ウクライナ戦争と今後の世界がどうあるべきかについての中国の考え方を書いた条文だ。そしてその1番は、全ての国家の主権や領土を尊重すべきで、国連憲章など国際法も遵守されるべき。2番は、(NATOに代表される)冷戦思考を捨てよ。自国の安全を守るために他国を犠牲にしたり、軍事ブロックを作るな。(露敵視のNATOに替わる)バランスのとれた欧州の安保組織の構築を支援する。(NATOと中露が対立するのでなく欧州と中露が)協力してユーラシアの平和と安定を維持すべき・・・、となっている。 (China’s Position on the Political Settlement of the Ukraine Crisis) (Full text: China’s position on settling the Ukraine Crisis)
3番から12番はウクライナ戦争の和平策についてだが、他の国際紛争の解決にも使える内容が多い。中でも10番は(米国側による対露制裁など米国が発する)国連安保理の決議に基づかない経済制裁をやめるべきだ、と言っている。これらの内容から感じ取れるのは、中国がこれから米覇権に代わる多極型世界の主導役になっても、中国自身が昔から言っていた「国連が目指してきた国家主権重視・協調重視・覇権の機関化」を推進する姿勢を変えないだろうということだ。中国は「中露が米国に取って代わるだけの覇権交代」をやろうとしていない。そうではなくて中国は、ロックフェラーなど米資本家らが2度の大戦で大英帝国から覇権を移譲されて作った国連中心の世界体制を70年ぶりに蘇生しようとしている。 (Xi-Putin Meeting Marks Tectonic Geopolitical Shift Which West Not Ready for)
国連中心の世界体制は、英国が軍産複合体を作って起こした冷戦によって分裂させられて機能不全になった。国連を作った米上層部の勢力は「軍産のふりをした隠れ多極主義者」となって米中枢に存在し続け、ベトナムやイラクやウクライナの戦争をわざと過激化して大失敗させて米覇権を浪費し、代わりに中露が台頭してBRICSや上海機構など多極型の覇権構造を作って米覇権の自滅後に代替する流れを誘導した。そして今、米欧が金融崩壊してドルの基軸性が失われていきそうな中で、実際に中露主導の非米的・多極型の世界が立ち上がってきている。今回の習近平の訪露は、その立ち上がりを象徴する出来事だ。中露の政府は最近、多極化とか多極型世界といった言葉を頻繁に使うようになっている。習近平の訪露の主眼は、中露結束による世界多極化推進・多極型世界の構築の加速であろう。 (Russia-China ties have no limitations - Putin) (Xi Jinping sees ‘irreversible’ shift to multipolar world)
中国は、75年前の国連の創設で最も得をした国だ。安保理常任理事国(P5)になることが内定した1943年当時の中国は、何十年も日本など列強に蹂躙された挙げ句、国共内戦も起きて国家の体をなしていなかった。P5のメンバーを決めるカイロ会談に招待された中国(中華民国)の蒋介石主席は当時、日本に追い詰められて山奥の四川省に逃げ込んでいたゲリラ勢力の頭目に過ぎなかった。米国が、そんな中国を世界の5大国の一つに引っ張り上げた。 (米国の多極側に引っ張り上げられた中共の70年)
そのような歴史を見ると、国連主導の多極体制(覇権の機関化)を中国が切望するのは当然だ。中国だけでなく、米国以外の多くの諸国が、国際紛争を仲裁する時に「国連憲章の精神に沿って」と言っているが、口だけだったりする。中国だって口だけだろうと、軍産うっかり傀儡の人々(軽信がひどくて頓珍漢な中露敵視に陥っている左翼リベラルとか)は言いそうだ。しかし、中国と国連の歴史的な関係を見れば、米国の覇権が崩壊したら国連主導の多極体制を作りたいと中国が考えて当然なことがわかる。 (中国が好む多極・多重型覇権) (Russia-China ties have no limitations - Putin)
習近平は昨秋の共産党大会で国内の独裁体制を固めた後、外交大国になる道を猛然と走り出し、非米側の金資源本位制を強化するために大産油国であるサウジとイランの和解を仲裁し、それが終わるとすぐにロシアを訪問してプーチンと多極型の世界運営について話した。今回の習近平の訪露自体が、中国がロシアと共同で米覇権崩壊後の世界を作っていこうとしていることを示しており、多極型を志向する中国の姿勢を表している。多極体制は、中国(など非米諸国)を大きく安定・発展させる。中国は今、ロックフェラーら国連創設者たちに75年ぶりに「恩返し」している。番頭のキッシンジャーも(表向き別なことを言いつつ実は)ご満悦だ。 (Here's why Xi's Moscow visit is a key moment in the struggle to end US hegemony)
