元の記事:イスラエルを旅していたとき(清書) (1406字)
はた aonamu 2024/02/21 20:02:31 29871
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何かを決める時、多数決を取ることが多いだろう。その時に、どちらかに票が偏り、片方にしか手を挙げないということも多々ある。これはいわゆる「全員一致」なのだが、こうなった場合には無効になってしまう国があるらしい。それは中東に位置するイスラエルである。この風習はユダヤ教の影響を強く受けているらしく、みんなが賛成することをよしとしない。日本は真逆で、全員一致で決まることが皆が納得する一番良い決め方であるという考え方をしている。実際、日本相撲協会ではほとんどの重要議会が全員一致で決まる。一見、我々からすると無謀に見えるが意味があるようにも見える。確かに、ほとんどが全員一致で決まるというのもなにか変である。
全員一致を採用しないことにより、多数決をとることができなくなってしまうという問題点がある。多数決をとるということは、少なからず全員一致になってしまう可能性がある。つまり、多数決が10対0になった瞬間話し合いが台無しになってしまうことがあるということだ。おそらくその場にいる人は納得することはできないし、時間が多く消費してしまうことになる。実際、今までの決め事は多数決がほとんどだった。昼食をどこで食べるかという判断から、クラスでの決め事も多数決で決めることもあった。選挙でさえ多数決である。イスラエルの習慣だと、100%の投票率だったのに全員一致が禁止されているから選挙をやり直す必要があるというようになってしまう。
全員一致になると無効になることを採用することによって良い影響もある。多数決で片方に票が偏ってしまうと、少数派が「異論を唱えると周りからどう思われるか分からないから」と思って自分の意思とは異なる方に票を入れる可能性がある。それが多数決の欠点ともいえる。しかし、全員一致になると話し合いが無効になるというルールを採用すれば、少数派は遠慮なく異論を唱えることができると考えられる。いわゆる「少数意見の尊重」ができる議論方法である。実際、全員一致で話し合いがまとまるケースというのは話し合いをするまでもないくらい明らかなものであるか、周りに合わせてなんとなくどちらかに手を挙げているかのどちらかであることが多い。そもそもイスラエルが全員一致を採用していないのは、難しい判断というのは45対50などの僅かな差がある場合であり、明らかなものは悩むほどのものではないから話し合う必要はないという考え方があるからだ。本当に重要な話合いというものには必ず反対意見があるものだろう。
全員一致を採用しないことによって多数決をとることができなくなってしまうという意見もあるし、しない方が反対意見を大切にできるという意見もあるが、一番大切なのはどのような意見が出ているかを慎重に見るということだ。話し合いをする以前に、そもそも話し合う内容を理解していないと話し合いで出た答えは無意味になってしまう。古代ギリシアの政治家デモステネスは「話すことの2倍、人から聞くべきである」といった。これはまずは様々な意見を聞くことの大事さを説いているように感じる。さらに、どの意見を採用するかではなくどのように意見を集めるかということも重要である。一番重要なのは意見を見ることであるから、どのように意見を集めるかも討論には影響してくる。現代はSNSもあるから数え切れないほどの意見が存在しており、それらを活用することもできるだろう。