先頭ページ 前ページ 次ページ 最終ページ
集団の結束の仕方
アジサイの広場
山口晃弘あう大2
 一つの集団は、一人の裏切者と、一人の犠牲者を生むことによって完成する
。キリストの伝説において、とらえどころのない奇妙な関係の十三人は、キリ
ストとユダによって、アブラハムのエピソードにおいては、わが子を殺すとい
う行為によって自己完結している。衰弱した集団は自己完結を目指すものであ
り、現在でも「裏切者」と「犠牲者」を生み出すことによって自己完結を目指
す集団は存在し、その原理は新約時代以来、変化していない。
 
 イザヤ・ペンダサン氏は、ある民族が迫害される場合、経済的繁栄に対する
他民族のねたみなどの原因があるが、この事件に関しては、原因と考えられる
ものがなく、突然起こった事態であると主張している。しかし、考え方によっ
ては、大震災で秩序が乱された混沌とした状態の中で、井戸の毒を入れた「裏
切者」の朝鮮人と、井戸に毒を入れられた「犠牲者」の日本人と言う関係を作
り出すことによって、自己完結をめざしたのではないだろうか。深刻なインフ
レによって社会が行き詰まっていたドイツ人が、ユダヤ人の迫害へ向かったの
も同様だろう。
 
 このような組織の引き締めは、どの集団においてもしばしば行われ、現在で
も、理不尽な形で犠牲となる人は多い。では、このようにある特定の人物を、
「裏切者」に仕立て上げ、組織の中の病魔を取り除くことはやむを得ないこと
なのであろうか。衰弱した集団を立ち直らせる方法はそれしかないのであろう
か。
 
 この問題を解決するヒントは各地域の祭りにあるのではないだろうか。世界
の各地に、また日本においても死者がでるほどの過激な祭りがいまだにある。
地方の共同体は、この定期的に行われる過激な祭りによって仕立て上げられた
「裏切者」に向かうエネルギーをうまくそらしているのではないであろうか。
このような定期的なガス抜きによって組織を活性化することができるのではな
いだろうか。
 
 確かに、各地域で行われている祭りと同じようなことを、例えば企業で行お
うとすれば、様々な問題が生じるだろうし、そのガス抜きの具体的な起こし方
は私にもわからない。しかし、現在のような対人関係の中で、「裏切者」が仕
立てられたとき、その人に対する迫害は、かつてより計り知れないものとなる
であろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ホームページ