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日本における表現の文化―コミュニケーション・ラーニング(その8) as/1113.html
森川林 2011/01/02 06:09 


 相対語感しか持たない人は、ひとまとまりの物語や学問を、言葉によって理解することはできますが、同じように再現することはなかなかできません。絶対語感を持つ人は、物語や学問を一度聞いただけで理解し、しかもそのまま再現することができます。

 しかし、だからといって、相対語感の人が学力的に劣るわけではありません。学問をするうえで理解に時間がかかるというハンディがあるだけですから、そのハンディは努力によって克服することができます。また、理解に時間がかかるということは、逆に言えば創造性を発揮する余地があるということです。しかし、理解力が優れているということは、人間が社会生活や学問生活を行っていくうえでやはりきわめて有利なことなのです。

 もちろん、この相対語感と絶対語感の差異は、はっきりと分けられるものではありません。相対語感はだれもが共通に持っていますが、絶対語感は乳幼児期の環境によって、持ち方の度合いに差が出てきます。



 絶対語感を成長させる要因は、乳幼児期に親が同じ物語を何度も聞かせてあげることです。これが、添い寝と語り聞かせの文化によって、日本の社会に受け継がれてきました。この理解力の土台があったために、日本は、過去何度か、国民全体の大きな方向転換を比較的容易になしとげることができたのです。



 ところで、こういう絶対語感によって優れた理解力が育つだけでは、ただ頭のいい子ができるだけです。そういう頭のいい子がいくら集まっても、社会に新しい創造は生まれません。理解力が優れているということは、創造性を発揮する必要をあまり感じないということだからです。頭のよさとアイデアの斬新さには、反比例する面もあるのです。

 理解力を育てるには、同じ文章の語り聞かせや読み聞かせが必要でした。子供が自分で文章を読めるようになれば、ここに、同じ文章の音読や暗唱や読書も入ります。一方、創造性を育てるには、対話と表現が必要です。既にあるものを聞いたり読んだりするのではなく、まだないものを新たに作り出すというのが対話と表現だからです。

 この点で、日本にはやはり、他の国にはあまり見られない大衆的な、短歌、俳句、日記、手紙という表現の文化がありました。江戸時代における手紙のやりとりの頻繁さは、当時日本を訪れたヨーロッパ人を驚かせました。また、戦時中、日本と戦ったアメリカ軍をやはり驚かせたのは、日本の兵士の多くが手帳に日記や詩を書いていたことでした。欧米では、そのようなことをするのは社会の上層にいるエリートだけで、大衆が日常的に文章を書くということは考えられなかったのです。

 明治維新を遂行した日本人は、欧米の文化を単に理解して受け入れるだけでなく、そこに日本的な創造を付け加えることを忘れませんでした。どのように異質なものが来ても、和魂洋才の精神で消化することができたのは、日本にこのような創造的表現の大衆文化があったからです。



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