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価値観の形成の仕方 |
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アジサイ |
の |
空 |
の広場
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○○○○ |
/ |
あう |
社 |
特定の思想はしばしば特定の人に恐るべき吸引力を発揮する。このようなトラップに陥らないようにするためには、「絶対の真理はない」ということを知っ |
ておくことである。どのような大思想や宗教にも、笑ってしまうような珍妙な部分はある。大切なことは、そのような部分でちゃんと笑えるような精神的健 |
康性である。 |
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大学の入学式である教授が大学に入ってやるべきことについてお話してくださった。その教授は大学へ入学してやるべきこととして、「知識を深めること」「 |
見聞を広げること」と最後に「自分自身の核を作ること」の3つを挙げていた。大学の講義で様々な定理や学説を紹介された。しかしそれらはある現象を説明す |
るにとどまっており、それ自体が社会問題の解決方法を提示しているわけではない。所得再分配に関する定理は多く存在するが、誰に対してどのように所得 |
を分配すべきかという問いに対して絶対的な答えは出していない。むしろ、それは個人の価値観に基づいて決められるものである。同じことがどの分野の学 |
問にも当てはまる。つまりどの学問も個人の価値観によって加工されてはじめて生きた学問になる。今考えれば、あの時教授は、大学で学ぶ講義を生きたも |
のにするために自分自身に核を作ることが必要であるということが言いたかったのかもしれない。 |
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しかし、一つの価値観に固執すると大きなトラップに陥る。第2次世界大戦期に台頭したファシズムがその典型例だし、現在の民族紛争もその傾向が強い。 |
ワーグナーもそのトラップに陥った一人である。彼は芸術分野に大きな功績をもたらしたが、同時に純粋なドイツ民族の芸術を目指し、それが反ユダヤ主義 |
へとつながっていき、ユダヤ人を批判する書物を書いている。この反ユダヤ思想がのちにナチスドイツに利用され、このことが彼の大きな汚点となった。 |
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確かに、特定の思想を盲目的に崇拝するワナを回避することと、まったく思想を持たないこととは別物である。ワーグナーの価値観は確かにユダヤ人批判 |
へとつながって行ったが、彼の中に確固とした価値観がない限りあれほどのすばらしい作品は生まれなかったであろう。大切なことは同じ価値観でも竹のよ |
うな思想を持つことではないだろうか。まっすぐ空へ伸びている巨木は強風に煽られると折れてしまうが、竹は風が吹くと風が流れる方向へしなやかになび |
き、風が止むと元のまっすぐな状態に戻る。おなじ個人の価値観でもこのようなしなやかさが求められるのではないだろうか。入学式で教授が「自分自身の |
核を持つ」ことのほかに「見聞を広げること」「知識を深めること」を付け加えたのはそのような意味があったと思う。 |
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