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聞いてみなくちゃわからない
ウグイス の広場
ナズナ あもせ 小5
 私は転校生をじっと見つめた。確かに転校生は私にそっくりだ。まるでもう
一人の私のように。
 
 二年生になって女の子が転校してきた。少女はしゃれた服を着ていて、おと
なしく、友達とも慣れなかった。休み時間に皆が遊びに行っている間、少女は
おとなしく本を読み、ときどきちらっとこちらをふりむいた。
 
 それにしてもあの少女は私そっくりだ。みんなが私のことをそう言う。私は
ちっともそうはおもわない。ただ私が知っているのは、知恵があった……とい
うことだけだ。
 
 算数の時間、少女のことが気にかかってしょうがない。ときどき少女のこと
をふりむいてみたりしたが少女は見るたびに薄笑いをするだけである。
 
 少女が気になるのだが声がかけられない。おとなしく本を読んでいる姿を手
でポンポンとぶちこわしできない。声がかけられないから、声も知らないし、
どんな性格なのかもわからない。はじめ少女がおとなしく、友達がいないとい
うことを知ったとき、興味がなかった。友達がいないと言うよりか、いじめら
れてもいないし、ともだちがいないということである。
 
 少女の気持ちがわからない。声をかけられないから、声をかけられてうれし
かったのかもわからない。すべては「声をかける」にかかっている。そういえ
ば少女がしゃべっている姿なんて、見たことない。また、私が知りたいのはお
友達になってもらいたいのかである。少女にとってこの学校生活が本当に適し
ているのかということである。
 
 「もう一人の私」は性格を隠しているのだと思う。おとなしく本を読んでい
るけれど、実は皆と一緒におもいきって遊びたい気持ちがあるのだと思う。も
しかしたらそうなのかもしれないから、声をかけてみよう。
 
 次の日、
 
 「ねえ……………………………………あの。」
 
 はじめて少女に声をかけてみた。
 
 「なあに?」
 
 少女はふふと笑っていいかえした。
 
 「き今日、みんなで大縄するんだけど……………………。ああのやんない?
 
 「やりたい!」
 
 少女は元気よく言った。
 
 はじめて知った。少女の本性を。実は本当は、皆と一緒に遊びたいというこ
とを。その日から少女は自分から声をかける勇気も持て、ともだちもたくさん
出来るようになった。
 
 このことから、少女のように自分のきもちを引きこもっていないで、自分か
ら声をかける、ヒトに声をかけられる、事が一番人にとってうれしいことなの
ではないかと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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