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一夜漬け
アジサイの広場
武照あよ高2
 部屋に入って、レモンの香りを嗅いで、初めて、レモンがそこにあったこと
を知る。それは、恐ろしいことだ…。
 
 かなりうろ覚えだが、これは高村光太郎の詩、「レモン」である。少年のナ
イフ事件が社会に大きく取り立たされていところ、ある学校では「切れる」と
いう言葉を使わないようにしましょうという校則をを作った。「君が代」に反
対する教師と、推進する国家との間に挟まれた学校長が自殺した時、国は「君
が代」を法制化しようとした。盗聴法の時も、環境問題の時もそうだろう。日
本は何かが起こった時初めてレモンの存在に気付くのである。そして、その度
に「制度」によってレモンを封じ、匂いが外に漏れないようにしてきた。見え
ないものを考えるのではない、目前のものを解決する。この「一夜漬け」的な
姿勢が現在の日本の姿である。この近視眼的な姿勢のために問題が根本的解決
に至らないことも多いであろう。
 
 この姿勢を支えている背景として、犠牲を想定していないということが挙げ
られる。テスト勉強で考えれば、毎日コツコツ勉強するには毎日の時間のいく
らかをその勉強の時間に充てねばならない。それに対して一夜漬けは毎日の時
間を「犠牲」にしなくて良いのである。ヨーロッパ諸国は今、少なくとも形式
的には経済統合が成し遂げられつつある。この経済統合には十年単位の各国の
我慢があったのである。まだしばらくの間は経済統合による利益を被る国はほ
んの一、二カ国であるという。長期的な解決や努力には必ず犠牲が伴う。日本
の目前の危険を回避することを第一とする「一夜漬け」的な姿勢は、犠牲はい
かなる解決があったとしても優先してなくすべきという我々国民の考えに依っ
ているのである。
 
 それと共に情報処理が現在の社会で重要な地位を占めていることも一つの原
因となっているように思われる。医学の発達は、病気を予防することよりも、
どんな病気になっても治療が出来るようにするためになされてきた。それと同
様、一寸先は闇なのだから何がおこっても大丈夫なようにしておこうというの
が現在の日本の「一夜漬け」の姿勢に結びついているのである。
 
 確かに「一夜漬け」が大きな成果をもたらすことも多い。ケネディ大統領は
月面着陸を達成する時期を明言することによって、実際に人類を月に立たせて
しまった。エジソンも発明の期限を明言することによって自ら「一夜漬け」を
発明の原動力としていたように見える。しかし、これらの例が一つの「目標」
を持った一夜漬けであったことは興味深い。人間は部屋に入るまでレモンに気
付かない。それは仕方の無いことだ。しかし大切なことはそのレモンを見よう
することであろう。積極的な「一夜漬け」という姿勢が現在の日本に求められ
ているであろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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