中国のウクライナ和平提案に対し、米国は「中国はロシアのプロパガンダをオウム返しにしているだけであり、信頼できる仲裁者でない」と一蹴している。米欧は中国の和平案を無視して、追加の兵器弾薬をウクライナに送る戦争扇動策を決めている。だが対照的にウクライナのゼレンスキーは、中国の和平提案を歓迎し、習近平とバーチャル対談したいと言い続けている。ゼレンスキーは米英の傀儡でなかったのか??。よく見ると、米国は中国提案に反対しているが妨害しておらず、ウクライナが中国と話し合うことを黙認している(隠れ多極主義的)。欧米がウクライナを軍事支援できなくなったら、ウクライナは中国の和平仲裁に頼るしかなくなる。ゼレンスキーはそのへんを見越している。 (ZH Geopolitical Week Ahead: Ukraine Validates China As Future Peace-Broker While US Left Behind) (Ukraine afraid to criticize China - Politico)
中国はイランとサウジの和解を成功させ、ウクライナの仲裁を提案して、短期間で外交大国にのし上がった。12項目のウクライナ和解提案は、他の地域の紛争解決の原則として使える。ロシアも同期してシリア内戦の終結処理(トルコとアサドの和解仲裁、アラブとアサドの和解支援など)を進めている。中露は、共同でアフリカの安定化策も手がけ、これまでアフリカに覇権下に入れて混乱させるだけだった米仏の影響力を排除している。中露は、米国側が起こした世界各地の戦争を停戦させ、米国流の不安定化策を無効にする策を大々的にやり始めている。 (Putin makes prediction about Africa) (The battle for African hearts and minds: Here's why the West is upset about Russia's growing influence on the continent)
非米諸国は、これまで米国に逆らったら孤立化・経済制裁・政権転覆されて潰されだけだったが、今後は中露に頼って米国からの敵対に対抗し続けるようになる。これまで黙って不本意に対米従属してきた非米側の諸国が、中露の側について対米自立して非米型の新世界秩序に参加していく傾向になる。最近インドやブラジル、南アフリカといった大国群や、トルコやベトナムといった中規模諸国が米国側から非米側への移転を加速している。先進諸国、とくに敗戦後に米英から徹底的に洗脳された日独は、米諜報界による情報歪曲を軽信し続けているので、今の中露による多極化の動きを認識できず、米覇権とともに沈没しつつあるが、途上諸国や新興諸国はもっと非米的な傾向が強いので多極化の流れをつかんでいる。 (Why the West’s standoff with Russia and China is a big opportunity for the world’s second-tier powers) (Geopolitical Rumblings Leave U.S. Behind)
今回の中露首脳会談でプーチンは、ロシアとアジア・アフリカ・中南米との貿易の決済通貨として、ルーブルと相手国通貨のほかに人民元を加えることを習近平に伝えた。これは、基軸通貨としてのドルの地位が失われた後を見据えてに立ち上がりつつある多極型の複数基軸通貨体制の中で、中国の人民元が頭一つ抜き出た地位につくことをロシアが認めたことを示している。 (Putin To Xi: "We Support Chinese Yuan Use With Asia, Africa, Latin America") (Russia ready to switch to yuan in foreign trade - Putin)
ウクライナの和平を提案した中国と対照的に、G7など米国側はウクライナの戦争を続ける姿勢をとり続けている。5月の広島でのG7サミットでは対露制裁とウクライナ戦争支援の強化を決める予定で、その下準備として、G7議長である日本の岸田首相が米国から加圧(命令?)されて3月21日にウクライナを訪問した。米国としては、日本を中国のライバルとして外交戦をさせるために、習近平の訪露と重なる日程で岸田をウクライナに行かせた観がある。 (China gives US advice on Ukraine)
習近平の訪露、岸田のウクライナ訪問と同期して、米欧の金融や経済の崩壊傾向が続いている。クレディスイスがUBSに買収されて劇的な危機加速が回避されたが、最終的な金融崩壊は先送りされただけだ。米銀行界は連銀(FRB)からの資金注入がないと破綻への流れが再燃する。米金融システムは1-2年以内に全崩壊していきそうだ。金融が破綻したら米覇権も終わり、非米的で多極型の世界が席巻する。米国と傀儡諸国で構成するG7やNATOは無意味・機能停止する。米覇権が崩壊していくのだから、日本が米国の傀儡として中国と対抗したら必ず負ける。 (The Comex Is In Far Worse Shape Than SVB If The Run On Physical Accelerates)
