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創造性を育てる作文 8(主題の創造性)(最終回) as/1578.html
森川林 2012/07/11 21:15 
修 削


 主題の創造とは、感想や意見の創造のことです。人間は、ある物事に対して、関連する知識を持ち、考え方の枠組みを持ち、表現する言葉を持ちますが、それとともにある価値観、例えば好悪、善悪などの主観的な理想を持ちます。それが主題です。

 主題の最も原初的な形は、感覚的な感想です。例えば、遠足に行って、「くたびれた」「楽しかった」「また、行きたいと思った」などと思うのが感想です。この感想が意見の形で発展すると、主題性が明確になってきます。例えば、「みんなと仲よくすべきだ」「自分を意見を持つべきだ」「長期的な視野で考えるべきだ」などです。

 この主題にも創造があります。それもやはり主題に習熟することによって生まれます。主題の習熟とは、自分の考えた主題を繰り返すことではありません。自分以外の多くの人がその主題を述べる中でその主題が反復され、その反復の結果としてその主題自体に一つの隙間が見出され、それを埋めることで創造が生まれるという仕組みです。

 ルターは、当時のキリスト教の圧倒的な支配体制のもとで売られる免罪符を見つめる中で、自然に「神は、善行によってではなく信仰によって人を義とする」という境地に達しました。これが、主題の創造です。

 作文の勉強において、主題の創造は、発表や対話の中で行われます。ある物事に対して多くの人が同じような意見を述べるとき、そこに自ずからその主題の持つ限界が見出され、その隙間を埋めるものとして新しい主題の創造が始まります。それまで最も強固に成り立っていたかのように見えた価値観は、その強固さゆえに多くの人に反復されることによって、やがて陳腐化し、隙間ができ、その隙間を埋めるために新しい価値観に取って代わられるのです。

 日本の近代において、尊王攘夷が尊王討幕に変わったのは、攘夷の障害が大きかったからだけではありません。攘夷の持つ限界が自ずから明らかになることによって、尊王討幕へと進んだからこそ、そのあとに来た価値観は、脱亜入欧になったのです。

 だから、主題の創造で大事なことは、多くの人が発表することと、それが公開されていることです。これによって多数決や強制というやり方をとらなくても、主題の方向は自然に収斂されていきます。しかし、その収斂は決して固定化したものではなく、時の経過とともに新たな主題へと変容する生きた収斂です。この新たな主題が、主題の創造なのです。


 これまでの話をまとめましょう。

 これからの教育で最も大事になるのは創造であり、その創造は、題材、構成、表現、主題の各分野で生まれるということを説明しました。

 これを実際の作文教育の中で実現するためにはどうしたらいいのでしょうか。

 第一に、意欲の創造を支えるために、教育においてこれまで以上に自分らしさというものを評価することです。

 第二は、暗唱、音読、復読などによる題材の習熟に力を入れることです。

 第三は、構成を重視した作文指導です。それは、項目を重視した指導と考えてもいいでしょう。

 第四は、表現の工夫です。特に小学生の場合はたとえ、中高生の場合は自作名言を中心とした表現の工夫です。自作名言は、表現の創造を超えて主題の創造に近いものになります。

 そして第五は、発表です。同じテーマで他の人の作文を読むことによって、多くの人が論じる主題に精通し、やがて新しい主題を作る準備をすることです。


 これまで、子供の教育は、浅い知識を広く習得し、覚えた知識を速く正確に再現することを目標にしてきました。しかし、それは結局、メモリの速度とハードディスクの容量を競うコンピュータを育てるような教育でしかありません。

 機械的な学力は、機械の活用によって簡素化し、そのかわり人間にしかできない創造に力を入れていくのがこれからの教育の重点です。そのために、作文教育を中核とした教育によって創造性のある子供たちを育てていくことが、これからの大きな課題になるのです。(おわり)



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