自己責任の時代 |
アジサイ | の | 空 | の広場 |
吉見 | / | こと | 大3 |
平成不況で苦しむ日本とは裏腹に、アメリカの経済は非常に好調だ。その背 |
景には情報産業で目覚しく成長しているベンチャー企業の株価の上昇がある。 |
今、シリコン・バレーでは様々なベンチャー企業が誕生し、次々と新しい技術 |
、サービスを生み出している。情報産業のベンチャー企業の最大の利点は、資 |
本が不要なことだ。人並み以上にコンピュータの知識、技術を持つ人間が数人 |
、集まればビジネスが可能だ。そして運が良ければ億万長者になることも夢で |
はない。この可能性、将来性に対して多くの人間がベンチャー株を購入する。 |
多くの人が株を購入するから、市場の論理により当然、株価が上昇する。つま |
り今のアメリカ経済はベンチャー企業の可能性、将来性が支えているのだ。 |
インターネットを利用した株式売買が盛んだ。新聞や雑誌では様々な有望株 |
が紹介され、主婦や学生等、様々な人達が競って売買している。私は「ウォー |
ル・ストリート」という映画を思い出した。MBAを取得した優秀で若い主人公 |
が株式売買で失敗し、奈落の底へ落ちていく話だ。これは映画だが、そもそも |
株式売買というのは専門の知識を身につけた人がやるものではないか。証券会 |
社で働くスペシャリストでさえ「株はギャンブルだ」と言っている。アメリカ |
では猫も杓子もゲームのように株式を購入している。つまり皆でギャンブルを |
しているのだ。 |
株式売買は非常に危険なギャンブルだ。危険なギャンブルだから当然、当た |
れば大きい。設立時のベンチャー株を購入し、そのベンチャー企業が上場する |
まで大切に保管していれば億万長者になれる。しかしハイリターンの裏には必 |
ずハイリスクが存在する。ベンチャー株を保有していても倒産すれば、その株 |
式は紙屑になる。実際は倒産する確立の方が高い。それはベンチャー企業には |
資本が無いからだ。資本は、その企業の基盤となる。しかしベンチャー企業は |
知識や技術という知的財産が基盤となっている。莫大な資本を必要とする装置 |
産業と違い、知的財産は簡単に模倣が可能だ。元々、資本が不要だから模倣す |
れば、すぐに同じような事業を展開できる。文字通り栄枯盛衰、一寸先は闇の |
世界だ。 |
冷静に今のアメリカの状況を見ると、一時期の日本のバブル全盛期を思い出 |
す。価値の無い物に高い値段をつけ、それを売り飛ばす。買った人間は、それ |
以上の値段をつけて、また売り飛ばす。この繰り返しなのだ。そして誰もが「 |
そろそろ潮時かな」と思った瞬間、バブルは一気に崩壊する。人間は「甘い蜜 |
」に弱い。誰かが成功すれば自分も成功すると思う。何でも挑戦することは良 |
いことだ。しかし挑戦するためには、それ相応の準備、努力が必要だ。今、日 |
本は「金融ビッグバン」の真っ只中にある。来年にはナスダック・ジャパンや |
マザーズといった新しい株式市場が登場する。インターネットの急速な発達は |
、私たちと株式売買を近づけた。大切なのは「自己責任」の意志だ。株式売買 |
で大損し、自己破産しても誰も助けはしない。何時の間にか日本は、この究極 |
の資本主義の論理の世界に足を踏み入れているのだ。 |