米国の衰退と中国の台頭を予見して中国に接近した故・安倍晋三の姿勢を踏襲している岸田文雄としては、米国の傀儡として中国と対決させられるのは不本意だ(威勢の良い報道と裏腹に)。できればやりたくないが、米国の命令だから逆らえない。日本や英独仏豪など先進諸国は、米覇権の崩壊が不可避なのに、米国と一緒に沈没・無理心中させられる。途上諸国や新興諸国はうまいこと非米化の流れに乗るのに、先進諸国は米国に隠然支配されているので逃げられない。逃げられないから、米国と一緒に中露を敵視し続け、ウクライナ和平を拒否して戦争し続けるしかない。ウクライナはしばらく和平にならない。ウクライナが和平する時は、いずれ金融崩壊が加速し、米覇権が崩壊して米国側が機能不全に陥った後だ。 (18 European Countries Sign Joint Ammunition Donation For Ukraine)
米国の金融崩壊はたぶん意外と近い。それと連動して、欧州のエリート支配体制が崩壊して右派ポピュリストの政権になっていき、欧州が対米従属を離脱して中露と和解する転換点も、意外と早く来るかもしれない。フランスはゼネストや反政府運動が続いている。ドイツにもゼネストが波及している。事態がどんどん展開しているので、追いつくのがやっとで毎回雑駁にしか書けない。似たような筋書きの話を何度も書くことになる。 (European Spring? Germany Braces For Major Strikes While France Burns) (Von Greyerz Warns "The Financial System Is Terminally Broken")
英国は、戦車の弾として劣化ウラン弾をウクライナに送ることにした。米NATOはコソボやイラクでも劣化ウラン弾を使って問題になった。英政府は「劣化ウラン弾は危険でない」と言っているが、少し前まで米英マスコミは「ロシア軍が劣化ウラン弾を使ってウクライナ人を放射能汚染している」とウソを喧伝していた(ソ連軍は劣化ウラン弾を持っていたが、ロシアは2000年までにそれらを処分し、その後は使っていない)。米英マスコミ自身が、劣化ウラン弾は戦争犯罪の道具であることを認めたことになる。G7サミットは、米国に原爆を落とされたヒロシマで行う。二度と核物質を戦争に使ってはならないと、日本人は80年近く祈ってきた。その象徴が広島だ。それなのに、核物質で戦争犯罪の道具である劣化ウラン弾を使うウクライナ戦争の支援を、G7サミットが広島で高らかに宣言する。ウクライナ(今はもうロシアに編入)のロシア系住民が劣化ウラン弾の標的にされることをマスコミは言わない。 (Why is Britain’s Uranium Ammo Decision a Big Deal?) (UK to Give Ukraine Depleted Uranium Shells Despite Russian Warnings)
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● 創造発表クラスで、現代の最新情報に関する思索と論議を (232字) 森川林 nane 2023年03月08日 16時11分
14554 (創造発表掲示板)
創造発表クラスは、自分の関心のあるテーマを調査、研究、実験し、それを発表することが課題です。
しかし、その発表以外に、現代の最新情報や科学的哲学的テーマを理解し、それに対して思索を深めることもやっていきたいと思います。
今回のテーマは、少し前に話題になった本、「2040年の未来予測」(成毛眞)から引用します。
これらの文章を読み、自分なりに考え、自由に意見を述べてもらいます。
1-6は5Gの世界
7-8は核融合
1-4は肉
5-7は学歴
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● 創造発表の中根クラスの勉強の仕方 (377字) 森川林 nane 2023年03月08日 16時01分
14553 (創造発表掲示板)
- 1.2.3週は発表をしても準備をしてもよい。
準備の人は、今後の予定や途中経過を発表する。
4週は、全員発表する。
他の創造発表クラスは、毎週発表している。
将来は、他クラスと発表交流会をする予定。
- 創造発表クラスの目標は、東大の推薦入試や他大学の総合選抜入試を受験できるような個性と創造性と思考力と発表力を伸ばすこと。
そのために、実績を蓄積すること。
- 自分の好きなことや興味関心のあることを、学校の勉強を超えて自由に研究する。
「個性を学問に、学問を創造に」がテーマ。
- 発表媒体としては、発表室、YouTube、Googleフォトなどを利用する。
YouTubeとGoogleフォトはアカウント年齢が13歳以上なので、13歳未満の人は保護者のアカウントを利用する。
YouTubeへのアップロードがおすすめ。
- クラスでの発表時間は1人5分だが、研究の詳細はもっと長くてよい。