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自己保存本能
アジサイの広場
ペー吉うき中2
■衰弱したアイデンティティの行きつく先は、「清潔願望」である。自分が自
分であるために、他者との接触を徹底的に避けるのだ。しかし、結局は私たち
は「他者の他者」として自分を認識しなければ自分を見失ってしまう。他者の
他者として自分を意識できない時、私たちは皮膚感覚という境界を防壁にする
。それが清潔症候群なのではないだろうか。
 
 ■私は、別段アイデンティティ崩壊の危機に陥ったことはない。しかし、演
劇部という部活の都合上、他者のアイデンティティを模倣するというのは、時
たまやる。その時、私は台本を読み、その役がどんな人間かを読み取る。それ
は、その役のセリフからだけでなく、他の役のセリフも見て、自分が演ろうと
している役がどんな風に見られているか、それによってどんな影響を受けてい
るかをチェックするのだ。ある意味、「他者の他者」としてその役がどんな立
場かを見ているといってもいいだろう。アイデンティティは、確かに「他者の
他者」としての認識で保たれているのだ。
 
 ■しかし、あまり他者の認識に頼りすぎていると、些細なことで自我が崩れ
やすくなってしまう。白雪姫の物語では、魔女は鏡を見て鏡に「美しい」とい
われ、自らのアイデンティティを保っていた。しかし、ある日、白雪姫という
自分よりも美しい存在が現れたことにより、魔女のアイデンティティは崩壊の
危機に陥る。そして、白雪姫を抹殺しようとするのだ。あまりアイデンティテ
ィを他者によりかからせすぎていると、ついには犯罪まではしってしまう。
 
 ■「他人から尊重されるには、まず自分で自分を尊重しなければならない」
という言葉がある。私たちは他者の認識によってアイデンティティを保つ。し
かし、自分自信を認識することによってアイデンティティを保てるだけの強さ
も必要なのではないか。人は他人との交わり無しでは暮らしていけないが、そ
れに寄りかからずに歩いていけるだけの強さ、それが今必要なのではないだろ
うか。