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個人の利益と全体の利益の両立 アジサイ の広場
○○○○ あう

 梅雨が明け、明善は天竜川の工事が終わり、天皇は無事天竜川を渡ることが出来たが、明善は、天竜川が氾濫しつづけることを防ぐため流れそのものを変
える計画を立てた。しかし、様々な利害の対立、誹謗中傷、出資の取下げと言う問題が生じた。明善は大久保利通に面会し、全財産を投入することによって 工事を進めた。明善は晩年「私心絶万功成」と句に書いている。このような無私の精神が人々の共感を呼び、偉大な事業を生んでいった。  

 数年前に、日本球団からメジャーリーグへ移籍することになったある投手が、規定によって本人の希望する球団に移籍できないことを不服としマスコミを
通して異議を申し立てた。結局彼は希望球団に入団したが、日本ではこのようなことはあまり好ましく思われない。従って当然この投手の評判はあまり良く なかった。大学のある教授もこの話を余談としてとりあげていたが、その余談の内容は意外なものであった。その教授は、日本においては、とくに自分に与 えられるお金に関して異議を立てる習慣がないが、終身雇用、年功序列の崩壊が進み、サラリーマンにも年俸制が浸透すればこのメジャーリーグへ移籍した 投手のように自分の利益に関することを積極的に主張する必要が出てくるだろうと述べていた。確かに、個人重視の傾向が強くなれば、以前のように多少不 利になることであっても社会や集団のために黙っているというわけにはいかない。この教授の話にも一理ある。  

 しかし、それぞれの人が利益を主張し合うことによって組織全体が機能しなくなるという例もある。トヨタの優れた経営システムの一つに「提案箱」とい
うものがある。トヨタの従業員が会社の経営について提案をし、その提案によって会社の利益が増えれば給与の増加と言う形で提案者に利益が還元されると いう仕組みである。この「提案箱」はもともとFORDにあったものをトヨタが導入したものでFORDではまったく機能しなかった。発案者が、発案による企業の増 収分全てを見かえりとして要求したため制度を導入した経営者側のモチベーションが低下したためである。トヨタでは会社との一体感があったため発案者も あまり見かえりを要求しなかったことが「提案箱」の成功に大きく貢献した。この「提案箱」は、それぞれの人が個人の利益を追求しなかったことにより組織全 体がうまく機能した一例といえる。  

 確かに、労使一体の経営は日本企業の大きな強みであった。しかし、経済状況が変化のため現在では必ずしも有効なものとは言えなくなっている。一方で
個人の利益を追求しないボランティア活動は、無駄が生じる恐れがある。両者の扱い方は難しいが大切なことは活動をするにあたって確固とした目標を持つ ことではないだろうか。私心のない目標を導き出して、その目標に到達する最短距離を選択することによって両者の欠点を補うことが出来ると考えている。  

 
                                                 
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