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創造する子供たち、対話のある家庭、自助の教育 1 as/1575.html
森川林 2012/07/07 20:42 
修 削



 今、世の中は大きく転換しようとしています。「我思う。故に我有り」で始まった欧米の個人主義の文化が、経済的にも理念的にも行き詰まりを見せ、その方向に人間の明るい幸福な未来はありそうもないと多くの人が気付きはじめました。

 それに取って代わるものが、今、経済的に台頭しつつある新興国だと思う人はいません。新興国の経済発展は、単なる遅れて来た欧米化であり、古い世界に生まれた新しい力に過ぎません。中国やブラジルは、ヨーロッパやアメリカや日本がたどって行き詰まった道を、まだあとから走っているに過ぎないのです。

 では、欧米に代わる新しい道があるかといえば、それがまさに日本がかつて明治維新という欧米化の中で否定してきた古い日本の文化の中にあったのです。そのことがはっきりわかったのが、3.11の東日本大震災でした。この過酷な自然災害と人為的な災害の拡大の中で、日本文化が精神的にまだ強い生命力を持っていて、それは欧米の文化とは異なる文脈の中でこれまで生き続けていたことがわかったのです。その隠されていた日本文化を、欧米のもたらした科学技術の光の中で、新しい世界文化として開花させることが、これからの日本の果たすべき役割です。

 欧米の文化は、主人と奴隷の文化でした。頭脳として判断し命令する役割を持つ人と、手足として命令され働くだけの役割を持つ人とがはっきりと分化され、幸福は消費生活の中にあると思いこまされてきたのが欧米の文化でした。働くことは苦役であり、働きから解放されることが人間の理想でした。この、それなりに首尾一貫した世界に、日本人もまた洗脳されてきたのです。

 しかし、日本の歴史には、その欧米の価値観とは異なる文化も連綿と流れていました。それは、だれもが等しく創造する主体で、その創造と愛と調和の中で社会が成立することが可能だという確信に裏づけられた文化でした。

 欧米文化は、自分以外のすべての主体を物として対象化する文化でした。だから、欧米文化の理念的な究極の理想は、自分だけが主人となり自分以外のすべての主体が奴隷となる社会を作ることでした。その理念の近似的な社会形態が、カースト制度のような、ヒエラルキーで社会の隅から隅までが組み立てられた社会でした。

 日本文化は、これとは正反対の文化を持っていました。日本人にとっては、あらゆる対象は単なる物ではなくそれ自体の意志を持つ主体だという無意識の前提がありました。「鶴の恩返し」の鶴は、単に機を織るマシーンではなく、自らの意志を持つ主体者でした。雪の中で立っていた笠地蔵は、単に笠をかぶせてもらう対象としての石の像ではなく、自ら行動する意志を持った主体でした。

 多くの日本人にとって、スズメやカエルやハエも、人と同じような心を持つ主体でした。(やれ打つな蠅が手をする足をする 一茶)。そして、植物でさえ、人間と共存すべき対等の意志を持つ主体だったのです。(朝顔につるべとられてもらひ水 加賀千代女)

 しかし、明治以来の教育は、日本本来の文化とは異なる欧米の文化の中で育まれてきました。学校教育の中では、ハエやアサガオは、実験や観察の対象ではあっても、共存する仲間ではありませんでした。日本の文化は、学校の中ではなく家庭の中で細々と受け継がれてきたのです。

 明治時代に全国に作られた学校制度は、子供たちを一挙に欧米の文化に適応させるための制度でした。それは、日本の近代化が直面していた富国強兵の国家像に合うための優れた歯車としての人間を育てる教育制度でした。そして、優れた歯車として求められる能力は、時代の変化とともに変化しながらも、歯車であるという目標だけは一貫して続いていたのです。

 歯車を動かす方向としてのハンドルも、やはり欧米文化の提供したものでした。方向は決まっているから、あとはその方向に合わせて能率よく動く歯車となれ、というのが、近代の、そしてこれまで続いていた教育の本質的な価値観でした。(つづく)



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